俺達は遊びでやってるわけじゃない。






SeeDなんだ。命を懸けてでも戦う、SeeDなんだ。










hat is your hope ?










スコール達を乗せた“森のフクロウアジト列車”は結局ティンバーに戻ってきた。

せっかく頑張った作戦も全て“おじゃん”。水の泡である。

だがまさか大統領が偽者だとはスコール達も思わなかった。

だからある意味プラスマイナスゼロ、とも言えるだろう。


スコール達はアジト列車を下車し、全員そろって溜息をついた。

アジト列車はガルバディア兵に見つかる危険があるため、すぐに去っていった。

それを見送り、が口を開く。

「んで?どうするんだっけ?酒場に行くんだっけか。」

「ああ。」

スコールは少々疲れ気味のようだ。いや、体力的には万全なのだろう。

恐らくは気疲れだ。これだけ振り回されているのだから、当たり前と言えば当たり前だが。

「んじゃ酒場に行くか。」

先導して歩き出すを見て、スコールとリノアは首を傾げた。

「おい、酒場の場所はわかってるのか?」

「まさか。」

スコールは顔を片手で覆った。

「じゃあ・・・どうして先に行こうとする?」

「ま、ここは俺に任せろって。」

はそう言うと、傍にいたガルバディア兵に近寄って行った。

リノアは慌てたようにその姿を見つめ、スコールはただ眉根を寄せている。

はガルバディア兵に営業スマイルで話し掛けた。

「ドーモ兵隊さん。ちょいと道を聞きたいんだけどさー。」

そう遠い距離ではないから会話もしっかり聞こえてくる。

は一体どういうつもりだ?

スコールはただ様子を見るしかなかった。

「なっ・・・!貴様何者だ!!我等ガルバディア兵に逆らう気か!?」

「ぶわーか。このご時世にそんなアホな奴がいるかよボケ。」

逆らう意思ナシと見せながら、の言葉は挑発そのものだ。

スコールとリノアは冷や汗をかいた。

「きっ・・・貴様、俺を愚弄するつもりか!?」

「ふぅん?あんたこそ、俺を愚弄する気?」

「貴様をガルバディア全軍で排除するぞ!!」

「あれー?俺なんかのためにガルバディア全軍が出動してくれんの?嬉しいねぇ。」

「ぐっ・・・」

まるで漫才のようだ。

ガルバディア兵は脅しのつもりで言ったのだろうが、にとっては無意味である。

「ま、そうカリカリすんなよ。これ、なんだかわかるか?」

はそう言うと、ニヤリとしながら何かをガルバディア兵に見せた。

それを見た瞬間、ガルバディア兵の顔色が急激に変化する。

スコール達の位置からでは、が何を見せているのか見えない。

「お前・・・っ、何故様と同じものを!?」

「ほぅ。さっすがだな。下っ端の兵士でも知ってるか。

そう、お前が思ってる通りさ。俺とは訳アリでね。俺に逆らうってことは

に逆らうのとイコールになっちまうぜ?それでもいいならバトル大歓迎だけど。」

ガルバディア兵は言葉を詰まらせ、沈黙した。

ものすごい効果である。が何を持っているのかはわからないが。

は満足そうに笑い、言った。

「酒場ってどこ?放送局に行きたいんだけど。」

「・・・ここを真っ直ぐ行き、階段を下に下りたところだ・・・。」

「はい、ご苦労さん。」

はそう切り上げると、手に持っていた“それ”を懐にしまった。

そしてスコール達を振り返ると、ニッと笑ってピースなんてしてくる。

スコールとリノアは呆れた溜息をついた。

「さ、行こうぜ。」

「待て。・・・今、兵士に見せたのは何だ?」

先に行こうとするの腕を掴み、スコールは問うた。

そして、掴んだの腕の細さにドキリと胸をはずませる。

そう、男ぶってはいても、は正真正銘女なのだ。

見た目からはわからない細さが、握った手に伝わってくる。

は急に沈黙したスコールを不思議そうに見つめ、言った。

「別に。ちょっと今はまだ秘密かな。」

「秘密?」

「ま、そのうち話すことになるだろうさ。それより早く行こうぜ。」

はそう言うと、黙ってスコールを見つめた。

スコールはの腕を掴んだまま硬直し、を見つめる。

何か言葉に出来ない強いものが、から伝わってくる。

殺気?いや、もっと何か違うものが。

スコールはその気に気圧されたように、ゆっくりとの腕を放した。

スコールの手が離れると、は踵を返し歩き出す。

「あっ、待ってよ〜!」

リノアがその後を追い駆ける。

スコールはしばしその場に佇んでいたが、すぐに2人の後を追い駆けた。








「いいカモがいたぜ。へっ田舎モンのくせにあいつなかなかいい物持ってたな。」

階段の下からガルバディア兵達の会話が聞こえる。

スコール達は様子を見て、互いに顔を見合わせた。

「おい・・・いい加減にしとけよ。ただでさえ、ティンバーの奴等は

俺達ガルバディア兵に反抗的なんだからな。」

その言葉にが声を上げる。

「反抗的?そりゃお前らがムカつくからだろーが。」

「!!何者だ!!」

スコールがあっ、と思ったときにはもう遅い。

の攻撃スイッチは、完全に入ってしまった。

「何者か関係あんのかよ、ガルバディアの腰抜けどもが!」

「捕らえろ!!」

がガンブレードを抜いてガルバディア兵に切りかかって行く。

その様子を見て、スコールはただ顔を片手で覆った。

リノアが慌ててスコールに言う。

「ね、ねぇっ!いいの!?ほっといて!!」

「・・・ならあんな奴ら一撃だろ・・・。」

もう既に相手にするのも面倒らしい。

確かに、リノアが再び達に視線を戻したときには戦闘は終わっていた。

皆が恐れるガルバディア兵2人が、の前には呆気なく倒れてしまう。

リノアは驚きを隠せなかった。

「さっさと帰ってに伝えな。テメェの命も後少しだぜ、ってな!」

が叫ぶと同時に兵士達は慌てて逃げていった。

そのとき、兵士が何かを落としていった。はそれを拾い上げる。

「なんだこりゃ。」

「何を落としていったんだ?あいつら。」

「カード。」

は言うと、指でカードをはじいてスコールに渡した。

スコールは上手くそれをキャッチし、溜息をつく。

3人は酒場に入った。

その瞬間に誰かの愚痴が聞こえてくる。

どうやらティンバーに来た旅人のようだ。

「へッ・・・どいつもこいつも・・・俺はただ、ドールから旅行に来ただけだってのに・・・

大統領が帰るまで列車は動かねぇし・・・ホテルもお偉方の関係者が使うから

一般の客はお断りだと〜? ガルバディア兵には、因縁付けられるし・・・

俺の大事なカードを持ってかれるし・・・・ロクな事がねぇ・・・いつもそうさ・・・あいつらは。」

はスコールの脇を小突く。

「なぁ、そのカード、あの人のじゃねぇか?」

「・・・そうみたいだな。」

その間にも、旅人の愚痴は続く。

「他人の物は自分の物。力さえありゃ、何でも手に入ると思ってやがる。

この街でさえ、力で手に入れたんだ。そりゃ〜、金でもカードでも何でも手に入れるさ。

そう、そうなんだよ! 大体・・・大統領を拉致しようなんて企みやがったレジスタンスが悪い!

あいつらが騒ぎを起こしたせいで列車は止められるし・・・ガルバディア兵がウロウロし出して

・・・・この様だ!失敗するならやるなってんだ!

よそから来た一般市民に迷惑掛かるのがわからねえのか〜!」

相当酔っ払っているようだ。リノアが悔しげに唇を噛み締める。

がリノアに声を掛けようとしたとき、別の客が旅人に言った。

「わかってないのは、あんたの方だ!

レジスタンスは、ティンバーの未来のためにクソ大統領の勝手な行動を阻止しようとしてるんだ!

あんなクズ大統領が頭だからガルバディア兵もクズ野郎なんだよ!

レジスタンスとは関係ない!」

はっきりとした声。リノアを見ると、少し驚いた顔をしている。

「よかったな。」

はリノアの耳元で囁いた。


はスコールに言った。

「さっきのカード、あの人に返してあそこどいてもらえばいいんじゃねぇか?

あの人が座り込んでるのって、裏通りへ行く扉の前だろ?」

「ああ。・・・やってみるか。」

スコールは旅人に近寄り、言った。

「そこをどいて欲しいんだが・・・」

「こんな若造にまで邪魔扱いされるとはな・・・マスターもっと酒くれ、酒!」

「あっか〜んっ。スコールに任せたのが間違いだったかぁー?」

のふざけた声が聞こえた。スコールは眉を寄せる。

ちゃんとこの男をどかせればいいんだろ?

心の中で呟く。

それから、再度旅人に話し掛けた。

「・・・・これは、あんたのカードじゃないのか?」

先ほど表で拾ったカード。それを旅人に見せると、急に態度が変わった。

「ん?・・・あっ、これは! 何でお前が持ってるんだ?!」

「・・・表で拾ったんだ。」

「本当に?わざわざ、ありがとよ。 気分がいいから、そのカードは、あんたにやる!

しかも・・・このカードも付けてやろう!さぁて 邪魔者は退散退散と。

お〜い、そこのマスターさんよ。自分で立てねぇからよ・・・ちょっくら、引っ張ってよ。

ウィ〜〜ヒック・・・もう・・・飲めねぇ・・・」

マスターが旅人に手を貸し、やっと扉の前からどかすことに成功した。

スコールがとリノアを振り返ると、2人ともガッツポーズを見せている。

スコールは肩を竦めながら溜息をつき、2人を呼ぶ。

「行くぞ。」

「了解、はーんちょ。」

3人は、裏通りへと向かった。








「お、街頭TVじゃん。」

放送局前に、巨大な街頭TVがある。スコール達は立ち止まり、TVを見つめた。

すると突然モニターにスイッチが入り、たくさんの文字が映し出された。

『brinGmeBAcktherelaMaLiveherelwilLeverlerTYouforGetabOutme

brinGmeBAcktherelaMaLiveherelwilLneverletYouforGetabOutme』

気味の悪い文字の羅列だ。

何かの言葉のようだが、大文字と小文字が混ざり合っているため読み取ることは出来ない。

「これ、気持ち悪い。 何なの?」

「このノイズがほとんどの周波数帯で流されているんだ。

これを何とかしないと電波放送なんて出来ないはずだ。」

「なるほどな。」

と、そこにワッツがやってきた。少し慌てた様子だ。

「大統領がスタジオ入りしたッス。警備兵がもの凄く増えてるからもう突入は無理ッス!」

それだけを伝えると、ワッツはまたどこかへ行ってしまった。

恐らく“情報収集”だろう。役に立つのか立たないのか、微妙な奴である。

リノアは少し考え込み、言った。

「突入は無理かあ・・・ね、作戦変更しよう!大統領、帰っちゃえば警備の兵士、

ほとんどいなくなるじゃない? だから、それから私達の放送をするの。

ちょっとインパクト減るけど仕方ないよね? まともに突入してもやられちゃうよね?」

「俺達の事は気にするな。俺達はあんたの決定に従ってあんたの敵と戦う。

それが俺達の仕事なんだ。」

スコールが言い、が頷いた。

「俺達はSeeDだからな。覚悟くらい出来てるさ。」

そんな2人を見て、リノアが不服そうに頬を膨らませた。

そして、言う。

「カッコ悪ぅ〜 決定に従う? それが仕事?

命令に従うだけなんてと〜っても楽な人生よね。」

その言葉にがむっとして言い返す。

「別に何とでも言えよ。リノアは俺達を使って最高の結果を出してくれればいい。

けど言わせてもらうぜ、リノアに出来るとは思えない。」

「な、何よ。何かあるなら言いなさいよ。」

リノアも負けじと言い返すが、それに答えたのはではなくスコールだった。

よりも一歩前に出てリノアを睨み付け、今までたまってたものを吐き出すように言う。

それには、さすがのも驚いた。

「あんた達は何処まで本気なんだ?3人で床に座って作戦会議?

その作戦もすぐに変更だって?しかも、俺達の意見がないと決められないんだろ?

そんな組織に使われるこっちの身にもなってくれよ。」

確かにそれはも思っていたことだ。

自分達は子供の遊びに付き合っている暇はない。

いくら雇い主、クライアントだとしても、こんなにふざけた任務など願い下げたいくらいだ。

自分達はもっと上を目指せる。それだけの力がある。

だからこそ苛立たしい。腹が立つ。

けれど・・・

「スコール言い過ぎ。」

は言った。

自分達はSeeD。どんなに小さな依頼でも、命じられたら従うのがプロ。

スコールはに言われ、少し罰が悪そうに視線をさまよわせた。

「・・・悪かったな。少し言い過ぎた。」

リノアは何も言わない。だが、すぐに彼女は顔を上げて口を開いた。

「な〜んか。」

その一言が、やけに響いた。

「なんか、私、勘違いしてた。SeeDが来てくれたら何もかも上手く行くと思ってた。

でも、そんなに簡単じゃないよね。みんなは雇われただけだもんね。

・・・仲間って訳にはいかないよね。」

はじっとリノアを見つめ、すぐに視線をそらす。

そう、仲間ではない。依頼主と、雇われ側。それだけの話なのだ。

仕事、任務に情は必要ない。

だから。

「えっと、作戦は中止します。一時解散にしましょう。」

リノアは言い、今来た道を戻ろうとした。

だが、すぐに立ち止まり、振り返る。

その顔は、行き場をなくした迷子のような顔だった。

「あのね・・・やっぱり子供の遊びみたいに見えちゃう?

でも、本気なんだよ。痛いくらい・・・・本気なんだよ。」

痛みを訴えかけるようにリノアは言った。

そしてそのまま、走って行ってしまった。

「リノア!」

は追い駆けようとして、けれどすぐに足を止めた。

正しいのは自分達。リノア達は少し自分勝手過ぎるのだ。

覚悟を知らない。戦場というのは、どこにでも存在する。

その戦場でいつ死ぬかもしれないという覚悟を知らない。

正しいのは自分達。間違っていないはず。

「・・・追い駆けたいなら追い駆けても良いんだぞ。」

スコールは言う。

彼も、居心地の悪さを感じているのだろう。

はスコールを見つめ、小さく頭を振った。

「いや、いい。・・・俺達は間違ってない、だろ?」

「・・・ああ。」

いや、本当はどうなのかわからなくなって、混乱しかけている。

間違っていない。自分達はSeeDなのだから。

・・・SeeDなのだから?

SeeDなら、何もかも正しいと言い切れるのだろうか。

いろんなことが頭の中で混ざり合って、混乱、する。

リノアの訴えかける目。リノアの痛みを知らない自分達。

覚悟。戦場。戦い。恐怖。不安。仲間。

そして・・・戦いに勝利したときの、快感と喜び。

そんな全てを知っている自分達は・・・間違っているのだろうか?

「スコール!」

「スコール〜!〜!!」

そこに、ゼルとセルフィがやって来た。これでSeeD組は全員集合だ。

「ねぇねぇ、今そこでリノアとすれ違ったけど、いいの〜?」

「・・・問題ないって。大丈夫さ。」

セルフィには答え、沈黙した。

きっと大丈夫。リノアはこんなことで傷付くような奴じゃない。

すぐにいつものようにふざけながら、笑ってくれる。・・・きっと。





そのとき、突然モニターが光り出した。

徐々にノイズも消えていっている。

「放送が始まるのか?」

ノイズが消えたとき、モニターには映像が映し出された。

そこではスタッフが会見の準備をして走り回っていて、やがてアナウンサーが

マイクに向かってしゃべり出す。

『・・・スト、テスト・・・テスト、テスト・・・・。』

アナウンサーはハッとしてカメラを見つめた。そして叫び出す。

『ああっ!せ、世界の皆さん! 私の姿が見えますか!?私の声が聞こえますか!?

感激です! これはオンラインではありません! 電波による放送です!

実に17年ぶりに再開された電波による放送なのです!』

「いやどうでもいいから、オッサン落ち着けよ。」

の突っ込みはスルーすることにする。

『申し訳ありません。興奮のあまり我を忘れてしまいました。

本日はガルバディアの輝ける星ビンザー・デリング終身大統領による

世界の皆様への報告を放送します。では、デリング終身大統領、どうぞ。』

アナウンサーはそう言うと、その場所を離れた。それと同時にデリング大統領が現れる。

デリング大統領は威厳たっぷりの動作でマイクの前に立ち、話し出した。

『この電波を受け取っている世界の国民諸君。

私、ガルバディア終身大統領ビンザー・デリングはここに提案する。

世界中のすべての争いを終わらせる用意が我々にある。』

「やっぱり! 世界の皆さん平和に暮らそう宣言なんだ。」

「待てよセルフィ。まだ続きがある。」

セルフィが笑顔になるが、が遮った。

デリング大統領の話は続く。

『しかし、遺憾ながら、我々ガルバディアと各国の間には

解決を必要とする幾つかの些細な問題がある事も事実。

私はこの問題を解決するための対話を各国指導者とするつもりだ。

その対話に私の代理として参加する大使を各国指導者及び国民諸君に紹介したい。』

「お〜い! 大使を紹介すんのにこの騒ぎかよ!」

「いっぺん死ね、ビンザー・デリング!」

ゼルとが騒ぎ立てた。息はぴったりである。

だが、次の瞬間この場にいる全員が硬直することになる。

デリング大統領は言った。

『彼女は魔女・・・』

「・・・・魔女?」

スコールが眉を寄せ、全員の目がモニターに釘付けになる。

魔女という言葉の意味。それを考えようとしたその時、モニターに見知った男が

大統領に向かっていくのが見えたのだ。

「あ!」

セルフィが目を見開く。

「サイファー!」

サイファーは攻撃してくるガルバディア兵を難なく倒し、大統領に剣を向けた。

そして、もう1人の見知った人物がサイファーの前に立つ。

「えぇっ!」

セルフィの驚く声。

「キスティス先生!?」

とゼルが顔を見合わせ、すぐにモニターに視線を戻す。

キスティスはガルバディアの兵士達に無闇に近付かぬよう叫んでいる。

突然の出来事にスコール達は呆然とするだけだ。

『彼を刺激するだけなのがわからないの!?』

キスティスの声が聞こえてくる。

はスコールに問う。

「どうするんだ!?」

だがスコールはモニターを見つめたまま冷たい返事を返した。

「俺達はフクロウの連中に雇われてるんだ。俺達には関係ない。」

「確かにそうだろうさ、けど!」

が叫んだその時、キスティスがカメラに向かって話し始めた。

全員がモニターを見つめ、驚きの表情を浮かべている。

『ティンバー班、見てる?ここへ来てちょうだい!許可は得ています! 手を貸して!』

ティンバー班。間違いなく自分達のことだ。

自分達の助けが必要だと言う。許可も得られている。

「スコール!」

「はんちょ!」

「班長!!」

3人はスコールを見つめ、スコールの返事を待った。

スコールは一瞬だけ躊躇った表情を見せたが、すぐに3人を見つめて頷く。

「行くぞ!!」

「「「了解!!!」」」

4人は駆け出す。放送局に向かって。





放送局に飛び込んだスコール達は、無残な光景を目にする。

ガルバディア兵達が何人も倒れ、その中心でサイファーが大統領を羽交い締めにしている。

しかも、大統領の首筋にはサイファーのガンブレードが押し付けられているではないか。

キスティスはスコール達の姿を見ると少々安堵したように表情を緩めた。

だがすぐに真剣な顔に戻る。

「彼の身柄を拘束します!」

スコール達はサイファーからある程度距離を取り、サイファーを見つめた。

が言う。

「おいおい、何してんだあんた。」

「見りゃわかるだろうが!さあ、こいつをどうする計画なんだ?」

「計画?そうか、 リノアと知り合いだったな。だから来たのか?あんた。

リノアのためにここまでするのか。かー、泣けるねぇ。」

「黙れクソアマが!!!」

サイファーが吠える。は溜息をついて頭を抱え、スコールにバトンタッチした。

スコールは眉を寄せてを見つめる。どういうことだ、と目が語っているのがわかる。

「・・・ワリ。俺がこいつ説得しようとしても、挑発させるだけだ。俺の性分なんだよな・・・。

ここはスコールの方が妥当だと思う。交代してくれ。」

スコールは納得したように頷き、一歩前に出た。

「サイファー、お前リノアのためにここまで来たのか?」

「うるせぇっ!!」

スコールが試しに話し掛けてみたが、サイファーは随分と興奮しているようだ。

下手に話し掛ければいきり立って大統領を殺しかねない。

その時、ゼルが言った。

「わかったぜ!! お前はリノアの」

「チキン野郎!しゃべるんじゃねえ!」

余計なことを言うからこうだ。は溜息をついた。

キスティスが言う。

「彼は懲罰室を脱走したの。何人にもケガを負わせてね。」

「この大馬鹿野郎!」

・・・まずい。このままの流れで行くと、何やらゼルが余計なことを言いそうだ。

はそっとゼルに近寄り、やめろ、と囁いた。

「(ゼル、頼むから。) 黙ってろ。」

スコールもゼルに言う。だが、上手く行ってはくれなかった。

「先生、わかったぜ!この馬鹿野郎をガーデンに連れ戻すんだな!」

「やめろ! 言うな!」

スコールが叫んだが、もう後の祭だ。

言ってしまったことは取り消せない。ゼルはスコールに怒鳴られてやっと気付いた。

自分が重大なことを言ってしまった、ということに。

「なるほど・・・君達はガーデンの連中か。私の身に何かあったらガルバディア軍は

総力を挙げてガーデンを潰しに掛かるぞ。さあ、放してもらおうか。」

デリング大統領がニヤリと笑う。ゼルは真っ青になって一歩後退りした。

サイファーが言う。

「面倒な事になっちまったぜ。ん?誰のせいだあ?後始末は任せたぞ!先生と班長さんよ!」

サイファーは大統領を拘束したまま、放送局を出ようと歩き出した。

大統領を放す気配は全くない。

サイファーが隣の部屋に姿を消し、スコール達はその後を追った。





「・・・・可哀想な少年。」

サイファーは驚いて足を止め、手の力を緩めた。

その隙に大統領が逃げ出す。けれど、サイファーはそれを追い駆けない。

突然空間が歪み、そこから1人の女性が現れたのだ。

漆黒の闇を思わせる黒い服をまとい、不気味な雰囲気をかもし出す女性。

彼女はサイファーを見つめ、優しく誘うように語り掛けた。

そう、彼女こそが魔女である。

「俺に近づくな!」

「混乱している可哀想な少年。さあ、行くの? 退くの?お前は決めなくてはならない。」

魔女はサイファーにゆっくりと歩み寄る。

だがサイファーはガンブレードを振り回し、一歩後退った。

「来るな!」

「お前の中の少年は行けと命じている。お前の中の大人は退けと命じている。

どちらが正しいのかお前にはわからない。助けが欲しいでしょう?

この窮地から救い出して欲しいでしょう?」

「黙れ!」

「助けを求める事は恥ではありません。お前はただの少年なのだから。」

「俺は・・・・俺を少年と言うな。」

サイファーはだんだんと魔女の言葉に吸い込まれて行く。

「もう少年ではいたくない?」

「俺は少年じゃない!」

「もう戻れない場所へ。さあ、少年時代に別れを。」

優しく魔女はサイファーの手を取り、それとともにサイファーはガクリと脱力した。

その瞬間、スコール達が駆け付ける。

サイファーは虚ろな目で、スコール達に手を振った。

いや、違う。目はスコール達を向いていても、本当はもっとその先を見つめている。

恐らくは、少年であった自分の幻影を。

少年であった自分に、別れを告げている。

サイファーはゆっくりとした動きで魔女の元へ近付き、ニヤリと微笑んだ。

「サイファー!!」

が叫ぶが、その声も聞こえてはいない。

魔女はサイファーを優しく誘い、不気味な空間へと消えていった。








気付いた時には、魔女とサイファーの姿はどこにもなかった。

夢?否、夢ではない。

そのとき、リノアがやってきた。

「こっちこっち!」

そう言ってから、その場にいるのがスコール達だけだということに驚く。

そして、少し気まずそうに視線をさまよわせてから、尋ねた。

「・・・ね、サイファーは?」

「わからない。」

スコールが答えると、リノアは俯いた。

「あいつなら、きっと大丈夫だよね。」

その言葉から、リノアはサイファーを助けるためにここに来たのだと理解する。

は、そのことにどうしようもない怒りを感じていた。

確かにリノアを突き放したのは自分達。けれど、自分達の雇い主はリノアなのだ。

リノアは雇ったSeeD達を頼らず、知り合いのサイファーを頼った。

そのことが、どうしようもなく腹立たしい。

「・・・勝手にしろよ。」

は呟いたが、その呟きは小さ過ぎて、耳にした者はいなかった。













<続く>

=コメント=
って、おい待てやこらぁー!!(爆笑
全然ガルバディアガーデンまで届いてねぇじゃんよ!!(爆笑
いやぁ・・・放送局までがこんなに長いなんて思わなかったよ!
いやいや、次回こそガルバディアガーデンまで行きますとも。
頑張りますともよ(笑

    BANG!!

ひぎゃぁっ!!
アーヴァイン「ねぇねぇー、僕の出番今回あるって聞いてたんだけどー?」
うっ・・・ごめんね、アービン・・・!だってそこまで今回書いちゃうと無茶苦茶長くなっちゃうんだも・・・。
アーヴァイン「・・・次回こそ出さないと、本当に怒って撃っちゃうからねー?」
は・・・、承知致しております・・・!!!
ということで、また次回!! [PR]動画