ずっと憧れていたSeeD。
今、俺はSeeDになるというひとつの夢を掴もうとしている。
What is your hope ?
サイファーを追って廃墟の電波塔へと乗り込んだスコール、ゼル、セルフィ、の四人。
電波塔の中は薄暗く、やはり廃墟の空気が漂っていた。
「はんちょ〜〜〜!!」
セルフィが叫ぶ。声は建物の中で木霊し、消える。
「サイファーは?」
「多分上へ向かったんじゃないか?ホラ、エレベーターがあるし。」
ゼルが聞き、が答える。はエレベーターを指差した。
「上、か・・・。」
スコールが腕を組んで上を見上げた。
上の方からは、なにやらバチバチという電気の音が聞こえる。
「・・・行くしかないだろうな。サイファーが上へ向かったのなら。」
「だな。リヴァイアサンが心配だ。」
四人はエレベーターに乗り、上へと向かった。
「ビッグス隊長!報告を急げとの命令が届いております!!」
「うるさいっ!こっちは大変なんだ!報告なんて適当にしておけ!!」
二人の兵士の漫才のようなやり取り。
部下の兵士はやれやれと肩を竦め、「では、その辺りを見回って来ます」と言いその場を離れた。
「くそぅ・・・なんで俺がこんなことを・・・。」
どうやらこの上司の兵士は電波塔の修理をしているようだ。
兵士なのにこんな雑用を任されれば、愚痴を吐いたとしても仕方がない。
と、その時スコール達の乗ったエレベーターがこのフロアに着いた。
スコール達はエレベーターを降り、兵士の姿を不信そうに見つめる。
「ウェッジ!コードを持って来てくれ!」
そう言いながら振り返る。
沈黙。
「どわぁぁっ!?!?」
兵士が驚きながら飛び退いた。
そりゃそうだろう。
自分の愛する部下のウェッジがいると思ったのに、そこにいたのは敵陣のSeeD候補生達。
しかも自分がしていることをバッチリ見られてしまった。
「お、お前達・・・・。」
ビッグスは固まっている。冷や汗だらだらである。
「お、お前達!!今逃げれば、見逃してやらなくもないぞっ!!」
胸を張って「エヘンッ!」と言うビッグス。だが、誰も突っ込まないので沈黙が続く。
「・・・お、俺は強いんだぞっ!?」
沈黙。
「・・・弱い犬ほど良く吠える・・・。」
がぼそりと呟いた。火に油とはこのことだろう。
ビッグスは顔を真っ赤に染め、ぶるぶると震え出した。
怒っているのか、それとも恥ずかしがっているのか。
「き、キサマッ・・・俺を侮辱するかっ!?」
「いや、侮辱も何も事実だし。」
「く〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
面白いやつである。
ビッグスは戦闘体勢に入った。
それを見計らって四人も戦闘体勢を取る。
スコールとはガンブレードを構え、セルフィはヌンチャクを取り出し、ゼルは拳を構える。
と、その時ウェッジが帰って来た。様子を見て慌ててビッグスの隣に付いて構える。
「うぇっじぃ!!キサマ今までどこで何をしていた!!」
「えぇっ!?私はその辺を見回って来ますと言ったじゃないですかっ!?」
「聞いちょら〜〜んっ!!キサマは今月給料ナシ〜〜〜!!」
「ひぇ〜〜!?黙ってれば良かったぁぁぁ!!!」
ウェッジの泣き声にも似た叫びを聞く。
スコールは溜息をつき、ゼルとセルフィはやれやれと頭を振っている。
は苦笑しつつ、ビッグスに斬り掛かって行った。
剣を交える事数回。相手の攻撃を受ける事数回。攻撃を仕掛ける事数回。
ビッグスとウェッジの体力も限界に近付いていた。
それはそうだろう。
二人とも兵士とは言え、SeeD候補生とは体の鍛え方が違う。
それに今は2対4の戦いだ。これで疲労が見られないのならおかしいと言ってもいい。
「なぁ、あんたらそろそろやめないか?」
心底面倒臭そうにが言った。
「ま、まだまだっ!!」
「び、ビッグスたいちょぉ〜、そろそろやめませんかぁ〜?オレ疲れましたぁ〜!」
ウェッジが言った。ビッグスは「アホッ!」とウェッジの頭をゲンコツで殴り、再び構え直す。
だが、不意に二人の体が宙に浮いた。急な突風に二人の体が舞い上げられたのだ。
「・・・へっ!?」
「な、なんじゃこりゃーーー!!」
二人の体は空高く舞い上がり、見えなくなった。
恐らくどこかへ墜落したのだろう。しかし今はそれどころではない。
ビッグスとウェッジの姿が消えた直後に目前に現れた怪物。
「エ、エルヴィオレ・・・!」
が後退りながら呟く。
「エルヴィオレ?」
「風をつかさどるバケモンみたいなヤツさ。あいつのストームブレスは強力だ・・・。気をつけろ!!」
が叫ぶ。セルフィが手足をバタバタさせながら言った。
「ねー!はんちょー、どこ〜!?」
その言葉にはハッとする。そう言えばサイファーはどこに?
こんなエルヴィオレ一匹、リヴァイアサンさえいれば強敵ではないのに。
は後ろを振り向く。そこには、腕組みをしながらニヤニヤとこちらを見ているサイファーの姿があった。
「サイファー!!」
そろそろ堪忍袋の緒が切れる頃だ。は頭に血が上るのを実感していた。
ツカツカとサイファーに歩み寄り、その胸倉を掴む。
サイファーは一瞬驚いたように目を白黒させたが、ややあってを睨み付けた。
「何ニヤニヤしてやがる。お前・・・リーダーの仕事くらいしっかりしろよッ!!!」
「何言ってやがる。リーダーは俺だ。俺が手を出すまでもないだろ?」
「何がGFだ・・・。リヴァイアサンも使えないお前がっ・・・。」
はサイファーの額に手を当てた。
「返してもらうぜ。俺の相棒ッ!!!」
青い光がの手の中に入って行く。
頭の中に心地の良い青い光が満ち、安心感が戻ってきた。
「ゼル、セルフィ。下がってろ。」
が言う。
「スコール。エルヴィオレからセイレーンをドローしとけ。」
「エルヴィオレがセイレーンを持っているのか?」
「ああ。エルヴィオレからセイレーンの反応が伝わってくる。
ここで手に入れとかないともう二度と手に入らないかもしれないぜ。」
スコールは頷き、一歩前に出てガンブレードを構えた。
目を閉じ、エルヴィオレの中のセイレーンと共鳴するように神経を集中させる。
セイレーンと心が触れ合った時、瞬時にセイレーンを引っ張り上げる。
実際に引っ張り上げる訳ではないが、意識の中で引っ張り上げるのだ。
青紫色の光がスコールに吸い込まれ、スコールにセイレーンの反応が移る。
ドロー成功だ。スコールは叫んだ。
「!!」
「了解!!」
スコールの声とともにが飛び出した。
ガンブレードを腰に装着し、両手をクロスさせる。
「見てろよサイファー。これが俺とリヴァイアサンの戦い方だ!」
の周りの風が渦を巻いている。
スコール、サイファーを含め、四人は目を見張った。
「リヴァイアサンッッ!!」
が両手を広げると、龍の鳴き声が張り裂けんばかりに響き渡った。
大波が寄せては反し、そのたびに水飛沫が飛ぶ。
目の前に光の玉が現れ、その中から鮮やかな色の体を持つ青い龍が姿を現した。
海龍、リヴァイアサン。
リヴァイアサンはの傍らに寄り、そこから一気に津波を引き起こした。
エルヴィオレが津波に流され、反す波に再び飲まれる。
エルヴィオレはしばらくもがいていたが、やがて静かにその場に崩れ落ちた。
それを見計らってがリヴァイアサンを還す。
見事なコンビネーションだった。
扱い難いリヴァイアサンとの息はぴったりで、まるで幻想を見ているかのようだった。
エルヴィオレは既に息絶えていて、そこにはエルヴィオレの亡骸だけが横たわっている。
「・・・。」
ゼルが呟くようにの名を呼ぶ。
まさかここまですごいものだとは思わなかった。
は少し濡れた髪をかき上げると、仲間達の方を振り返った。
「おい、セルフィ。班長・・・リーダーに何か伝令があったんじゃないのか?」
「あっ!」
セルフィは思い出したようにハッと顔を上げると、サイファーに振り返った。
サイファーは先ほどのこともあるのか、少々呆然としている。
「はんちょー!伝令!」
いつものお気楽な声でセルフィが告げる。
「あ、ああ・・・。なんだ?」
「“3時に全員撤退!遅れないように!” とのことでーす。」
サイファーは自分の腕時計を見た。
2:30
「げっ。あと30分しかないじゃねぇか!!」
サイファーはそう言うと、仲間達を見ることなくエレベーターでさっさと戻って行ってしまった。
「あっ!!」
自分だけ先に行ってしまったサイファーを見て、全員が素っ頓狂な声を上げた。
まさか置いて行かれるとは思わなかったのだ。
その場に残された四人も慌ててサイファーの後を追い、電波塔を降りた。
電波塔の入り口を出てすぐ、四人は足を止めた。
「な、なんだよ・・・、こいつ・・・。」
ゼルが後退りながら呟く。
スコールとは険しい表情で目の前の“モノ”を見つめている。
「ブラック・ウィドウ、か・・・。」
スコールが呟いた。セルフィとゼルは首を傾げる。
「ブラック・ウィドウ?」
聞き慣れない言葉だ。セルフィとゼルは互いに顔を見合わせている。
が面倒臭そうに舌打ちをした。
「こいつはX−ATM092の型だ・・・。ちょいと厄介な相手だな。」
「エ、エックスエーティーエムゼロキュウニ?な、何だよ、それ・・・。」
「簡単に言ってしまえば戦闘用型ロボットの親玉みたいなものだ。自己回復機能まで持ち合わせてる。」
スコールがガンブレードを構える。それに続いても魔法の用意をした。
セルフィとゼルは首を傾げるばかりである。
「、サンダーはまだ持ってるな?」
「ああ。スコールこそ、ケツァクウァトルの準備は出来てんのか?」
「もちろんだ。」
二人が顔を合わせ、ニヤリと笑った。
「ケツァクウァトル!!」
「サンダーッ!!」
ケツァクウァトルが稲妻とともに現れ、ブラック・ウィドウを襲う。
そしてのサンダーが美しい閃光となり、ブラック・ウィドウに直撃した。
ブラック・ウィドウは雷系の攻撃に弱い。その弱点を狙って、ケツァクウァトルとサンダーで攻めたのだ。
「もう一発!!」
がもう一度サンダーを食らわす。
ブラック・ウィドウは黒い煙を放出している。ゼルが言った。
「今のうちに逃げようぜ!!」
異議を唱える者はいない。四人はブラック・ウィドウを避けて走り出した。
ブラック・ウィドウは自己回復システムを兼ね備えている。つまり、しばらくすればまた襲ってくるということだ。
今の自分達のレベルでは、ブラック・ウィドウに勝つ事はまず無理だろう。
そこをわかっているからこそ、四人は逃げたのだった。
後ろからブラック・ウィドウがものすごい速さで追い駆けてくる。
何度もつまずき、転びそうになりながら四人はひたすら走っていた。
ブラック・ウィドウはドールの街を破壊しながら、それでも尚速度を緩めることはない。
が途中で何回か立ち止まり、サンダーの魔法を浴びせ掛けていたが効果はほとんどない。
ほんの数秒ブラック・ウィドウの動きが止まるだけで、結局は何の意味もなかった。
「もうちょっとでビーチに着く!!とにかく走れッ!!!」
スコールが叫んだ。
「「「了解ッ!!!」」」
それに応答する仲間達。これでは、サイファーが班長なのかスコールが班長なのかわからない。
だが、少なくとも全員サイファーよりもスコールの方が班長に適していると思っていた。
ビーチが見えてきた。
船の上でキスティスが苛立ちを隠せないようにB班の帰還を待っている姿が目に入る。
「先生ッ!!!」
がぐんとスピードを上げて先頭を切った。
キスティスに向かって出来る限りの声で叫ぶ。
キスティスは自分の生徒達の後ろから追ってくるブラック・ウィドウの姿を見て、驚愕の表情を浮かべた。
「俺が時間を稼ぐ!!皆先に船に乗れ!!」
が立ち止まり、サンダーの魔法を放ちながら叫んだ。
「待て!!無茶なことはするな!!!」
「けどこのままじゃ全員くたばるのがオチだぜ!?」
ブラック・ウィドウが飛び出して来た。その衝撃でスコールとはローリングする。
だが二人ともすぐに立ち上がり、駆け出した。
「くそ・・・こんな時に使いたくはなかったんだけどな・・・。」
が舌打ちをする。スコールは不信な視線をへと投げ掛けた。
は立ち止まってブラック・ウィドウに魔法を放つ。
「サンダガッ!!!!」
ひとつだけ持っていたサンダガ。本当はこんな場面で使いたくはなかったのだが、この際仕方がない。
ブラック・ウィドウの動きが止まった。その隙を見てとスコールは船へと全速力で走った。
キスティスが船の上からガトリング・ガンでブラック・ウィドウを攻撃した。
船のエンジンがかかり、船がビーチからゆっくりと離れて行く。
「ま、待て待てッ!!俺達がまだ乗ってないってーの!!」
が焦るように叫び、スコールが船へと思い切りジャンプした。
船の甲板に立ち、に手を伸ばす。
はそれを見て一瞬頓狂な顔をしたが、すぐにニッと笑い、ビーチの地を蹴って思い切り飛び上がった。
スコールの手を取り甲板に着地し、最後にブラック・ウィドウに向かってウサ晴らしのサンダーをかました。
「人選ミスだ。」
がムッとした表情で、いつものように腕を組んだまま言った。
ドールから帰って来たSeeD候補生達は、SeeD授与式まで各自部屋で待機となった。
スコールとは同室だ。二人とも部屋のシャワーを浴びて、休憩をしているところだった。
「・・・いきなり何を言っているんだ。」
「今回の班長がサイファーだったことだよ。ぜってー、人選ミスだ。」
の言う事ももっともだった。
ドールから脱出してバラムに帰って来たものの、またサイファーの単独行動で車を奪われてしまったのだ。
おかげでスコール、、ゼル、セルフィの四人は歩いて帰る事になった。
大した距離ではなかったが、やはり歩いて帰るというのは良い気分がしない。
帰りの道中、の機嫌が良くなる事はなかった。
「・・・・・・。」
「大体なんなんだよ、あのガキみたいな性格は!!リーダーの仕事、ちっともしてなかったぜ?」
「・・・・・・。」
「・・・おい、スコール、聞いてんのか?」
「・・・・これだけ至近距離なら嫌でも耳に入るだろう。」
「そりゃそうだ。」
その時、放送が入った。
≪SeeD試験を受けたSeeD候補生達にお知らせします。
合格発表があるので、A,B班の候補生は2階のA教室に、C,D班の候補生は2階のB教室前に集合してください。
SeeD試験を受けたSeeD候補生達は、指定された教室の前に集合してください。≫
は肩を竦めた。
「さ、合格発表に行くか。」
「・・・そうだな。」
二人は立ち上がり、部屋を出て行った。
<続く>
=コメント=
第二章です。
やっとのことでSeeD試験が終わりました!
長かったよ・・・。ついでにサイファーがキャラ崩れしてるよ・・・(汗
本当にサイファースキーの方々!申し訳ない!!(涙
私もサイファーは好きなんですよ・・・(多分
でもつい、さんとかけるとものすごくガキンチョになっちゃうんです(涙
マジすみません!!(涙