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舞台上での劇は続いている。

自分の出番が終わったは、舞台裏で作戦に備えていた。




風に舞う記憶第二章






「裏切ったな!裏切り者は許さんっ!!」

舞台の方からジタンの声が聞こえる。ジタンのセリフの後はブランクとジタンのチャンバラ演技だ。

ここはなかなか見せ場でもあって、楽しみにしている客もたくさんいるとのこと。

全員はムリかもしれないが、ジタン達は半分以上の人に満足してもらえるように頑張るつもりだった。

ジタンがブランクの攻撃をかわして一撃を入れる。ブランクもかわし、再び構えてから動き出す。

ジタンが斬りかかり、ブランクはそれを剣で押さえた。そして回転しながらジタンの剣をはらい、押し退けて飛び退く。

「くそっ、今日のところはここまでだ!」

「待て!逃げるつもりかっ!?」

ブランクが剣を納めて幕の中に入って行く。それを追ってジタンが幕に入れば含め三人はアレクサンドリア城内へ突入となる。

ジタンが幕に入った。そこでものすごい拍手が起こった。

100人中87人ほど満足したというカンジだ。ブラネ女王は満足しなかったようだったが。

まぁいい。今回は劇をやるためにアレクサンドリアに来たのではなく、むしろブラネ女王を満足させるために来たのではない。

ガーネット姫をさらうために来たのだから。




「お待たせ!お〜い、ブランク早く行こうぜ!」

ジタンがの元に駆けて来る。その後ろから腰のベルトを整え直しているブランクの姿もある。

「ジタン!自分ばっか先に行ってるんじゃねーよっ!」

「ブランクが遅いだけじゃねぇか。」

「なにおぉ!?」

「ちょーっとちょっと、早く行くんじゃないの?早く行かなきゃ劇が終わっちゃうジャン!!」

が呆れたように言う。ジタンとブランクは目を丸くして、それから慌ててに近寄った。

「それじゃ行こうよ。兵士の服はボクがちゃんと持って来てあげたからさ〜。」

ジタンとブランクは差し出された兵士の服を受け取る。何やら汗臭いようで、二人共顔をしかめた。

「うげ〜・・・なんだよ、この臭い・・・。」

「仕方ないじゃん?」

、この兵士の服はどうしたんだ?」

「兵士部屋にいた二人の兵士をボコボコにしてロッカーに叩き込んで服を剥ぎ取った。」

ついでにスリプルもかけた、とは言う。ジタンとブランクは呆気に取られてを見た。

確かに自分たちだってと同じ行動を起こすだろうが、なんの迷いもなく無表情で言い放ったがあまりにも恐ろしかったのだ。

「あれ?でもはどうするんだ?兵士の服は・・・。」

「ボクはコレ。」

はジタン達の目の前に綺麗な装束を見せた。女王側近の女官の服だ。

「うわっ!!ずりぃ!!!」

「なんで。」

「オレ達は汗臭い鎧で、お前は綺麗な装束かよっ!?」

だってボクは鎧つけられないもん、と言う。もう何を言っても無駄であろう。

ジタンとブランクは諦めて鎧を着始めた。顔が見えないように兜を着けるのも忘れない。

は白いヒラヒラの装束を身につけた。髪はひとつで結わえ、大人っぽく見せるために紫色のアイシャドウを入れる。

「どうだ?」

「やっぱりコレ臭い・・・。」

「うん、二人共似合ってるよ?それじゃ行こうか。」

はスタスタと歩き出す。その後にジタンとブランクが続く。

どこから見てもアレクサンドリアの人間にしか見えないだろう。中には女官のに頭を下げる兵士もいる。

城内の螺旋階段を上がり、どちらに行こうか迷った時だった。


ドンッ


「きゃっ!」

「わっ!!」

はよろめく。誰かがとぶつかったのだ。それは白魔道師のローブを着た女の子だった。は女の子を立ち上がらせて聞く。

「大丈夫でございますか?」

いつものからは考えられない口調。女の子は言った。

「は、はい・・・。」

その時、ジタンが何かに気付く。女の子の顔を覗き込んで、ジタンは唸った。

「なぁ・・・オレ達、どっかで会った事なかったか?」

「え!?あ、ありません・・・・。」

「・・・でも、こんな可愛い女の子・・・一回見たら忘れないと・・・」

そこまで言いかけ、ジタンは大声を出した。

「あぁぁぁぁ!!!!」

その声とともに女の子は駆け出した。ブランクが突き飛ばされ、階段の下まで滑り落ちる。

「ジタン、何、どうしたの?」

「あいつだ!!あいつ、ガーネット姫だ!!写真で見た顔と同じだった!!」

ジタンは駆け出す。階段の下で頭を押さえているブランクになんて目もくれずに。

「いててて・・・・。」

ブランクは兜を取って頭を押さえていた。は近寄って声をかける。

「大丈夫?ブランクの兄貴。」

「ああ・・・。この兜、安物だな。転げ落ちた時、全然役に立ってくれなかったぞっ!」

よくよく兜を見るとブランクが頭を打った辺りがへこんでいる。

これでは全く意味がないと思える。

「あーあー・・・。」

がため息をついた時だった。

「不審人物でごじゃる!!」

「見たことないヤツらでおじゃる!!」

ブランクとはハッとして振り向く。そこには赤と青の服をまとった道化師が立っていた。

顔がそっくりなところを見ると双子なのだろう。

はこの二人のことを知っていた。もとい、バクーに注意する人物だと聞かされていたのだ。

道化師のゾーンとソーン。「おじゃる」「ごじゃる」が口癖の双子の兄弟。

「お主らは何者でごじゃるか?」

が立ち上がって言った。

「わたくしはブラネ様側近の女官でございます。」

「ん?ブラネ様の?」

「はい。」

「ブラネ様には既に側近の女官がいるでおじゃる。やっぱり怪しいでおじゃる!」

「道化師のあなた方がわたくしのことを知らないのは当たり前です。

言っておきますが、わたくしはあなた方に命令すら出来る身分なのですよ。」

ゾーンとソーンは顔を見合わせて唸った。

「いい加減にしなさい。わたくしを疑うつもりですか。」

「疑うも何も怪し過ぎるでごじゃる。」

ブランクには聞こえただろう。が舌打ちをした音が。

「そんなに疑うならブラネ様にお聞きすればいいでしょうっ!?わたくしの名前はシーナ・カイレン。ブラネ様側近の女官です!」

「シーナ・カイレン?ブラネ様に聞くでごじゃる。」

「ブラネ様に聞いてみるでおじゃる。」

双子はくるりと向きを変え、ブラネの元に向かおうとした。が。


 トンッ


「「!?」」

ソーンとゾーンの首に軽い感覚が走り、ぐるりと風景が回転しながら暗転した。が手刀で二人を気絶させたのだ。

ブランクは口笛を吹く。

「ほーぉ、お前、元からその双子を気絶させるつもりでいやがったな?」

「当たり前じゃん。ホントにブラネに聞かれたら大変なことになってるもん。ボクが偽名を使ったのもその二人に信じさせるためだよ。」

「シーナ・カイレンか・・・。お前、ネームセンスないな。」

「兄貴には言われたくないよーっだ!」

はベーっと舌を出して言った。

「ところでこの双子どうするよ?」

「適当に倉庫にでもぶち込んどけばいいんじゃん?ボクはジタンを追うから、兄貴、後始末ヨロシク☆」

そう言っては駆け出した。もちろん女官の服を脱ぎ捨て、顔の化粧を擦って落としながら。

「・・・っておい!俺にこれからどうしろってんだよっ!!??」

後ろから、ブランクの心底困ったような声が聞こえた気がした。





アレクサンドリア城内にジタンはいなかった。ということは、城の東と西にある塔に行ったという可能性がある。

は城の入り口でどちらの塔に行こうか悩んで、西の塔に行く事にした。


長い長い螺旋階段。足腰が痛くなってくるが、こんなのは日常茶飯事だ。

そう思いながらはひたすら階段を登っていた。

途中で何人かの兵士とすれ違ったが、兵士達が特に気にした様子がないので無視をしてここまで来た。

花火の光が見えた。出口だ。は足の速度を速め、一気に駆け上がった。

荒くなった息を整えながら、は顔を上げた。

目の前には小太りした兵士がいる。東の塔を見て、なにやら慌てた様子だ。

も何事かと思い視線を東の塔へと走らす。

「あーっ!!ジタンっ!!」

東の塔には、先ほどとぶつかった少女とジタンが追いかけっこをしていた。

ぐるぐると同じ場所を何度も走っている。

と、その時少女が塔の壁(塀と言ってもいいかもしれない)の上に立った。

ジタンは慌てている。それはそうだ。ここでお姫様を死なせてしまえば、大変なことになってしまう。

「ヤバイっ。」

はキョロキョロと辺りを見まわす。すると、この塔からアレクサンドリア城まで国旗の綱がはられている事に気付いた。

は壁によじ登ってその綱に掴まろうとした。が。

「姫さまっ!!スタイナーが今お助けに参りますぞっ!!」

隣にいた兵士がより先に綱に掴まり、そして滑っていってしまったのだ。

だが重量オーバーだろうか。綱が切れ、そしてその兵士は哀れ木で出来た壁に頭から突っ込んでしまった。

「ありゃりゃ・・・。」

はほんの少し兵士に哀れみの視線を送ると、すぐさまジタンと王女の姿を探した。

見つけた、が、は素っ頓狂な声を上げずにはいられなかった。

「はあ!?」

ここまでおてんばな王女がいるだろうか。王女はがしようとしていたことを既に実行していたのだ。

そう、あのスタイナーとかいう兵士がしたことと同じことを。

国旗の綱に掴まり、劇場艇の裏に飛び移ったのだ。ジタンは東の塔の上で地団駄を踏んでいる。

だがこうしてはいられない。ジタンは振り子のように戻ってきた綱に掴まり、王女を追って劇場艇に飛び移って行った。

「ってかジターンっ!ボクの姿に気付いてよー!!」

自分のことを見てくれなかった(というか気付かなかった)ジタン。は頭にピキマークをつけて怒鳴った。

ともかく、王女とジタンが劇場艇に行ったことを考えるとも劇場艇に向かわなければならない。

は腰につけているロープを壁にしっかりと結び付け、そのロープに掴まって劇場艇へと突入した。



綺麗に回転を決めて着地する。

舞台の方から音楽が聞こえる。どうやらもうじきクライマックスを迎えるようだ。

と、その時だった。


≪キャァーーーーーーーーーーーーァ!!!≫


反射的には身構えた。今のは舞台の方から聞こえた。今まで流れていた音楽も止まっている。何かあったに違いない。

は急いで舞台上に向かった。



「ジタンッ!?」

ッ!!!」

舞台上で目にしたのは、大きなボム・・・もとい、ボムの前にいるスタイナーと戦うジタン達。

どうやらあの少女は本当にガーネットだったようだ。今では白いローブも脱いでいる。

「な、な、な、何やってんの!?」

「見てわからねぇーかっ!このおっさんが阿呆なんだよっ!!」

「スタイナー、お願い!後ろを向いて!!!」

ジタンに続いてガーネットが叫ぶ。

「騙されぬぞ!!自分の後ろに何かがいると見せかけ、逃げるつもりなのであろう!!」


・・・・完璧阿呆。


の頭に、その4文字が浮かんだ。

ボムの大きさは異常だ。かなりの大きさになっている。このままではもうじき爆発するだろう。

はスタイナーに近寄り、トントンと肩を叩いた。

「ん?」

「あのー、ボクの真上のアレ、見えます?」

キラキラ笑顔では言った。スタイナーの視線が恐る恐る上へと向けられる。

「どわーーーーーーーーーーーっ!!!」

「早く劇場艇を動かして!!!」

スタイナーは異常なほどに大きくなったボムを見て腰を抜かした。これでアレクサンドリアの兵士と言うんだから呆れてしまう。

はスタイナーの首根っこを持って飛び上がった。劇場艇がゆっくりと動き出す。

ボムの大きさは限界を越えている!!

誰もが目を塞いだとき、ボムが大爆発を起こした。爆風に煽られ、貴族達の悲鳴が響く。

劇場艇は星が瞬く空へと飛び出した。城の方から砲撃が来る。

どうせ王女を取り返そうとしているに違いない。・・・普通ならそう考えるが、あまりに妙だ。

王女を取り戻すつもりなら、砲撃などを仕掛けては危険過ぎる。王女自身、死んでしまうかもしれないというのに。

《なーるほど・・・。ブラネ激変ってヤツ?》

は心の中でニヤリと笑った。ブラネ女王の激変の噂はも耳にしていた。

今まで国民に優しかった女王が、急に変わってしまったというのだ。

急激な増税。謁見も許さず。少しでも何か兵士が失敗を犯したら、即、牢屋行き。

ブラネの身に何かが起こっているのは確実だった。

《ま、ボクには関係ないけどねぇ。》

劇場艇は無事アレクサンドリアから離れた。もう大丈夫だろう。

「ってか、おっさん重いんだけど。」

「め、面目ない・・・・。」

スタイナーの首根っこを掴んだまま、マストから突き出た棒に掴まっていたは、ぽつりと呟いた。



ウィーン!ウィーン!ウィーン!ウィーン!!



異常自体発生のサイレン。は何事かとあちこちに視線を走らせた。

「ねぇ!何があったの!?」

が下に向かって叫ぶと、ひたすら激しい振動から王女を守っているジタンが声を張り上げた。

「劇場艇の捜査がきかねぇんだ!墜落するぞ!!!」

「なにそれマジで?この先って魔の森じゃん!!ヤバイよ!!!」

「とにかくどこかに掴まれ!!あとしゃべるな!舌噛むぞ!」

「・・・ってこの状況でどう対処しろってのっ!?」

そう、現在は右手でマストに掴まり、左手でスタイナーを掴んでいるのだ。

最悪と言ってもいいかもしれない。

「ぶつかるぞ!!掴まれ!!!!」

機関室のドアを開けてブランクが叫んだ。はどうしようもない。とにかく右手に力を入れ、目を瞑った。

ものすごい振動が劇場艇全体を覆い、気付いたらの右手は空を切っていた。

「「「ッ!!!」」」

何やらタンタラス団の皆の大声が聞こえたような気がした。

だが、それが事実なのかまではにはわからなかった。何故なら。




の意識が暗転したからだ。





<続く>



=コメント=
第2話。どうですか?
なんかストーリーの資料がなくて、だいぶオリジナルが入ってますけど(汗
こんなんだったかなー、程度の思いです(汗
だってわからないんだもん(涙
ってか中途半端っ!?(爆笑)
なんじゃいこりゃ〜(苦笑
まぁいいや、次のお話もどうぞ読んでくださいマシ(笑