さぁ、戦闘開始の合図は降ろされた。
楽しもうぜ?全力でよ。
What is your hope ?
スコール・ゼル・サイファー・を乗せた車はバラムへと向かっていた。
誰も口を開こうとはせず、黙ったままだった。
これから行くのは本物の戦場だ。わかってはいても、ほんの少しの怖さがある。
いや、サイファーとは別だろう。サイファーは先ほどから笑みを浮かべているし、
に至っては居眠りをしている。
ゼルにはそんな二人が信じられないらしく、目を丸くしてその様子を見ている。
「・・・ホントに、こいつ女かよ・・・。」
ゼルが呟いた。
他の女子のSeeD候補生達は恐怖と緊張で混乱さえしてしまうほどだというのに。
は恐怖や緊張どころか、居眠りをしているのだ。
他の女子達が可哀相になってきた。
「・・・・・。」
スコールは腕を組んだままチラリとを見、再び窓の外へと視線を移した。
サイファーは、ただ鼻で笑っただけだった。
車が止まった。バラムに着いたようだ。
ゼルとサイファーが先に車を降りる。スコールも降りようとしたが、まだ目を覚まさないを見て溜息をついた。
そしての肩を軽く揺すり、彼女を起こそうとした。
「おい・・・。着いたぞ。起きないと置いて行かれるぞ?」
「んー・・・・・。」
は目を覚まさない。スコールは手で顔を覆い、再び溜息をついた。
「。」
「・・・うるさいなー・・・。」
「・・・・、本当にどうなっても知らないぞ。」
スコールが少々低めの声で言った。するとはパチッと目を開け、瞬きを何回かした。
「・・・。」
「あ、あの・・・もしかして俺、今・・・・」
「寝てた。急がないと置いて行かれるぞ。」
スコールはが目を覚ましたのを確認すると、スコールは車を降りた。
気持ちの良い風が吹いている。潮の香りを運んでくる風を胸一杯に吸い込み、そして吐き出す。
スコールは目を閉じた。カモメの声がやけに響いて聞こえる。
「何一人で黄昏てんだ?」
後ろから声をかけられる。スコールは振り返った。
がニヤリと笑いながらこちらを見ている。
「・・・別に。」
スコールは港へ歩き出す。は肩を竦め、その後に続いた。
ドール行きの船へと乗り込み、ミッションの説明を受ける。
とにかく速やかに行動。それだけ頭に入れておけば大丈夫そうだった。
「以上よ。何か質問は?」
説明を終え、キスティスがSeeD候補生を見た。誰も口を開かないのを見て、頷く。
「それじゃ、皆速やかに行動すること。いいわね。」
「了解。」
「了解っ!」
「・・・了解。」
「りょーかい。」
上から・ゼル・スコール・サイファーの返事だ。
サイファーはを見やり、ニヤリと笑った。
「さて、お手並み拝見と行こうか?転校生。」
「・・・お前に転校生呼ばわりされる筋合いはない。問題児。」
サイファーの額に青筋が浮かぶ。怒っている。
だがは全く気にしていないように欠伸をひとつして、サイファーを睨み付けた。
「お手並み拝見は俺のセリフだ。お前が班長として相応しいか、見せてもらうぜ。」
サイファーの顔から笑みが消えた。本気で怒り出したようだ。
「・・・女だからって俺は容赦しないぜ。ぶっ殺してやる。」
「そりゃありがたい。俺は自分を“女”だなんて思っていない。男だと思って来ないと痛い目見るのはそっちだぜ。」
は挑発をしているつもりなのだろうか。
それにやすやすと乗せられてしまうサイファーもサイファーだが。
サイファーは急に立ち上がり、座っているを見下ろした。は気にしていないように肩を竦めた。
「そうやって誰かを見下ろさないと気がすまないってか。そりゃまぁ大人気無いこってすね。」
やれやれと頭を振りつつが言う。サイファーは拳を振り上げ、を殴ろうとしたがそこまでだった。
なんとか理性で押さえたらしい。
舌打ちをすると、くるりと自分の席に戻って座り込む。
「おい、スコール!あとどれくらいでドールに到着か、お前が見て来い!」
サイファーが怒鳴りつけるように言う。
の所為で機嫌が悪くなったようだ。スコールは軽くを睨み付ける。
は苦笑を浮かべ、スコールを見返した。スコールは溜息をつき、
「・・・了解。」
さも面倒臭そうに、サイファーに告げた。
スコールは狭い甲板に出た。
甲板と言っても簡単な足場と柵があるだけで、人一人乗るのがやっとだろう。
スコールは目を細めた。そして手を耳の後ろに当てる。
かすかに銃声が聞こえる。どうやら、もう少しでドールに到着のようだ。
スコールは胸が高鳴るのを感じた。
これから自分が向かうのは、本当の戦場。そして、自分が役立てる場所。
スコールは腰のガンブレードを握り、目を閉じた。
「もう少しみたいだな。」
後ろから声がした。振り向くと、だった。
「・・・何故わかるんだ?」
「何が?」
「もう少しでドールに到着すると、何故わかるんだ。」
スコールは問うた。は苦笑いを浮かべる。
視線をドールが見えて来るであろう方向へと向け、口を開いた。
「銃声が聞こえるだろ。それからこの潮の匂いに紛れて火薬の匂いもする。それから・・・血の匂いもな。」
スコールは目を丸くした。
自分は決して鼻が悪い訳ではないが、遠いドールから漂ってくる匂いなどわかるはずもない。
自分は決して耳が悪い訳ではないが、遠いドールから聞こえてくる音など何もせずに感じることなど出来るはずもない。
なのには、スコールの後ろに立ち、銃声の音や火薬の匂い、更には血の匂いまで感じ取ってしまったのだ。
「・・・見えて来たな。」
スコールはやっと見えてきたドールの島を見て呟いた。
だがは首を傾げている。
「どうした?」
「いや・・・。本当にドールが見えて来てるのか?」
スコールは眉をひそめた。そして再び視線をドールへと向ける。
間違いなくドールは見えて来ている。本当にかすかではあるが、肉眼で確かに見られるほどのドールだ。
だが、は首を傾げている。目を細め、ドールを見つめているというのに、ドールが見えていない。
「・・・、もしかしてお前・・・目が悪いのか?」
「ん?悪くはないけど・・・良いとも言えないな。ぼんやりと島みたいなもんが見えるのはわかるけど、
それが本当に現実なのかがちょっとわからないってカンジ。あれ、ドールなのか?」
「ああ、間違いないだろう。銃声の音も先ほどより大きく聞こえる。」
スコールはドールを見つめた。そして言う。
「サイファーに知らせよう。もうそろそろ到着のはずだ。」
「そうだな。」
二人は船の中へと入って行った。
激しい衝突音とともに、船に衝撃が走る。
サイファー、スコール、ゼル、そしては、その衝撃を利用して船から飛び出した。
ドール到着。さぁ、戦闘の開始だ。
そんなセリフが、聞こえて来そうだった。
四人はひたすら走った。
中央広場。
そこが、サイファー達B班の受け持ちの場所だった。
「おらぁっ!どきやがれ!」
サイファーの罵声が響く。それと同時に、ガルバディア兵が倒れて行く。
全く容赦の「よ」の字も見られない戦い方だった。
スコール、ゼル、がその後に続き、ガルバディア兵を蹴散らして戦った。
「ドロー、サンダー!」
が叫ぶ。ガルバディア兵からサンダー手に入れると、は早速そのサンダーを使う。
「サンダー!!」
黄色い閃光がガルバディア兵を襲い、ガルバディア兵が倒れる。
その他のガルバディア兵が襲い掛かって来るが、全く気にしない。
ゼルが拳で叩きのめし、スコールがガンブレードで思い切り斬る。
「・・・さすが・・・バラムガーデンだな・・・。」
はニヤリと笑った。
ガルバディアガーデンにいた頃は、こんなスリルを味わったことなどなかった。
ゾクゾクするような死と隣り合わせの戦闘など、したことがなかった。
そんな興奮が高まる中、はふと思った。
もしかすると、『アレ』を使うチャンスが来るかもしれない、と。
「おい、皆。ガーディアンフォースをジャンクションしといた方がいいんじゃないか?」
がガンブレードを振り回しながら仲間達に言う。
「お!そうだぜ、すっかり忘れてた。この戦闘が終わったら早速ジャンクションするとするか!
スコール、GFひとつ貸してくれよな!」
「待てよ。」
最後のガルバディア兵を斬り倒してサイファーが言った。
「いいか、勝手な真似をするな。リーダーはオレだ。ジャンクションはオレだけがする。」
ゼルが不満そうな表情を浮かべ、スコールはこんなことだろうと無言で肩を竦めた。
だがは納得出来ていない顔でサイファーを睨み付けている。
「・・・ひとつ言わせてもらうけど、シヴァもケツァクウァトルもイフリートも、スコールのGFなんだぞ。
リーダー面して威張るのは勝手にしろよ。でもな、人のGFをジャンクションするのはどうかと思うぜ。」
サイファーはを睨み返す。は続けた。
「俺もひとつだけGFを持ってるけど、こいつはガルバディアガーデンにいた頃からの相棒だ。
お前にジャンクションさせる訳にはいかない。スコールはゼルにもお前にもGFを貸してくれるだろうよ。
でも、相性の悪いGFをジャンクションして、後で困るのは自分じゃないのか。」
サイファーは睨むだけで、何も言おうとしない。
「スコールを見たところ、サイファーと相性の良いGFはいないように感じ取れるし。
俺は、お前がGFをジャンクションするのに賛成出来ないね。」
「黙れ。」
「しかもリーダーだからなんだって?自分だけジャンクションして、それで威張ってるつもりか?
誰かが自分よりも優れるのが気に食わないのか。それとも、自分が弱いことを認めているからこそ、それを否定したいのか・・・」
「黙れっつってんだよ!!」
サイファーのガンブレードがの目の前に突き出された。だがは動じない。
「威張ってた次は逆ギレか?やっぱりお前駄目だな。リーダーの資格なんてありゃしない。」
「お前には言葉が通じねぇのかっ!?黙れって言ってんだよ!!!」
スコールはその二人の様子を無言で見詰め、ゼルは驚いてとサイファーを見比べている。
問題児でしかも喧嘩っ早いサイファーにここまで言えるのは、恐らくだけであろう。
「もういい。お前のGFをよこせ。お前の相棒だろうが何だろうが関係ない。」
「相性最悪だな。お前の命令なんて聞きやしねぇぞ。」
「その時はそのGFを殺すまでだ。」
「生憎お前如きに殺されるようなヤワなGFじゃないんでね。」
「うるせぇ!!とにかくよこせって言ってんだよ!!!」
はわざと口を噤んだ。サイファーの荒い呼吸の音だけが響く。
「・・・ガキか、お前は。まるで欲しいオモチャが手に入らない子供みたいなことばかり言いやがって。」
「GFをオレによこすのか、よこさないのか!どっちなんだ!!」
はひとつ溜息をついた。そして目を瞑り、自分の額に手を当てる。その後、サイファーの額に手を当てた。
「・・・これで満足か?俺のGFはリヴァイアサンだ。
リヴァイアサンはお前の命令なんて聞かない。そして、リヴァイアサンはお前に勝てる相手じゃない。
後はお前の勝手にしろよ。お前がリヴァイアサンに殺されようが、俺の知ったことじゃない。
せいぜい頑張ってみるんだな。平謝りする勢いで頑張れば、一度くらいはお前の命令に従ってくれるかもしれないぜ。」
はくるりとサイファーに背を向けた。
「行こう」
そう言い、自分のガンブレードを腰に装着した。
ドールの街の中央広場。
四人はそこへやって来た。
中央広場へ踏み込んだ瞬間、数名のガルバディア兵に取り囲まれたが難なく倒した。
しばらくはこの場で待機だ。
は中央にある噴水の傍に立ち、腕を組んで目を閉じた。
スコールは適当に立ち、腰に手を当てて空を仰いだ。
ゼルは傍に寄って来た犬を見て頭をかき、肩を竦めた。
サイファーは苛立ちを隠せないように足を鳴らしている。
それぞれがそれぞれの想いを胸に秘め、その場に立っていた。
どれだけの時間がたっただろう。
ガルバディア兵は一向に現れる様子がなかった。
サイファーの苛立ちもそろそろ限界に近付いているはずだ。
「おい・・・。」
サイファーが言った。
「どうして誰も現れないんだ・・・。」
全員黙っている。
「SeeD候補生はこんなくだらないことをするためにここに来たのか!?」
誰も何も言おうとはしない。
「本当の戦場はSeeDに任せて、SeeD候補生はこんなザコ戦闘ばかりかよ!!」
「落ち着けよサイファー。」
がやっとのことで口を開いた。サイファーはを睨み付ける。
「リーダーが冷静さを欠いてどうする。」
「うるさい!!!」
サイファーが吠えると、は肩を竦めて黙った。
サイファーは叫ぶ。
「おい!!出て来い、ガルバディアの腰抜けども!!!オレと戦え!!!」
サイファーの声が広場に響き、そしてまた静寂が戻った。
近くにガルバディア兵はいないようだ。辺りは静まり返り、遠くから銃声や爆発音が聞こえる。
と、がハッと視線を走らせた。
「どうした?」
ゼルが話し掛ける。
はじっとひとつの方向を見つめ、目を細めた。
「・・・隠れろ。」
「へ?」
「いいから隠れろ!!全員だ!!」
急に大声を出したに驚いたのか、ゼルは慌てて物陰に隠れた。
スコールも傍の柱の影に隠れる。サイファーはを一度睨み付け、そして隠れた。
も物陰に息を潜める。
すると、が見つめていた方向からガルバディア兵が数名走って来た。
辺りをキョロキョロを見て、誰もいないのを確認しながら。
先頭の兵が合図をして、ガルバディア兵達は走って行った。
気配が遠くなったのを見計らい、全員が物陰から出て来る。
「・・・あいつら、どこに行ったんだ?」
最初に口を開いたのはゼルだった。
サイファーはニヤリと笑う。
「あの電波塔に向かったんだろうよ。見ろよ、道が電波塔に続いてる。」
全員が道の先に見える電波塔を見つめた。
もう廃墟になっている電波塔だ。一体何のために、何の目的で電波塔へ向かったのだろう?
「予定変更。B班は電波塔へ向かう。」
サイファーが言った。
「ま、待てよ!!オレ達B班は中央広場が受け持ちだろ?勝手な行動をしたらどうなるかわからないぜ!」
「なんだチキン野郎。怖いのか。ハッ・・・これだから弱いヤツは嫌だぜ。」
ゼルが言葉に詰まる。
「なぁ、スコール?お前は来るだろ?」
「・・・リーダーの命令には従うさ。」
「ふん、命令さえ聞いていればいいってか。本当は怖いんじゃねぇのか?」
「あんたには感謝してる。あんたとの戦闘を繰り返してた所為で、どんな敵にも負ける気がしない。」
スコールはサイファーを睨み付ける。サイファーは鼻で笑った。
「オレにもっと感謝するんだな。行くぞ。」
サイファーは駆け出した。スコールもその後に続く。
その場に静寂が戻る。残されたゼルは唖然としていて、は溜息をついている。
「・・・で、どうするんだ?」
はゼルに聞いた。ゼルは脱力する。
「・・・行くしかないだろっ!!」
「上等。」
二人はサイファーとスコールを追って駆け出した。
電波塔を目前にして、四人は姿勢を屈めた。
崖の上から電波塔を見つめる。
「・・・スコール、お前に夢はあんのか?」
ふいにサイファーが言った。スコールはチラリと視線をサイファーに向け、そのまま電波塔へと戻す。
「・・・別に。あんたにはあるのか?」
「あるさ。大きくてロマンチックな夢がな!」
サイファーは電波塔へと駆け出した。
「いつか聞かせてやるよ!俺の大きな夢をな!!!」
サイファーは電波塔へと入って行った。
三人も後を追おうと立ち上がる。だが、駆け出そうとした足は自然と止まった。
「あ〜〜〜〜〜!!や〜っと見つけたよ〜!!」
その場にそぐわない可愛らしい女の子の声がして、三人は立ち止まる。
そして声がした方を振り向いた。
そこには大きく髪がはねた少女が立っていた。
確か少女の名はセルフィ・ティルミット。
SeeD候補生の班はC班のはずだ。
「えーっと、B班に伝令を持って来ました〜!」
セルフィがこちらに駆け寄ってくる。三人は顔を見合わせ、首を傾げた。
「“3時に全員撤退!遅れないように!”」
「「「は?」」」
「だからぁ、“3時に全員撤退!遅れないように!”」
「「「・・・・・・・。」」」
「あのぉ、班長って誰?」
「「「今、電波塔に入って行った。」」」
「えええぇぇぇえぇえぇえ!?」
なんだか漫才でもやってる気分だ。
セルフィは電波塔を見て、オーバーなリアクションで慌てた。
「はんちょ〜〜〜!!」
セルフィは崖から飛び降りた。も続いて崖から飛び降りる。
残されたスコールとゼルは黙っている。
「・・・おい、スコール、まさかここから飛び降りる気じゃないよな・・・?」
「・・・飛び降りる。」
「えぇ!?」
ゼルが驚いてる間に、スコールはさっさと飛び降りてしまった。
「勘弁してくれよぉ〜!」
ゼルも一瞬戸惑ったが、すぐに崖から飛び降りた。
そして、電波塔の中へと入って行った。
<続く>
=コメント=
う〜ん・・・ゲームが思い出せないよ(T−T)
セルフィが持って来た伝令って、あんな内容じゃなかった気がする・・・。
なんだったっけなぁ?(汗
しかもスコールの性格がイマイチ掴めないし、
サイファーはガキんちょになっちまうし(汗
サイファースキーの方々!マジですみません(汗