笑い合えるはずだった。




やっと終わった、これで平和が戻るんだ、って。




なのに、メンバーが足りない。




俺がどこを探しても、、お前の笑顔が見当たらない。










hat is your hope ?









魔女イデアとの決戦は終わった。

皆で必死に戦い、そして結果勝利した。

喜ぶべき結果。この結果のために、自分達は戦ってきたのだから。

けれど、戦い、勝利して・・・何が残った?

笑い合い、喜び合うはずだったのではないのか?

なんて皮肉なことだろう。

残ったのは、イデアを倒した代償として倒れた

確かにイデアは正気に戻り、ガルバディア・ガーデンも抵抗せずに静かに去って行った。

けれど、残ったのは目覚めない仲間。




ガルバディア・ガーデンとの激突により、バラム・ガーデンはかなりのダメージを受けた。

そのダメージで破損したところは、至急修復が行われている。

まだ完全ではないとはいえ、ガーデンは元の落ち着きを取り戻しつつあった。

全てが、元に戻って行く。

結果意外の全てが、魔女イデアと戦う前の姿に戻って行く。

けれど、どうして一番元に戻って欲しいものが元に戻らないのだろう?

スコールは自室で休みながら、ぼんやりと考えていた。

「(・・・終わったのか?)」

魔女イデアとの戦いが。ガルバディア・ガーデンとの決着が。

サイファーとは?・・・他に、終わったことは?

「(・・・何が終わったんだ?)」

考えているうちに、訳がわからなくなってくる。

“SeeD”としてのことは、確かに全て終わったのかもしれない。

けれど。

「(・・・終わったのは。・・・・終わったのはの。)」

の・・・・・。

スコールはベッドから起き上がり、の様子を見に保健室へと足を向けた。

ぼんやりと歩く姿からは、以前のリーダーらしいオーラは感じ取れない。

「(・・・だって、言っただろ?)」

お前がいないと始まらない、と。

お前がいないと、俺はちゃんとした指示を出すことが出来ない、と。

・・・お前を、待っている、とも。

「(どうして・・・・・。)」

保健室の白いベッドに横たわるの姿を見ると、不覚にも涙が出そうになった。

白いベッドと同じくらいに白い、の顔。

胸が、不安にかき立てられる。

どうして、こんなにも恐怖を感じる。

本当に自分は、がいなければこんなに腑抜けだというのか。

早く意識を取り戻して欲しい、けれど目を覚ます気配は全くない。

いや・・・生きている様子さえ、ないに等しい。

けれど心臓はちゃんと動いているし、息もしている。

生きているのに。ちゃんと、生きているのに、どうして目を覚まさない。



そのとき、キスティスからの放送が入った。

『スコール、聞いてる?急いでイデアの家へ行ってちょうだい。

魔女イデア・・・ママ先生があの孤児院に帰ってるらしいの。』

スコールはハッと顔を上げた。

ちゃんと話もせずに別れた魔女イデア。いや・・・ママ先生。

そのママ先生が、孤児院に戻っている?

ちゃんと話をしなければ。ちゃんと話をして、の目を覚ます手がかりを掴まなければ。

スコールは目を細めてを見つめてから、踵を返してブリッジに向かった。




「ママ先生、あの家に戻ってるわよ。」

スコールがブリッジにやって来たのを見て、キスティスが言った。

聞きたいことはたくさんある。

ママ先生、魔女イデアの最後に発した言葉の意味とは何だったのか。

そして、に起こっている変調の理由は何なのか。

「イデアの家・・・孤児院に向かってくれ。」

「了解!」

スコールは疑問を晴らすべく、イデアの家へとガーデンを向かわせた。









イデアの家の前に、を除いた全員が集まった。

がいない。それだけで、どうしてこんなに胸が痛むのだろう。

「ママ先生と再会だぜ・・・な、何だか緊張するぜ。」

「ママ先生には、いろいろ聞きたい事あるよね〜。」

ゼルとアーヴァインが言い合っているのも、どこか遠くに聞こえる。

「・・・やっぱり会いにくいわね。」

「イデアさん、もう元に戻ったんだよ、ね?」

「あたし、スコールの後から行くからね。いいよね、いいよね?」

急に話題を振られ、スコールは一拍置いてから頷いた。

・・・こんなことではいけない。

自分は、リーダーだというのに。自分は、指揮官だというのに。

指揮官には責任がある。もっとしっかりしなくてはいけない。

スコールは一度拳を強く握ると、先頭に立って孤児院の中へと入っていった。




中に入ると、シド学園長が出迎えてくれた。

スコールは少し訝しそうに首を傾げた。

あのガーデン決戦のときには、学園長はどこにもいなかった。

こうして顔を合わせると、何故か変か気持ちがしてくる。

そんな雰囲気を察したのか、シドは苦笑を浮かべて言った。

「・・・ああ、ご苦労様でした。・・・アハハ。怒ってますか?

アハハ・・・そうですよね。私は・・・偉そうな事を言い続けて、

イザと言う時に逃げ出した訳ですからね。

君達の敗北は君達を失う事。君達の勝利の報告は妻を失う事。

どちらも・・・耐えられそうにありませんでした。

私は・・・いいです。ただ、イデアは許してください・・・。」

この人も、恐らくはかなり悩んで苦しんだのだろう。

そんな人を、咎める気にはならない。

シドはスコール達を奥へと促した。スコール達はシドと共に奥へと進む。

そこには、あの魔女イデア・・・ママ先生がいた。

イデアは振り向くと、本当に申し訳ないような表情で口を開く。

「・・・ごめんなさい。私の子供達。本当の子供のように思って育ててきたあなた達を私は・・・」

「俺達も同じです。」

即座に答える。この戦いは、仕方なかったのだと説明するために。

「俺達もママ先生だと知ってて戦いました。」

そう言っても、イデアは自嘲的な笑みを浮かべるだけだ。

イデアは俯く。

「あなた達はSeeDですから。戦いを避ける訳にはいきません。

立派でした。でも、まだ終わった訳ではありません。こうしている瞬間にも私はまた・・・」

何かに怯えているような言葉に、スコール達は眉をひそめた。

シドが説明するように言う。

「イデアの話を良く聞いておいてくださいね。いつ、また、心を乗っ取られるか・・・。」

「・・・私はずっと心を乗っ取られていました。私を支配していたのは魔女アルティミシア。」

“アルティミシア”という名前に、スコール達は目を見開いた。

その名を知っている。その名は、確かあの決戦のとき・・・。





『アルティミシア―――――ッ!!!』





そうだ。

が、イデアに飛び付いたときに叫んだ名だ。

けれど何故?何故、はアルティミシアのことを知っていたのだろう?

本人に尋ねて確かめたいが、は今意識を失っている。

これほど悔しいことは、今までになかった。

イデアは少しスコール達の様子に首を傾げたが、話を続けた。

「アルティミシアは未来の魔女です。私の何代も何代も後の遠い未来の魔女です。

アルティミシアの目的はエルオーネを見つけ出す事。エルオーネの不思議な力を求めているのです。」

エルオーネの不思議な力。過去を見せる、あの力のことだろうか。

「私はエルオーネを良く知っていました。アルティミシアは恐ろしい魔女です。

心は怒りに満ち溢れています。そんな魔女にエルオーネを渡す訳にはいきませんでした。」

そんなイデアに出来ることは、イデア自身の心をアルティミシアに明け渡し、

“イデア自身”を無くしてしまうことだった。

そうしなければ、エルオーネを守れなかったのだ。

そして、その結果が・・・出現してしまった“魔女イデア”。

ガルバディアに現れたのはアルティミシアに隠したイデアの抜け殻。

「アルティミシアはまだ目的を果たしてはいません。

だから、また、私の身体を使って行動を起こすでしょう。

今度は私も抵抗するつもりです。でも・・・それでもだめだったら・・・

あなた達と再び戦う事になるでしょう。頼みますよ、SeeD達。」

「あの、」

イデアが次の話題に移ろうとしたとき、ずっと黙っていたリノアが口を開いた。

全員の視線がリノアに集まる。

少し戸惑った様子を見せていたが、リノアはおずおずと言った。

「あの・・・これは私の予想でしかないんです、けど・・・・

多分、もうイデアさんにアルティミシアが入りこんでくることは、ないと思います。」

「なんだって?」

スコールは尋ね返した。

他の者も、皆不思議そうな顔をしている。

リノアは迷った。ここで、言ってしまって良いのだろうか。

の秘密を。・・・の、真実を。

黙っててくれと言われた。けれど、こんな状況になっては仕方のないことだ。

リノアは覚悟を決めると、顔を上げて語り出した。

「イデアさんが元々魔女だってことは知ってます。

けど・・・言葉は悪いけど、もう、用済みになったんじゃないかなって・・・。」

「用済み?」

ますます意味がわからない。

「・・・・多分、この次にアルティミシアが現れるとしたら・・・の体を使うと思う。」

全員の顔に緊張が走った。

慌てて、リノアは付け加える。

「あっ・・・もちろん、私の予想だから・・・確実ではないけれど。

・・・・本当はスコール達には黙っててくれって言われたんだけど・・・

こんな状況になっちゃったなら、との約束よりもの安全を優先したい。

だから、言うね。」

はっきりと。早くに目を覚まして欲しいから。

その手がかりとなるのであれば、約束を優先出来るはずがない。

「・・・、魔女なの。詳しいことは知らないけど、そう言ってた。

すごく辛そうな表情で、イデアを倒したら今度は自分の番かもしれないって・・・言ってた。」

自分が、倒される番かもしれない、と。

悲痛な表情に無理矢理作った笑顔を浮かべて、は言っていた。

それが、どれだけリノアにとって哀しいことだったか。

全員は驚愕して、リノアを見つめた。

そんな秘密が、にあっただなんて思いもしなかったから。

「あなた方は魔女アデルの事を聞いた事がありますか?」

ふと、イデアが言った。全員が、今度はイデアを見つめる。

魔女アデル。それは、現在消息不明であり、魔女戦争の時のエスタの支配者の名だ。

「ガルバディアの人々は私が魔女アデルの力を引き継いだ現在の魔女だと思ったようです。

でも、私は違います。私は5歳くらいの時に先代の魔女から力を引き継いで魔女になったのです。」

イデアは言う。恐らく、魔女アデルは生きているのだろうと。

そして、アルティミシアがイデアの体を解放したのは、魔女アデルの体を使うためではないかと。

魔女アデルは力を自分の欲望のために利用する事を躊躇わない魔女だ。

そのアデルに未来の魔女アルティミシアの力と怒りが入り込んだら、

その恐怖はどれほどのものか・・・想像も出来ない。


けれど、スコールにはイデアの話を聞いている余裕はなかった。

が魔女だった。そして、今ももしかしたら夢で苦しんでいるのかもしれない。

その場を立ち去ろうとするスコールを、キスティスが呼び止めた。

「スコール、もっとお話を聞きましょう。」

イデアの話を聞くのは大切。そんなことはわかっている。

けれど、今のスコールにとって、イデアの話よりの方が大切だった。

スコールは渋々足を止め、イデアに尋ねた。

「・・・ママ先生。に何が起こったのかわかりますか?」

というのは・・・さきほどリノアさんの話にもあった人ですね。

微かに覚えています。私に飛び付いてきたのはさんでしたね。

何があったのですか?てっきり今はバラム・ガーデンで

留守番をしているものだと思っていましたが・・・。」

スコールは悲痛な表情を浮かべ、口を開いた。

「ママ先生との戦いに参加しました。戦いが終わって、気付いたら・・・

身体が冷たくて・・・全然動かない。」

口に出して言うと、ますます胸が締め付けられた。辛かった。

苦しくて、呼吸をすることも忘れた。

は死んでしまったのですか!?」

シドの叫び。スコールはハッと顔を上げ、叫び返す。

「違う!!」

死んでしまった?そんなこと、軽々しく口にして欲しくなかった。

信じたくない。まだは生きている。

心臓は動いているし、息だってしている。

だから、生きているのだ。

イデアは弱々しく頭を振り、言う。

「ごめんなさい、スコール。私は力になれそうにありません。」

「・・・じゃあ、いいです。」

諦めにも似た気持ちが、胸に広がった。

「スコール、気持ちはわかります。でも君は指揮官なのです。

ガーデンの他の生徒達も自分達の戦いの結果や行方を知る権利があります。

ここで聞けるだけの情報をガーデンに持ち帰りなさい。だけじゃありません。

みんなが戦ったのです。」

シドの言葉にも、何故か苛立ちを感じた。

「わかってます・・・でも。」

「でも・けど・だって。指揮官が使う言葉ではありませんね。」

「・・・・・・・・。」

吐き気がした。

こんなときまで、“指揮官”という看板を自分に押し付けるのか。

皆が心の休息を取っているときに、自分はその休息を取らせてもらえないのか。

スコールは苛立ちを隠せないかのように、近くの壁を殴り付けた。

話なんて聞きたくない。早く、の目を覚まさせたい。

ただそれだけなのに。

スコールは目を閉じ、のことについて自問自答する。

その横で、仲間達はイデアの話に聞き入った。

「アルティミシアの目的はエルオーネ。」




―――初めて会ったのは保健室。ゼルにボールをぶつけられて、気絶していたな。




「エルオーネの不思議な力。人の意識を過去に送る力。」

「アルティミシアはエルオーネの力を使いたいんでしょ?」




―――最初は変な奴だと思った。あまり、興味もなかった。でも、だんだん変わってきた。




「そうか、アルティミシアはこの時代から更に過去へ自分の意識を送りたいんだ。」

「過去で何をする?」




―――ふと気付くと、は俺を見て・・・目が合うと、嬉しそうに笑っていた。




「時間圧縮。」

「ジカンアッシュク?」




―――とても安心して・・・穏やかな気持ちになった。




「時間魔法の一つ。過去現在未来が圧縮されるのです。」

「世界はどうなっちゃうのかしら?そんな事してどうなるのかしら?」




―――・・・俺にはもう、チャンスはないのか?




「時間が圧縮された世界なんて全然想像も出来ないよ〜」










―――――しっかりしろよ、スコール!!―――――










「おい、スコール!」

ハッとしてスコールは顔を上げる。ゼルの声で、目が覚めた。

の声が聞こえたような気がした。そんなはずないのに。

そこまで、自分は寝惚けてしまっていたのだろうか?

仲間達は頬を膨らませている。

「全然聞いてな〜い!」

聞いてなかったわけじゃない。ただ、のことで頭がいっぱいで、考えられないだけだ。

スコールは、再び感じた苛立ちに気付かぬ振りをして答える。

「要するにエルオーネをアルティミシアに渡さなければいいんだろ?」

「そうだけど・・・」

キスティスが言葉に詰まる。

ほら、俺はちゃんと話しを聞いていただろ?何も聞いてないわけじゃないんだ。

スコールは鼻を鳴らした。

「ガーデンへ戻る。放送で皆に知らせておこう。」

早くガーデンに戻りたいという様子が見え見えだ。

アーヴァインは少し口を尖らせながら口を開く。

「俺達だっての事は気になってるんだよ〜」

「だったら・・・だったらもう少しくらい!」

叫びそうになり、スコールはハッとして顔を背ける。

今日の自分は、本当に変だ。

スコールははっきりと感じた苛立ちを押さえ、呟くように言った。

「・・・いや、なんでもない・・・。」

これ以上何かを言っても、無駄な気がした。

誰も、自分の本心を気付いてくれない。

こんなにもを思っている気持ちに、気付いてくれない。

それが悔しくて、どうしても怒りを押さえられなかった。







スコール達はガーデンに戻った。

スコールはすぐにブリッジに上がり、放送でこれまでのことを説明する。

『以上、大体の状況説明だ。俺達の当面の目的はアルティミシアより先に

エルオーネを見つけ出して保護する事だ。

エルオーネは白いSeeDの船に乗っていると思われる。俺達はその船を捜す。

船は・・・何処にいるんだろうな? しばらくは情報収集が基本になると思う。

ただし、戦闘の準備は忘れないでくれ。

・・・ああ、それから魔女イデアは自分の家に帰っている。

恐らく、イデアはもう敵ではない。そっとしておこう。』

マイクの電源を切り、深く溜息をつく。

キスティスが後ろで小さく言った。

は、保健室よね・・・私も後で見に行くわ。」

さっきまで、あんなにイデアの話の方が大切だというようなことを言っていたのに。

今更、心配するフリをしたって・・・。

そう思いかけて、スコールは頭を振った。

悪いのはキスティス達じゃない。余裕のない自分なのだから。

スコールは無言で踵を返すと、そのままブリッジを出て行った。






向かった先は、の眠る保健室。

変わらず、は懇々と眠り続けている。

スコールはそっとの手に触れ、眉根を寄せた。

「(・・・こんなに冷たい。・・・ずっとこのままなのか?)」

自分には、何も出来ないのだろうか。

悔しくて、苦しくて、スコールはその場に跪いての手を強く握った。

「・・・あんなに元気にしていた

それなのに、声も出さずに・・・俺あんたの声が聞きたい・・・。」

綺麗な歌声で、『Eyes On Me』を歌っていた

あの声が、あの歌が聞きたい。

「(これじゃあ、壁に話してるのと同じだ。)」

悔しい。苦しい。どうして。

どうしようもない怒りや哀しみ、混乱が頭の中を巡る。

懇願のように、スコールは呟いていた。

・・・俺の名前を呼んでくれ・・・。」



――――――――――ッ!



次の瞬間、急にスコールは眠気を覚えた。

以前にもこの感覚を感じたことがある。

そう、ラグナ達の世界に行くときの感覚だ。

今度は何が見えるのかと、よくわからないまま、スコールは目を閉じた。
















「ラーグナッ!!」

「うぉっ!?おい、急に抱きつくなよ!」

「あぇ?悪ィ悪ィ」

「お前、反省してないだろ・・・。」

そこにいたのは、ラグナと小さい子供だった。見た目からして、8歳くらいだろうか。

茶色い髪に銀色の目が、とても愛くるしい。

ただ、見た目からでは女子か男子かの判別がつかない。

そこまで考えて、スコールはふと眉根を寄せた。

茶色の髪。銀色の目。そして、女子か男子かわからない見た目。

まさか。

「てか、ラグナがいけないんじゃんかよぉ。仕事サボって、こんなとこでタバコ吸ってさぁ。

キロスとウォード怒ってたぜ?早く戻って来いーッ!!って。」

「ん?いーんだよ、たまにはこうやって気分転換しないとな?

おじちゃんはいろいろと大変なのです!おわかりかな?君!」

「わっかんねーよターコ!」

スコールは目を見開いた。

。あのが、目の前にいる。

ただ、今目の前にいるは過去のであって現在のではない。

それでも、スコールは喜びを感じていた。

がいるという、その事実に。

だが、それとともに疑問も生まれた。は、何故ラグナと知り合いなのか。

今までもラグナの世界に何度も飛ばされている。

けれど、がラグナと知り合いだという話は聞いたことがない。

「・・・ま、あと10分だけなら許してやってもいーよ。」

「嬉しいッ!、おじちゃん嬉しくて泣いちゃうぞぉ〜!」

ラグナは大袈裟なリアクションをしながら、をぎゅっと抱き締めた。

は口では嫌だだの放せだの言っているが、顔は笑顔で嬉しそうだ。

そんな光景に、スコールの顔にも笑みが浮かぶ。

「なぁっ!ラグナ、また戦い方教えてくれよ!あ、今度はラグナの得意なマシンガンがいい!」

「おぉっ!任せておけよ、仕事が終わったら、しっかり教えてやるからな〜!」





ここで、また辺りが暗くなった。

ラグナの世界から現実へと戻されるのだと感じた。

だが、一向に自分の目覚めはやってこない。

その時、エルオーネの声が聞こえてきた。

『・・・接続が切れないわ。』

「(接続って何だよ・・・)」

『スコールなの?』

「(ああ・・・)」

ぼんやりとした空間に、声だけが響いている。

どこか不思議な感覚に包まれながら、スコールはただその感覚に従っていた。

『接続って言うのは、私がそう呼んでるだけ。

私の不思議な能力を使う事。わかった・・・・私、眠ってるんだ。

だから力をコントロール出来ないんだ。ごめんね、スコール。

後少しだけ心を貸して。』

「(もう帰してくれよ。)」

もう、元の世界に戻りたい。の顔が見たい。

けれど、“接続”が切れない以上、目覚めを迎えることは出来ない。

そのとき、再び目の前に光景が映し出された。






「なぁ・・・ラグナってさ、結婚、してるんだろ?」

「ん?ああ。」

また、とラグナの光景だった。

近代的な都市の真中にある小さな憩い場で、ラグナとは佇んでいた。

「子供いないの?」

「うーん、痛いところを突いてくるなぁ。」

アハハと苦笑を浮かべ、ラグナはの頭をがしがしと撫でた。

は不思議そうにラグナを見つめている。

「子供か・・・。・・・いるよ。と同じ年の子供がな。」

「マジ!?うわ、会いたい!!すっげぇ会いたい!!」

は目を輝かせ、ラグナに飛び付いた。

ラグナは少し寂しそうな表情をして、遠くを見つめる。

「・・・俺も、会いたいよ。自分の子供にな。」

はふと黙り込んだ。

「・・・もしかして、どこにいるか・・・わからないのか?」

「ん?・・・ん・・まぁな。会っても、俺が実の父親だなんてわかりゃしないだろうさ。」

スコールは目を細めた。

こんなに寂しそうな顔をしたラグナを見たことは、今までに一度もない。

だが、が泣きそうな顔をしていることに気付いたのか、ラグナは笑みを浮かべると

を思い切り抱き上げた。

「さ!帰ろうぜ!俺お仕事あるしなぁ〜。」

「サボっちゃダメだからな!」

「うぃうぃ〜。」




去って行くラグナとを見つめていたら、また目の前が暗くなった。

スコールは強く目を閉じ、懇願するように呟く。

「(俺、過去でも何でもいいから今のの声が聞きたい。

俺と出会ってからの、動いてるが見たい。

もしかしたら助けられるかもしれないんだろ?)」

『過去は変えられないよ。私、やっとわかった。

私がエスタに攫われた時にラグナおじさんは旅に出た・・・

でも、そのせいで、レインが死んじゃう時にラグナおじさんは側にいられなかった。

レインは生まれたばかりの赤ちゃんをラグナに見せたがっていた。

レインはラグナ、ラグナって呼んでた。だから、何があっても村にいるように・・・

でも、ダメだった。もうあの瞬間には戻れない・・・。

私、会った事のある人の中にしかあなた達を送り込めないの。

ごめんね、スコール。接続、切れそうなの。

また、あなたと話せるように試してみるね。』

「(お姉ちゃん! エルオーネ! 俺は・・・)」



ここでスコールは、目が覚めた。



ふと目を開ければ、そこには変わらず横たわったままのの姿。

そして自分は、そのの手を強く握っていた。

「(俺は・・・の声が聞きたい。)」

自分を呼び、自分を支え、自分に笑いかけていたあのの声が聞きたい。

過去に行けばに会える。上手くやれば過去を変えることだって出来るかもしれない。

スコールは叫んだ。

「エルオーネ! エルオーネ! 聞こえるか?!

俺を過去に送り込め!がこんなになったあの瞬間に!」

けれど、エルオーネの声はしない。

だが、次の瞬間、の体が青く光り出した。

突然のことに身構え、目を見開くスコール。

青い光がの体から放たれる。

「!?」

そして、現れたのは・・・・人の姿をした、海龍リヴァイアサンだった。

リヴァイアサンはスコールの前に立ち、スコールを見つめている。

「お前・・・は・・・。」

「私が誰だかおわかりでしょう。・・・私は海龍リヴァイアサン。

に従っているガーディアン・フォースです。」

静かに語り掛けてくるリヴァイアサンを見て、スコールは眉根を寄せた。

G.Fが擬人化して、人の前に現れるなんて話聞いたことがない。

だから、驚いた。

「・・・今、は深く眠っています。私が内側から呼び掛けても、反応しません。

内側から呼び掛けても反応しないということは、外側からでも無理ということです。」

「そんなに・・・事は重大なのか。」

スコールは唇を強く噛んだ。

けれど、リヴァイアサンは同情するどころか冷ややかにスコールを見つめているだけだ。

「あなたに言いたいことは山ほどあります。けれど、あなたと言い合うべき時は今ではない。」

言っている意味が、よくわからなかった。

リヴァイアサンは続ける。

「白いSeeDの船を探しなさい。そこにエルオーネはいるのでしょう。

そして、白いSeeDはイデアのSeeD。

イデアに聞けば、船の場所がわかるかもしれないのではないですか?

そうすればエルオーネに会える。

・・・あとは、あなたがすべきことです。」

リヴァイアサンは目を細めた。

を守ってくれなかったこの男に、憎悪を抱いた。

本当ならば、その憎悪を今この場でスコールにぶつけてしまいたい。

けれど、そうしている状況ではないことくらい、わかるから。

だから、スコールに助言をした。

「リヴァイアサン。」

スコールが口を開く。リヴァイアサンはほんの少し眉をひそめた。

「今だけ・・・俺にジャンクションしてくれないか?

お前はのことをよく知っている。何か手がかりを教えてくれそうだ。」

リヴァイアサンは鼻で笑った。

「私はにしか従わないと決めているので、それは」

を、」

スコールはリヴァイアサンの言葉を遮り、言う。

「・・・を、早く助けたいんだろう。」

リヴァイアサンは、少し疑わしそうにスコールを見た。

目を細め、に接するときとは全く違う表情で。

何故、自分が憎く思っている相手にジャンクションしなくてはならない?

そんなこと、絶対にしたくなかった。

けれど、リヴァイアサンが今の中にいても、に何かをしてあげることは出来ない。

本当はとても悔しくて、嫌だったけれども。

「・・・が目覚めるまでという条件を飲んでくださるのなら。」

「構わない。」

スコールは頷いた。

リヴァイアサンはその答えを聞き、スコールの中へと入る。

青い光がスコールを包み、そして消えた。

『まずはイデアの家に向かいましょう。話はそれからです。』

「ああ。」

スコールは一度を見て、そっとの頬に触れた。

それから、決意を秘めた瞳で保健室を後にする。





絶対に、を死なせはしない。


もちろん、アルティミシアに支配させたりなんてしない。


必ず、“”を取り戻してみせる。



この、命に代えても。













<続く>



=コメント=
全然話が進みません(爆
と言うか、イデアの話が無駄に長いです。
端折りたかったんですが、面倒だったからそのまま載せました。
リヴァイアサンも少し出番があってよかったね・・・。
でもあんまりスコールと険悪にならないでね。
後々面倒だから・・・。
最後の4行の言葉は、スコールの言葉としても読めるし、
リヴァの言葉としても読めるようにしました。
アニメとかだったら、多分スコールの声優さんとリヴァの声優さんが
同時にしゃべってるんだろうな(笑
でも、私の中でのリヴァの声優さんって石川英郎さんだから・・・。
・・・・ぶっちゃけ、スコールとリヴァの声優さんが同じになっちゃうんだよね(笑
いや、KHのレオンが石川さんだからさぁ・・・。
だから、これは私個人の妄想として。
スコールの声は緑川さん希望です。
石川さんのスコールは、大人っぽいんだよね。セクスィー。
まぁKHのレオンは25歳だからそれでいいんだけど、
[のスコールって17歳だから。
緑川さんくらいが丁度いいかな、なんて。
うわぁ、妄想が膨らんで長文になってしまった;

次回は・・・エスタまで行ければいいです。
あんまり高望みしないことにします(爆 [PR]動画