ルナティック・パンドラ突入。



そして俺は、アルティミシアが来るのを待つ。



本当は怖いと思った。



けど、俺のワガママに皆を振り回すわけにはいかない。












hat is your hope ?











がコックピットに上がると、そこにはスコールの姿がなかった。

他の仲間達は皆そろっている。けれど、肝心のリーダーがいない。

は不思議そうにコックピット内を見回した。

「なぁ、スコールは?」

「そういえばさっき、なんか突然考え込むように出て行ったぜ。」

ゼルが言った。は腕を組んで考え込む。

何かがあったのだろうか。

とはいえ、スコールは一体どこに?

飛空挺は現在飛行中だ。そのため、外に出て行ったということはあり得ない。

となれば飛空挺内部にいるはず。

「ちょっと探してみるよ。」

は言い、コックピットを後にした。




すれ違いになったのかもしれないと思い、念のためラグナ達のところにも寄ってみたが、

そこにスコールはいなかった。

一人で考え事をしたいときに、スコールが行きそうな場所。

広い飛空挺内部とはいえ、その場所は限られてくる。

スコールなら、一人で考えるときは仲間達と距離を取るだろう。

そう考えれば、入り口付近が怪しい。

「入り口付近、ねぇ・・・。アイツ、何か隠してやがるのか?」

なんとなくそう思って、は足を飛空挺の入り口へと向けた。

入り口に近付くに連れて、何やら言い合っている声が聞こえる。

その声を、はよく知っていた。

「・・・どうして・・・どうして、あなたなんかにっ・・・!!」

は、ふと足を止めた。

入り口まであと数歩。その数歩を、歩むことが出来なかった。

反射的に身を隠して、気配を消してしまった。

「お前・・・もしかして、のことを?」

スコールの声だ。スコールと、リヴァイアサンが言い合っている。

一体どうして?は驚愕の表情を浮かべたまま、動けなかった。

「滑稽な話だとあなたは笑うかもしれない。けれど私は、のことが好きなんです!

G.Fだから許されないのだというのなら、私はこんな体いらない!

私はと出会ってから、だけを見てきた。そしてこれからもそれは変わらない!」

リヴァイアサンの叫び。

そう、はリヴァイアサンの気持ちを知っていた。

あの日、告白されて、そして強く抱き締められたから。

優しいぬくもりを感じた。これが、リヴァイアサンのぬくもりなのだと。

「なのに・・・・なのに私では駄目なのです・・・!

私はしか見ていないのに・・・は私を見てはくれない・・・!

が本当に苦しんでいるとき、彼女を助けたのは私ではなかった!

そしても、私ではなくあなたに助けを求めた!!」

はハッとした。

確かに自分は、本当の危機に陥ったとき、スコールの名を呼んだ。

そして、自分を助けてくれたのも、スコールだった。

それは認める。だが、何故リヴァイアサンがここまで激昂しているのかがわからない。

は息を殺して、スコールとリヴァイアサンの会話に耳を傾けた。

「リヴァイアサン・・・。」

に今必要なのは私ではなく、スコール、あなたなんです!」

リヴァイアサンの声に、はピクリと肩を震わせる。

「私では駄目だった・・・・。スコール、あなたでなければ・・・。」

混乱しそうになった。

自分はスコールに助けを求めたかもしれない。

けれど、それはリヴァイアサンがスコールに怒りをぶつける原因にはならないはず。

だってスコールは、“仲間”を助けただけなのだから。

なのに、どうして。

「・・・・を譲る気は、ない。」

スコールの声が、響いた。

その言葉に、は目を見開く。

「・・・お前に同情して、を譲る気は、俺にはない。」

「・・・・・。」

自分を譲る?譲る譲らないの話の前に、一体どうして。

自分なんて譲ったりする対象ではないはずなのに。

「・・・だが・・・・に必要なのは、俺だけじゃない。

お前はをずっと見てきたんだろう?なら、のことも理解しているはずだ。

あいつはお前のことを、本当に大切だと思っている。

お前以上の相棒は、いないと思っている。

俺に話せないことも、お前に何度も相談しているはずだ。違うか?」

は、天井を見上げて目を閉じた。

そうしなければ、何故だか熱いものが込み上げてきそうだったから。

どうしてこんなにスコールは、自分のことを理解してくれているのだろう。

そして、まだジャンクションして間もないリヴァイアサンのことも、わかってやれるのだろう。

「・・・約束はする。は俺が絶対に守り抜く。

だが、お前もを守れ。お前は、あいつの最高の“相棒”なのだろう。」

そう、リヴァイアサンは相棒だ。

大切な友人であり、仲間であり、最高のパートナーだ。

リヴァイアサンがクスリと笑ったのが聞こえた。

「・・・・情けないですね。あなたに慰められるなんて。」

「俺は本当のことを言っただけだ。」

最初はどうなることかと思ったが、仲直り出来たみたいでホッとした。

「・・・のことを大切にしなければ、私はあなたを殺すかもしれませんよ。」

「覚悟してる。」

“大切に”。

それは、友人として?仲間として?

そう考えると、何故だか胸が痛んだ。自分でも理由はわからない痛み。

胸が痛んで、はそっと右手で自分の胸を押さえた。

どうしてこんなに胸が痛いんだろう。

この胸一杯に広がる気持ちは、何?



ふとこちらにスコールが来る気配を感じて、はその場を離れた。

あんなシーンを盗み聞きしていたと気付かれたら、スコールにもリヴァイアサンにも怒られるだろう。

そんなのはごめんだ。

自分の気持ちがよくわからなかったけれど、それを理解することは出来なかった。







コックピットに戻ると、仲間達は変わらず相談したり、考えたり、思い思いに行動していた。

リノアはがコックピットに入ってきたのを見て、笑顔で迎える。

それから、ひとつの疑問をに尋ねた。

「ねえ、サイファーいるのかな? あいつ、自分の意志であそこにいるのかな?

それなら・・・・仕方ないんだよね。」

「確かに自分の意志かもしれない。けど、洗脳されている状態での『意志』かもしれないだろ?

・・・あいつは俺の兄貴とは違う。もしかしたら、助けることだって出来るかもしれない。」

そう言うと、リノアは幾分かホッとした表情を浮かべた。

ずっと気になっていたのだろう。

ゼルが、突然に駆け寄ってきた。

「な、な、サイファーと戦うんだろ?一度ガツンって目に遭わせてやるぜ!」

「おぉ、チキン改名を目指すか?」

「俺は元からチキンなんて名前じゃねぇ!!」

頬を膨らますゼルを見て、は噴き出した。

皆、強い決意を秘めているのだと思った。


その時、やっとリーダーがコックピットに現れた。

スコールは仲間達の様子を見て、小さく頷く。

それからに向き直り、手を差し出した。

「?」

首を傾げるに、スコールは言う。

「リヴァイアサンだ。が戻ってきた以上、俺にジャンクションする理由はないからな。」

そう言われ、はスコールからリヴァイアサンを受け取った。

青い光が体に入り、久々の感覚が目を覚ます。

それがあるのとないのとでは、全然違う。

「・・・サンキュ。これから最終決戦だ。よろしく頼むぜ、リヴァ。」

『心得ております。』

リヴァイアサンが自分の中で頷いたのを確認し、はスコールを見つめて頷いた。

強い意志を秘めた笑み。それは、仲間達も同じだった。

「ここまで来たら、後はやるだけね!」

「『ルナティック・パンドラ』へゴーゴー!ラグナ様の作戦で勝利間違いな〜し!」

ラグナロクは、ティアーズ・ポイント上空に停泊しているルナティック・パンドラへと向かった。




信じてみようと思った。

愛と友情、勇気の大作戦。

ラグナに貰った、最高の作戦。素晴らしい作戦。

臭いセリフだとは思ったけど、けれど賭けてみようとも思った。

仲間達を信じるのは、強い気持ちが必要かもしれない。

でも、今の自分達になら、やり遂げることが出来るから。

だから、信じる。

賭けてみる。

危険なギャンブルかもしれないけれど、信じる気持ちが強ければ確実に勝てる勝負。

行こう。

アルティミシアの元へ。

アルティミシアを倒すために。








「いよいよだ! 突っ込もうぜ!」

ルナティック・パンドラの上空に到着した。

あとは突入するだけだ。だが、仲間達の顔には不安の色が見える。

「素直に行かせてもらえるかしら?」

「平気だよ。素直に行かせてもらえなくても、突入するまでだ。」

は言い、前方を見つめる。

スコールは真っ直ぐに視線をルナティック・パンドラに向けた後、セルフィに尋ねた。。

「機関砲、主砲の準備は整ってるか?」

「準備オッケィ〜。ズカ〜んと撃って、ドカ〜んと大穴開けてやる!」

「発射!」

スコールの声とともに、セルフィはラグナロクの機関砲を撃ち出した。

しかし弾丸は、ルナティック・パンドラに届く前に見えない壁によって阻まれる。

そして、ラグナロクも進路を止められてしまった。

バリアだ。そんなに強いものではなさそうだが、バリアが張られている。

「突き破っちゃえー!!」

セルフィは叫び、ラグナロクの操縦桿を思い切り前に倒した。

それとともにラグナロクは速度を上げ、なんと強引にバリアを突き破ってしまった。

その瞬間を計って、セルフィは再び機関砲を撃ち出す。

今度はバリアもないので、ルナティック・パンドラの外壁に弾丸を撃ち込むことが出来た。

そして主砲の一撃により壁が崩れ落ち、そこへラグナロクの『前脚』が爪を突き立てて

機体を固定させる。

ものすごい震動だったが、セルフィは満足そうだ。

他のメンバーは皆、唖然としている。

「・・・派手にやったねぇ〜」

アーヴァインがカラ笑いをしながら呟いた。

「行きましょう・・・」

今ので急激に疲労した気がする。とはいえ、ルナティック・パンドラへの侵入が

成功したのだから、まぁいいか。





大石柱を包み込む巨大な建造物、ルナティック・パンドラ。

月とこの星との間に強力な『場』を創り、

『月の涙』と呼ばれるモンスターの降下現象を引き起こす結晶体物質、大石柱を包み込むように、

十七年前にエスタで建造された。

全長3キロメートル、幅1.5キロメートルという途轍もない大きさとハイテク設備を誇っている。

特定の波形の力場を当てて大石柱を反応させる事で大石柱の指向的空間波を作り出し

浮上させる事が可能。

『月の涙』を意図的に呼び起こすために建造されたとも言われている。


スコール達は飛空挺から降り、ルナティック・パンドラへと侵入した。

すると、すぐに聞き慣れた声がこちらへと近づいてくるのがわかった。

「凄い音したの、こっちだもんよ。きっと、奴らだもんよ。」

「否、奴等、到達不可能。」

「(あの声・・・)」

スコール達は顔を見合わせ頷いて、武器を構えた。

聞き覚えのある声。あの声は、絶対に忘れもしない。

そこに現れたのは、やはりその二人・・・雷神と風神だった。

「あーーーー!! ほら、スコールだもんよ!!」

「驚。然、都合、良。」

スコール達が武器を構えているのを見て、雷神達も武器を構えた。

久し振りの再会なのに、こんな形でしか会えないのが哀しい。

けれど、目の前にいるのはお互い“敵”と認識している相手だから。

をよこすもんよ。」

雷神が言うと、スコールはますます目を鋭くして雷神達を見つめた。

「ふざけるな! は渡さない!

エルオーネも返してもらう!! アデルも復活させない!!」

「Wow!俺もこっちサイドとは言え、欲張りだなぁスコール!」

は言った。けれど、本当は嬉しくてたまらなかった。

スコールが自分を守ってくれているという現実が、とても嬉しかった。

「狡いもんよ!はもらうもんよ!」

「説得、効果無。無理矢理、奪。」

スコールは、ガンブレードを振り上げて地を蹴った。

身を深く沈める雷神と風神に向かって、その刃を思い切り叩きつける。

「がはははっ!そんなもんじゃ、俺達は倒せないもんよ!」

嘲笑うかのように叫ぶ雷神に、スコールは大して気にした様子も見せない。

それよりか、更に強く力を込めて雷神達に向かっていく。

そんなスコールを援護して、後ろからはセルフィとリノアが魔法で応戦。

アーヴァインとゼルは待機し、キスティスは回復魔法の詠唱に入った。

はスコールと同じくガンブレードを振り上げ、彼らに向かっていく。

「悪いけど、まだここでお前らに捕まるわけにゃいかねぇんだわ。」

は言うと、ガンブレードで風神をなぎ払った。

寸でのところで風神は防御したが、それでもかなりのダメージを受けた様子だ。

その時、スコールが叫んだ。



「大いなる雷の精霊よ!全ての力を我に与えよ!!」



全員が目を見開いた。

スコールの叫びとともに姿を現したのは、雷鳥ケツァクウァトル。

今までケツァクウァトルとスコールが戦っているところは数回しか見たことがない。

けれど、即座に現れたケツァクウァトルを見れば、相性がぴったりなのはすぐにわかる。

「ケツァクウァトル、大暴れして来い!!」

スコールの叫びに応え、ケツァクウァトルは唸り声を上げた。

そして、強力なサンダーストームが炸裂する。

雷神と風神は強い稲妻を全身に浴び、その場に崩れ落ちた。

「ま、負けちまったもんよ・・・」

「無情・・・・」

そんな雷神達を見て、スコール達も武器をおさめる。

だが、その時風神達が立ち上がった。

「一先、撤退。」

「お、おう!行くもんよ!」

こちらの隙をつき、逃げ出したのだ。

恐らくはサイファー達の元へ。

スコール達は顔を見合わせ、すぐに雷神達の後を追った。









先に進むと、そこには雷神、風神、サイファー、そしてエルオーネもいた。

エルオーネは不安そうな表情でスコール達とサイファーを見比べている。

「エルオーネを取り戻しに来た。」

「お客さんみたいだぜ。相手してやってくれ。」

サイファーが雷神達を促すと、雷神はゆっくりとスコール達に近付いてきた。

思わず身構えたが、それを制したのは予想外の人物だった。

「雷神、止!」

叫んだのは風神。

風神が、雷神を止めたのだ。

そして、雷神も戦う意思などないかのように項垂れている。

「何だあ?」

サイファーは驚愕の表情を浮かべているが、雷神と風神の決意は変わらない。

「もうやめるもんよ・・・。」

風神はエルオーネを離すと、スコール達の元へ行くように促した。

エルオーネが驚いた表情を見せると、風神は優しそうな顔で頷く。

エルオーネは戸惑いながらもスコール達に近寄り、スコールを見上げた。

「部屋から出ていろ。ラグナが迎えに来てくれるはずだ。」

スコールが言うと、エルオーネは安心して部屋から出て行った。

それを見送り、サイファーは肩を竦める。

「おいおいおい、頼むぜ風紀委員。」

「サイファー、やめるもんよ。何だか訳わかんないもんよ・・・」

雷神の言葉にも、サイファーは鼻で笑うだけだ。

「訳わかんねえのはこっちだぜ。仲間だと思ってたのによ。」

「仲間・・・・」

ぽつりと呟いた風神が、突然声を張り上げた。

「仲間だよ。いつでも仲間だよ。仲間だから、あんたの力になりたいよ。

それであんたの夢が叶うなら何だってしてやりたいよ。

でもね! サイファー、あんた、操られてるだけだ。

もう、自分の夢も何もなくして変なものの言いなりになってるだけだ。

だから、元に戻ってもらいたいんだよ! それ、アタシ達じゃ出来ないから!

スコールに任せるしかないだよ! 悔しいよ・・・スコールに頼るしかないなんて・・・

サイファー! まだ続けるの?」

普段はこんな風にしゃべったりしないのに、自分の気持ちを伝えたいから叫んだ。

サイファーに元に戻って欲しいから。サイファーとまた笑い合いたいから。

こんな戦いは、もうしたくなどないのだから。

風神の言葉に、サイファーは剣を正面に構えた。

「今までありがとよ! 雷神風神!」

その言葉は、既に操られているサイファーの言葉ではなかった。

キラキラと輝く、強い意志を秘めた瞳。

そんなサイファーに安心して、雷神と風神はスコール達に後を託し、その場を去った。

そして、スコール達はサイファーと対峙する。

「サイファー、風神達の言葉、聞いただろ?もうやめろよ。あんたはまだ引き返せる。」

が言うと、サイファーはふっと笑った。

「引き返せる?この俺に、今更引き返せって言うのか?」

「あんたはうちの兄貴とは違う。まだアルティミシアに魅入られてない。

だから戻れ。風神達が待っててくれる。あんたのこと、ずっと待ってるだろ!」

叫ぶが、サイファーは動こうとしない。

やはり、もう駄目なのだろうか。もう、引き返してはくれないのだろうか。

「・・・サイファー。」

、もう何を言っても無駄だ。行くぞ。」

スコールが言った。

剣を、交えないといけないのだろうか。サイファーと。

はひとつ溜息をつき、サイファーに言った。

「・・・戦う前にひとつ聞きたいことがある。はどこだ?」

がここにいないのは、最初から変だと思っていた。

今までとサイファーはともに行動している。

そのサイファーとが一緒にいないというのは、珍しいことだ。

サイファーはの問いに喉で笑うと、ニヤリと笑みを浮かべて言った。

だって?ここにいるさ。そう・・・・テメェらの後ろにな!!!」

サイファーの言葉に、ハッとして振り向いたときには遅かった。

疾風のごとくは飛び出し、を庇うように立つスコールを突き飛ばした。

瞬時のことに、誰も動くことが出来ない。

は無表情のまま、の鳩尾に固く握り締めた拳を叩き込んだ。

「がはっ!!」

『『!!!』』

目を剥くは、そのままの腕に倒れ込んだ。

かろうじて意識はあるようだが、急所に一発入れられたことで息が出来ないらしい。

何かを言おうとしているが、しゃべることが出来ないようだ。

「油断大敵、ってな。」

を担ぎ上げると、サイファーと目配せをして走り出した。

!!!」

スコールの叫びも、達に届きはしない。

「クソッ!サイファーとを追うぞ!!」

スコールは仲間達に言った。全員がしっかり頷く。

それを確認してから、スコール達はとサイファーを追って駆け出した。









<続く>


=コメント=
今回のお話、なんとも短目です(爆
普段の3分の2くらいですよこれ(汗
しかも書いててあんまり楽しくなかった・・・(涙
なんだかなぁ・・・・。
多分次回アルティミシアとの戦闘まで・・・行くかもしれない(笑
とりあえず時間圧縮までは確実ですね。
その後どこまで伸ばせるか、です。

とりあえずすごく短いこの話。
・・・許してください・・・・・; [PR]動画