いよいよあいつとの再会だ。



嬉しい反面、かなりの緊張もしていた。



そんな俺は・・・ちょっと変かな?










hat is your hope ?











「エスタってあれだけの凄〜い国でしょ?きっともの凄い作戦があるんだよ!」

エスタに向かう途中で、セルフィが言った。

リノアとアーヴァインはうんうんと頷いている。

「・・・どんな作戦なのかな? 私も行っていいのかな?」

リノアは首を傾げて、を見た。

はそんなリノアにふっと微笑み、「ああ」と答える。

魔女を倒す作戦。それがどんなものなのかは知らないが、エスタの大統領が

自分達を雇いたいと言っているのは紛れもない事実なのだ。

「エスタには昔の支配者、魔女アデルが帰って来たんだよな?

これ、アデルの罠じゃないよな?・・・何か、俺びびってるな。やっぱ、これじゃチキンだぜ。」

ゼルは自分で言い、苦笑した。

サイファーに何度も「チキン野郎」と馬鹿にされたことを思い出す。

そんなサイファーも、今では敵側に回ってしまっているが。

「魔女イデアは力を継承してが魔女になった。

魔女アデルは宇宙から地上に帰ってきた。これが現在の魔女状況って感じかな?

そして未来ではアルティミシアが待機中でこの時代の魔女を狙ってる、と。

じゃない事を願ってるわ。」

「俺もそう願いたいけどな。さすがにそう甘くはないだろーなぁ。」

は小さく溜息をつき、空を仰ぎながら答えた。

キスティスの言葉はもっともだが、あのアルティミシアがそんなに甘いはずはない。

恐らく、今もの体を奪おうと狙っているはずだ。

早くこちらも行動を起こさないと、また体を操られかねない。





エスタに着くと、の事で捕まるかと思ったがすんなりと大統領官邸まで行く事が出来た。

スコール達は不信に思っていたようだが、はそうは思わない。

胸を張って、ずんずんと大統領官邸内へと向かう。

「大統領がお待ちです。」

大統領の部屋の前で、一人のエスタ兵が言った。

はその兵に「どうも」と軽く言い、大統領の部屋を見つめる。

「俺が先に行こう。」

スコールがの前に出ながら言った。

少々驚きながらスコールを見つめたが、スコールの横顔は普段の無表情で、

何を考えているか読み取ることは出来ない。

けれどにはわかっていた。スコールが、自分を庇ってくれているのだと。

絶対にエスタの者には捕まらないという確信はあったが、スコールがここまでしてくれるのは

嬉しかった。

だから、その場はスコールに任せることにした。



大統領の部屋の扉が開き、全員でゆっくりと中へ入る。

そこには、以前魔女記念館で出会った大男と、最初にエスタに来たとき案内してくれた男がいた。

更に奥にはもう一人、後姿を見せながら何やら作業をしている男がいる。

スコール達は黙って彼らを見つめたが、は彼らを前にして黙っていることなど出来なかった。

もう笑いが止まらない。こんなに、彼らが近くにいるのだから。

嬉しくて、懐かしくて、気持ちを抑えることなんで出来やしなかった。

はゆっくりと彼らに向かって歩み出した。

・・・!?」

「シーッ・・・」

スコール達は驚き呼び止めたが、は悪戯な笑みを浮かべて口元に指を当てている。

静かにしろ、という合図だ。

スコール達は首を傾げた。

ゆっくりとが近寄ると、大男ともう一人の男が達の存在に気付いた。

そして、何やら驚いた表情をしている。

そんな彼らでさえもは静かにするように目配せで訴え、ひたすらに奥の男へと向かう。

そして・・・・・。




「お久し振りだな、ラグナさんよ。相変わらず仕事はサボりっぱなしなのか?」




奥の男の後ろから、そう声をかけた。

驚いて男は振り返る。

その男の顔を見て、スコール達全員が驚きの表情を浮かべた。

そう。その男は、ラグナ・レウァールその人だったのだ。

「・・・・・!?」

「ラグナッ!!!」

ラグナがを認識すると、は思い切りラグナに飛び付いた。

懐かしいラグナの匂い。それは、七年前から全く変わっていなかった。

ラグナは強くを抱き締め、満面の笑みを浮かべる。

「いつの間にこんなにデカくなっちまったんっだよ〜!これじゃ抱っこも出来ねぇじゃんか!」

「いつまでも子供扱いすんなよな!あれから七年たったんだ、デカくもなるさ。」

七年。そう。

は、八歳の時ラグナと出会い、十歳でガルバディア・ガーデンに入学した。

そしては現在十七歳。約七年振りの再会だった。

「キロスとウォードも久し振り!懐かしいなぁ、立派な大統領補佐官になっちまってさ。」

「大統領がこんなだからな。我々がしっかりしないとやっていけぬよ。」

が振り返り大統領補佐官の二人に言う。

彼らは、キロスとウォードだった。

スコール達は目の前に繰り広げられる感動の再会に目をぱちくりさせている。

スコールは夢でとラグナ達が知り合いだと知っていたからまだマシだが、

その他の者達はとにかく驚くばかりだ。

はラグナから離れ、スコール達の前に移動して言った。

「エルオーネから聞いてると思うけど、こいつらがスコール達だ。」

ラグナは頷く。そして、スコール達に近寄って笑顔で答えた。

「お前らが俺の頭の中に入ってたんだろ?頭の中ザワザワして、おっ、何かいるって感じよ。

バトルになると、訳わかんねえパワーでずっげえ戦い方が出来ちまうしよ。

俺達は、そんな時の事を妖精さんが来たって言ってたんだ。・・・って訳で、俺がラグナだ。

エスタ大統領ラグナ・レウァール。仲良くしようぜ。」

ラグナはそう言い、スコール達に握手を求めた。

スコール達はそれに応えて、改めてラグナを見つめる。

もう良い年なのだろう、年相応の外見に見える。

だが、年を取っても変わっていないのは瞳の輝きだった。

あのキラキラした、少年みたいな瞳の輝きだけは、今も健在だ。

「でよ、でよ、こんな大変な時じゃなけりゃもっとゆっくり話すんだけどよ、

ああ、まあ、ちょっとくらいいいか。で、どっから話せばいいんだ?」

「ラグナにしゃべらせておくと俺達はいつまでたってもしゃべらせてもらえないぜ。

こいつ人に何かを話すの、すっげー大好きなんだよ。

だから、俺達が質問して、ラグナにはそれに答えてもらうことにしようぜ。」

が言い、スコールは頷いた。

その後ろでは、リノア達がラグナを見て目を輝かせている。

夢の登場人物だった、あのラグナ達と対面したのだ。

無理もないだろう。

スコールは頭の中で考えをまとめると、口を開いた。

「エルオーネは?」

「あいつの人生って何なんだよな。そう思わねえか?」

ラグナは昔を思い出すように、ゆっくりと語り出す。

「エルオーネが2歳ぐらいの時にエスタの女の子狩りがあった。

ウィンヒルにエスタ兵が現れて抵抗したエルの両親は殺られちまった。

あ、女の子狩りってのはエスタの支配者、魔女アデルの後継者捜しの事だ。

その後隣のレインに育てられて俺とも仲良くなったけど・・・知ってんだろ?

またまたエスタの女の子狩りだ。俺がいたってのにエルは連れて行かれちまった。

俺の人生でいっちばん悔しかった事だな。

んで、俺がやっとこさ助け出してウィンヒルに送り返したら今度は間もなく

レインが死んじまった。そのまま孤児院送りよ。」

「どうしてあんたが一緒にいなかったんだ。」

反論するようにスコールが言う。

そんなスコールに苦笑しながらも、ラグナは続けた。

「もちろんそうしたかったぜ! でも・・・いろんな事情があったんだ。

こりゃ、俺も後から知ったんだけどよ・・・

オダインがエルオーネの不思議な力について研究したがって血眼なって捜し回ってたんだ。

その孤児院の経営者がシド・クレイマーと、その妻イデア。

二人の事はお前の方が良く知ってるだろ?」

スコールは頷いた。

「クレイマー夫妻はエルを守るために孤児院から外へ連れだした。

そのために、でっかい船を用意したって話だけどまったく有り難い事だよな。

そのうち、その船は孤児院みたいになっちまって、エルは船でちびっ子達の

世話をしながら暮らしてたってよ。船での生活は幸せだったって言ってたけど・・・

ホントはどうだかな。世の中にはもっと当たり前の幸せってもんがあるだろ?

船の中で10年以上だぞ?

つい最近、その船がガルバディアに襲われてるところを、

エスタの船が助けてやっと俺のところに辿り着いたって訳だ。

偶然だぞ、偶然。もし会わなかったらどうなってたんだよな。

俺はそん時宇宙に行ってたからエルオーネは追っかけてきた。

ちっちゃいエルが大きくなってよ・・・そこでいろいろ聞いたんだ・・・」

恐らくそれは、スコール達のことや魔女のことだろう。

エルオーネは自分の知っていること全て、ラグナに話したに違いない。

「宇宙からは無事に帰ってきたんだろ?」

「俺達の脱出ポッド回収班が一足遅かった。

エルオーネはガルバディア軍に連れていかれちまった。

あのルナティック・パンドラの中だ。絶対助け出す。

お前、力を貸してくれよな。」

道理でエルオーネの姿が見当たらないはずだ。

ガルバディアに拉致られた。それは、はっきりと悪い方の意味を指している。

「・・・エルは、お前を俺の頭の中に入れて、俺に何かあってもウィンヒルを出るなって

伝えたかったらしい。レインの死に際に側にいてやれって。

レインが俺の名前を呼んだら側にいられるようにってよ・・・・」

「ラグナ・・・・。」

は目を細めて、ラグナを見た。はラグナとずっと一緒にいたのだ。

きっと、レインのことについても何か知っているのだろう。

「レインの事聞かせてくれ。」

「レインの話は・・・そのうちな。いや、やっぱりダメだぁ。話したら思い出が減っちまうぜ・・・」

ラグナは苦笑し、レインのことは話そうとしなかった。

何か、過去にあったのだろうか?

「あんたここで何してるんだ?」

「お前、俺がどんな事してきたか知ってるんだろ?」

頓狂にラグナは問い返した。スコールは軽く肩を竦める。

「最初はふざけたガルバディア兵だった。

いい加減で俺は好きじゃなかった。あんた達3人の仲の良さはわかったけどな。

だけどあんたは変わった。ウィンヒルに行ってからだ。

そしてエルオーネがエスタに誘拐されてあんたは旅に出た。エルオーネを取り返すためだ。

雑誌に記事を書いたり、映画に出たり、金を稼ぎながらエスタに入る方法を捜した。

何とかエスタに入り込んだあんたはエルオーネを取り戻した。」

「妖精さんが時々力を貸してくれた、と。感謝してるぜ。」

スコールの言葉の前半の毒舌ぶりに苦笑しながら、ラグナは言った。

「わからないのは・・・どうして、あんたがここの大統領なんだ?」

「知りたいか? 結構長い話になるぞ。」

「聞かせてくれ。」

間髪入れずに言ったスコールを見て、ラグナは微笑む。

「聞くか? 聞きたいか? んじゃ、聞かせてやる。

まあ、俺はエルオーネを取り戻せばそれで良かったんだけど、

やっぱり、それだけじゃ済まなかった。

何と言っても、魔女アデルが支配して天才だが人でなしのオダインがいる国だ。

おまけに、その頃の2人の興味はちっちゃいエルオーネにあったしな。

んじゃ、サイナラって訳にはいかなかった。」


そう言うと、ラグナは当時のことを思い出した。






エルオーネを無事取り戻したラグナ達であったが、

そこにオダイン博士が血相を変えてやってきたのだ。


『アデルが怒るでおじゃる。このままでは研究がストップでおじゃる。』



オダインは、自分の研究の事しか考えない奴だった。

しかし、アデルの命令に従って魔女の研究をしながらオダインはいろんな発明をしていたのだ。

魔女制御装置(封印施設)もそのひとつ。

それは、ラグナ達に希望を与えた。

アデルを倒せるかもしれない、と。

何よりラグナはエルオーネを助けるために世話になった反アデル派の者達に

恩返ししなくちゃならなかった。

話し合った結果、問題は二つ。

一つ目は巨大破壊兵器となる大石柱を何とかする事。

それは、モンスターを月から呼んでセントラのように破滅状態にしないためだ。

二つ目はエスタをアデル支配から解放する事。

相手は魔女アデル。そう簡単にいくわけがない。

ラグナ達は作戦を練りに練った。何度もシュミレーションで確認までした。

そしてラグナ達は再び、ルナティック・パンドラ研究施設へと戻ってきた。

目的はただ一つ。オダインの指示に従いパネルを操作して大石柱を動かす。

ルートと停止ポイントを海中に設定して、ルナティック・パンドラを沈めた。




「これは簡単だったが・・・もちろんアデルにばれた。

俺達はアデルとの最終決戦のために集結した。

アデルをおびき寄せるためだ。アデルは予想通り現れた。」





アデルは後の魔女記念館である魔法制御施設へとやってきた。

ラグナ達はアデルに従っている振りをして出迎える。


『何事か?』

『大石柱を移動させた犯人を追いつめました。』

『どこだ?』

『あの中へ、エルオーネを人質にして・・・』


アデルは疑う様子も見せずに中に入っていった。

エルオーネの名を出せば、アデルが簡単に中に入るというのは計算済みだった。

だが、中に入ったアデルは釣り下がっているエルオーネを見ると、

ふと何かに気付いたようで後ろのラグナ達を睨んだ。

釣り下がっているエルオーネは、ホログラムだったのだ。

だが、その時には既に遅い。


『俺の計画は・・・いつだって・・・・

完璧と決まっているからな!!! 今だ!キロス、ウォード!!』


突然アデルの足元から光が発せられると、

そのままアデルを魔法制御装置へと移動させ封印してしまった。

アデルの敗因は油断。魔女と言っても元は人間なのだ。

何とか成功した。だが、こんな恐ろしい魔女をずっと側に飾っておくほど、

ラグナ達は悪趣味ではない。

そして、ラグナ達はアデルを果てしなく遠い場所。

・・・そう、宇宙へと飛ばしたのだ。







「まあ、大体こんな感じだった。でも、ホントに大変だったのはこの後でよ〜。

アデルがいなくなったこの国をどうするかって事で大激論よ。

俺は面倒だからホイホイ返事してたら革命のヒーローだとか言われて、

いつの間にか大統領にされちまった。」

「・・・・そんな無責任に大統領になったのかよ、ラグナ・・・。」

は呆れたようにラグナに言い、ラグナはやはり苦笑した。

「んで、オダインはオダインでエルオーネの研究をさせるでおじゃるとか言って騒ぎ出す。

エルオーネだけでもレインの元に返そうと思ったのが間違いだった。

レインが死んじまってエルは孤児院に送られてよう・・・

あん時、せめて自分でエルをウィンヒルまで送っていればレインにも会えたんだぜ・・・。

レインは死んでしまった。エルオーネは行方不明。大統領の仕事は忙しい。

俺はここに残ってあれこれあれこれ考えてな〜んか訳わかんねうちに、

こんなに時間が経ってしまった。・・・まあ、全部俺がやってきた事だ。

良かったのも悪かったのも俺だからな。

・・・なあ、過去なんてもうどうしようもないだろ?

未来の話をしようぜ。いや、まず、この時代を守るとこから始めようぜ。」

確かに過去より未来、未来より現在を守ることが大切だ。

だが、には引っかかるところがあった。

がラグナについて知っている、最大のスコールとの繋がり。

それを、ラグナは話そうとしなかった。

スコールも何も疑っていないし、これではその話は話されないままではないか。

は口を開きかけたが、ラグナに静かに制された。

全てわかっているようだ。

「アルティミシアを倒す作戦って?」

「おお、早速本題か? さすが働き者のSeeDだな。」

「出番でおじゃるか?」

どこからともなくあの声がする。

振り向くと、一目でわかる声の持ち主。オダイン博士の姿があった。

オダインはスコール達に向き直ると、口を開く。

「魔女イデアからいろいろ聞いたでおじゃるよ。

魔女アルティミシアは未来からこの時代の魔女の中に来ているのでおじゃるな。

つまり、身体は未来に置きっぱなしで意識だけをこの時代に送り込んでいるでおじゃる。

これは何かに似ているでおじゃろ? おじゃろ?」

「エルオーネが俺達の意識を過去に送り込んだのと似ている。」

スコールが答えると、オダインは満足そうに何度も頷いた。

「賢いでおじゃる! きっと未来にもエルオーネと同じ不思議を持った人間がいて、

魔女をこの時代に送っていると最初は思ったでおじゃる。じゃじゃじゃじゃじゃ!

実は違うのでおじゃる! 未来の魔女がどうやってここに来ているかというと、

エルオーネの不思議な力と同じ働きをする機械が未来にあるのでおじゃる。

この機械の基礎を作ったのがこのオダインでおじゃる。

実はオダインは、その機械に『ジャンクション・マシーン・エルオーネ』と

名前と付けていたのでおじゃるよ!」

その機械が、未来に残っている。

それは素晴らしき事と思っていいだろう。だが、とんだはた迷惑な話だ。

その機械の名前のせいでアルティミシアはエルオーネの存在を知った。

だからエルオーネは魔女に狙われる。

だが、今のオダインを責めてもどうしようもないのだから仕方がない。

「話を続けるでおじゃる。さてさてでおじゃる。

未来の魔女アルティミシアを倒すには、未来にいるアルティミシアの

身体を倒さないとダメって事でおじゃるな。だから、未来に行かないと

何も出来ないという事でおじゃるよ。時間をすっ飛ばして未来になんぞ行けない。

普通は行けないでおじゃるな。でも、今回は特別なのでおじゃる。

それは魔女アルティミシアの目的が時間の圧縮だからでおじゃるよ。

ここでアルティミシアの行動から推理してみるでおじゃる。

アルティミシアがこの時代に来るためには、この時代の魔女の中に

入ってこなくてはならないでおじゃる。

更に、この時代でエルオーネを捜そうとしたという事は

もっと過去に行く必要があるのでおじゃるな。

そうでなければ、この時代も既に圧縮されているはずでおじゃる。

これを利用するのでおじゃる!」

オダインはファンファーレでも流れてきそうなほど胸を張って言った。

「この時代には魔女は2人いるでおじゃる。魔女と魔女アデル。

そのうち、アデルはまだ覚醒していないはずでおじゃる。

目覚めていたらラグナやオダインはタダじゃ済まないでおじゃるよ。

恐らく、ルナティック・パンドラの中では魔女アデル覚醒が始まっているでおじゃる。

アデルが完全に目覚めればアルティミシアは喜んでアデルに入ってくるでおじゃる。

それは恐ろしいのでおじゃるよ。アデルは強い魔女でおじゃる。

アデルの意識がアルティミシアに勝ったらアデルはこの時代を滅茶苦茶にするでおじゃるよ。

だからアルティミシアの器として魔女を使うでおじゃるよ。以下、作戦説明でおじゃる。」

まず、ルナティック・パンドラに入る。

恐らくエルオーネが捕まっているはずだから、エルオーネを助け出す。

次に魔女アデルが目覚める前に完全に倒してしまう。

それで、この時代の魔女はだけになる。

その後にアルティミシアが入ってくるのを待つ。

そうしたら、エルオーネはをアルティミシアごと過去に送り込む。

エルオーネは自分の知っている魔女にとアルティミシアを送り込むことになるだろう。

それはイデアかアデルか、エルオーネに任せるしかない。

過去に行ったアルティミシアは時間圧縮魔法を使うだろう。

もちろん、この時代にも影響が出る。

それはどんな物かわからないが、影響を感じたらエルオーネはとアルティミシアを

過去から切り離す。

はこの時代に帰ってくる。アルティミシアは自分の時代に帰る。

残るのは時間圧縮の世界。過去現在未来がくっついた、滅茶苦茶な世界だ。

そこで、スコール達は時間圧縮の世界を未来方向へ進む。

時間圧縮世界を抜けたらそこはアルティミシアの時代だ。

「後はお前達次第でおじゃるな。」

オダインは言い、部屋から出て行った。

作戦を説明するだけに来たらしい。

ラグナはオダインを見送り、それからスコールを見つめた。

「引き受けてくれっか?」

スコールは、不安そうにを見つめた。

はその視線に気付き、やわらかく微笑む。

「俺なら大丈夫だよ。」

その言葉を聞き、スコールは頷いた。

「いいだろう。」

「うぉーーーっし!! じゃあ、行くぞ! ラグナロク乗るぞ、ラグナロク!

あの中で最後の作戦説明にしようぜ!一回乗りたかったんだ、あれ。俺と名前似てるしな!」

ラグナはそう言うと、部屋を飛び出して行ってしまった。

そんな大統領を見て、キロスとウォードは疲れたように溜息をつき、後を追う。

スコール達も苦笑を浮かべ、ラグナロクへと向かった。




ラグナは客席に全員揃ったのを確認すると、満足そうに笑みを浮かべた。

「おっし! 諸君! ここからは最終目標アルティミシアまでもう一気に行っちまうぞ。

作戦のおさらい、いってみよう!」

ノリノリなラグナに、は苦笑した。

本当に、七年前から変わっていないこの空気がとても懐かしくて嬉しい。

この男がそう簡単に変わるなんてあり得ないとは思ったが、

ここまで以前と同じだと安心感の大きさも全然違う。

「まずルナティック・パンドラに入りエルオーネを救出する!

次に魔女アデルを倒す! 寝込みを襲うけど、卑怯だなんて言うこたあないぞ。

ここで注意!! アデルは魔女だから力の継承がある。、引き受けてくれるか?」

「了解。俺のことは気にせずに、皆はアデルと戦ってくれ。」

はっきりと答えたに、ラグナ達だけではなくスコール達も笑みを浮かべた。

「おーし! で、次に、魔女アルティミシアがに入ってくるのを待つ!

またまたは辛いけど我慢してくれっか?」

「あぁ、全然平気。アルティミシアが入ってきたら、夢の中でぶん殴ってやる。」

「さっすが! で、エルオーネがとアルティミシアを過去へ送る!

時間圧縮が始まる! エルオーネ、を取り戻す! 圧縮された時間の中を未来へ進む!

アルティミシアの時代は遠い未来。本当ならここにいる誰も存在出来ない世界。

そんな世界に自分を存在させる方法は一つしかな〜い!」

ラグナはオーバーリアクションで言った後、スコール達を信頼するように見つめ、微笑んだ。

まるで太陽のような笑み。その笑みが、と似ていると思ったのはスコールだけではないだろう。

ラグナははっきりと言う。

「仲間同士、お互いの存在を消さない事だ!仲間同士、お互いの存在を信じ合う事だ!

相手が存在する事を信じるんだ! その相手はこっちの存在を信じてくれてるぞ!

友達でいる事、好きになったり好かれたりする事、愛し愛される事!

全部1人じゃ出来ねえだろ? 相手が必要な事だろ? なあ、お前達?

相手と一緒にいるところを一番思い浮かべやすい場所はどこだ?

そこに全員が一緒にいる様子を思い浮かべるんだ。

時間圧縮が始まったらそういう場所、考えて、そこを目指せよ!

そうすりゃ大丈夫! その場所はお前達を迎えてくれるぜ! どんな時代にだって行けるぜ!」

信じ合う心さえあれば。

そう、スコールと約束した。

あの花畑で、待っているから、と。

もう二度と迷ったりしない。あそこで、スコールと会うのだから。

「この作戦に必要なのは愛と友情! それからこの作戦を信じる勇気!

名付けて『愛と友情、勇気の大作戦』だ!頼んだぜ皆!」

その言葉に、スコールと以外の仲間達は笑顔で持ち場へと向かった。

仲間達の強い絆が、全てを結んでいる。

スコールは仲間達を見送り、軽く肩を竦めた。

「愛とか友情とか古臭いけどみんなその気になったみたいだ。」

「上手くいきそうか?」

「やってみるさ。」

スコールはふっと笑い、踵を返してその場を後にした。

はそんなスコールを見送り、ラグナを振り向く。

ラグナは久々の演説に緊張したのか、足をつってしまっている。

そんなところまで、昔と全く同じなんだから。

は苦笑を浮かべ、小さく息をついた。




「・・・どうして、スコールに言わなかったんだ?」

は、スコール達の気配が完全にコックピットの方へ消えてから、ラグナに尋ねた。

ラグナはふとを見つめ、目を細める。

「・・・スコールに初めて会ったとき、おかしいと思ったんだ。あんたと同じ気配がしたから。

スコールと一緒にいると、あんたと一緒にいる気持ちになってくる。」

ずっと不思議だと思っていた。

スコールと話しているとき。スコールと歩いているとき。スコールが傍にいるとき。

ラグナが、まるで一緒にいるような感覚に陥ることが、あったから。

「・・・スコールがあんたの息子だと確信したのは、それからすぐのことだった。

戦ってるときの表情。まるであんたに生き写しだ。

もちろんスコールは、母親似なんだろうけど、そんなんじゃなくて・・・

戦ってるときの真剣な表情。そっくりだったんだよ。」

が言うと、ラグナはふっと目を閉じて笑みを浮かべた。

その顔は、時々スコールが見せる表情と本当に似ていて。

ふとした瞬間に見せる仕種が、驚くほどに似ていて。

「・・・俺だって、こんな形で息子と再会するとは思ってなかったぜ。

ホント、ああして見るとレインにそっくりなんだよなぁ。

美人なレインとこの俺様から生まれたんだから、美形だとは思ってたけどよ!」

「アホ・・・・。」

ラグナは口を開けて笑い、それから静かにを見つめた。

「嬉しかったぜ。俺の息子が、あんな立派に育ってるんだなって思って。

もっとも、性格は俺と似ても似つかないけどな?」

クスリと、は笑った。

スコールが、ラグナみたいなお気楽な性格だったら、どんなことになっていたのだろう。

リーダーはやっていたかもしれないが、きっと今とは全く違った状況になっていることだろう。

「・・・心配しなくても、全部終わったらゆっくり話すさ。

あいつが聞きたくないって言えば仕方ないけどな。」

「・・・そっか。」

ラグナの言葉に、安心したようには微笑んだ。

それから、ラグナに歩み寄って目を閉じ、ラグナの肩にそっと頭を乗せる。

優しいぬくもりが伝わってきて、懐かしさが胸に広がった。

「何だよ〜、やっぱり、甘えん坊のままじゃねぇか。」

「うるせぇ。最終決戦の前くらい、息抜きさせろ。」

ラグナは「しょうがねぇな」と言うと、そっとを抱き締めた。

いつか、が幼いときにしてあげたのと同じように。

そんなとラグナを、キロスとウォードは微笑みながら見守っていた。







『話があります。』

スコールはハッとした。

内側から声がした。すぐに、それがリヴァイアサンだと気付く。

が目を覚ましたら、言いたいこともたくさんあると言っていたリヴァイアサン。

スコールは頷くと、リヴァイアサンと二人きりになれる場所を求めてコックピットを抜け出した。



スコールが向かったのは、ラグナロクの入り口付近。

そこなら、ラグナ達もいないし仲間達もいない。

スコールが立ち止まると、すぐに体の中からリヴァイアサンが姿を現した。

人の姿をしたリヴァイアサンは、スコールの前に立つと凛とした表情でスコールを見つめている。

その目には、かすかだけれど確実に感じる『怒気』があって。

「・・・話を聞く約束だったな。」

「ええ。あなたが断るとも思いませんでしたが。」

リヴァイアサンははっきり言うと、キッとスコールを睨みつける。

スコールはそんなリヴァイアサンを静かに見返しながら、目を細めた。

「・・・の目を覚まさせてくれたのには礼を言います。

けれど私は・・・私は、あなたが憎くてたまらない。」

憎しみを、怒りを、悔しさを、噛み殺しているような表情で。

スコールは眉根を寄せる。

「・・・俺がお前に何かをしたか?」

「あなたは私の全てを奪い去る。私がずっと大切にしてきたものを、あっさりと奪い去ったんです。」

スコールはリヴァイアサンの何かを奪い去った記憶なんてない。

意味がわからずに呆然としていると、リヴァイアサンは叫んだ。

「あなたは私の気持ちを知らない!!を守るのは、私だけだったはず!!

なのに、あなたは無力な私を差し置いてを守った!!」

「・・・・、だと?」

どうしてこの場にが出てくるのかがわからない。

リヴァイアサンは俯き、強く唇を噛み締めた。

拳も力の入れ過ぎで、腕には白い筋が浮かび上がっている。

「・・・どうして・・・どうして、あなたなんかにっ・・・!!」

悔しかった。

ずっとを見守ってきたのは、自分だったはずなのに。

の一番の理解者は、自分だったはずなのに。

「お前・・・もしかして、のことを?」

スコールはもしやと思い、リヴァイアサンに尋ねた。

「滑稽な話だとあなたは笑うかもしれない。けれど私は、のことが好きなんです!

G.Fだから許されないのだというのなら、私はこんな体いらない!

私はと出会ってから、だけを見てきた。そしてこれからもそれは変わらない!」

強い意志を秘めているはずの瞳も、今は俯いているせいで見ることは出来ない。

スコールがもう一度リヴァイアサンに声を掛けようとしたとき、

リヴァイアサンはスコールに飛び掛かった。

「っ!?」

リヴァイアサンは両腕でスコールの胸を強く叩く。

声を押し殺しているところから、泣いているのだとすぐにわかった。

「なのに・・・・なのに私では駄目なのです・・・!

私はしか見ていないのに・・・は私を見てはくれない・・・!

が本当に苦しんでいるとき、彼女を助けたのは私ではなかった!

そしても、私ではなくあなたに助けを求めた!!」

リヴァイアサンは腕をスコールに押し付けた。

叩くことが出来ない。情けないとは思いつつも、力の入れ過ぎで手が上手く動かない。

「リヴァイアサン・・・。」

に今必要なのは私ではなく、スコール、あなたなんです!」

泣いているリヴァイアサンを、スコールはどうすればいいのかわからなかった。

G.Fでも泣くことがあるのか、と、リヴァイアサンの忠誠心に感服した。

・・・いや、リヴァイアサンの切ない恋心に、何故か胸が痛んだ。

「私では駄目だった・・・・。スコール、あなたでなければ・・・。」

もう声は出なかった。

悔しくて哀しくて、この怒りと憎しみをどこにぶつけたらいいのかわからなくて。

どうすれば救われるのか、自分は本当に救われたいのか、それすらもわからなくて。

リヴァイアサンはそっとスコールから離れると、強く唇を噛み締めた。

唇が切れて、血が滲んだ。けれど、痛みは感じなかった。

「・・・・を譲る気は、ない。」

はっきりとしたスコールの声に、リヴァイアサンはふと顔を上げる。

「・・・お前に同情して、を譲る気は、俺にはない。」

「・・・・・。」

静かなスコールの声が、リヴァイアサンの中に染み込んで行く。

残酷な言葉なのに、安心していく自分に驚いた。

リヴァイアサンは胸に手を当て、スコールを真っ直ぐ見つめる。

「・・・だが・・・・に必要なのは、俺だけじゃない。

お前はをずっと見てきたんだろう?なら、のことも理解しているはずだ。

あいつはお前のことを、本当に大切だと思っている。

お前以上の相棒は、いないと思っている。

俺に話せないことも、お前に何度も相談しているはずだ。違うか?」

スコールはそっとリヴァイアサンに歩み寄ると、そっと手を差し出した。

リヴァイアサンは不思議そうな表情を浮かべる。

「・・・約束はする。は俺が絶対に守り抜く。

だが、お前もを守れ。お前は、あいつの最高の“相棒”なのだろう。」

本来ならば腹が立つはずなのに。

どうして、こんなに穏やかな気持ちで恋敵を見つめているのだろう。

泣き腫らした目が、重い。

けれど、胸は驚くほどすっきりしていた。

「・・・・情けないですね。あなたに慰められるなんて。」

「俺は本当のことを言っただけだ。」

リヴァイアサンはクスリと笑うと、スコールの手をそっと握った。

暖かいぬくもりが、伝わってきた。

それだけで、リヴァイアサンは負けたと思った。

こんなに暖かい人ならば、を奪い去る権利もあったのだ、と。

「・・・のことを大切にしなければ、私はあなたを殺すかもしれませんよ。」

「覚悟してる。」




まだ、気持ちの整理はつかないけれど。

でも、少しずつ、このスコールという男のことを、好きになれる気がした。

だって、大好きなが信頼している人だから。

はまだ自分の気持ちに気付いていなくて、抱いている気持ちを「恋」とは知らないけれど。

それを、見守っていきたいと思った。

きっと、この二人に最高のハッピーエンドを捧げたいと思ったから。










<続く>


=コメント=
ラグナとの再会&修羅場終了です(ヤな言い方だな)
修羅場というか、リヴァイアサンが気持ちをぶつけただけでしたね。
けど、やっぱりリヴァイアサンはこういう奴だと思うんです。
スコールに負けたのは悔しいけれど、それよりものことを思いたい。
が幸せならば、それでいいという感情でしょうかね。
・・・・でもそういう奴が結果的に損するんだよなぁ(苦笑
ごめんねリヴァイアサン!今度ちゃんとした夢書いてあげるから!!(笑

今回の話、ラグナとの話や作戦の説明が異常に面倒臭かったです。
とにかくおじゃるがしつこい!!(笑)
オダイン博士しゃべり過ぎですよ。小説書くこっちの身にもなってください。
おじゃるってしつこいからなぁ・・・。

えぇと・・・次回はどこまで進むんでしょうか。
ルナティック・パンドラ突入して、その後・・・
サイファーとか雷神達とか、あそこらへんと再会出来るかなぁ・・・。 [PR]動画