全ての終焉を迎えるには



一体どうすればいい?



誰に聞けば良い?リヴァイアサン?・・・兄貴?



それとも・・・・スコール?









hat is your hope ?











は気を失いかけているを、魔女アデルの元へと連れて来た。

アデルは依然封印されたままだが、その封印が徐々に解け始めているのがわかる。

は封印されたアデルを見つめ、悔しそうに唇を噛んだ。

かなり強く鳩尾を殴られたのだろう。は苦しそうに喘ぐことしか出来ない。

サイファーはの後に続いて走ってきている。

はアデルの前で立ち止まり、後ろのサイファーを振り向いた。

「サイファー、お前、に何か言っておきたいことは?」

が尋ねると、サイファーは鼻を鳴らした。

「はっ。俺がこいつに言っておきたいこと?別にねぇよ。さっさとくたばりやがれってんだ。」

さもつまらなそうにサイファーは言う。

はほんの少し頭をもたげ、サイファーを鋭く睨んだ。

はサイファーを見つめると、不機嫌そうに目を細めた。

「おい。・・・が魔女だろうと、こいつは俺の妹に違いはない。

口には気をつけることだな。」

は、その言葉に驚いて目を見開いた。

だって、敵対しているはずなのに。どうして、自分を庇うようなことを言う?

サイファーですら驚きを隠せない表情を浮かべ、を凝視している。

「・・・おい、あんたアルティミシアを裏切ろうなんて考えちゃいねぇよな。」

「今言ったばかりだ。口には気を付けろ。」

は冷たくサイファーに言い放ち、を肩から下ろして床に横たえた。

酷く腹が痛む。思っていたより、内臓のダメージは大きいらしい。

内臓に傷が入っているということはないだろうが、それでも苦しいものは苦しい。

「テメ・・・やめろよ・・・もう気は済んだだろ!?」

腹の激痛を堪え、の胸倉を掴んで叫ぶ。

は一瞬驚いたように目を開いたが、すぐに目を細めてを見つめた。

だが、その違和感にふとは眉根を寄せる。

の目が、寂しく揺れたように見えたから。

「もう、戻れないんだ。どこにも行けないんだ。」

「兄・・・・貴・・・・・・?」

あの優しい兄が、戻ってきたのかと思った。

こんなに哀しそうな目をしたは、ここ何年も見ていなかったから。

どうして、こんなに哀しそうな表情をするのかがわからなかった。

ならば、こういうときは不敵に笑うものだと思っていたのに。

「兄貴・・・本当はこんなこと、したくないんだろ?何か考えがあるんだろ?

もうやめにしよう、俺・・・・また兄貴と一緒に・・・・!」

だるい体を叱咤して、の両肩を掴んだ。

また一緒に、暮らしたい。そう伝えたかった。

また、ウィンヒルみたいな小さくて平和で静かな村で、一緒に暮らしたかった。

の言葉に、は一瞬力を抜く。

けれどその時、スコールの声が聞こえた。

!! やめろ!」

その言葉とともに、スコール達が駆け込んでくる。

はハッと振り返り、自分の失態を悔やむように唇を噛んだ。



もはや後戻りは出来まい。



を抱え上げると、再びアデルに近付いた。

そして、驚愕するスコール達を見つめて無表情で叫ぶ。

とアデル! 魔女はひとつに! よく見ていろ、スコール・レオンハート!」

はぐったりとしたをアデルの前に突き出した。

その途端、アデルは突然動き出し、封印を解いてにその手を向ける。

はどうすることも出来ずに、アデルをぼんやりと見つめていた。




視界が暗転し、自分がアデルに取り込まれたということが理解出来た。

まるで夢を見ているような感覚だ。

かつてのエスタの支配者アデルに、取りこまれつつある自分。

アデルは魔女と呼ぶには相応しくないほどの筋肉を誇り、腕力だけでも相当のものだ。

心、技、体、どれを取ってもかなりの強敵。

そんなアデルに、スコール達は勝つことが出来るのだろうか?



「・・・に・・・・!」



体の自由を奪われたの口元がかすかに動いたのを、スコール達は見逃さなかった。

リノアが叫ぶ。

が何か言ってる!!どうしたの、!何を伝えたいの!?」

「・・・れに・・・・!」

力を振り絞って呟く

スコール達は困惑した表情でを見つめている。

は体に走る激痛に耐えながら、顔を上げてスコール達を見つめた。

そして、力なく微笑み、大声を張り上げる。



「・・・俺に構わず・・・っ・・・思う存分戦えっ!!!!」



その言葉に、スコール達は目を見開いた。

それとともに、は意識を手放す。

ぐったりとアデルに捕まっているを見て、リノアが叫んだ。

を助けなきゃ!」

「ああ、アデルだけを狙うんだ!」

スコールは頷き、ガンブレードを構える。

その時、の体から青い光が飛び出してきた。

それは、龍神の姿をしたリヴァイアサン。海龍、リヴァイアサンだった。

リヴァイアサンはアデルを見つめ、スコールの頭の中に話し掛ける。


『マスターの命令無しで私が動けるのは一回切りです。

私の力がアデルに通用するとは思いませんが、出来る限りのことはしましょう。』



「リヴァ!」

スコールは叫んだ。

リヴァイアサンはチラリとスコールを一瞥してから、アデルを睨みつける。

『私のマスターから離れてもらいましょう、魔女アデル』

リヴァイアサンは言うと、鋭く眼光を光らせた。

次の瞬間、リヴァイアサンは強力な大海嘯を巻き起こす。

巨大な津波が、魔女アデルに襲いかかった。

けれど不思議なことに、の前には薄いバリアのようなものが煌いていて、

にダメージは全く無いのだ。

これも全て、リヴァイアサンの力なのだろうか。

アデルは津波に巻かれ、苦しそうに表情を歪めた。

スコール達はそれを見て武器を構える。

「感謝する、リヴァ!」

『その名を呼んでいいのは、だけですよ。・・・と言いたいところですが、

何故だかあなたに呼ばれても悪い気はしない』

苦笑したようなリヴァイアサンの声が、頭の中に響いた。

リヴァイアサンは青い光を纏い、再びの中へと戻る。

「一気に行くぞ!!」

スコールは言い、ガンブレードを振り上げた。

それを見て仲間達も武器を構える。

「ブリザガ!!」

キスティスの声が響き、アデルに氷の刃が突き刺さる。

その隙に、スコールはガンブレードで強力な一撃を叩き込んだ。

アデルの攻撃を上手くかわしながら距離を取り、今度はG.Fの詠唱を始める。

を返せ〜!」

「テメェいい加減にしろよ!!」

「勝手なことは許さないんだよ〜!」

セルフィとゼル、アーヴァインは叫びながらアデルに攻撃を仕掛ける。

それを援護するリノアの回復呪文が三人を包み込んだ。

「沈黙の妖精よ!愚かなる者に音の裁きを与えよ!!」

キスティスが叫び、セイレーンを召喚した。

美しい精霊はハープを鳴らしながらアデルを見つめ、静かな音色で包み込んだ。

アデルは苦痛の叫びを上げる。

スコールはそれを見計らい、魔法を放った。



「アルテマ!!」



眩い閃光。美しくも恐ろしい、最強の呪文、アルテマ。

アルテマがアデルを包み込み、激しい爆発を起こす。

けれど、まだ終わりではなかった。

アデルの反撃だ。アデルは腕を振り上げると、それでセルフィ達をなぎ払った。

セルフィとゼル、アーヴァインの体はいとも簡単に吹っ飛び、リノアが悲鳴を上げる。

「リノア!セルフィ達に回復魔法を!」

「了解!」

リノアは頷き、セルフィ達に回復魔法を施す。

スコールは悔しげにアデルを睨んだ。

こうしている間にも、はアデルに取り込まれつつある。

恐らく、もう力の大半を奪われているだろう。

こんな苦戦は初めてだ。

けれど、アルティミシアはきっとこんなものではないだろう。






負けない。


負けるわけにはいかない。












「大いなる雷の神鳥よ!全ての力を我に与えよ!!」

スコールは叫び、手をアデルに突き出した。

激しい雷光が走り、アデルを包み駆け巡る。

突如として姿を現したケツァクウァトルは、アデルに痛恨の一撃を与えた。

アデルの断末魔の悲鳴。

がアデルから引き離され、床に倒れ込む。

アデルの体は消滅し、戦いに勝利したことを意味した。





!」

スコールはすぐに倒れたに駆け寄った。

その体を抱え起こすと、はうっすらと目を開ける。

苦しそうだが、問題はなさそうだ。スコールは安堵の溜息をついた。

それよりも、だんだんとの様子が変わっていく。

恐らくアデル亡き後魔女はしかいないため、アルティミシアが

に取り入ろうとしているのだ。

そこにラグナとエルオーネがやってきた。ラグナはの様子を確認すると、

スコールを見てしっかりと頷く。

そして、隣のエルオーネに言った。

「エルオーネ、今がチャーンス!」

エルオーネはひとつ頷き、目を閉じて念じた。

アルティミシアごと、の意識を過去に転送するために。

しばらくすると、は意識を失ってスコールの腕の中に倒れ込んだ。

スコールはの様子を確認してから、エルオーネを見た。

「エルオーネ、もういい。だけ、取り戻すんだ。」

ラグナが言うと、エルオーネは再び目を閉じて念じた。

すると、すぐにがスコールの腕の中で目を開けた。

その様子を見て、ラグナとエルオーネの顔に笑みが浮かぶ。

ラグナはエルオーネの頭を優しく撫で、「良くやった」と褒めた。



は少し疲労した様子でふらふらしている。

スコールはそんなを支えながら、彼女の顔を覗き込んだ。

目を閉じ、は呟く。

「俺・・・アルティミシアとアデルの中に入った。・・・若いアデルだった。」

「アルティミシアはアデルの中だ。お望み通りの結末だぜ。」

ラグナが親指を立ててとスコールを見た。

そんなラグナに、とスコールの顔にも笑みが浮かぶ。

ラグナはスコール達を見回した後、声を大きくしてはっきりと言った。

「さ〜て、こっからが大勝負だ。時間圧縮、始まるぜ。」


突然、辺りの空間が歪み出す。

その空間に消える前に、ラグナは叫んだ。







「『愛と友情、勇気の大作戦』だ! 頼むぜ、若者達よ!」







空間が完璧に歪み、スコール達の体は急にルナティック・パンドラの外に放り出される。

辺りには様々な物体が滴のように歪み、そして弾けている。

そんな様子を目にしながら、スコール達は時間圧縮の波に体を任せるしかなかった。

「どこに行ったらいいんだ!?」

ゼルの叫び声が聞こえたかと思うと、そのまま海の中へと飛びこんだ。

けれど、息苦しい訳でもなく、そこもまた時間圧縮の影響を受けている。

空間が歪み、引っ付き、そしてまた分離して離れていく。

見ているだけで酔いそうなその光景に包まれながら、スコール達はひとつだった。


「イデアの家へ!」


約束をした、イデアの家へ。

絶対に皆でアルティミシアを倒し、そして戻ってくるために。

絆を今ここで壊しはしない。

自分が信じれば、相手も信じてくれる。

「俺・・・頑張るから。」

すぐ傍から、の声が聞こえた。

スコールは時間圧縮の波に流されるまま、に聞こえるように叫ぶ。

「頑張ろう。皆で帰ってくるために。不安に思ったりしなくてもいい。

俺が、絶対にお前を消さない!!」

叫ぶ。

心の想いをそのままに。

自分の本心をそのままに。

に聞こえたかどうかは定かではないが、きっと聞こえただろう。

そして、信じてくれただろう。


突然海の底から海面へ弾き飛ばされた。

そのまま天に向かって落ちていき、周りをたくさんの鳥が舞う。

天地が引っくり返っているようだ。

地に落ちるのではなく、天に向かって落ちているのだから。

スコール達は、やがてある一点に向かって引き寄せられていった。








気が付くと、そこはイデアの家だった。

今の荒れ果てた家とは違う、昔の姿である。

けれど突然、目の前の風景が変わり、今よりも荒れ果てた姿になった。

それを見て、スコールは理解する。

恐らく、魔女アルティミシアの時代になったのだろう。

そして足元には数人の若者が倒れている。

「この時代のSeeD達が・・・・?」

スコールはふと顔を上げて周りを見た。辺りに、仲間達の姿はない。

しばらく辺りを見つめて、スコールは視線を止めた。

遙か向こうに、巨大な城が月光に照らし出されている。



あれこそが、アルティミシア城。

時空を越えて元凶をもたらす悪の根元。



「アルティミシアの・・・時代・・・」

城へと続く巨大な鎖がある。

スコールはゆっくりと、足を城へ向けて動かし始めた。

辺りしんと静まり返った空間。

不気味さと哀しみ、寂しさ・・・負の感情で固められているような空間。

アルティミシア城の前には、仲間達の姿もあった。

「皆も無事だったか。」

スコールが言うと、皆スコールに気付いて振り返った。

欠員は出ていない。全員が、ちゃんとこの場にそろっている。

「ここが・・・悪の城か。」

ゼルが呟いて、城を見上げた。

不気味な城には、黒い霧が立ち込めている。

「とうとう来ちゃったね。」

「ここ、気味悪いね。本当に住んでるの?」

セルフィとアーヴァインが顔を見合わせ、城の門を見つめた。

今はまだ、門は閉じられている。

そう。・・・まだ、今は。

は目を細めて城を見つめた後、ふと俯いて小さく息を吐いた。

「いる。ここに、俺達が倒す相手が。・・・感じるんだ。・・・魂は一緒だからかもな。」

スコール達はを見た。

忘れかけていたが、アルティミシアはの生まれ変わりなのだ。

それはつまり、とアルティミシアの魂は同じだということになる。

「未来の魔女・・・それがの生まれ変わりなんて、皮肉な話ね。」

キスティスが呟いた。

はふと笑みを浮かべ、キスティスを見つめて言う。

「そうだな。けど、だからこそ俺達はやらないといけない。

未来に、・・・この時代に、平和を与えてやりたいって、思うんだ。」

過去のうちに、全てを正しく。

歯車を、正しくはめ込んでおきたいから。

を見つめて、全員が頷いた。

「皆がここにいるって事は、まだ時間が俺達の存在を許してくれてるってことだ。」

スコールが言った。

もう引き返さない。戻らない。

例え先が闇だとしても、自分達は進むだけだ。

スコールは仲間達を見つめ、はっきりと言った。

「行こう。」

仲間達はスコールに続き、城の扉に手をかける。

だがその時、後ろから声がした。

「待てよ。」

その声に、はぴくりと反応して振り返った。

そこには、少し疲労した様子のが、立っていたのだ。

スコール達は身構えたが、はそれを静かに制した。

「・・・何か用か?」

が尋ねると、はゆっくりとに歩み寄った。

殺気は感じない。

はスコール達に目配せで「心配するな」と伝えてから、自分もに歩み寄った。

「アルティミシアは・・・楽な相手じゃない。」

「ああ。・・・知ってる。」

「それでも、行くんだな?」

「ああ。これで、全てを終わらせる。」

の静かな問いに、は強い意思を秘めた瞳で頷いた。

もう決意は鈍らない。

はそれを理解したのか、小さく頷いた。

それから、に言う。

「ごめんな。・・・俺、情けない兄貴だから。」

「・・・・私も、ごめん。・・・弱い妹で。兄さんから離れられない、弱い妹で。」

普段ののしゃべり方とは違う、静かな声。

スコール達は目を細めた。恐らく、これが元のの姿なのだろうと。

は苦笑して、首を横に振る。

「そういうが、俺には可愛くて仕方なかった。」

「私を助けてくれる兄さんが、本当に大好きだった。」

を見つめ、優しく微笑んだ。

「ねぇ。・・・今なら、教えてくれる・・・だろ?

どうして、私を虫ケラのように見下して・・・・家を出たのか。

どうして、再び私の前に現れたとき、敵対していたのか。

・・・アルティミシアに従っていたのか。」

が尋ねると、は気まずそうに視線を彷徨わせた。

けれど、すぐに小さく息を吐いて語り出す。

「・・・家を出る直前、俺は魔女アルティミシアと出会ったんだ。

まだガキだった俺は・・・アルティミシアの脅しに、逆らうことが出来なかった。

・・・アルティミシアは、もうあの時からの体を狙っていたんだ。」

その言葉に、は目を細めた。

「俺は頼んださ。泣きながら、妹には手を出さないでくれって。

そうしたらアルティミシアは『私に付いて来るのなら、あと十年は手を出さないでやる』って。

だから俺はを突き放すために冷たく言って家を出た。

そうすれば、はもう俺を追い駆けてこないだろうと思ったから。」


全部、自分のためだった。

全部、自分のためにしてくれたことだった。



「アルティミシアに従っている俺は、どうしてもお前と敵対するしかなかった。

これでも、隙を見てお前に危険を知らせようと思ったりしてたんだ。

けど・・・どうしても出来なかったな。

・・・収容所での拷問のとき。辛かったろ?・・・ごめんな。」

「兄さん・・・。」

は今にも泣きそうな表情で、を見つめた。

はそんなの頭を撫でて、クスリと笑う。

「それから、もうひとつ教えておいてやる。

・・・俺の凄まじい力の秘密。それはアルティミシアだ。

アルティミシアが、俺に力を貸していた。だから、俺は強い力を持っていられたんだ。

一度リヴァイアサンにやられて倒れたときがあったが、恐らくあの時は

スコールに負けたサイファーのことでアルティミシアが苛立ってたからだろう。

俺に送る力が、少なくなっていたんだと思う。」

「それでも、」

は言った。

「・・・兄さんは、強いよ。」

「・・・強いかもしれない。けど、それ以上に弱いよ、俺は。」

は自嘲気味に笑って目を伏せ、の肩を優しく叩いた。

それから、真剣にを見つめる。

「決して、自分と仲間達を見失うな。俺からは、それしか言えない。」

「もう充分だよ。ありがとう、兄さん。・・・元の時代に戻ったら、もっと話しよう。

たくさん。今まで話せなかった分、たくさんたくさん・・・話しよう。」

縋るように言ったら、は笑顔で頷いた。

「ああ。・・・約束。俺は、一足先に元の時代で・・・待ってるから。」

は言い、の背中をそっと押した。

はスコール達の前に立った。

優しく微笑んでくれる仲間達を見て、目頭が熱くなる。

は振り返り、既に歩き出しているに叫んだ。




「サンキュ!!兄貴、待ってろよ!!俺、絶対に帰るから!!!」




は振り返らずに、手を軽く上げた。

そして、時代の空間の歪みに吸い込まれ、姿を消した。


和解は出来たと思う。

けれど、交われたわけじゃないと思う。

もう、過去に兄と自分はすれ違ってしまっているから。

もう、二度と交わることは出来ないのだから。



を見送ってから、は改めてスコール達の方を向いた。

そして、ひとつ頷く。

「行こう。」

今度こそ。

スコール達は城の巨大な扉を、押し開けた。








アルティミシア城。

その外観は正しく、魔女の住処と相応しく中世の西洋の城を思わせる。

中では魔女に忠誠を誓う下僕が控えており、魔女の元に辿り着くのは容易ではなかった。

スコール達は複雑な城内を進み、ようやく魔女の間の前に辿り着く。

「もうすぐよね。もうすぐ終わるって信じていいのよね。」

リノアが、扉の前で呟いた。

倒せば終わるとは思う。けれど、不安な気持ちは拭い去れない。

「アルティミシアを倒しても、アルティミシアが生まれたという事実は変わらない。

俺の魔女の力がずっと未来のアルティミシアに引き継がれる。

そのアルティミシアの力をまた、誰かが引き継ぐ・・・。

・・・どこかで、止めることは出来ないのかって何回も考えた。

けど・・・その方法はまだ、わからない。」

は独り言のように呟き、扉を見つめた。

この先に、アルティミシアがいる。

痛いほどのプレッシャーが、扉の前にいるだけで感じられる。

けれどもう迷わない。スコールは扉に手をかけた。

「(構わない。心の準備は出来ている。)」



スコールは、玉座の間への扉を静かに開いた。


この奥に・・・未来からの厄災がいる。










<続く>

=コメント=
とうとうラスボス戦直前です。
・・・とは言っても、あと1話や2話では終わりません。
恐らく、あと最低でも3話くらいは必要になるのではないかと・・・。
次回で多分“FF8”のシナリオは終了するでしょう。
けどその後の話があります。
の会話や、真のEDなど。
FF8のシナリオが終わっても、まだ少し続きますので、
終わりまでお付き合いくださいね^^
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