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ずっと会いたいと思ってた。



けど、白い霧が俺を邪魔して・・・動くことが出来なかった。



それを助けてくれたのは、スコール



お前だったんだよ。










hat is your hope ?











スコールとは静かに飛空挺の中を進んでいた。

しんと静まり返り、広々としている飛空挺内部。

その中を、決して繋いだ手を離そうとはせずに、ただ静寂を守ったまま。

何も言うことはなかった。

いや、本来ならば言いたいことは山のようにあったはずなのに、今ではそれもどうでもいい。

ただ、一緒にいられれば。ただ、一緒の時間を過ごせれば。



奥へ進むと、コックピットはすぐに見つかった。

コックピットへ上がると、が驚きの声を上げる。

「うわぁ・・・・。」

そこには、見たこともないような機器が並んでいたのだ。

専門にやっている者でないと、恐らく操縦など出来ないだろう。

スコールは機器を見回して、目を細めた。

「(これを・・・操縦するのか?・・・俺には出来ない。)」

はスコールの手を放し、機器へと近寄った。

それから、感嘆した。

「すげぇ・・・。こんな型の機械なんて、あるんだな・・・。

一昔前の旧式だけど、充分現在でも通用する機械だよ。」

そうだ。はこういった機械に詳しいのだった。

ふとがスピーカーを見つめ、首を傾げる。

スピーカーに耳を近付け、急に顔を上げてスコールを呼んだ。

「スコール、何か言ってる!」

スコールはハッとしてに駆け寄り、スピーカーのボリュームを探した。

どこかにボリュームがあるはずだ。それを上げれば、何かわかるかもしれない。

スコールはボリュームを見つけ、それをいじった。

すると、どこからかの通信が聞こえてきた。

『こちらエアステーション。こちらエスタ・エアステーション。』

「(これは・・・)」

目を見開く。

『飛空艇ラグナロク応答せよ。飛空艇ラグナロク応答せよ。』

「(・・・電波通信。)」

そう。

電波障害の原因でもあったアデル・セメタリーが月の涙と共に地表に墜落したため、

皮肉にも世界中の電波障害が解消され、電波通信が可能になったのだ。

『こちらエアステーション。飛空艇ラグナロク応答せよ。』

通信は変わらず流れてくる。スコールはこちらのマイクの電源を入れ、口を開いた。

「この船はラグナロクでいいのか?」

『Wow! ホントにラグナロクか? 宇宙にいるんだろ?』

通信の担当者は歓喜の声を上げ、興奮した様子でしゃべっている。

横を見ると、も嬉しそうな表情を浮かべていた。

「宇宙の・・・何処かはわからない。」

『ラジャー、ラジャー! 貴船の位置はこちらで把握している。ラグナロク・・・17年振りだ。』

その言葉で、光が見えた。

もしかしたら、帰れるかもしれない。そう思うと、気持ちが弾んだ。

「俺達は帰れるのか?」

『こっちに任せとけ! 燃料は充分残ってるはずだ。

だから大気圏突入プログラムに現在位置データを入力すれば大丈夫だ。

大気圏に入ったらこっちから誘導する。な、安心しただろ?』

明るい声に励まされているのがわかったが、スコールは困ったように眉根を寄せた。

何故なら、自分はこの機器の操作方法がわからないのだ。

にならわかるかもしれないと思ってを見やったが、

にも操作方法まではわからないらしく肩を竦めただけだった。

スコールはマイクに向き直り、言う。

「データ入力の仕方がわからない。」

『大丈夫! 何でも教えてやるさ。今、操縦席に着いてるか?』

「シートがたくさんある。」

『右舷側のシートだ。席に着いたら教えてくれ。』

スコールはそのまま操縦席に着く。

は邪魔だと思ったのか、コックピットの入り口に戻って佇んだ。

「操縦席だ。」

『目の前にタッチパネルが見えるだろ?』

スコールの前には、確かにアルファベットの並べられたタッチパネルがあった。

スコールは頷く。

「ああ、見える。」

『後は簡単だ。これから言うデータを入力してくれ。』

スコールはふぅ、と息をつき、タッチパネルの上に手をかざした。

「言ってくれ。」

『WJHEIH/・・・』

「入れた。」

『続けて・・・2872/HD−IEU』

「入れた。」

『エラーは出ていないな?』

「大丈夫だ。」

どのモニターにも、エラーらしき表示はされていない。

スコールは安堵の溜息を吐き、スピーカーから流れてくる声に耳を傾けた。

『それから・・・大丈夫だと思うんだが、やって欲しい事がある。

全ての燃料の消費を押さえるための措置だ。重力発生装置を切れ。

さっきと同じパネルで操作出来る。』

「了解。」

パネルを見ると、わかりやすく「重力発生装置」と書かれたボタンがあった。

スコールはそれを操作する。

重力が切れたのが、座っていてもわかった。

「操作完了。」

言うと、通信の担当者は静かに答えた。

『おめでとうラグナロク。これでOKだ。

それから・・・効果があるのかは知らないが、言っておきたい言葉がある。』

スコールは首を傾げた。

そして、次の瞬間スピーカーから流れ出した言葉に、不覚にも笑みを浮かべそうになった。



『エスタ・エアステーションスタッフ一同、貴船の幸運を祈る。』



「・・・・ありがとう。」

そう言うのが精一杯だった。嬉しかった。胸が熱くなった。

帰れる。これで、あの自分達の星に帰れるのだから。

スコールは操縦席から後ろを振り返り、入り口に立っているを呼んだ。

。」

隣の席を指差すが、は動こうとしない。

首を傾げるスコールに、は言った。

「足首捻っちゃってさ。歩けないんだよな。」

にっこりと微笑んでいる。すぐに、その言葉が嘘だとわかった。

何故なら、先程からずっとは一緒に歩いていたのだから。

嘘を言うな、早く来い。

そう言うことも出来た。けれど、スコールは口を開くことが出来なかった。

微笑んでいるが、また消えてしまうのでは、と不安になったからかもしれない。

スコールは操縦席から腰を上げると、シートを飛び出しての元まで行った。

は両手を広げてスコールを迎える。

そのままスコールはを抱え、返す足でシートに飛び乗った。

「隣の席に座れ。ベルトを締めてじっとしてろ。」

「・・・じっとしてろ、なんてなんだか保護者みたいだな。」

が自分の腕の中でクスクスと笑ったのがわかった。

隣の席に座れ、なんて言っておきながら、を抱き締めたままのスコール。

その矛盾がなんともいえず滑稽で、笑ってしまったのかもしれない。

はスコールから離れようとせずに、スコールの首に手を回した。

スコールは一瞬驚いたが、そのままを優しく抱え込む。

「帰れるかな?」

「多分・・・な。」

そっけないスコールに、は苦笑を浮かべた。

「もう少し、こうしてて良いだろ?」

「・・・珍しいな。どうしてこんなにくっつきたがるんだ?」

「・・・スコールはこういうのは嫌か?」

尋ねられ、スコールは肩を竦めてを見る。

あんなに見たかった銀色の瞳が、今目の前にある。

その事実が、まるで夢のようにも感じられて・・・。

スコールは、小さく頭を振った。

「慣れてないんだ。」

「子供の頃は? 両親に触れたり、触れられたり、抱っこされたり・・・安心しなかった?」

「両親・・・知らないんだ。どんなに記憶を辿っても出てこない。」

は一瞬疑うような、驚いたような、微妙な表情を見せた。

スコールはその様子に首を傾げたが、は呆れた顔をするだけで。

「あいつ・・・・まだ話してなかったのか。」

「あいつ?」

誰のことを言っているのかわからなくて、尋ねてみた。

けれど、は笑みで誤魔化すばかりで。

「でも、エルオーネがいてくれたんだろ?」

「ああ・・・エルオーネが一緒にいてくれて手を繋いでいてくれた。」

「安心、しただろ?」

溢れるような暖かい気持ち。そう。エルオーネと一緒にいたときは、本当に安心した。

けれど、それも波乱に巻き込まれるうちに、消えてなくなった。

「そうだな。でも、いなくなった。引き離された。

それからかもしれない。安らぎ・・・ぬくもり・・・そういうのが怖いんだ。」

雨の日に、エルオーネを何度も探して走り回った。

“お姉ちゃん”がいないのが哀しくて、不安で、怖くて。

お姉ちゃん、どこ? そう叫びながら、何度も転びながら。

けれど、エルオーネは帰ってこなかった。

「・・・失うのが怖いから、それなら最初からいらない?

だから仲間なんていらないって言ってたんだな。」

「・・・嫌な子供だな。」

苦笑した。自分の幼稚さに、笑わずにはいられなかった。

自分だって、優しくしてあげたのに「大きなお世話だ」なんて言われたら腹が立つだろう。

それをわからずに、一人ででも生きていけると勘違いしていた小さな子供。

嫌な子供だと、本気で思った。

「スコールはそうやって・・・そうやって、楽しい事や嬉しい事、たくさん逃してきたんだ。

それってきっとすっごく損したと思う。」

「・・・かもな。」

人のぬくもりは知っている。けれど、“親のぬくもり”は知らない。

それは、きっと損をした証。

「俺は・・・こうしてるの、好きなんだ。

俺の父さんも母さんも、俺のこと嫌いだったけど・・・兄貴がいてくれた。

父さんや母さんに叱られて泣いてると、すぐに来てくれて・・・抱き締めてくれた。

・・・こんな風に。」

は体を捩ると、スコールの頭を抱え込むようにして抱き締めた。

その暖かさに、スコールは安心感を感じて目を細める。

「俺も、人のぬくもりがなくなる怖さを知ってる。

兄貴、俺が7歳の時に家を出たんだ。・・・俺のこと、虫ケラだって笑いながら。

それが深いトラウマになって・・・人と触れ合うの、怖かったんだよ、俺も。」

行かないで。

そう何度も叫んだ。でも、兄は笑いながら去って行くばかりで。

自分を、嘲笑いながら去るだけで。

「・・・でも、な。その後・・・すんごく間抜けで馬鹿でドジな男に出会った。

そいつを見てると、呆れを通り越して笑っちゃうんだ。」

「・・・ラグナ、か?」

は少し驚いた表情をしたが、頷いた。

「そう。・・・知ってたんだな。俺とラグナの夢でも見たのか?」

「ああ。・・・エスタで、楽しそうに笑ってたな。」

は目を細め微笑むと、目を閉じた。

遠い記憶に思いを馳せるかのように。

「・・・うん。楽しかった。あいつ、仕事すごく忙しいはずなのに・・・

いつでも俺に付き合ってくれて。そのたびに、キロスやウォードに怒られて、さ・・・。」

はクスクスと笑ってから、スコールと目を合わせた。

静かに微笑んでいるは、以前と全く同じで。

スコールも、安心感を感じていた。

もしかしたら、今はが自分にとって大切な者かもしれないと思った。

幼い頃のエルオーネのように。

エルオーネの代わりというわけではない。エルオーネはエルオーネだし、だ。

だが、もしかしたら・・・が、自分にとっての大切な者かもしれない、と。

「でも、今・・・俺に一番安心をくれるのは、スコールなんだ。

そりゃがっかりもするし腹立ったりムカついたり、イライラすることも、多いんだけどな?」

「・・・悪かったな。」

いつも通りのスコールに、も笑った。

目の前の大きなウィンドウには、輝く宇宙が広がっている。

そんな中を、ラグナロクはゆっくりと進行していた。

それを見ているだけで、何故か心地良くなってきて。

きっと帰れる。あの星に帰れるんだと目を細めた。

「・・・俺、もうひとつスコールに話さないといけないことがあるんだ。」

「・・・・なんだ?」

ぽつりと口を開いたに、スコールは視線を向けた。

はスコールを見つめ返して、今にも泣きそうな顔で笑みを浮かべた。

「・・・俺、魔女なんだよ。知ってるとは思うけど・・・俺の中の決別だから。

ちゃんと、話しておきたいんだ。」

「・・・・。」

スコールは沈黙した。

のことは、リヴァイアサンから全て聞いている。

だから、驚きはしなかった。けれど、リヴァイアサンから聞いたときよりも胸が痛かった。

何故だかわからない。だが恐らく、本当に現実のことなのだと思い知らされたのだろう。

本人の口から、聞かされることによって。

「・・・・驚かないってことは、リヴァあたりから聞いたな?」

「・・・全てお見通しか。」

「そりゃー、あいつとは付き合い長いからな。あいつの行動くらいの予想はつくさ。」

そういえば、リヴァイアサンはずっとスコールの中にいるというのに話しかけてこない。

全然気配もないから、リヴァイアサンの存在すら忘れていた。

中にいるはずなのに。リヴァイアサンに何かあったのだろうか?

「まぁ・・・説明する手間が省けて良かったかな。」

寂しそうに言うを見ていると、胸がチリッと痛んだ。

どうしてこんなに、苦しいのだろう。

「・・・もう、一緒にいられるのも・・・最後かもな。」

「・・・・・・・・・。」

捕まえた、と言った。

捕まえられた、と言った。

もう逃がさない、と言った。

逃げるつもりなんてない、と・・・言った。

そんな言葉の全てが、宙に千切れて飛んで行く。

あの言葉も、所詮はこんな脆いものでしかなかったのか。

を逃がすつもりなんてないのに。運命には、逆らえないということなのか。

でも、ずっと一緒にいられると、信じたいから。

「・・・未来のことはわからない。保証なんて誰にも出来ない。・・・だろ?」

「そう、未来のことはわからないさ。俺は封印されるかもしれないし、死刑になるかもしれない。」

「そういう意味じゃない!」

スコールは叫んだ。そんなスコールに、驚きの表情を浮かべる

もしかしたら、一緒にいられるかもしれない。

そう思いたいから、そう信じていたいから。

そういう意味だったのに。そんな絶望の話をしているんじゃないのに。

「帰ってからの事は・・・帰ってから考えるさ。」

はその言葉に黙り込み、ふっとスコールから離れた。

そして、隣の席に着き、辛そうに目を細める。

「・・・皆、許して・・・くれないだろ・・・。」

「許す?」

言葉の意味がわからなくて問い返した。

だが、その時再び通信が入ったのだ。スコールはスピーカーに視線を向ける。

『こちらエアステーション。ラグナロク応答せよ。』

「ラグナロクだ。」

答えると、通信の担当者はふむ、と息をついた。

『幾つか質問がある。我々は脱出ポッド回収作業をしている。

事件の事は大体把握している。ステーションの人間がラグナロクには乗っていないそうだな。

そちらの人数を教えてくれ。』

「二人だけだ。」

沈黙が流れた。何か変なことを言っただろうか?

だが、すぐに担当者は口を開いた。

『・・・あんた、名前は?』

「スコールだ。バラム・ガーデンのSeeDだ。」

『もう1人は?』

担当者が聞きたいのは、どうやらもう一人の方の名前のことらしい。

スコールは口を開こうか躊躇していたが、が隣から身を乗り出して答えた。

「・・・だ。・イオザムだ。」

? 魔女だな!? 魔女が乗ってるんだな!?』

「安心してくれ、俺にはもう敵意はない。何かをやらかそうなんて考えちゃいない。」

スコールは担当者の言葉に硬直した。

やはり、もう事件のことは全て向こうに通じてしまっているのだ。

ということは、がアデルの封印を解いてしまったということも知っているはず。

そのが、戻った先で無事でいられるとは思えない。

「・・・な?スコール・・・わかっただろ?俺、魔女だ。

魔女と普通の人間とでは、生きる世界が違う。・・・もうスコールと一緒にいられない。」

『ラグナロク、応答せよ!』

「未来なんか欲しくない。今が・・・ずっと続いて欲しい。そうも思うさ。

けど、どんなに思っても・・・俺がしたことは正真正銘の事実で、許されることじゃない。」

『ラグナロク、応答せよ!』

「だから・・・・ごめんな。」






―――だから・・・・ごめんな。―――







が、こんなに儚い笑みを浮かべたことはなかった。

全てを受け入れ、全てを許し、そして全てを慈しむような、美しい笑み。

は魔女なんかじゃない。その笑みを見れば、誰もがそう言うだろう。

だが、は魔女でしかなくて。スコールはSeeDでしかなくて。

『魔女は帰還次第封印する。回収部隊の指示に従え。』

「わかってる。指示に従い、封印されることを誓う。」

の声が、無機質に聞こえた。

『・・・やけに素直だな。だがまぁ、助かる。』

そんな担当者の言葉に、スコールは反吐が出るほどの怒りを感じた。

何も知らないくせに。のことを、何も知らないくせに。

“魔女”だというだけで、どうしてこんなに汚い扱いを受けなくてはならない?

だって、なりたくて魔女になったわけではないのに。

今までにだって、魔女だという所為で酷い扱いを受けてきたというのに。

スコールは怒りに拳を震わせながら、通信のスイッチを乱暴に切った。

は困ったような表情を浮かべて、スコールを見つめる。

「どうして・・・そんなことを誓う?そんな必要ない、悪いのはじゃない!!」

「でも・・・もう、俺の所為で誰かが傷付くのは、見たくないんだ。

もしかしたら・・・俺は、スコール達まで、傷付けてしまうかもしれないだろ?」

それだけは、絶対に嫌だから。

「だからは封印されるのか?だからあんなこと誓うのか?

が封印されても、アルティミシアはまた別の魔女を狙う!

そうしたらまたそいつが封印されて、またアルティミシアは新しい魔女を探して。

その繰り返しだ!が封印されても、何も解決しない!」

「そうかもしれない。けど、魔女の候補は少ない方がいいんだ。

・・・魔女なんて、この世に存在するべき者じゃないんだよ。

魔女狩りの、あの悲劇を繰り返さないためにも・・・。」

悟り切ったの言葉に、スコールは苛立ちすら感じた。

せっかく会えたというのに、星に戻ればまた別れが待っている。

しかも、今度はもう二度と会えないかもしれない別れだ。

また一緒にいるために、スコールはエルオーネに会った。

なのに、その願いは脆過ぎて、また崩れ去ってしまうのだろうか。

「・・・怖くないって言ったら、嘘になる。けど、これは・・・俺が決めたことだから。」

はそう言って、また笑みを見せた。

スコールを少しでも励まし、慰めるために。

本当は泣きたいのかもしれない。「行きたくない」と泣き叫びたいのかもしれないのに。

自分がそんなことを言えば、スコールがきっと困るだろうと思って。

だから、は本当の気持ちを言わない。

が一言、「行きたくない。助けて欲しい」と言えば、すぐにでも

スコールは行動を起こしてあげられるのに。

・・・。」

スコールは操縦席から腰を上げ、に近付いてそっと抱き締めた。

先程、がしてくれたように相手の頭を優しく包み込んで。




「(前に誰かが言ってた通り・・・俺の前に伸びていた何本かの道。

その中から俺は正しいと思った道を選んできた。そう思いたいんだ。

あんたが笑顔で導いてくれた、この道を選んだ事は・・・正しかったのか?

・・・・・・ここまで歩いてきて・・・・

どうして俺は、あんたの手を離さなくちゃならない・・・?)」







飛空挺は無事に帰還した。

懐かしい星の風景も、今では皮肉なものでしかない。

到着した途端、すぐにエスタの回収部隊が降り立ったスコールとの前に現れた。

「大いなる魔女、よ。その魔の力を我らに放たぬ事を乞い願う。」

「更に乞い願う。我らの招きを受け入れ、魔の力を封印せし部屋で眠らん事を。」

スコールは怒鳴りそうになった。は同じ“人間”なのだ、と。

が止めてくれなければ、恐らく怒鳴って相手に殴り掛かっていただろう。

怒鳴ろうとしたスコールを、は静かに制しただけだった。

それから相手の回収部隊の者達を静かに見つめ、優しく笑みを浮かべる。

「・・・俺もこの力には本当に振り回されてる。俺も、封印されることを望む。

もし俺がこの世界にいれば・・・・きっと世界は闇に包まれるだろう。

だから約束してくれ。俺の封印を、絶対に解けないようにして欲しい。

悲劇は、もう二度と繰り返さないでくれ。」

回収部隊は驚いたように目を見開いたが、の覚悟を受け取るとしっかりと頷いた。

「あなたほど素晴らしい魔女は見たことがありません。」

「これから封印される奴にそんなこと言っても、下手な皮肉にしか聞こえないぜ。」

は少し刺々しい声でそう言い、一度瞳を閉じた。

「お友達と何か話すことは?」

言われ、はスコールを振り向いた。

そして、スコールにしか聞こえないほどの小さい声で、囁く。

「・・・ジカンアッシュク。宇宙で・・・俺の中に別の魔女がいたの。

それは俺の来世でもある未来の魔女アルティミシア。アルティミシアの目的は時間圧縮。

そこではアルティミシアしか存在出来ない。他の人間は消えてしまう・・・。

アルティミシアは俺の身体を使ってその時間圧縮をするつもりだ。

そんな事に、俺の身体・・・使われたくないから。だから・・・。」

はそこまで言って、沈黙した。

けれど、すぐに笑顔で言う。

「リヴァイアサン。今、スコールにジャンクションしてるんだろ?

波動ですぐにわかったよ。俺からひとつ頼みがあるんだ。

リヴァイアサン・・・俺の大切な友人だ。リヴァのこと・・・お前に託すから。」

「だがこいつはお前しかマスターと認めないと・・・」

「俺がスコールに力を貸してやってくれって言ったって伝えれば、

いくら頑固なリヴァイアサンでも言うこと聞くさ。だから、よろしくな。」

そこまで言うと、はスコールから離れ、回収部隊の方を向いた。

ひとつ頷くと、回収部隊の者達も頷く。

「行こう。」

「・・・ええ、行きましょう。素敵なプレゼントがありますよ。

美しいバングルです。その後、魔女記念館へご案内しましょう。」

女性はそう言いながら、にバングルを差し出した。

それを受け取り、は鼻で笑う。

それは、あのデリング・シティでの任務のとき。

リノアとともにイデアに手渡そうとした、あのオダイン・バングルだった。

「(・・・運命ってのは、本当に皮肉なもんだな)」

まさか自分がこれを付けることになるとは。

は黙ってバングルを腕に付けると、そのまま回収部隊とともに歩き出した。

その背に向かって、スコールは叫ぶ。

、行くな!」

その声に、は足を止める。だが、振り返らなかった。

振り返らないまま、自分に言い聞かせるように、呟いた。

「恐れられる前に、嫌われる前に、いなくなりたいんだ・・・」

その声に、スコールは何も言えなかった。

走りよって、抱き締めて、逃げればいいと頭ではわかっているのに。

「そうだ、指輪・・・返さないとな。」

ポケットから指輪を取り出そうとするに、スコールは歩み寄らないまま言う。

「いいんだ。あんたが持ってろ。俺も、あんたの指輪・・・・持ってるから。」

そう言うと、はクスリと笑って取り出しかけた指輪をポケットにおさめた。

何を言っても、こちらを向いてくれない

そこまで、覚悟は強いのか。

は、再び回収部隊とともに歩き出した。

その背中を、ただ見送ることしか出来ないスコール。

もう一度叫べば、は考えを改めてくれるかもしれない。

そんな馬鹿馬鹿しい自分の考えに、笑みすら浮かんだ。


ふと、が足を止めた。そして、勢い良く振り返る。

その顔は、もう何も迷ってはいない、哀しいほどすっきりとした笑顔だった。





「 Thank you very much so far! So long!! 」







大声で言い、はその場を去って行った。

スコールは動けなかった。の言葉に。の笑顔に。

「(・・・が望んだ事だ。・・・仕方ないんだよな?)」

あんな笑みを見せられて、追い駆けられる者なんて・・・きっと存在しない。

スコールはどうしようもない気持ちを抱えたまま、飛空挺へと戻った。





そう。どうしようもない、モヤモヤした気持ちを抱えたまま。








<続く>

=コメント=
やっと宇宙編が終わりました。イベントも無事終了です。
フフ、なかなか出て来てないリヴァイアサンですが、次回大暴れする予定です。
スコールvsリヴァイアサンの修羅場をご期待の皆様、お待たせしました。
とうとうこの二人がぶつかります。
・・・・とはいっても、リヴァイアサンが自分の気持ちをぶつけるだけの話ですが。

宇宙イベントのところは書いていて本当に楽しかったです。
やはりここも、漂流のシーンと同じでリノアとの違いをはっきりさせたかったんですね。
リノアはとにかく封印されてしまうことに恐怖を抱いていて、スコールに縋っていた。
けれどそんなリノアとは違い、は自分が封印されることよりも何よりも、
自分がスコール達や誰かを傷付けてしまうことが怖かった。
だから、自分が封印されることについて反感も持っていないし悟ってしまっていますね。
それで、そんなにスコールはどうしようもない怒りを持つと。
「助けて、帰りたくない、行きたくない」とが言えば、
スコールは助けるために行動を起こすことが出来る。
けれど、はスコールに縋るどころかスコールを慰めてしまった。
だから、スコールは自分の感情のやり場をなくしてしまったんです。
恐らくそれは、スコールよりの方が大人びているという証拠でしょう(笑
なんだかんだ言っても可愛いスコール君です。

次回は花畑での約束・・・まで行けるといいなぁ・・・(汗