お姫様、ねぇ。





随分とおてんばなお姫様だな、こりゃ。










hat is your hope ?










「よっしゃー、ティンバーに到着ー。」

が伸びをしながら言う。

スコール達は列車を降り、ホームに佇んだ。

ティンバーは森に囲まれた町である。そのためだろうか、空気も澄んでいるようだ。

だがふと町を見回すと、あらゆるところにガルバディア兵がいる。

見ていて気分が良くなるものではない。

は空を仰いで伸びをしていたが、ふと気配を感じ視線を前へと移す。

そこには、頭にバンダナをした若者が立っている。その顔は少し緊張した面差しだ。

はじっと若者と見つめ合っていたが、がふっと微笑むと若者も微笑んだ。

若者が言う。

「いや〜。ティンバーの森も変わったッスよね。」

スコール達は目を細めた。彼が依頼者だ。

スコールはと顔を合わせる。確認しているのだろう。

は小さく頷き、合言葉を促した。

「まだフクロウはいますよ。」

スコールが言ったとともに、若者の顔から緊張が解ける。

幾分かやわらかい表情になって、若者が言った。

「ようこそティンバーへ・・・ッス。ついて来てくださいッス。」

スコール達は若者に続く。

すぐ近くの別のホームへ案内され、そこに来た列車に乗り込んだ。



列車の中は普通の列車よりも少し寂れている感じだった。

列車に入ったとほぼ同時にまた別の若者が顔を覗かせる。

「あんた達がSeeDか。」

「俺は班長のスコール。右にいるのがゼルとセルフィ、左がだ。」

「よろしくな。俺は森のフクロウのリーダー、ゾーンってんだ。」

ゾーンはスコールに手を差し出し握手を求めたが、スコールは無視。

はそんなスコールの様子に呆れた溜息をつき、スコールの代わりに握手に応えた。

「俺達は何をすればいい?」

すぐさま任務の話に入ろうとするスコールを宥めてゾーンは言う。

「まあ、焦るなって。俺達もメンバー紹介だ。 ええと、ワッツにはもう会ったんだよな。」

ワッツ。先ほどの若者のことだろう。

その証拠に先ほどの若者を見ると小さく会釈した。

ゾーンは腕を組んで考え込む素振りを見せる。

「それじゃ、後はウチの姫様か。」

「お姫様はお昼寝タイムっス。」

お姫様。そのお姫様とやらが誰だか知らないが、現在お休み中らしい。

「しょうがねえなあ。悪いんだけど、スコールさあ、 ウチの姫様、呼びに行ってくれ。

そこの階段を上がって一番奥にある部屋だ。」

そのゾーンの言葉を聞き、スコールはあからさまに眉をしかめた。

「・・・俺達は雑用のために雇われたのか? ん?」

「お、怒ったんですか!?」

一気に不機嫌モードに入ってしまったスコール。

ゼルとセルフィは苦笑してその様子を見つめている。

「俺達は使いっ走りじゃない。SeeD・・・特殊部隊なん」

「はいはい俺が行くからスコールは少しクールダウンしようなー?」

スコールの言葉を遮ってが言った。

スコールは嫌そうにを見つめる。少し睨んでいるようだ。

だがは物怖じせずにスコールに囁いた。

「(俺達はプロなんだろ?だったらどんな雑用でも雇い主に従うべきだ。

腹が立つのはわかる。だが見たトコこいつら素人だ。素人に苛立ってたらキリないぜ)」

スコールはしばしを見つめていたが、やがて溜息とともに視線を外して腕を組んだ。

はゾーンに向き直ると忠告のように言った。

「俺達の雇い主はあんた達だ。どんな仕事を与えてくれてもいい。

だがナメてもらっちゃこっちとしても困るんだ。こんな仕事はこれっきりにしてくれよ。」

優しく言ったつもりだが、無意識のうちに睨んでしまっていたらしい。

ゾーンは突然「腹が痛い」と言い出し(あからさまに仮病とわかる演技だ)、

ワッツは「作戦説明の準備」と言い出した(何の準備をするか疑問だ)。

は呆れながらも、仕方なく奥の部屋へ向かった。



奥の部屋に行くと、まだ幼い顔立ちの少女がベッドで眠っていた。

は少し目を丸くして寝ている少女の顔を覗き込む。

「んん?・・・この子は・・・」

見覚えがある。服装は違うが、この少女に間違いない。

確かSeeD就任パーティのとき・・・

が起こそうと手を伸ばしたとき、少女はに気付いたのか目を覚ました。

少女はぼんやりとを見つめ、それから驚いたように目を見開く。

「あなた・・・あの時の!パーティ会場で一緒に踊った・・・!」

「ごきげんよう、お嬢さん。また会ったな。」

にっこりと笑いながら少女に言う。

「もしかしてあなたが、SeeDなの!?」

「俺は。班長はスコールって奴で、向こうにいる。その他に2人来てるよ。」

少女は心底嬉しそうに瞳を輝かせ、急にベッドから起き上がってに抱き付いた。

はその衝撃で倒れそうになるが、踏み止まりながら少女の肩を持った。

「やった〜! SeeDが来てくれた〜!」

「んな大袈裟な。」

「だって嬉しいんだもん。ずっとガーデンに依頼してたけど全然来てくれなかったんだから。

やっぱ直接シドさんに話して良かった〜!」

本当に嬉しそうに語る少女。そんな彼女を見て、もかすかに微笑んだ。

「サイファー、知ってる?」

「あー・・・まぁ。」

「私、アイツと知り合いなの。で、シドさんを紹介してもらったの。シドさん、いい人だよね。

ウチらみたいな貧乏グループのとこにSeeDは来てくれないって思ってたんだ。

でも、シドさんに事情話したらす〜ぐOKだったよ。アイツにも感謝しなくちゃ。

SeeDが来てくれたんだから、今まで出来なかったいろんな作戦選り取りミドリっ!」

随分と興奮しているようだ。は苦笑を浮かべた。

「んじゃ俺は皆のところへ戻るよ。」

が言うと、少女はにっこりと微笑んで頷いた。

「よし、行こっか! ね、。アイツは来てないの?」

「サイファーか?アイツはSeeDじゃない。」

言うと、少し残念そうに少女は「そっか」と呟いた。

知り合いということもあるし、やはりサイファーが来ていないのが残念なのだろう。

だがSeeD試験でサイファーが受からなかったのは自業自得だし、当たり前だ。

「あ、私の名前はリノア。よろしくね、。SeeDはダンスも上手なんだね。」

リノアが言った。

「ダンスパーティーに紛れ込んでターゲットに近付く、なんて任務もあるかもだろ?

任務に役立つ技術なら何でも身に付けておかねぇとな。

スコール班長に言わせれば「それがSeeDだ」って言うだろうぜ。」

「へぇー。面白い人ね、そのスコールって。」

おいおい、スコール。あんた面白いなんて言われてるぜ。

本人が聞いたら間違いなく眉間にシワが寄るだろう。

そんなスコールを想像して、はつい噴き出してしまった。

「それじゃ行こう。」

はリノアを連れて皆の元へ戻ってきた。

以前に一度ダンスを踊った仲ということもあり、とリノアはすぐに打ち解けた。

はリノアをスコール達の前に立たせ、言う。

「リノア、この無愛想な奴がスコール。あとはゼルとセルフィな。」

「・・・。」

あ、また眉間にシワが増えた。

無愛想と言われて呆れたのだろうか。いや、でも超的確な事実だし。

、そんなこと言ったらスコールに失礼だよ。」

リノアはそう言いながらも笑っている。

「私はリノア。よろしく、スコール、ゼル、セルフィ。」

やはりリノアとも握手をしないスコール。

リノアは全く気にしていないのか、ゼル、セルフィと握手をして微笑んだ。

「それじゃ、作戦の話をするからこっちの部屋に入って。」

リノアに案内されて、会議室のような一室に通される。

そこには既にゾーンとワッツがいて、作戦の準備をしていたようだ。

「ま、適当な場所に立ってくれ。」

ゾーンが言う。「適当な場所に座ってくれ」じゃなくて、「立ってくれ」。

その言葉が妙に違和感がある。

とりあえずスコール達は思い思いの場所に立ち、ゾーンとワッツを見つめた。

「はっきり言って今回の俺達の計画はかなり本格派だ。

俺達『森のフクロウ』の名はティンバーの独立闘争の最終ページに記される事になる!

ワクワクすんだろ?ガルバディアの極秘情報を手に入れたのが始まりだった。」

「俺が手に入れたッス!」

「ガルバディアの超VIPがこのティンバーにやってくる情報だ。」

「ちょ〜ぶいあいぴ〜!!」

「そいつの名はガルバディア大統領にして希代の極悪人ビンザー・デリング!!」

「ビンザー・デリング極悪人!! ガルバディア国民にも評判悪いッス。

大統領なんて名ばかりの独裁者ッス!」

随分とダラダラと続いたゾーンとワッツの説明だったが、理解は出来た。

ただスコールとに言わせてみれば、「無駄な言葉が多過ぎる」だろう。

作戦の説明はより早く簡潔に、そしてわかりやすくしなければならない。

リノアが言った。

「そのデリング大統領はガルバディア首都から特別列車に乗ってティンバーに来るの。」

「ほう。」

相槌を打ったのはだ。

「俺達の作戦はその列車を・・・」

「ロケットランチャーで粉々に爆破するのね。」

「いやガトリングガンで粉砕しようぜ。」

ゾーンの説明を遮って言ったのはセルフィと

その恐ろしい発言に一同は固まる。

しばしの沈黙の後、やっとゾーンが口を開いた。

「そ、そこまではちょっと・・・」

「もう、なんなんだよっ! もっと具体的に話せよ!」

ゼルが吠え、リノアが苦笑しながら目の前にある列車模型を指しながら言った。

「説明するね。私達が今いるのがアジト列車。

アジト列車は大統領車両に似せて改造したダミー列車と繋がってるの。

私達はアジト列車の上から大統領車両を挟んでる護衛車両に飛び移る。

そこから作戦の開始よ。

この作戦の最終目的は、ダミー列車と大統領車両をすり替えて

アジト列車で抜き去り列車ごとデリング大統領を拉致すること!

特別列車がティンバーに着くまでの二つの切り替えポイントで作戦を展開するわ。」

リノアが模型を動かして説明する。

注意しなければならないセンサーがあることや、車両の切り離しのやり方。

車両の切り離しにはコード入力が必要で、それはスコールが行うことになった。

とにかく、この作戦には迅速な行動が求められるということがわかる。

「説明、終わり!理解してくれた?」

首を傾げてスコールにリノアは尋ねる。スコールは小さく頷いて「わかった」と口にする。

「じゃあ、実行部隊を決めよう!」

リノアが意気込んでスコール達SeeDグループと、森のフクロウグループを見渡した。

すると、森のフクロウグループ側は無言の棄権ということになった。

何故ならゾーンは再び仮病を使い、ワッツは情報収集だと言い出したからだ。

本当に真剣にやっているレジスタンスなのか見てて怪しくさえ思えてくる。

リノアでさえその姿に呆れている。

と、そのとき列車が動き出した。とうとう作戦の開始だ。

「動き出したみたい・・・先に様子を見てくるね。

あ、準備が出来たらワッツに言って。じゃ、早めによろしくね。」

そう言い、リノアは会議室を出て行った。

はそんなリノアの後姿を見て、呟く。

「・・・ま、それなりの意気込みは感じられたからやるだけやってみるけどさ。」

スコールはを一瞥し、小さく溜息をついた。






結局実行部隊はスコール達SeeDとリノアに決まった。

ゾーンもワッツも情けない。がそう思っていたのは秘密である。

5人は列車の屋根の上に上がり、前方に見える列車を見つめた。

あれが護衛車両と大統領車両のある特別列車だ。

うまく護衛車両に乗り移り、少しでも時間のロスを防ぎたいところ。

「車両の切り離しが2回あることはさっき話したよね。

その切り離しも含めて作戦終了まで今から5分!

私達のシュミレーションでは3分で作戦完了だったわ。出来るはずよ。」

リノアやゼル、セルフィ達が護衛車両に飛び移って行く。

残されたとスコールは顔を見合わせ、ひとつ頷いた。

「行くぞ。」

「了解、はーんちょっ!」

2人は一気に駆け出し、護衛車両へと飛び移った。

リノア達は既にコード入力のスタンバイをしている。

「スコール、いい?センサーは達が見てるから、コード入力を頼むわ。」

スコールは無言で頷き、コード入力のスタンバイをする。

達は神経を研ぎ澄ませ、センサーに注意を払った。

「コードは3124よ!」








無事に2回の切り離し作業が終わり、森のフクロウ始めスコール達は

大統領車両のみを拉致することに成功した。

リノア達のシュミレーションでは3分で出来たということだったが、

スコール達SeeDの手にかかれば2分程度のもの。簡単な作戦だった。

スコール達はアジト車両に戻り、一度準備を整えることにした。

これからデリング大統領との話し合いが行われるのだ。

少し気持ちを落ち着けるのも悪くない。

「いよいよ・・・待ちに待ったビンザーとのご対面だな。」

ゾーンが呟く。その視線の先にあるのは大統領車両の扉だ。

やはりこういうときには真剣になるのだろうか。

「じゃあ・・・」

リノアがゾーンとワッツを見る。

すると2人は何か嫌な空気を感じ取ったのか、

「情報収集なら任せてくれッス!」

「イテテテテ。」

肝心なときに役に立ってくれないこの2人に、は呆れた溜息をついた。

せっかく真剣になったのかと見直しかけたのに。やはり駄目か。

リノアは溜息混じりにスコール達を見つめ、言った。

「準備が整い次第、大統領と『話し合い』を始めます!」

「話し合いで済みゃいいけどな。」

がガンブレードの用意をしながら言う。

相手は大統領だ。こんな小さなレジスタンスの言うことに耳を貸すわけがない。

はそれをわかっているこそ戦闘の準備を整えているのだ。

それはスコールやゼル達とて同じことである。

「準備OK?」

リノアが尋ねる。スコールは仲間達の様子を見てからはっきりと言った。

「OKだ。」

リノアとスコール達SeeDは、少し緊張した面差しで大統領車両へと踏み込んだ。







大統領車両内は豪華な造りになっていて、さすが大統領の乗る車両だと思った。

「・・・デリング大統領!」

リノアが叫ぶ。デリング大統領はピクリとも動かない。

拉致されたことで諦めがついたのか、それとも何か裏の手を持っているのだろうか。

リノアはゆっくりとデリング大統領に近付き、言った。

「無駄な抵抗を・・・しなければ、危害は・・・加えないわ。」

「抵抗をしたら・・・どうなると言うのかね・・・お嬢さん。」

「・・・!!」

デリング大統領の声。だがリノアは驚愕の表情を見せ、数歩後退った。

その様子にが眉をひそめる。何かが変だ。

「どうした?」

スコールが問うが、リノアは答えられない。

デリングを見つめたまま硬直している。

デリングがゆっくりと立ち上がった。

「残念だったな・・・私は大統領ではない。世間で言うところの影武者という奴だ。

ティンバーにはレジスタンスが多いと専らの噂だったが・・・

軽く偽の情報を流しただけであっさり引っかかるとは・・・

程度の低いレジスタンスしかいないようだな・・・。」

「程度の・・・低い・・・?!」

リノアの震える声。は咄嗟に腰のガンブレードに手を伸ばす。

「ずっと座り続けるのも疲れたな・・・お嬢サ・・・ン・・・」

偽デリングの声が変化する。気味悪い無機質な声だ。

「無駄な抵抗をしタラ、どう料理スルつもりだったノカ・・・教えテくれナイか・・・」

はガンブレードを腰から抜き取り、偽デリングとリノアの間に割り込む。

リノアを背に庇いながらガンブレードを構え、偽デリングを睨みつけた。

「程度ノ低い割・・・ニ・・・面白イ事ヲするジャないカ・・・!!

アノ方を侮辱スル奴は、許サん!!!」

「あの方ってのが誰だか知らねぇけど、俺達SeeDを相手にするなんて馬鹿な奴だな。」

の挑発も聞こえていたのかいないのか。

偽デリングはガクガクと不気味な動きをしながら襲いかかってきた。

スコール達も前に飛び出し、偽デリングと対峙する。

とスコールが何度か切り付け、ゼルとセルフィはそれを魔法でサポート。

「罠ニ・・・・カカッタ・・・ナ。オモ・・・シロイ・・・!オモシロイ・・・ゾ!」

もはや人間の話す声とは思えない声。

無機質で機械的な、それでいて不気味な声には眉をしかめる。

「テメーは気味悪ィんだよっ、こんの偽者野郎がっ!!!」

が渾身の力で切り付けると、呆気ないほどに偽デリングは倒れた。

スコール達は偽デリングを囲み、緊張を解かずに様子を見る。

すると突然偽デリングの体が痙攣のようにガクガクと震えだし、

その体がみるみるうちに溶けて行くではないか。

スコール達は再び戦闘態勢に入り、偽デリングを見つめる。

そして現れたのは、全く別の異形のモンスターだった。

ゾンビのような顔に歪んだ体。全体が肌色なのが生々しくて気持ち悪い。

「化け物か・・・。」

スコールが眉を寄せて呟く。

は口笛を吹いた。

「ほー、ナムタル・ウトクとは随分な強敵を用意して来たじゃねぇか。」

「ナムタル?」

「こいつの名前さ。グニャグニャした腕で攻撃してくる面倒な奴なんだけどな、

こいつには最高の弱点がある。大丈夫、問題ねぇよ。」

がニヤリと笑いながら言った。

スコールはとりあえず攻撃を仕掛けてみた。

ガンブレードがナムタルの体に食い込み、嫌な感覚が腕に伝わってくる。

なるほど。防御力もそれなりに高いし、何より強い攻撃力が厄介だ。

だがはこいつには弱点があると言った。

それは一体なんなのだろう?

「さてスコール、ここで問題です。」

「・・・なんだこんな時に。」

スコールは呆れてを見つめる。は言った。

「こいつは何タイプのモンスターでしょう?」

「・・・アンデットタイプ。」

「Yes、その通り。つーまり、こいつには回復系の魔法や道具が効くってわけよ。」

がニヤリと笑う。

スコールは目を細めて言った。

「・・・フェニックスの尾か。」

「大正解。」

スコールは即座にフェニックスの尾を取り出し、ナムタルに投げ付けた。

フェニックスの聖なる光がナムタルを包む。

「―――――――――――っ!!!」

ナムタルの断末魔の悲鳴が響く。

スコール達は目を細めてその様子を見守り、光が消えた後それぞれ武器を仕舞った。

光が消えた後に残ったものは、何もなかった。







「チェッ、大統領が偽者だったなんてなあ。」

アジト車両に戻ってゾーンとワッツに訳を話し、開口一番の言葉がそれだった。

確かにスコール達も呆れ顔でその様子を見つめている。

せっかくこれで任務完了かと思いきや、大統領が偽者だったなどと。

そんなふざけた話があるだろうか。

「あんなのに騙されるなんて悔しいわね〜。」

リノアも地団太を踏んでいる。

そこに、ワッツが駆け込んで来た。

「大変ッス! 大統領の目的がわかりました〜! 大統領は放送局に行くみたいッス!」

「・・・放送局?どうしてわざわざティンバーかなあ?ガルバディアからだって放送出来るよね?」

その言葉に、スコール達は顔を見合わせた。

ガルバディア。そして、放送局へ向かった大統領。

「ねぇねぇ班長。ドールの電波塔、関係ある?」

「何だ、それ?」

セルフィがスコールに問い、即座にゾーンが突っ込んだ。

スコールは腕を組んで口を開く。

「ドール公国には電波塔があって電波の送信と受信が出来るらしい。

長い間放置されていたけど昨日ガルバディア軍が再起動したんだ。」

「あははー、SeeD実地試験が昨日だなんて考えられね。」

が空笑いする。

「なるほど。電波放送に対応出来る放送局は今じゃティンバーにしかないからな。

他の放送局じゃ、H・Dケーブルを使ったオンライン放送しか出来ないんだ。」

「んで、どういう事?」

リノアがゾーンに聞くと、ゾーンは胸を張って言った。

「奴等は電波を使って放送する気なんだ。

ケーブルで繋がっていない地域にも番組を送る事が出来るって訳だな。」

「そうじゃなくて!私が言いたいのは、大統領が何を放送しようとしているのかって事!

わざわざ電波と使う意味よ。ケーブルに繋がっていない地域にも

伝えたい事があるんでしょ? それは何?」

リノアが疑問をまとめると、セルフィが自信ありげに身振りも混ぜて言った。

「世界の〜皆さん、仲良くっ!」

だが全員でそれはないと手を振った。

ゾーンが腕を組んで呟く。

「確か、電波が使えなくなってから17年。・・・17年ぶりの電波放送かあ。」

「17年ぶりね〜 記念すべき最初の放送がティンバー独立宣言だったら凄いのにね!」

リノアの一言にゾーンは反応する。

「おっ! それ、不可能じゃないかもよ。」

「考えてみよっか! ちょっと待っててね!」

そう言うと、リノア、ゾーン、ワッツの3人は部屋の片隅で座って相談を始めた。

その様子を見てスコール達は呆れた溜息をつく。

「おい、あれが作戦会議だとよ・・・」

ゼルが呆れて言うのもわかる。部屋の隅に座って相談するのが作戦会議。

そんな馬鹿げた話、聞いたこともない。

セルフィが不満げに言った。

「まだ帰っちゃダメ?あたし達の契約どうなってるの?スコール班長、確認する?」

「俺もそれ賛成。俺達何にも言われてねぇじゃん。」

も同意し、スコールは頷いた。

雇われるのは別にいい。それがSeeDなのだから。

けれどいつまで続くかわからない契約に振り回されるのはごめんだ。

スコールは契約の確認をしようとリノアに近付いた。

リノアはスコールに気付いて顔を上げると、笑顔で言う。

「あ、ちょうど良かった。作戦決定!」

「その前に、ガーデンとの契約書を見せてくれないか?」

「ん? いいよん。」

リノアはスコールに一枚の紙を手渡した。

達はスコールの周りに集まって紙を覗き込む。

「何て書いてあるんだ?」

「・・・『バラム・ガーデン(以下、甲)』は 『森のフクロウ(以下、乙)』との間に

『SeeD(以下、丙)』の派遣に属する契約を締結する・・・。

・・・・・・甲は乙に本件契約締結後、丙の派遣を即時行うものとする。

丙は乙の戦闘行為を含むと予想される命令に従う。

ただし甲の判断により乙に通達の上で丙を・・・・・・・・・」

「いや待てスコール。ぜんっぜん訳わかんねぇから。」

が突っ込む。すると、リノアが言った。

「あ、それ、わからないよね。全然わからないんですけどって言ったら

もう1枚紙をくれたの。シドさん、親切よね。」

リノアはもう一枚紙を取り出し、スコールに手渡した。

「今度はなんだ?」

「・・・・・森のフクロウさんへ。

皆さんとSeeDの派遣契約の期間はティンバーの独立までです。

SeeDを有効に使って、是非、目的を果たしてください。

なお、本件は例外的な契約でありますからSeeDに欠員が生じても補充は出来ません。

他言も無用に願います。

署名:バラム・ガーデン学園長シド・クレイマー。」

全員がその場で沈黙した。

「ティンバー独立まで!?」

「もしかしてすっごいテキト〜?」

「ふざけんじゃねぇあの肥満クソ学園長がぁっ!!」

スコールを除いたSeeD組が声を上げる。

とくには殺気を奮い立たせており、非常に危険な状態である。

「プロなんでしょ? 文句、言わないの!さあ、実行部隊決めましょ!」

そんなSeeD組は気にもせず、リノアが笑顔で言ってくる。

とは言えゾーンとワッツは以下略。

「という訳で放送局へ向かう実行部隊は私達5人の中から・・・」

スコールは仲間達の顔を見回して考え込む。

依頼者はリノアなわけだから、とりあえずメンバーとしてスコールとリノアは確実だ。

残りの一人をどうするか。

ゼルは周りを見る能力に欠けている。却下だ。

セルフィの場合、いざというとき何をしでかすかわからない。これも却下だ。

残るのはなら頭の回転も速いしいざとなれば指揮もとれる。

今いる中では一番妥当な人物だろう。

「・・・俺とリノア、それからで行こう。」

実行部隊は、この3人に決定した。







ティンバーに到着する直前で、ワッツが言った。

「放送局はローカル線で行けば、すぐなんスけど・・・

今は、ローカル線も大陸横断鉄道も街中の列車が全部、運休中らしいッス・・・。

でも情報によれば、ティンバーの酒場の裏道から放送局に行けるらしいッス。

とにかく酒場に行ってみるッス。準備はOKッスか?」

「OKだ。」

スコールが頷きながら言った。

ワッツは笑顔で返す。

「頑張ってくださいッス! ここでしっかり見守ってるッス!」





いざ、放送局へ!!










<続く>


=コメント=
はい、リノアと再会しました!
うぃー、戦闘シーンはかなりカット(笑
だってフェニックスの尾を使えば一撃なんだもん(笑
次回ガルバディアガーデンまで行けるかなー・・・。
さんの前いたガーデンですよ!
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