SeeDはこれからも世界各地で戦い抜いて行く。


世界の混乱が消えるまで。


真の平和が訪れるまで。


そして、SeeDを必要とする者がいる限り。










hat is your hope ?
  
  〜 Forever with you 〜









「よぉ〜!元気そうだな!!」

いつもの元気さ万点で、ラグナはバラム・ガーデンを訪れた。

もちろんのこと、キロスとウォードも一緒である。

エスタの大統領とは思えない彼・・・ラグナは、今は笑顔だった。

手には大きな花束。一体誰に渡すのかは、彼にしかわからない。

年甲斐もなくはしゃぐラグナ。

そんなラグナに呆れたのか、キロスもウォードも溜息をついている。

そして、スコールとはというと。

「・・・なんでいきなり来るんだよ・・・」

突然の予想もしない来客に、呆気に取られていた。






アルティミシアの戦いから、もはや一週間。

時間がたつのは早いものだ。もうあれから一週間もたってしまったのかと驚かされる。

結局、帰還祝いパーティの後、は人知れず旅に出たらしい。

パーティが終わった後、どこを探してもの姿はなかった。

自分に一言告げてから行ってくれたら良かったのに、とは思いつつ、

それがなのだろうかと考えたりもした。

それに、その代わり部屋に一言書いたメモが残されていたのだ。



『全て、終焉なり』



簡潔な一言に、は苦笑するしかなかった。

全く持って兄らしい。余計なことは書かないところは、昔から変わっていない。

意味深で、少し気取っているような雰囲気。

きっと格好をつけて書いたのだ、このメモは。

行方も告げずに旅立ってしまったのが少し心残りだが、

きっと彼のことだから、またひょっこりバラム・ガーデンに顔を出すだろう。

それに、は“最強のSeeD”と謳われる男だ。

風の噂を耳にすれば、どこにいるかは大体わかるに違いない。

彼がどこかでモンスターに殺されたり・・・なんてことは絶対にないだろうから心配もしていない。

がモンスターごときにやられれば、それはかなりの恥ではないだろうか。



それから、リヴァイアサンは以前のまま自分の中にいてくれている。

時間圧縮に引き離されたときはどうなるかと思ったが、今ではちゃんと戻ってきている。

やはり自分の中にリヴァイアサンがいないというのは奇妙なもので、

安心していられることが出来ないのだ。

“リヴァイアサン依存症”とまではいかなくても、相当な執着ではないだろうか。

とはいっても、リヴァイアサンは最高の相棒なのだから、そんなことは関係ないのだけれど。

リヴァイアサンはときどきスコールの行動に対してに小言を言うことがある。

例えば、「戦闘のときにしたあの行動は絶対に間違っている」、だの、

「本当にのことを守る覚悟があるのか心配だ」、だの。

スコールに嫉妬しているところがあるらしい。

冷静に見えて、結構やきもち焼きなのも可愛いと感じている。

たまにその小言や文句がしつこく思うときもあるが、

それも全て自分のことを思ってくれているからだと思えば、苦笑で済んでしまう。






「大体なんで急に来るんだよ!!」

ニコニコ笑っているラグナに、は怒鳴った。

スコールはその隣で、顔を手で覆って溜息をついている。

そんなことはお構いなしに、ラグナは手に持っていた花束をに差し出した。

「いーのいーの、遊びに来ただけだから。あ、これお土産ね。」

「どこの世界に花束を土産にする奴がいるんだよ・・・って、ここにいるか・・・」

は危うく脱力しそうになった。

これではキロスやウォードもさぞかし苦労していることだろう。

というか、ラグナにエスタを治められているのが不思議でたまらない。

どこをどうしたら、この男が大統領に務まるのだろう?

謎は増えるばかりだ。

「いやぁ、こっちはこっちで大変でよぉ。

エルは今はエスタで俺と一緒に暮らしてるんだけどさ、

アルティミシアやガルバディアに付けられた傷跡がすんげーの!

それの修理だの何だのってしてるうちに、なんだかつまんなくなっちゃって。」

「仕事しろよ。」

何だか突っ込んでも無駄な気がする。

「ってなことだから、邪魔してくぜ!」

「邪魔してくぜ、じゃねぇ!親指を立てて爽やかに笑うな!!

こっちだって今結構大変なんだよ!!」

アルティミシアが付けた傷跡は、バラム・ガーデンにだって残っている。

現在ガーデンにいるSeeDはスコールとだけだ。

残りのSeeDは、バラムの修理とトラビア・ガーデンの再建に派遣されてしまった。

スコールとは居残り組で、バラム・ガーデンのこれからのことを話し合う係である。

そんなときに、まさかラグナ達が尋ねてくるなんて、誰が予想するだろう。

「いーじゃんいーじゃん、固いこと言わずにさ。

テキトーに遊んでガーデン内見学して、勝手に帰るから。」

「お前何しに来たんだよ!!」

は突っ込みしっぱなしだ。

スコールはといえば、突っ込みはに任せて「我関せず」という顔をしている。

そんな彼に、殺意がわいてくるのはどうしてだろうか。

「・・・てのはまぁ冗談で。」

「テメェが言うと冗談に聞こえねぇよ。」

は脱力した。

もうしばらく突っ込み役というのはやりたくない。

普段スコールといるときは、自分は気楽にボケでイケるのに。

何も言わなくても、スコールが突っ込んでくれるから。

何だか、普段のスコールの苦労がわかった気がした。

あまり突っ込み役が疲れるようなボケは、もう言わないようにしよう。

「実はまぁ、いろいろと話があってだな。スコールと、お前達に。」

ラグナは、急に真面目な顔になった。

そんなラグナを見て、スコールとは顔を見合わせる。

真面目な顔で「話がある」と言われるとは思ってなかった。

一体どうしたというのだろう。

「・・・とりあえず、食堂にでも行くか?」

が提案し、全員は食堂に向かった。






食堂で、各々コーヒーやらサンドイッチやらを注文して席についた。

スコールとは隣り合わせで座り、その向かい側にラグナ達が腰掛けている。

注文したものが運ばれてきてから、ラグナは口を開いた。

「まずは、無事帰還おめでとう!帰還パーティに顔出せなくて悪かったな。

俺は行く気満万だったんだけどよ、キロスとウォード、挙句の果てにはエルにまで

行くなって言われて仕方なく。」

「大統領の仕事をサボって溜め込んでいるあんたが悪い。」

突っ込む気力もなくなったの変わりに、キロスが突っ込んでくれた。

ラグナは明後日の方向を向いて、アハハハとカラ笑いしている。

「でもまぁ、本当によくやってくれた。お前らのおかげで、今世界は無事なんだ。

伝説のSeeDってのは、絶対に嘘じゃないと思うぜ。」

笑顔で言うラグナを見て、は苦笑にも似た笑みを浮かべる。

スコールは呆れたような表情をしているが、嫌なわけではないらしい。

「それで、だな。スコール。・・・お前に話がある。」

「あぁ。・・・大体、予想はついてる。」

ふっと目を細めたラグナを見て、スコールは小さく息をついた。

ラグナが言わんとしていることは、なんとなくわかる。

少し前に、そうなのではないか、と気付いてしまった。

本当にそうなのだ、と確定することは出来ないが、十中八九合っているだろう。

ラグナは、少し戸惑うようにゆっくりと口を開いた。

「俺は、レインと一緒になった。それは知ってるな?」

頷くスコール。ラグナは目を閉じ、すぐに目を開ける。

「俺とレインの間にも、赤ん坊が生まれた。・・・俺はその赤ん坊の顔は見てないけどな。

けど、ずっとレインと約束してたんだ。もし、赤ん坊が生まれたら・・・

その時は、その赤ん坊を『スコール』と名付けよう、と。」

沈黙が降りた。

スコールはさして驚いた様子もなく、どちらかというと納得したような表情を浮かべている。

ラグナはそんなスコールを見て、少々安心した顔をした。

「・・・気付いてたんだな。」

「なんとなく・・・な。確信はなかったけど。」

ラグナは苦笑した。「緊張したのが、全部無駄だったな」と言いながら。

それから、本当に懐かしそうな顔をしてスコールを見る。

こうして見ると、本当にレインに似ていると思った。

口元や、髪の色はレインそのままだ。

けれど、そんな中に自分の面影を見て、嬉しくなった。

「・・・あんたが俺の父さんだなんて考えるのは、はっきり言って抵抗あったけどな。」

「あ、ひでぇ。」

口を尖らせるラグナを見て、スコールは小さく笑みを浮かべた。

そんな笑みは、やはりラグナに似ている。

はそう思って、クスリと笑った。

「・・・それが言いたかっただけなんだ。あとは、お前らが元気にやってるか心配でな。

急に邪魔しちまって悪かったな。」

「別に。・・・疑問が晴れて、感謝してるくらいだ。」

スコールは言い、ラグナを真っ直ぐに見つめる。

「これから、母さんのこと・・・たくさん話してくれよ。父さん。」

「おぉ。たくさん話してやるさ。」

スコールとラグナは、笑みを浮かべた。

親子の姿を見て、とキロス、ウォードは席を立つ。

「我々は席を外した方が良いみたいだな。」

「だな。」

キロスに同意し、はニッと笑った。

スコールとラグナはどうしていいのかわからない表情をしている。

そんな二人の背中を押すように、は言った。

「ここは俺の奢り。せっかく十七年ぶりに再会出来た親子なんだ。

ゆっくり、親子水入らずを楽しみなよ。」

は財布を懐から取り出すと、さっさと食堂のおばさんにお金を払ってしまった。

財布にとって結構な打撃だったが、たまにはこういうのもいいだろう。

「・・・しばらくは昼飯抜きかな。」

は上を見て苦笑し、小さく肩を竦めてキロス達と食堂を出た。







「さて、キロス達はどうする?」

食堂を出て、しばらくした時にが言った。

自分は適当に部屋にでも戻ろうかと思ったが、来客のキロス達のことまで考えていなかった。

だが、キロス達は笑みを浮かべると

「我々のことは気にするな。せっかくだから、バラム・ガーデン内を見学させてもらうさ。」

「そうか?なら俺は自分の部屋に戻ってるぜ。帰るときにまた顔出してくれ。

俺の部屋の場所は、スコールが知ってるから。」

キロス達が頷いたのを確認して、は寮へと戻って行った。



自室に入り、ドアを閉めて深い溜息をつく。

賑やかなラグナ達がいると楽しいことこの上ないが、どうしてこうも疲れるのだろう。

昔はあの賑やかなラグナ達と一緒に生活していたというのに。

七年も離れていては、あのテンションにも付いて行けなくなったらしい。

良いのか悪いのか、全くもってさっぱりである。

「・・・七年たっても、あいつは全然変わんねぇもんなぁ。」

相変わらずボケているというか、どこか抜けているというか。

それが彼の良さでもあるのだろうけれど、逆に欠点でもあるというか。

そんなラグナが大好きというのも、また否定出来ないのだが。

「リヴァ?」

ふと、相棒に声をかける。しばらくして、すぐに返事が返ってきた。

『何ですか?』

「話したいことがあるんだ。・・・出てこないか?」

『わかりました。』

が目を閉じると、すぐに青い光が自分の体の外に出た。

青い光は人型を象り、やがて一人の青年が姿を現す。

リヴァイアサンを見つめて、は優しく微笑んだ。

「何度見ても、やっぱお前は美人ってーか・・・綺麗だよなぁ。」

に言われても実感湧きませんよ。」

リヴァイアサンは苦笑した。

はリヴァイアサンにとって、これ以上ない尊い者なのだから。

ベッドに腰掛けているは、じっとリヴァイアサンを見つめたまま沈黙している。

どちらも口を開こうとせず、ただ静かに見つめ合った。

不思議と、何も口から言葉が出て来なかった。

話があるはずなのに。話をしたいはずなのに。

リヴァイアサンはクスリと笑うと、の隣に腰を降ろした。

それが合図だったかのように、はゆっくりと語り出す。

「・・・リヴァ。以前言ったよな、俺のことが好きだって。」

「ええ。・・・今でも、その気持ちは変わりません。」

リヴァイアサンがはっきりそう言えば言うほど、は胸が苦しくなった。

けれど、曖昧なままもっと雰囲気が壊れるのは、どうしても嫌だ。

リヴァイアサンとは、これからもずっと付き合っていきたいと思っているのだから。

は覚悟を決めたように目を閉じると、真っ直ぐにリヴァイアサンを見据える。

「・・・俺、リヴァイアサンが好きだよ。俺の相棒は、お前以外に務まらないと思ってる。

リヴァは俺の友人であり、パートナーであり、大切な者だ。」

黙ってリヴァイアサンはの言葉に耳を傾けている。

「・・・リヴァのことは好きだ。けど・・・それは恋愛としての“好き”じゃない。

・・・ごめんな。俺、スコールのことが“好き”なんだ。

そしてスコールも、きっと俺のことを考えて、想ってくれている。」

リヴァは優しく目を細め、静かに頷いた。

スコールの気持ちは、リヴァイアサンが一番良く知っている。

に対する想い。その強さは、悔しいが自分よりも上だ。

だからこそ、スコールのことがなかなか好きになれない。

を、まんまと奪ってしまった彼なのだから。

「・・・俺、リヴァイアサンの気持ちに・・・応えてやることは、出来ない。」

「ええ。・・・わかってます。」

は申し訳なさそうに、少し哀しそうに、目を伏せた。

そんなの頭を、リヴァイアサンはよしよしと撫でる。

「こんな俺だけど・・・これからも、一緒にいてくれるか?」

「何言ってるんですか?当たり前ですよ。

が嫌だと言っても、一生付いて行きますから。」

優しいリヴァイアサンの気持ちが、心に染み込む。

嬉しくて、けれどどこか申し訳なくて、少しだけ哀しくて。

でも、やっぱり・・・リヴァイアサンが大好きで。

「私の気持ちは一生変わらないでしょう。例えあなたが、誰を求めようと。

確かに悔しいですよ?スコールのことはやはりあんまり好きではないですし、

スコールを見ると、とても胸が苦しくなります。」

リヴァイアサンは目を閉じ、自嘲的な笑みを口元に浮かべた。

「けれど、。・・・スコールは、あなたが・・・大好きな相手だから。」

優しく微笑んで、リヴァイアサンはを見つめた。

は少し驚いたような、戸惑ったような、そんな表情を浮かべている。

「あなたが一番大切に思い、一番必要としている相手だから。」

が幸せならば、自分も幸せだ。

未練がないと言えば、それは嘘になる。

でも、が幸せならば、自分はそれ以上何も望まないから。

の傍にいれるだけで、もう何もいらないのだから。

「私は後悔していません。あなたを好きになったことも、スコールにあなたを譲ったことも。」

G.Fとして生を受けてから、一体何年の月日がたったのだろう?

自分が生まれたときのことは、もう遠い昔の話だ。

十年二十年の話じゃない。それこそ、千年単位もの昔の話。

そんな長い月日を過ごしてきて、と出会い、今までに感じたことのない感情を掴んだ。

誰かに恋をする気持ち。愛し愛されたいという気持ち。

大切な人を奪われ、嫉妬する気持ち。

そして、“幸せ”を感じられる自分。

それを全て与えてくれたのが、自分の想うマスター・・・だから。

今まで何人ものマスターに仕えてきたが、ほど最高のマスターはいない。

自分を仕えさせてくれるだけでなく、自分に大切なものを与えてくれた。

は・・・私にとって、最高のマスターです。

きっとこの先も、ほどのマスターは現れない。

将来、もしかしたらもう私をジャンクション出来るマスターはいないかもしれません。」

そう、あなた以外には。

「リヴァ・・・。」

「あなたがこの世を去るまで、私はどこまでもついて行きますよ。

いえ・・・出来るのならば、あなたがこの世を去った、その後も。」

はクスリと笑った。

やっと笑ってくれた自分のマスターを見て、リヴァイアサンも嬉しそうに微笑む。

「ですから。笑ってください。あなたには、笑顔が一番似合う。」

「サンキュ・・・リヴァ。」

は、目を閉じてリヴァイアサンの肩にもたれかかった。

リヴァイアサンは少し驚いた様子を見せたが、すぐにおずおずとの肩に腕を回す。

そして、そっと抱き締めた。

静かな時間が、ゆっくりと流れ行く。

はリヴァイアサンに抱かれながら、その心地良さに徐々に力を抜いていった。










大きくて暖かな手が、自分の頭を撫でている。

そっと、優しく。

まるで、ガラス細工のような脆いものを、大切に扱うように。

その手の暖かさが気持ち良くて、は目を開ける気にはならなかった。

ゆっくりとしたその手の動作は、自分に大きな安心感を与えている。

この手は、一体誰のものだろう?

ああ、ラグナにも昔こんな風に撫でてくれた。

夜眠れないとき、必ず傍にいて、優しく頭を撫でてくれた。

おんなじだ。

あのときの、感覚と。



「ん・・・。」

ふと身動ぎすると、自分を撫でていた手の動きが止まった。

そして、その手はそっと自分の前髪をかき上げ、すっと離れた。

重い瞼をゆっくりと持ち上げて、は相手を見つめる。

「・・・スコール・・・?」

「起きたか?。」

目を開けると、そこには優しく微笑んだスコールがいた。

スコールはベッドに腰掛けて、の頭を撫でていたらしい。

窓の外を見れば、もう日が沈みかけている。

ラグナ達はどうしたのだろう?

「なぁ・・・ラグナ達は?」

「一度ここに来たんだけど、が寝てるのを見て「起こしたら可哀想だから」って

帰って行ったぞ。よろしくと伝えてくれって言われた。」

は体を起こし、何度か目をこすった。

それから深い溜息をついて、髪をかき上げる。

「寝ちまったんだな。」

「最近いろいろと忙しかったら、疲れが溜まっていたんだろう。

今日一日くらいのんびり過ごしたって、罰は当たらないさ。」

優しく言うスコールを見て、はふっと笑った。

初めて出会った頃は、こんな奴ではなかったというのに。

いつの間に、こんなに丸く、優しくなったのだろう。

「親子水入らずは満喫出来たか?」

「それなりに。ほとんど父さんしかしゃべらなかったけど。」

クスクスと笑ってしまった。

スコールとラグナが会話しているところが、すぐに想像出来てしまった。

きっとラグナは子供みたいにはしゃぎながら、スコールと話をしていたのだろう。

どちらにせよ、スコールにとってプラスになったことは間違いない。

ラグナのことを、何のためらいもなく「父さん」と呼んでいるのだから。

はふわりと笑み、窓の外の夕日を見つめた。






。」

「ん?」

ふと呼ばれて、は振り返る。

すると急に、軽く唇にキスされた。

ふわりと感じた一瞬のぬくもりに、嬉しさ反面呆れてくる。

「おい・・・。」

「これでも我慢したんだ。たまには、こういう日もいいだろ?」

本当に、いつからこんな性格になってしまったのやら。

昔のスコールからは、想像もつかないのではないだろうか。

は拗ねたようにスコールを見つめていたが、

やがてクスリと笑ってスコールに寄りかかった。

スコールも、それを予想していたかのように、自然にを抱きとめる。

優しい空気が二人を包み、心地良さが広がった。

外は、美しい夕日。良く晴れた空に、オレンジ色が反射している。

暖かな夕日を見ながら、とスコールは抱き合っていた。

しゃべることはない。言葉はいらない。

この優しい空間さえあれば、言葉などなくてもいい。

今、生きているということが実感できるのだから。

「今考えてみれば、俺とスコールの出会いって変だったよな。」

「あぁ・・・。保健室で、ケガした俺を興味深そうに見てたよな、お前。」

顔を見合わせて、クスリと笑う。

「でも俺も間抜けだった。」

「ゼルのボールにぶつかって、気を失ったんだったか?」

「なっさけない話だよなぁ。この俺が。」

過去の思い出を思い返して、笑いがこぼれた。

まだそんなに遠い過去ではないはずなのに、随分と昔のことのように感じられる。

それだけ、たくさんの出来事があったから。

スコールは優しく微笑み、の頬をそっと撫でた。

「これからも、一緒に歩いていける・・・よな?」

尋ねるに、スコールは答える。

「歩いて行くさ。どこまでもな。」

目を細め、幸せを噛み締めて。



「愛してる、。どこまでも、一緒に行こう。」

「ついて行くさ。お前になら。大好きだよ、スコール。」



二人は、夕日が部屋に差し込む中、もう一度唇を重ね、そしてベッドに沈んだ。







スコール達は無事帰還した。

お互いに仲間達を思うことで、その結果が見事に現在への帰還に繋がった。

現代でのアルティミシアの時間圧縮の爪痕は全くなくいつもと変わらぬ時を刻んでいる。



アルティミシアは消滅した。

それは一つの厄災が消えた事を意味する。

だが、まだ世界では問題が山積みになっているのだ。

アルティミシアがこの世界につけた傷跡はまだたくさん残されている。




スコール達はこれからもSeeDとして世界各地を戦い抜いて行く。

世界の混乱が収まるまで。

真の平和が訪れるまで。

そして、SeeDを必要とする者がいる限り。

そんな日常の中で、隣を見れば、必ず愛しい者がいてくれる。

スコールの隣にはが。

の隣にはスコールが。

大切な仲間達も、自分のことを支えてくれる。

笑い合い、ともに涙を流し、時には怒ってケンカして。

けれどそんなひとつひとつが大きな幸せの形。

スコールとは、手を繋ぎ、未来へと歩みを進めていく。




『What is your hope ?』


『Stay here with you eternally.』





・・・お前の望みは、一体なんだ?』


『お前と、永遠に歩むことだよ、スコール。』







時間はゆっくりと流れて行く。

そう。彼らの物語は、まだ終わりではないのだから・・・・・・。










<完>




=あとがき=
とうとう終了です。全35話。
ここまで読んで下さった方、お疲れ様でした。
そしてお付き合いくださって本当にありがとうございました!
これにてFF8の連載は終了です。

いかがでしたでしょうか。
私としては、とても読み辛くて腹立たしい部分が多々あるのですが(笑
スコールとの恋は、今後どんな風に進んでいくんでしょうか。
それはまた、皆様のご想像にお任せします。
まぁ、がこんな性格ですから、恐らく破局することはないんじゃないかと(笑
スコールも浮気するタイプじゃないですし。
きっと最後のセリフ通り「永遠に歩いていく」のではないでしょうか。
そうだったらいいなぁ、と明希妃は思っております。

連載が終了出来たのは応援してくださった皆様のおかげです。
本当に感謝です。ありがとうございました。
ハッピーエンドはこんな感じで仕上げてみましたが、お気に召していただけたら光栄です。


そして気になっている方もいらっしゃると思いますが・・・
バッドエンドについてです。
バッドエンドは悲恋です。ハッピーエンドが好きな方は、読まないことをオススメします。
とりあえずここで完結はしたので、これで終わりにしたい方はそうしてください。
バッドエンドは帰還祝いパーティの直後から始まります。
1話だけですが、衝撃的な受け取り方も出来るので、自己責任でお願いします。
後悔しても、文句を言っても、どうしようもないので(笑

バッドエンドを読むという方は、
こちら
からどうぞ。音楽が流れますので、音量にご注意ください。



ハッピーエンド、バッドエンドともに、感想をいただけると嬉しいです。
また別の連載も書き進めていこうと思うので、
これからも何卒『記憶の場所』をよろしくお願いします!! [PR]動画