※諸事情により、途中にあるラグナ編は省略します。
 ラグナ編がなくても話はわかると思いますが、もしわからない方はゲームの方を参照してください。








俺は兄貴の後姿しか見て来てないんだ。






そんな俺に、一体どうしろと?










hat is your hope ?










スコール達は、放送局を離れた。

その間、誰も口を開こうとしなかった。

サイファーはどうなったのか。魔女は何故サイファーを連れて行ったのか。

魔女の目的は?大統領の意図は?

考えてもわからない。けれど、何かを考えていないと壊れてしまいそうだった。

「アジトを見つけられてぐちゃぐちゃにされちゃったの。」

リノアが言った。全員顔を上げ、リノアを見つめる。

「他のみんなは?」

セルフィが心配そうに尋ねるが、リノアは苦笑した。

「大丈夫。みんな逃げるのは得意だから。しばらくティンバーを離れなくっちゃ。」

言われなくとも、もうティンバーにいる理由はない。

早いところティンバーを脱出してしまいたいところだ。

リノアはスコールと目が合うと、ニヤリと笑って言った。

「ね、私を安全な場所まで連れだして。これは命令で〜す。クライアントの依頼で〜す。」

まだ契約は続いている。

スコールはしばし沈黙した後、

「・・・・・了解。」

渋々ながら頷いた。

と、町の中を移動していると1人の女性と出会った。

リノアと知り合いらしく、リノアの姿を見ると慌てたように駆けて来た。

「リノアちゃん、聞いたよ! あんた達のアジト大変だって話じゃないか。

ほとぼり冷めるまでウチにおいでよ。」

「じゃぁ、お言葉に甘えて・・・・」

「スコール達も早く来なさい。」

キスティスに促され、全員が女性の家に邪魔することになった。

女性は家に入って、しっかりと家の鍵をかけると言った。

「街に変化があったら教えたげるからそれまでここで休んでな。」

「ありがとう、首領。」

リノアが笑顔で返事をする。だが、スコールは首を傾げた。

「首領?」

「彼女は『森のキツネ』の首領よ。この街じゃ、大抵の人がレジスタンス組織のメンバーなの。

本当に活動してる組織は私達くらいだけどね。ちょっとだけお世話になろうよ。」

ちゃんとお世話になれる理由もあるらしい。ならば安心だ。

全員が各々位置に着き、しばらくたってセルフィが口を開いた。

「わっかんないな〜 サイファー、何しに来たの?」

リノアはその言葉に少々俯き、ゆっくりと言う。

「・・・・私達『森のフクロウ』のために来てくれたんだと思う。

私、色々相談してたから。だから、あいつの事あんまり悪く言わないでね。」

リノアの気持ちはわかる。

けれど・・・

『この家の者はいないのかっ!?』

外から、ガルバディア兵の声がした。首領の女性は家の外に出て扉を閉めると、負けじと言い返す。

『何だい、うるさいね! うちには小さい子がいるんだ。乱暴な真似はよしとくれ!』

上手く対応してくれているようだ。

そのとき、2階から女性の娘がやって来て全員を2階へと促した。

「2階へ・・・早く!」

「おばさん大丈夫なの?」

「大丈夫よ、きっと。母さんは昔・・・兵士を腕と料理と美貌で倒したという

3つの伝説が残っているらしいから。」

「はは、最後の美貌ってのはいかにも伝説らしいなぁ。」

は苦笑した。



2階へ上がり、しばらくたってからキスティスが口を開いた。

「ティンバーに派遣されたのがスコール達3人だけだと聞いて怒ってたわ。

“ガルバディア全軍と戦う事になるかも しれないんだぞ!

それなのに派遣されたのは新人SeeD3人だけかよ! くそっ! 俺がティンバーへ行ってやる!”

・・・・まさか本気だとは思わなかった。」

「サイファーはいつでも本気だよ、先生。でもま、あいつも随分大胆な行動に出たよな。」

は言い、溜息をついた。

「サイファー、どうなるのかしら。」

「もう殺されている可能性もあるな。」

簡単に言うスコールに、リノアは立ち上がりながら言った。

その顔は、明らかに怒りを含んでいる。

「そんなにあっさり言わないでよ。何か、あいつ・・・かわいそ。」

「(可哀想? サイファー、怒り出すな。)」

スコールは喉で笑い、リノアはそれが気に入らなかったのか更に叫ぶ。

「何が可笑しいのよ! 酷い人ね!」

「なぁ、どうしてサイファーは死んでるかもって思うんだ?」

スコールはしばし沈黙し、口を開く。

「ガルバディア大統領と魔女は手を組んだ。その大統領をサイファーは襲った。

魔女にとってもサイファーは敵だ。だからサイファーがあの後始末されたとしても不思議じゃない。」

いかにも正しい答え。どこにも間違っている部分などない。

だが、リノアはそれにも食って掛かった。

「そうだとしても! 生きてて欲しいって思うよ!」

けれど、現実はそんなに優しくない。

思い通りになど、ならない。だから。

「期待しなければどんな事でも受け入れられる・・・傷が浅くてすむ。

まあ、あんたが何を望んでも俺には関係ないけどな。」

リノアはスコールを睨み付ける。

「・・・優しくない。」

けれど、それが現実。現実は優しくなどないのだから。

「優しくない!!」

リノアは覚悟を知らない。いつ身近な人物がいなくなるか限らない。

その覚悟が、出来ていない。

「・・・・悪かったな。」

スコールの言葉も、宙に浮いて千切れていった。

と、その直後に首領が上がってきた。

「ガルバディア兵達の引き上げだよ。常駐部隊以外は撤収したそうだ。

街を出るなら今がチャンス!もう少ししたら常駐部隊のねちっこ〜いレジスタンス狩りが

始まるかもしんないからね!」

チャンスは今。とりあえず全員は1階に降りたが、相変わらず沈黙は続く。

恐らく皆考えていることは同じ。

早く、帰りたい。

「班長!行く当てはあるのか?」

が問う。スコールは考え込むが、キスティスが付け加えた。

「とにかく街を出ればいいってもんじゃないわ。」

「どこか心当たりがあるのか?」

キスティスは意味深な笑みを浮かべると、言った。

「ガーデン関係者心得。第8条7項。」

とスコールが同時に腕を組んで考え込む。

そして、同時に口を開いた。

「「所属ガーデンに帰還不能等の緊急時、ガーデン関係者は速やかに最寄りガーデンに連絡すべし。」」

とスコールの声がはもった。キスティスはパチンと指を鳴らす。

「Very Good!!ここからならガルバディア・ガーデンね。」

「ガルバディアか。ガルバディアの最寄りの駅が『学園東』ってとこなんだけどさ、

そこからなら俺案内出来るぜ。」

が軽く挙手して言った。リノアも口を開く。

「あ、ここの駅から列車出てるよ! 学園東って駅まで行くの。」

「んじゃ問題はないな。班長、まとめてくれ。」

がスコールに言うと、スコールは小さく溜息をついた。

それから、渋々口を開く。

「・・・・ティンバーを離脱してガルバディア・ガーデンへ向かう。出発する!」

「「「「了解!!」」」」

リノアを含めた5人は、世話になった首領に礼を言って家を出た。

それから駅に向かおうとするが、そこに1人のガルバディア兵が近付いてくるではないか。

とスコールは警戒しながら腰のガンブレードに手を伸ばす。

だが、それを見たガルバディア兵が慌てて手を振って言った。

「俺ッス! 俺ッスよ!」

しゃべり方でわかる。それは、兵士の格好をしたワッツだった。

ワッツがまた情報を持ってきたらしい。

「情報あるッス。ティンバーの駅が一時閉鎖されるッス。」

「絶対絶命ピ〜ンチ!!」

「そうでもないッス! まだ完全閉鎖じゃないッス。

もうすぐ学園東行きの列車が出て閉鎖はそれからッス。」

その列車に乗れば、とりあえずは問題なさそうだ。

スコールは頷いた。

「リノアもスコール達と一緒に行くッスね!」

「うん、行く。ワッツはどうするの?」

「俺の事は心配いらないッス! たっくさん情報仕入れるッス!」

リノアにとってワッツは大切な仲間。

リノアは微笑み、ワッツの手をしっかりと握った。

「戻ってくるからねっ、元気でねっ。」

「スコールさん、リノアをよろしく頼むッスよ。」

ワッツに言われてスコールは頷いた。

「ああ、心配するな。クライアントの命令だからな。

あんたはいいのか? ここにいて大丈夫なのか?」

スコールの問いに、ワッツはニッと笑って答える。

「やるときゃやるッスよ! SeeDにゃ負けないッス!」

しっかりとした若者だ。

スコール達は顔を見合わせて少し微笑み、ワッツに敬意を払って敬礼した。







こうして駅に向かうと、1人の老人が近付いてきた。

何事かと思えば、なんとそれはゾーンの変装だった。

ゾーンはニッと笑うと言った。

「学園東行き列車に乗るんだろ?でも、パスは手に入らないぞ。」

「しっぱ〜い。」

「無理矢理にでも乗り込むさ。」

恐ろしいことを言うスコールに驚き、ゾーンは続けた。

「そんな事しなくてもいい。騒ぎは起こすな。

へへん!ゲットしといたぞ、みんなのパス。ほら、これだ。」

ゾーンはリノアにパスを手渡し、それからスコール達を振り向く。

「SeeDは4枚だな。班長さんに渡すよ。で、最後の1枚は俺の・・・」

言いかけて、ゾーンはキスティスの存在に気が付く。

どうしようかしばらく考え、ゾーンはゆっくりとキスティスに近寄った。

「最後の1枚はあんたの分。」

「受け取れないわ。あなたのパスでしょ?」

キスティスが断ろうとするが、ゾーンは無理矢理キスティスにパスを握らせると

くるりと後ろを向いて急に屈み込んでしまった。

「うっ! イテテテテテ! 腹が痛い! イテテテテ、早く行けよ!列車が出発するぞ。」

仮病。彼の得意技だ。けれど、それがこんなときだととても嬉しい。

キスティスはゾーンに近寄り、言った。

「ありがとう。」

リノアはゾーンからもらったパスを握り締める。

「・・・ゾーン。また会うんだからね。ちゃんと、生きてないとダメだからね。

一緒にティンバー独立させるんだから。」

「わかってるって。便所にでも隠れてるさ。早く行けよ。イテテテ・・・リノアをよろしくな。

っつうか、彼女に何かあったら許さないからな。」

ゾーンとワッツの協力がなければ、スコール達は列車に乗れなかっただろう。

これは彼らの活躍のおかげだ。

ときには本当に役に立つのか立たないのかわからない、むしろ役立たずだと思ったこともあった。

けれど今、そのことを撤回しよう。

スコール達はゾーンとワッツに感謝の気持ちを抱きながら、学園東行きの列車に乗り込んだ。











『ティンバー発、学園東行き列車、間もなく発車致します。』

車内アナウンスが流れ、列車が動き出した。

全員が安堵の溜息を漏らす。

スコールが口を開いた。が。

「何とか・・・」

「開けて〜 開けて、開けて〜」

「なる・・・」

開っけろぉ〜〜〜

スコールが言おうとしているところを、セルフィが遮って言った。

奥に続くドアを開けて欲しいらしい。

そういえば前回列車に乗ったときもそうだったような。

「開けてっ。」

セルフィがスコールを振り向いて言うと、スコールは溜息をついてチェッカーを操作した。

『確認完了。ロック解除。』

ロックが解除されると、セルフィは嬉しそうに奥へと入っていった。

皆思い思いに立っている。すぐに着くから奥に行く必要もないと思っているのだ。

一方、ゼルはずっと肩を落としている。

放送局を出てから一言もしゃべっていない。

デリング大統領の前で、ガーデンから来たことを漏らしてしまった。

それでかなり落ち込んでいるのだろう。

「・・・参ったぜ。・・・」

やっとしゃべったかと思えば、それだけ。

は溜息をつき、ゼルに近寄るとその背中を思い切り叩いた。

「イテッ!!」

「おらっ、メソメソすんじゃねぇ男のくせに!!

やっちまったもんは仕方ねぇだろうが。グチグチ言うな、足手纏いになるだろ!!」

キツい言い方ではあるが、の心配している気持ちが充分に表れている。

ゼルはを見つめ、俯いたままではあったが小さく頷いた。







列車は無事学園東の駅に着き、ここからはが先導することになった。

ガルバディア・ガーデンまでは駅から西にある森を抜けて行く。

森を抜ければガーデンはすぐだ。

スコール達は森に入り、森の中を進んでいった。

「ガルバディア・ガーデンはもうすぐだぜ。皆へばってないかー?」

が問うが、全員疲れ気味である。は苦笑した。

「今更だけどさ〜 ガルバディア政府から良くない連絡入ってるかもよ。

いきなり捕まっちゃって、世界に放送されちゃったりして。」

セルフィが少し不安げに言った。

だが、ゼルが答える。

「そんときゃ、そんときでいいだろ! 早く行こうぜ!

俺、バラム・ガーデンの様子が知りたいんだ。早く帰りたい。

ガーデンに何かあったら俺のせいだ。皆がガーデンから来た事を言っちまったのは俺だから・・・

な、あの大統領、ガーデンに報復するかな?」

「かもな。」

ゼルはスコールに尋ね、スコールは短く答える。

周りから見れば、スコールの態度は冷たく感じるかもしれない。

「・・・だよな。で、でもよ、バラム・ガーデンにはSeeDも大勢いるもんな!

ガルバディア軍に負けたりしないよな?」

「ガルバディア軍の戦力によるだろ?」

「そうだけどよ・・・・」

スコールの言葉は正しい。間違っていない。

こういうとき、必ず食い掛かってくる者がいる。

案の定、リノアが怒った様子でスコールに言った。

「素晴らしいリーダーね。いつでも冷静な判断で仲間の希望を否定して楽しい?」

絡んできたリノアに呆れたようにスコールは溜息をつく。

「(・・・また絡むつもりか。)」

「ゼルはあなたの言葉が欲しいのよ。」

「(・・・そんなところだろうな。)」

ゼルの気持ちもわかる。けれど。

「大丈夫だ、とか、頑張れとそういう言葉があればゼルだって・・・」

「(そんなのは気休めだろ? そう思ってるのは俺だけか?いや、サイファーだって・・・)」

「そういう言葉が仲間の元気や勇気になるんだから。」

「(他人に何とかしてもらおうってのが甘いんじゃないのか?)」

「それくらいわからない!?」

「(・・・うるさいな。)」

「ねえ、スコール!」




「リノアッ!!」




スコールとリノアは驚いて硬直する。

叫んだのは、驚いたことにだった。

は鋭い瞳でつかつかと2人に歩み寄ると、スコールの前に立ってリノアを見つめた。

「リノア。お前の勝手な物差しで俺達に文句を言うのはやめてくれないか。」

「・・・・・・。」

は怒っている。明らかに怒気が発せられている。

リノアはを見つめたまま、硬直した。

「お前は優しいから、ゼルが心配なのはわかる。仲間を想うことが大事なのもわかる。

けどな、それじゃ今のご時世生き残れないんだ。

仲間を想う。仲間を勇気付ける。頑張れ、大丈夫だって。

けど、そんなの俺達SeeDには気休めにしかならないんだ。

理想と現実は違う。皆で無事に生き残りたい、そう思いながら死んでった奴だっているんだ!!

仲間を想う気持ちで全てが救えるなら俺だってスコールだって想うさ。

頑張れ。大丈夫だ、お前なら。絶対に俺達は助かる。勝てるさ、だから行こう。

・・・こんな言葉が、戦場で一体何の役に立つ?

助かる、頑張れる、大丈夫だって思いながら死んでった奴らの気持ちは!?」

全員が沈黙した。

リノアを始め、ゼル、セルフィ、キスティス、そして、スコール。

全員が目を見開き、を見つめて沈黙していた。

「ゼルにだって覚悟は出来てる。・・・SeeDだからな。

気休めの言葉は必要ない。俺達に必要なのは結果なんだ。

勝利。敗北。敗退。進出。全て大切なのは結果。結果が出て初めて気休めが出来る。

リノア、お前には覚悟がない。いつ戦場で死ぬかもしれない、死んでも構わないという覚悟がない。」

結果が全て。結果さえ納得いくものであれば、気休めなんていらない。

リノアは呆然とを見つめている。

は小さく頭を振り、続けた。

「俺は小さい頃から、SeeDの兄貴の背中だけを見て育ってきた。

SeeDの兄貴は強かった。・・・最強だった。だから俺は兄貴と比べられ、散々なことを言われてきた。

『兄は素晴らしい才能の持ち主だ。けれど妹の方はどうだ?』

『この2人が兄妹だなんて、信じられないわ。』

『なぁに?この子の目。銀色。それに女の子にしては鋭過ぎるわ。』

『どうせ玲嬢にはなれないさ。かといって兄のようにもなれない。中途半端な汚れ者だな。』

・・・そんなことを言われて育ってきた俺の気持ちが、お前にわかるか?

俺だけじゃない。俺だってスコールのことは知らない。けどスコールの気持ち、リノアはわかるのか?

誰かに何とかしてもらおうなんて甘い考えをしてる余裕なんてなかった。

頼れる相手なんていなかった。自分の周りは皆敵。両親でさえも!

独りでいるのが一番楽だった。誰にも頼らず、独りで。

ただ自分の足で進むしかなかったんだ!!」




    『は俺には追いつけない。悪いけど、兄ちゃんはお前とは格が違うんだ。』




かつて兄が言った言葉が、頭の中でこだまする。

白銀の髪。細く鋭い瞳。黒い服をまとった、あの偉大なる姿。

最強のSeeDにふさわしい人物だと、本当に思う。

兄のようになりたいと願った。けれど、頑張ろうと思ってもそれは気休めにもならなかった。

現実にならない気休めなんて、いらない。

いつからか、そう思うようになっていた。

「・・・ワリ。・・・ちょっと頭冷やしてくる。」

はそう言い残すと、その場から駆け出して行った。

後ろからセルフィの呼び止める声がしたが、足を止める気にはならなかった。

知らずのうちに流れ出していた涙を、見られるのが嫌だった。








は森の中を走り、そしていつの間にか自分だけの“秘密の場所”に来ていた。

小さな滝があり、モンスターも滅多に現れない場所。

ガルバディア・ガーデンにいた頃は、必ず毎日と言って良いほど遊びに来ていた。

ガルバディア・ガーデンは非常に規律に厳格である。

そんな息苦しい世界から、この場所は唯一救い出してくれるものだった。

は水辺の傍に腰を下ろし、滝を見つめた。

「・・・俺、またやっちまった。」

誰に言うでもなく、言葉を口にする。

「・・・また、自分の感情コントロールが出来なくて・・・ぶっ放しちまった。」

痛い。言葉が、心が、感情が、痛い。

ガルバディア・ガーデンにいた頃も、ガーデン内でよく注意されたものだ。

君は乱暴過ぎる。もっとかしこくなりたまえ、と。

かしこくなれ、だと?笑わせる。

ならば貴様らはかしこいのか。かしこい生き物なのか。

何度、そう尋ねてみたかったか。

貴様らに何がわかる、と。何度そう言ってやりたかったか。

けれど、結局は何も言えなかった。何を思っていても、口にすることが出来なかった。

悔しくても、何も言えない。それだけ自分は無力だったのだ。

「・・・なぁ、リヴァイアサン?お前は・・・どう思う?」

≪主は無力ではない。主が何も言えなかったのは事実。けれど、我を救ってくれたのもまた主だ。≫

リヴァイアサンの声が頭の中に響き渡る。

は片膝を抱え込み、クスリと笑った。

「・・・サンキュ、リヴァイアサン。・・・お前だけだな、俺のことをわかってくれるのは・・・。」

≪それは違う。主にはもう仲間がいる。・・・主は、もう我だけの主ではない。≫

「はぁ?何言ってんだよ、リヴァ。俺は・・・。」

≪リノアというあの娘は、確かに何もわかっていなかった。

けれど、主もまた、見落としている部分がある。・・・。周りを見てみるがいい。≫

リヴァイアサンの声が頭の中からふと消えた。

それと同時に、自分の後ろの草むらがガサッと音を立てる。

は腰のガンブレードに手を伸ばし、振り返った。

だが、すぐにガンブレードから手を離す。そこにいたのは、スコールだった。

「・・・スコール。」

「・・・ここに、いたのか。」

少し汗をかいている。それに、息も荒い。

走って、探しに来てくれたのだろうか。

スコールは黙っての隣に移動すると、そこに腰を下ろした。

は目をパチクリさせている。

「・・・どーゆー風の吹き回しだ?」

「・・・別に。」

いつもの彼だ。はクスリと笑った。

「・・・ワリ。さっき俺無茶苦茶暴走してた。・・・リノアに悪いことしたな。

大体、あれはスコールとリノアの問題だったのに・・・俺首突っ込んじまって。」

「・・・いや。」

スコールはそれだけを言うと、黙り込んでしまった。

も何もしゃべらずに、ただ滝を見つめて黙っている。

長く、そして短い沈黙が続いた。

だが、ふとスコールが口を開く。

「・・・班長命令だ。」

「はぁ?」

頓狂な声を上げ、はスコールを見つめた。

急に口を開いたかと思えば、いきなり班長命令。

どういう話の流れになったのか、さっぱりわからない。

だが、スコールは続けた。

「・・・泣くときは1人で泣くな。・・・お前が1人で泣くと調子が狂う。」

はその言葉に目を見開いた。

スコールは目を細めてを見つめ、小さく溜息をつく。

は呆然としたまま、言った。

「・・・バレバレ?」

「わかりやす過ぎだ。」

絶対に泣いてることがバレない自信があったのに。

何故、この男はすぐに何でも見破ってしまうのだろう。

班長だから?リーダーだから?それとも偶然?

否。

それが、この男の優しさの表現だから。

は俯いてクスリと笑った。

髪で顔が見えないように。泣いてるところなんて、恥ずかしくて見せられないから。

「・・・ちぇ・・・隙があったら俺が班長の座を奪ってやろうと思ったのに・・・。

ばーか・・・お前、間違いなくリーダーだよ・・・スコール・・・。」

頬を涙が伝う。けれど、拭う気になんてならなかった。

ただ静かに流れる涙が、何故かとても心地良かったから。

「・・・馬鹿。・・・当たり前だ。」

スコールは呟き、の肩を抱き寄せた。

はスコールに体を預け、そしてクスクスと笑う。

「・・・なんだよ。」

「いや・・・。不気味だなぁーと思ってさ・・・。スコールがこんなに優しいなんてね。」

「・・・悪かったな。」

「・・・誰も悪いなんて言ってねぇだろ?・・・サンキュ・・・。」

嬉しかった。

こんなにスコールが優しくしてくれることが。

無愛想な言い方でも、優しさが溢れ出てきて自分を包み込んでくれる。

それがとても暖かくて、心地良くて、涙が止まらない。

「・・・ありがとう・・・。」



リヴァ。お前の言った意味が、やっとわかったよ。

仲間。・・・これが、そういうことなんだろ?

俺、見落としてたんだな。・・・もう皆が仲間だってこと。

ゼル、セルフィ、キスティス先生、それにリノア。

・・・スコール。

皆が、俺の仲間だってこと、おしえてくれたんだな。

ありがとう、リヴァ。

・・・お前も、俺の仲間だよ。

大切な、友人。そして、大切な仲間だ。

リノアの言ったことも、今ならわかる。

仲間を想う大切さ。気休めも大切だってこと。

気休めが与える勇気の大きさ。頑張ろうって思える気持ち。

俺、リノアに酷いこと言った。

きっと、リノアの言ったことも、俺の言ったことも、どっちも間違っていない。

どっちも正しいからこそ、ぶつかってしまうんだと思う。

でも・・・それを互いにわかり合えるときが来たら、きっと全てがひとつになるんだ。

その気持ちは何倍にも広がって、全てを解決する鍵となる。

最強になれるんだよな、そうしたら。

でも、そこに辿り着くにはまだ皆の気持ちが足りないんだ。

いろんな気持ち、答え、怒り、喜び。

それは・・・これから、ひとつずつ集めていけばいいよな?

そうすれば、きっと真実に辿り着けるよな?





≪主は無力なんかではない。我は、主だからこそ従う。

            主の強い気持ちは、きっといずれ強大な力となる。≫














<続く>

=コメント=
・・・って、うっそぉぉぉぉっ!?(爆笑
またかよ!またガルバディア・ガーデンまで行けなかったのか!(爆笑
いやぁ・・・ティンバーまで行っちゃえばガルバディアは近いと思ったんだけどな・・・(爆
こんなに遠いと思わなかったよ!(爆笑

         BANG!!BANG!!

ぎゃひぃぃぃっ!!(驚愕)
アーヴァイン「・・・覚悟は出来てるっよね〜?」
いやぁぁっ!待って、よして、お願いだから撃たないでぇっ!!!
アーヴァイン「だって、今回必ず出すって言ったじゃんか。」
いや・・・無理でした、ホントすんまへん(反省の色なし)

         BANG!!!

嘘です嘘ですごめんなさい反省してますお願い許して!!(涙
アーヴァイン「僕今ものすごく怒ってるんだからね〜。」
はい・・・わかってます、いやホントごめんなさい・・・。
アーヴァイン「次回出さなかったら・・・わかってるよね?頭と心臓、どっちがいい?」
(撃つ場所を問うてるのか!?(恐怖))はいぃっ!
か、必ずや次回!!

・・・というわけで次回に続きます(爆笑
次回は絶対にガルバディア・ガーデンまで行きます。保証します(笑
保証してくれるのはスコールなので絶対安心(笑

スコール「・・・(俺がいつ保証したんだ・・・。面倒だな・・・。)」


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