2月14日




いつもは余裕の王子達も、この日ばかりは忙しい。






義理以上本命未満






「今日は2月14日です。さてさん、今日は何の日でしょう!」

「何の日って・・・何の日?」

爽やかな笑みを浮かべ、指を立てて尋ねたジタンとティーダ。

そんな2人に、トボけた顔の

ジタン達は笑顔を引き攣らせ、根気よくもう一度尋ねた。

「俺達に、何か渡すものがあるんじゃないかー?」

「何かって、何も。」

ああ、誰かこのボケボケお姫様に突っ込んでくれ。




なんでやねーんっ!!




って。

だって今日は2月14日。女の子は皆胸高鳴らせる聖バレンタイン。

いやいや男だって胸を高鳴らせるだろう。

『あの子は俺にチョコをくれるのだろうか!?』

と。現にジタン達だって例外ではない。

なのにそんな大切な日のことを、このお姫様はよりにもよって忘れている!?

何故!?どして!?


「今日って何か特別な日?」

首を傾げて尋ねる。嗚呼、愛しいよマイハニー。

けどあまりに酷いじゃないか。本命チョコをくれなんて言わない。

せめて義理でもいいから欲しいのに。愛しい人。

心も体もとろけるような、そんな甘いチョコが欲しいのに。何故。

ジタンとティーダは顔を見合わせ、目を潤ませた。

どうしてこんなに哀しいのだろう。

たかだがチョコがもらえないくらいで。

でもやっぱりチョコは欲しい!!からのチョコは絶対的に!!

でも鈍感なお姫様は、そんな自分達の気持ちに気付いてくれない。

「ジタン?ティーダ?」

はきょとんとしている。ああ、悲しきかな。

「いや・・・なんでもないッス・・・。気にしないでくれ・・・。」

暗い影を宿して去っていくジタンとティーダ。

その後姿を、はポカンと見つめていた。








「・・・で、撃沈してここまで戻ってきたのか。」

クラウドは呆れた表情をジタンとティーダに向けた。

ジタンとティーダは半べそをかいている。よっぽど哀しかったのだろう。

チョコをもらえなかったということが。

って本命にしか渡さない主義なんスかね?」

「「だったらチョコは俺がもらったな。」」

クラウドとスコールの声がはもった。

2人は顔を目を見合わせ、バチバチと火花を飛ばしている。

鋭い眼光。それがぶつかれば火花が飛ぶのは必須である。

そんな2人を見て、ジタンが机をぶっ叩きながら叫んだ。

「俺達だって、2人一緒だったから渡せなかったってだけで、俺とティーダの

どちらかに渡すつもりかもしれねーじゃん!!」

どうあっても張り合いたいらしい(爆

王子4人の間に火花が散る。

効果音が聞こえてきそうである。

鋭い緊迫した空気が立ち込め、冷たい風が吹き荒れた。

4人はニヤリと笑う。




「勝負だな」

のチョコは渡さない」

「本命は俺だぜ」

「最後に笑うのは誰ッスかね?」



フフフと笑う王子4人。怖い。ものすごく怖い。しかし滅多に見れない光景である。

その怖い空気をものともせず、4人に近付く女子達がいた。

2年の女子だろう。名前までは知らない。

手には4つの包みを持っている。

「「あの・・・私達の手作りチョコ、受け取ってください!!」」





「「「「いらない」」」」





バッサリ。まさに一刀両断とはこのことか。

けれど王子達に悪気があるわけではない。のチョコのことで頭がいっぱいなのだ。

のチョコ以外は、もういらないのだ(鬼や

4人はガタンと席を立ち上がると、「フフフ」と不敵な笑いをこぼしながら教室を去って行った。








4人が廊下を通りかかると、ふとの姿が目に入った。

何やらセフィロス、ヴィンセントの2人に囲まれている。教師のカツアゲか(違

クラウド達は柱の陰に隠れ、様子を見ることにした。

会話が聞こえてくる。

、君は今日何の日か知っているか?」

「えっ・・・何かの提出日ですか!?」

いや、そうではない。義理だの本命だの、わ、私達に興味はないのだが・・・

嘘つけ。思い切り興味があるじゃないか。というより、遠回しにチョコをねだっているではないか。

なんという教師。こういうのを職権乱用というのではないか。

そう突っ込みたくなるが、ここは我慢することにする。

どもるセフィロス。その隣で、ヴィンセントは溜息をついている。

興味がないフリをしても無駄だぞヴィンセント先生。

顔に「チョコが欲しいなぁ、のチョコが欲しいなぁ」と書いてある(爆

はきょとんとしていたが、思い出したように鞄から2つの包みを取り出すと、

笑顔でセフィロスとヴィンセントに手渡した。

「すみません。後でお渡しに行こうと思ってたんですけど、今渡しちゃいますね。

バレンタインチョコです。駅前のお菓子屋さんで買ったんです。美味しいですよ。」

王子達4人は固まった。

何故。








はチョコを用意しているではないか!








クラウド達の空気が更に重くなった。

セフィロスとヴィンセントがチラリと自分達を見て、ニヤリと笑ったのは見間違いではないだろう。

おのれ教師達。職権乱用で訴えてやる。

というか悔しい。

悔し過ぎる。

何故、から何のリアクションもないのだ。

がセフィロス達に渡したチョコは、確かに義理とわかるもの。

けれどその『義理チョコ』さえもらえない自分達は!?



「「「「!!!」」」」



クラウド達は叫んでの前に飛び出した。

突然のことには驚き、目を丸くしている。

「ど、どうしたの皆。」

戸惑った様子でが尋ねる。

クラウド達は各々口を開いた。

、本当に俺達に渡すものないんスか!?」

「酷いぜ!!先生達にはあげるのに!!」

「俺、自信なくしてもいいか?」

「友達としても見られていないということか・・・。」

は唖然としてクラウド達を見つめている。

周りを歩いている生徒達は何事かと足を止めて、様子を見守っている。

沈黙が降りた。

そして。




「ぷっ・・・・あはははははっ!!!」




沈黙を破ったのは、の笑い声だった。

今度はクラウド達が唖然とする番だ。目を点にしてを見つめる。

はそんなこと気にせずに、腹を抱えて大笑い。

その目には笑い過ぎて出てきた涙が浮かんでいる。

「・・・お、おい・・・?」

「ふふっ・・・皆おかしいよ、すごく面白いよっ!」

は目尻の涙を拭いながら言った。

ポカンと口を半開きにするクラウド達。一体何がどうなったのやら。

は一頻り笑うと、溜息をついて顔を上げた。

「ジタンとティーダがあまりに可愛かったから、ちょっとからかってみちゃった。」

「「「「はぁ?」」」」

予想外のの言葉。

は苦笑しながら鞄を開けると、その中から小さな箱を4つ取り出した。

そして、それに書いてある名前を確認してそれぞれ4人に手渡す。

渡し終えてから、顔を上げてにっこりと笑った。

「はい。バレンタインのチョコレート。手作りだから味は保証しないよ?胃薬用意して食べてね。」

何も言葉が出てこない。

ぽかんとしたまま、手渡された箱を見つめて呆然としてしまった。

つまり、自分達はにからかわれて遊ばれていただけだと?そういうことなのか?

は何もリアクションしないクラウド達を見て、少し頬を膨らませた。

「いらないならいいよ。職員室にばら撒いちゃうから。」

ぶんぶんと全員で首を横に振る。はそれを見て、笑顔で「よろしい」と言った。

クラウド達は顔を見合わせる。

チョコはの手作り。教師達には勝った(ような気がする)

手作りというところから、義理ではないと解釈して良いだろう。

けれど、本命でもない。




「ありがとう、。・・・じっくり味わって食べるよ。」

「サンキュ!心配して損したぜ。」

「胃薬なんて用意しないッスよ。必要ないからな。」

「甘いもの苦手だけど・・・全部食うから。」





嬉しそうに微笑む



手渡された義理チョコでも本命チョコでもないバレンタインチョコレート。

それは、義理以上本命未満のチョコレート。

さて、そのチョコレートで王子達の心と体はとろけたのでしょうか?









<完>


=コメント=
バレンタインドリームです〜(笑
ギャグ風味のフォント使いまくりで(笑
今回は王子達、姫に遊ばれる、の巻です(笑
は確信犯です(笑)チョコねだられてるのわかっててじらしてます(笑
まぁ、たまにはこういうのも悪くないね(笑 [PR]動画