、もう少し待っていてくれ。




絶対にお前を逃しはしない。




必ずお前を捕まえるから。




だから、もう少しだけ、待っていてくれ。










hat is your hope ?











突然ブリッジに上がってきたスコールを見て、キスティスとシュウ、ニーダは目を丸くした。

そのスコールの瞳には“リーダー”としての強さが戻っていて、

さきほどまでの弱々しい色は全くない。

スコールはニーダに言った。

「もう一度イデアの家へ向かう。」

「了解!」

なんだか、調子が戻ってきたようだ。

キスティス達は顔を見合わせ笑みを浮かべると、操縦士のニーダに視線を向けた。

ニーダはニッと笑い、操縦桿をイデアの家の方向に押し倒した。

そんな様子をぼんやりと見ながら、スコールは目を閉じて小さく頭を振る。

もしが今無事だったのなら、この操縦桿を握っているのはだったのかもしれない。

もしかしたら、がときどきニーダと交代で操縦をしていたかもしれないのに。

もし、今が無事だったのなら。

『もし、という言葉は私は好きではありません。

終わってしまったことを悔いても、その姿は見苦しく見えるだけです。』

ぴしゃりと叱るような声が、スコールの頭の中に響いてきた。

スコールは慣れない感覚に少々驚いたが、これが普段の感じている感覚なのかと思った。

「(・・・やけに俺に敵対心を剥き出しにしてないか?俺、お前に何かしたか?)」

『それは自分で考えることでしょう。それに私は言いました。

あなたと言い合うべき時は今ではない、と。

が目を覚ました暁には、ちゃんと言いたい事全て言わせてもらいます。』

何かを堪えているようなリヴァイアサンの言葉に、スコールは目を細めただけだった。









「私で力になれそうな事はありますか?」

イデアの言えに到着し、イデアはスコールの姿を見てすぐに口を開いた。

スコールは躊躇することなく言う。

「白いSeeDの船。エルオーネが乗っている。」

「あの子達は・・・用心深いから一つの場所に留まっている事は滅多にありません。」

最悪だった。もう、白いSeeDの船に遭遇出来る可能性はないのだろうか。

いや、イデアが今言った言葉は、可能性はゼロに近いと説明したようなものだ。

スコールは深く溜息をついた。

「・・・・そうですか。」

どうすればいい。どうすれば、白いSeeDの船に出会える。

スコールが頭を抱えそうになったとき、イデアはふと思い出したように言った。

「ああ、でも・・・・あの子達、セントラの風景を気に入っていたみたいでした。

だからこのセントラ大陸の入り江のどれかに船を停めているかもしれません。」

セントラ大陸。それは、イデアの家がある大陸のことだ。

この大陸のどこかに、白いSeeDの船がいるかもしれない。

それは有力な情報だった。早く探しに行きたいと踵を返すスコールを、イデアは呼びとめる。

「ああスコール。私が書いた手紙を持って行きなさい。

これで彼らは、あなた達を歓迎してくれるでしょう。」

イデアはその場で、白いSeeD達への手紙を書いてくれた。

スコールはそれを受け取り、大切に懐に仕舞う。

シドは微笑を浮かべて口を開いた。

「白いSeeDの船。最初はしつこいエスタからエルオーネを守るために手に入れました。

イデアが船長として乗っていたのですが、いつの間にか子供達を集めて

孤児院のようにしてしまったのです。

イデアは、子供達に様々な事を教えて、彼らもまた、SeeDと呼ぶようにしたという訳です。」

つまり、白いSeeD達は自分達の兄弟みたいなもの。

きっと話せばわかってくれるだろう。

スコールは頷き、イデアの家を後にした。







白いSeeDはセントラ大陸のどこかの入り江にいるかもしれない。

その言葉に、スコールは直ちにガーデンを移動させてセントラ大陸をくまなく探した。

すると、入り組んだ入り江の中に以前見たあの船が停泊していた。

そう、白いSeeDの船。イデアの情報は正しかったのだ。

スコールはアーヴァインとセルフィを連れ、その船に乗り込む。

すると、白いSeeD達がやって来た。

少々警戒した様子を見せ、白いSeeDはスコール達を見つめている。

「君達は・・・?」

「俺はバラム・ガーデンのスコール。この船の指揮官に会いたい。」

白いSeeD達の中から、一人の青年が前に出た。

「僕がリーダーだ、用件を聞こう。ただし内容によっては、即刻・・・撤退を要求する・・・。」

撤退。そんなことを要求され、何の手がかりも掴めないまま帰るのは真っ平ごめんだ。

スコールはぐっと拳を握り締め、呟くように口を開いた。

「・・・・・エルオーネに会わせて欲しい・・・」

「・・・!?」

あからさまに顔色を変えた白いSeeD達。

こちらのことを疑っているようだ。スコールは説明する。

「俺達は、怪しい者じゃない・・・イデアがここを教えてくれたんだ。」

「何故・・・イデアに・・・?」

白いSeeD達は、イデアが正気に戻ったことを知らないのだろう。

だから、こんなにも警戒してこちらの様子を窺っている。

それだけ、エルオーネが大切ということか。

「イデアは、もう・・・魔女アルティミシアの支配から逃れた。

今は、俺達の仲間だ・・・だから、エルオーネの居場所を隠す必要はない。

俺達がここへ来た目的は、エルオーネを魔女アルティミシアから保護するためだ。」

きっと会わせてもらえる。そう思ったが、白いSeeD達は全員踵を返した。

驚くスコール達。リーダーの青年は、静かに呟いた。

「・・・信じる理由はない・・・お引き取り願おう・・・・」

スコール達は目を見開く。

信じて、もらえなかった。まだ、何にも掴めていないというのに。

これでは、一歩も前進出来ていない。

スコール達は奥へと帰ってしまった白いSeeD達を追いかけようとした。

その時、懐かしい声が聞こえた。

「あ〜〜! 久し振りッス!」

驚いて振り返ると、そこにはワッツとゾーンの姿が。

驚愕した。何故、彼らがこんなところにいるのかとびっくりした。

「うぉ、どうした!? あ・・・! スコールじゃないか!」

「こんなところで会うとは思わなかったッス!みんな元気だったッスか!?」

ティンバーで別れたきりだったが、どうやら元気そうだ。

その様子に安堵し、スコールは少し笑みを浮かべる。

「俺達は、みんながティンバーを出てすぐガルバディア兵に追われてるところを

この船に拾ってもらったんだ。」

「ほんと、死ぬかと思ったッス! ゾーンが海に逃げようなんて言い出したからッス・・・!」

「そんなに言うならついて来なかったらいいだろ?

何だかんだ言って、先に海に入ったのはワッツの方だろ!」

以前と全く変わってない二人に、スコールは苦笑した。

漫才のようなやり取り。それが随分と懐かしい。

ふとゾーンは顔を上げると、スコールに尋ねた。

「そういや、リノアは元気か?あぁ、とゼルも。セルフィはそこにいるからわかるけど。」

。一番、今話したくない名前を言われてしまった。

けれど、彼らは何も知らないのだ。全て、仕方のないことだ。

スコールは少々俯き、ゆっくりと口を開いた。

「リノアとゼルは・・・バラム・ガーデンで元気にしてる。

けど・・・けど、は・・・・・。」

普通でないスコールの様子に、ゾーンとワッツは眉根を寄せた。

悲痛そうに言うスコールは、ゾーンとワッツの知らないスコールだったから。

ゾーン達が知っているスコールは、無表情で、淡々と仕事をこなして、

笑ったり泣いたりは絶対にしない、そんな奴だったから。

「・・・何か・・・あったんスか・・・?」

ワッツが恐る恐る尋ねると、それに答えたのはセルフィだった。

これ以上スコールにしゃべらす訳にはいかないと感じ取ったのだろう。

「魔女だったイデアと、あたし達戦ったんだよ。

それでね、・・・その戦いの後から、ずっと意識がないんだ。

今もガーデンで眠ってる。どうしてそうなったのか、あたし達にも・・・わからないの。」

ゾーン達が目を見開いたのがわかった。

あんなに元気で、陽気で、優しくて強くて、まるで太陽のようだった

そのが、今現在意識不明で眠っている?

そんな事実が、本当にあり得るというのだろうか。

が・・・・。」

「そんなことがあったんスか・・・。・・・・。」

急に黙り込んでしまったゾーン達を見て、今度はアーヴァインが口を開いた。

「僕達がこの船にエルオーネを捜しに来たのは、ある人物より先に保護するのが目的なんだ〜。

でも、エルオーネにを会わせる事が出来れば、上手くいけば・・・

もしかしたら、を元に戻せるかもって皆で考えてるんだよ〜。」

その言葉に、どこか少し安心したようにワッツとゾーンは顔をほころばせた。

「ちゃんと、元気になるッスよね?」

のこと、ちゃんと守ってやれよ。」

ゾーンとワッツの言葉を聞き、スコールは頷いた。







ワッツはそれから得意の情報収集で、スコールに貴重な情報を教えてくれた。

まずはこの船についてだ。

イデアがいなくなってから、この船には大人が乗っていないらしい。

ワッツ達と同じくらいの年の青年か、幼い子供がほとんどだ。

そして全員が、両親がいない孤児の子供ばかり。

船の上では、皆明るく過ごしていたが・・・たまに寂しそうにしてる子供を見ると、

少しやるせない気持ちになった。

それから、エルオーネのことを聞いてみた。この船に乗っているはずだから。

だが、ワッツの話によると、迎えが来て船から降りたらしい。

何処へ行ったのかはわからないが、迎えに来たのがエスタの兵士だったところからすると、

恐らくはエスタへ向かったのだろう。

てっきり攫われたのかと思ったが、そうではなかったらしい。

にこにこしていて、嬉しそうな表情で行ったようだったから。

どういうことだか、さっぱりわからない。

何故、エルオーネはエスタに向かったのだろうか。

「エルオーネ、ものすごく皆に慕われてたッス。

俺達が、溺れそうになってるところを見つけてくれたり・・・

初めて声掛けてくれたりしたのも、エルオーネだったッス。

ほんと、命の恩人ッス。船のみんなも、きっと・・・一番、大切に思ってるッスよ。」

エルオーネはどこにいても慕われる。

彼女のような人間は、決して多くはないだろう。

最後に、ガルバディアのことを聞いてみた。

その情報に、さすがのスコール達も眉根を寄せる。

最近、あのガルバディアが巨大な石柱を海から拾ったという噂があるらしい。

何に使うのかは知らないが、あのガルバディアだ。

善からぬことを考えているに違いない。




スコール達はワッツとゾーンに礼を言い、この船のリーダーの元へと向かった。

まだ話は終わっていない。ちゃんと話し合いがしたいから。

リーダーはキャビンにいた。

スコールは懐からイデアの手紙を取り出すと、そっとリーダーへ渡す。

「これを・・・」

訝しそうにリーダーはスコールから手紙を受け取り、それを見つめて目を見開いた。

「これは・・・ママ先生の字。本当にママ先生が?」

「あんた達もママ先生って呼ぶんだな。」

「僕達を育て、教えてくれた人だから。」

同じなのだ。この白いSeeD達も、自分達も。

イデアに育てられ、イデアにたくさんのことを教わった。

「俺達も子供の頃、イデアに育てられた。

いろいろな事があってイデアと戦った。その結果、イデアを取り戻した。

恐ろしい魔女イデアは優しい魔女イデア・・・ママ先生に戻った。」

静かに語ると、今度は信じてくれたのか白いSeeDのリーダーは笑みを浮かべた。

そして、SeeDの敬礼をして言う。

「ありがとう、スコール。ありがとう、バラム・ガーデンの人達。イデアの船を代表して感謝する。」

「敬礼まで同じなんだな。」

スコールも笑みを浮かべ、敬礼を返した。

敬礼は、SeeDを作るときに決まっていたらしい。

白いSeeDのリーダーは、イデアの手紙に目を通した。

それから、残念そうに呟く。

「手紙に書いてあったけどエルオーネを捜しているんだろ?

・・・申し訳ない。エルオーネはいない。」

さっきワッツから聞かされた通り、もうエルオーネはこの船にいないらしい。

リーダーは続けた。

「君達のガーデンに預けておいたエルオーネをF.H.の近海で返してもらっただろ?

その後僕達は魔女イデアから遠ざかるために東へ向かった。

間もなくガルバディア軍の船団に遭遇したんだ。

船がたくさんいて、何かを捜索していたみたいだった。

迂闊だった。僕達は見つかって追いかけ回された。

もちろん全速力で逃げたんだ。でも船が故障してしまって・・・

エルオーネをガルバディアに渡す訳にはいかなかった。

だから、僕達は・・・戦闘の準備を始めた。そこへエスタの船が現れたんだ。

ガルバディア軍とエスタの船の戦闘が始まった。僕達は巻き込まれてしまった。

ここから起こった事は・・・僕達の間でも意見が分かれている。

エスタの船が一隻、この船に横付けしてきたんだ。僕達に、エスタ船に乗り移るように言った。

避難させようとしていたみたいだった。僕達はもちろん拒否した。

ガルバディアと同じくらいエスタも信用出来なかった。

エスタ兵は僕らを説得しようとしたけど、周囲の戦闘が激しくなって・・・

エスタの船が諦めて離れようとした時、黙って様子を見ていたエルオーネが何かを叫びながら、

エスタの船に飛び移ったんだ。全然エルオーネらしくない行動だった。

僕達は何が何だかわからなくて・・・でもエスタの船は激しくなった戦闘から

逃げるように去って行った。そして僕達は・・・いや、僕達の事はいいか。

それっきりだ。僕達は船が治り次第エスタに向かうつもりだ。

すまない、スコール。エルオーネを守れなかった。」

となると、エルオーネは自らエスタの船に乗ったということになる。

エスタに何かがあるのだろうか?

エルオーネはエスタにいると考えて、ほぼ間違いないだろう。

スコールは白いSeeD達に礼を言い、船を降りた。








「目的地、決まったのか?」

ブリッジに上がるなり、ニーダが尋ねてきた。

スコールは迷わずに言う。

「エスタだ。」

「うひゃ・・・沈黙の国エスタ・・・世界の問題児だった国だぞ。

それに、あの辺りの地形ってガーデンじゃ進めないかもよ。」

「とにかくエスタへ行く。」

有無を言わせぬスコールの口調に、ニーダは苦笑を浮かべた。

スコールは本当にとにかくエスタに行きたいらしい。

それだけで、何か有力な手がかりを掴んだことはすぐにわかった。

ふと、ずっと考えていたキスティスが顔を上げる。

「エスタの大陸は大陸全土が大きな山に囲まれているわ。

静かにそびえ立つ山が大陸を隠してるの。人々の出入りもほとんど無い。

そんなところも沈黙の国と呼ばれる由縁になっているわ。

多分、ガーデンの飛行高度じゃ山を越えて大陸内に入り込めないと思う。

確か、エスタ大陸に入る道は1本。F.H.から伸びている長い線路。

F.H.は昔、エスタと唯一交流があった都市なの。その名残って訳ね。」

まさかエスタに行くことになるなんて思わなかった。

スコール達の中で、エスタに詳しい者はいない。

とにかく、近代的な都市だということは知っているが。

そこまで考えて、スコールはふと顔を上げた。

近代的な都市。それは、夢で見たラグナとのいた場所ではないか。

まさか、あそこはエスタだったというのか?

もしそうだとすれば、はエスタに詳しいということになる。

けれど、そんな本人が眠っている今、どうすることも出来ない。

「(なぁ、はエスタにいたことがあるのか?)」

リヴァイアサンに尋ねてみると、リヴァイアサンも考えているようだった。

『詳しいことは知りません。・・・はあまり、過去のことを話したがりませんから。

私が知っていることは、は生まれたときから魔女だったということです。

・・・もっと深い秘密を知りたいですか?』

尋ねられ、スコールは首を傾げた。

魔女だということはリノアから聞いて知った。だが、それ以上に深い秘密などあるのだろうか。

それに、リヴァイアサンがそれをスコールに教えても問題ないのだろうか。

『私はに口止めをされていません。

・・・まさか私がスコールと話をするなんて考えてなかったでしょうから。

卑怯かもしれない。けれど、少しでも手がかりになるのなら。』

「(教えてくれ。)」

確かに卑怯と言われるかもしれない。

けれど、の秘密について最も知っているのはリヴァイアサンであり、

口止めをされていないのもリヴァイアサンなのだ。

リヴァイアサンは少し覚悟を決めるために間を置き、それからはっきりと言った。

は・・・魔女アルティミシアの前世なんです。』

「(なんだって!?)」

スコールは驚愕した。まさかそんな言葉が飛び出すだなんて思ってもみなかった。

アルティミシアの前世が。ということは、の生まれ変わりが

アルティミシアということになる。

そんな馬鹿な話があるのか。

『だから、は恐れていました。自分はスコール達に倒される運命ではないのか、と。

SeeDは魔女を倒す。ガーデンはSeeDを育てる。

その言葉が、真実を知ったにとってどれだけ辛い言葉だったか・・・。』

スコールは呆然とした。本当に、そんなことがあっただなんて。

とても信じられなくて、いや、信じたくなくて。

はどれだけ悩んだのだろう、どれだけ苦しんだのだろうと。

想像のつかない恐怖に、きっと囚われていたのではないか、と。

『真実を知ったのは、トラビア・ガーデンで倒れたときでした。

の夢にアルティミシアが現れ、全ての真実を告げました。』

初めて、血を吐いて倒れたあの時。あの時に、そんな夢を見ていたのか。

『スコール、早くをアルティミシアから解放してください。

でなければ、は・・・・死んでしまうかもしれません。』

「(死ぬ・・・!?何故そんなことが言える?)」

は・・・アルティミシアに体を奪われるくらいなら、自分の膨大な力ごと、

アルティミシアを葬るつもりかもしれませんから。』

膨大な魔力と、アルティミシアごと。

そんなこと、許しはしない。絶対に、を取り返すと決めたのだから。

「(・・・リヴァイアサン?)」

『すみません・・・・少し、眠ります。スコールの体が慣れていないせいか・・・

とても、話していると疲れるんです。少し眠れば、また回復するので・・・。』

リヴァイアサンの言葉を聞き、スコールは頷いた。

にしかジャンクションしたことがないリヴァイアサンが、

他の人間に慣れていないのは当たり前だ。

急に、体の中からリヴァイアサンの気配が消えた。

眠りについたのだろう。

スコールは一度目を閉じ、ブリッジを降りた。

そのまま、一人真っ直ぐ保健室へと向かう。








何度来ても変わらない様子の。見ているだけで、胸が痛い。

スコールはの頬に手を添え、目を細めた。

「(行こう、。エルオーネに会いに行こう。エルオーネが俺達を会わせてくれる。)」

スコールの胸には、強い想いがあった。

こんなに他人のことを大切に思ったのは、もしかしたら初めてではないだろうか。

あの笑顔が見たい。強く気高く、優しい笑みが。

スコール自身が月だとしたら、は太陽だ。

月は太陽の光がないと輝くことは出来ない。まさに、自分はその通りだと思う。

がいなければ、自分はどうすることも出来ない。

スコールは、の体を支えて起こし、そのまま自分背中に背負った。

ぐったりとしたは、すんなりとスコールの背中に負ぶさる。

軽い。以前抱え上げたときもそう思ったが、本当には軽いのだと思った。

こんな体で、ガンブレードを握っているのか。

こんな細い体で、どれだけの憎しみを抱え、ガンブレードを振るっているのだろう。

スコールは覚悟を決めると、を背負ったまま保健室を後にした。

「(・・・悪いな、皆。このままじゃ、俺、何も出来ないんだ。)」

自分は月だと思う。は太陽だと思う。

月は太陽なしでは輝けない。けれど、スコールは違う。

本当の月ではない。足がある。手がある。を想う気持ちがある。

何も出来ないままは絶対に嫌だ。

スコールはガーデンがF.H.に着いた頃に合わせて、二階の廊下奥のデッキから

F.H.に向かった。






長く続くF.H.の道。エスタまで、どれだけあるのだろう。

どれだけ、歩けば着くのだろう。

けれど、スコールに迷いはなかった。

「ちょっと遠いけど何とかなるだろ。」

きっと何とかなる。いや、何とかしてみせる。自分自身の力で。

スコールはF.H.から伸びる1本の線路沿いに東へと歩き出した。

エスタへと向かって。

スコールは夕日に照らされる線路沿いを歩きながら、自嘲気味に笑った。

「(・・・遠いよな。こんなに遠いとは思ってなかった。

俺・・・何やってるんだ? エスタに行って・・・

エルオーネを捜して・・・エルオーネに会って・・・・。

・・・・・エルオーネに会えば何もかも解決するとは限らないんだぞ。

・・・・それなのに俺は・・・。・・・俺・・・変わったな。)」

今まで、こんな風にいろいろと他人のことを考えることなんてなかった。

自分は自分で何とか出来る。だから、他人も他人で好きにすればいい。

そんな、どこか捻くれた考えを持っていた。

けれど、スコールは変わった。恐らくは、の影響で。

背中のは冷たい。けれど、スコールははっきりと思い出すことが出来る。

の、暖かい笑顔を。の、強い言葉を。




しばらく歩いた。ふと後ろを見ると、ガーデンから相当歩いてきたようだ。

少し疲れた。スコールはその場で立ち止まり、道の脇にを降ろす。

それから、その隣に座って、溜息をついた。

「(皆どうしてるかな・・・俺の事笑ってるかもな。いや、怒ってるかな?)」

こんな風に、黙って出てきてしまったことを、仲間達はどう思っているだろう。

そんなことをするのはスコールじゃないと笑うだろうか。

それとも、水臭いだろうと怒るだろうか。

「どう思う?」

ふと、隣のに語り掛けてみた。当たり前だが、反応はない。

けれど、それでもよかった。なら、答えなくても聞いてくれているような気がした。

「俺・・・本当は他人にどう思われてるか気になって仕方ないんだ。

でも、そんな事気にする自分も嫌で、だから・・・自分の事、他人に深く知られたくなかったんだ。

そういう自分の嫌な部分。隠しておきたいんだ。」

そこまで口にして、ふと気付く。

それは、も同じではないか、と。

スコールとの性格は正反対だ。けれど、思っていることは同じではないか。

スコールは他人にあまり干渉しないことで自分を守った。

は、他人に自分を話さないことで自分を守った。

これは、同じではないか。

スコールは、苦笑を浮かべた。

「・・・スコールは無愛想で何考えてるかわからない奴。

みんなにそう思われていればとっても楽だ。」

他人は自分に何も聞いてこなくなる。そして、自分も答える必要がなくなる。

だから、楽だった。

「今の、みんなには内緒だからな。・・・」

クスリと笑い、スコールはを見た。

目を閉じ、動かない。深く眠っている

スコールは、の髪をそっとかき上げて目を細めた。

ああ、意外と長いんだな、まつげ。

そんなことを思い、きゅっと唇を噛み締める。

端正な横顔は、静かだ。

スコールは目を閉じ、小さく息をつくと立ち上がった。

を再び背負い、ぐっと前を見据えて歩き出す。




また、話がしたい。




いつかの夜、は自分を励ましてくれた。

そう、確かリーダーになったあの夜だ。

プレッシャーに押し潰されそうになっている自分を見て、励ましてくれた。

あの時みたいな、話がしたい。

が何を思っているか、話して欲しい。

何を悩み、何に苦しみ、何を考えているのか、教えて欲しい。








、聞こえてるんだろ?















<続く>

=コメント=
もう贅沢は絶対に言わないようにします(真顔)
エスタに行ければいいなぁなんて思ってたのに、全然届きませんでした(爆
シィィィーット!!贅沢言うのはやめるぞー!(何
今回は無駄に白いSeeDのシーンが長かったです。
でもあの話はやっぱり入れないとまずいよねぇ・・・。
だから入れました。やっぱり兄弟愛は大切(違)
話が進まない・・・(汗)

次回は多分・・・エスタまで、行ける、はず・・・・(弱気)
多分。いや、行けるように頑張ります・・・。 [PR]動画