やっぱりコイツは、最高の相棒だと思う。





最近話しかけてなかったって?






悪かったって思ってるよ。










hat is your hope ?










ガーデンが動き始めてから、何時間たったのだろう。

マスター派が放った訓練用モンスターやMD層に棲み着いていたモンスターを退治して、

そして自分達の仕事は終わってしまった。今は何もすることがない。

シド学園長に報告したいことはいろいろあるが、今シドがどこにいるかわからない。

聞きたいことだってある。ガーデンのコントロールのことや、とにかくいろいろだ。

は自室のベッドで寝転び、ぼんやりと考えていた。

ミサイルを回避出来たのは良い。見事だったと思う。

けれど、まだガーデン内は怪我をした生徒で溢れかえっているのだ。

マスターノーグのこと。魔女のこと。ガーデンのこと。

たくさんのことが、頭の中で廻っている。

はふと立ち上がり、部屋の窓から外を眺めた。

ゆっくりと流れて行く景色。相変わらず、ガーデンはのんびり進んでいるようだ。

「海、海、海。すげぇな、こりゃ。」

どこを見ても海ばかり。バラムからは、随分離れてしまったらしい。

はっきりいって、退屈だ。暇で、退屈で、手持ちぶさだ。

セルフィ達のことも気になる。サイファーや、のことだって。





『らしくないではないか。。』

ふと頭の中に声が響き、はふと振り返った。

いや、振り返っても何もいるはずがない。今の声が、誰だかわかっている。

はクスリと笑い、ベッドに座り直して、声を紡いだ。

「そうか?」

『いつもならばそんなウジウジと考えたりしない。主はそういう者だ。』

「すげぇな。そこまで俺のことわかってるわけ?」

クスクスと笑いが漏れる。

ははっきりと目を開けると、言った。

「ワリィな、最近全然お前に話しかけてなかったぜ、リヴァイアサン。」

『主が気にすることはない。最近はいろいろあったのだから。』

そう。いろいろあった。

魔女暗殺作戦が失敗し、捕らえられ、そして拷問。

拷問のときの傷は、もうすっかり消えている。

スコールが念入りに回復魔法をかけてくれたおかげだろう。

彼にも感謝せねばならない。

「なぁ、リヴァ。久し振りに、“出て”こねぇか?」

『・・・出る?』

「最近出てねぇからストレス溜まりっぱなしだろ?たまには出てきて俺の話し相手になれよ。」

『・・・それが主の望みなら。』

リヴァイアサンはそう呟くと、ふっと黙り込んだ。

は笑みを浮かべて、自分の正面を見つめる。

すると、自分の体から青い光が放たれ、リヴァイアサンが自分の目の前に姿を現した。

だが、その姿は海龍の姿ではない。中性的な顔立ちの、美しい青年の姿だ。

立派な人間の姿ではあるが、ひとつ違いを上げるとすれば、全身が青系の色だということだ。

肌は薄い水色。髪は濃い青。洋服は薄い青。そして、唯一目だけが金色。

「よーぉ、何度見てもお前はやっぱイイ男だなぁ。」

「・・・ほどでは、ない。」

「おいおい、俺一応女だぜ?」

苦笑を浮かべるに、リヴァイアサンは表情を変えず言った。

「女だろうが、男だろうが、関係ありません。は不思議な魅力があります。」

「魅力ねぇ。・・・あんま興味もないけどさ。」

リヴァイアサンは、クスリと笑っての隣に腰掛けた。

ベッドが軋む。

「てかさ、ひとつ聞きたいんだよ、リヴァ。」

「なんでしょう?」

不思議そうに自分を見つめるリヴァイアサンを見て、は言った。

「お前さ、俺の頭ん中に話しかけるときはいつも「我は〜だ。」とかいうくせに、

ヴィジョンとして現れるとどうして敬語になるんだ?」

そう。頭の中で話すときは、随分と堂々とした物言いなのだ。

なのに、こうして擬人化した場合では冷静な敬語。

それが、には疑問だった。

リヴァイアサンは一瞬キョトンとし、それからクスと笑った。

「どうしてだと思います?」

「さぁなぁ。どっちでも俺にとっては大切なリヴァだし。でもちょいと気になるしな。」

じっとリヴァイアサンを見つめると、リヴァイアサンは困ったように笑い、口を開いた。

「あなたの中に入っているときは、大丈夫なんです。

ガーディアン・フォースとして、堂々としていられる。

けど、あなたと正面から見つめ合うと・・・どうしても、あなたに逆らえないんですよ。

しゃべり方は逆らうとかそういうこと関係ないって思うかもしれませんけど、

私にとってはそうじゃないんです。もちろん、私はあなたに逆らってるつもりなんてない。

けれど・・・なんていうか、頭が上がらないというか、素直な自分を出せるんです。」

「素直な自分?」

は首を傾げる。

「ええ。・・・本当は、私は堂々とすることなんて向いてないんですよ。」

「つまりは、いつもの堂々としたのが本当のリヴァじゃなくて、

こういう優しい敬語を使うのが本当のリヴァのキャラってことか?」

「ええ、まぁ。」

情けないです、と苦笑するリヴァイアサンは、いつもの姿からは想像もつかなくて。

けれど、こういう可愛いキャラってのも良いかもしれない。

は笑い、リヴァイアサンの後ろからヘッドロックをかました。

急なことにリヴァイアサンは驚き、あたふたしている。

「な、何するんですかマスター!!」

「いんや?いつもカッコいいリヴァイアサンが、ホントはこんなに可愛い奴だったとはなぁ」

「い、い、痛いですよ!!ッ!!」

「なんだよ、G.Fでも痛みってあんの?」

「当たり前じゃないですか!!ぎ、ギブッ!!ギブギブッ!!」

ぎゃぁぁ、と悲鳴を上げるリヴァイアサンを見て、は笑いながら解放した。

リヴァイアサンは恨めしそうにを見る。

「ひ、酷いじゃないですかぜぇはぁ、いきなり何するんですかぜぇはぁ」

「どうでもいいから、その荒い息押さえろよ。」

は苦笑し、肩を竦める。

「でもさ、俺・・・ホントにお前のこと、信頼してるんだからな。」

「・・・それは私も同じです。あなたは・・・私を助けてくれた。あの忌々しいあいつから・・・。」

ふ、と。リヴァイアサンは、静かに視線を落とした。

嫌な記憶が蘇ってくるのが気持ち悪くて、悔しくて。

「・・・忌々しいあいつ、ね・・・。俺も覚えてるぜ。シュミ族の奴だろ?」

「ええ。・・・マスターノーグ。・・・金のことしか考えていない、酷い人でした。」

リヴァイアサンの言葉を聞き、はふと眉根を寄せた。

マスターノーグ。どこかで聞いたことがある。

ノーグ。マスター。誰だ?





『それより、ノーグだかハンバーグだかってのは、誰だ?』





自分の言った言葉が、頭の中に蘇った。

まさか。“マスター派”の“マスター”とは、もしや。

「・・・おい、リヴァイアサン。」

「恐らくが考えていることは、正解ですよ。」

の質問を、リヴァイアサンは遮って言った。

リヴァイアサンの言う“マスターノーグ”と、バラムを支配している“ノーグ”が、

もしかしたら同一人物では、と考えたのだ。

そして、その質問を聞く前に頷いたリヴァイアサン。

「名前で気付いたのか?」

「いえ。・・・波動が、伝わってきます。・・・ノーグの波動が。」

思い詰めたような表情を浮かべるリヴァイアサンを見て、は舌打ちした。

リヴァイアサンと出会った日のことが、頭の中に蘇ってくる。











ラグナと別れ、ガルバディア・ガーデンに入学したての頃だ。

ラグナがいろいろと調教してくれたおかげで、成績は良かった。

戦闘の訓練も、素早い計算も、機械や自然の知識も、に敵う者はいなかった。

成績優秀だったが、けれど誰もを認めようとしなかった。

教師達も、学園長のドドンナも、口を揃えてこう言うのだ。

『態度が悪過ぎる。何でも出来るからといって、調子に乗るな』と。

それが、どれだけにとって悔しいことだったか。

教師達に嫌われているとなっては、友達も出来やしない。

誰も、に近付こうとはしなかった。




孤独。

そんな言葉が、今でもぴったりだと思う。

友達もいなければ、教師達も認めてくれない。

天才といってもいいほどの才能なのに、誰も自分を見てくれない。

悔しかった。

そして、孤独だった。




そんなある日。がガーデンの廊下を歩いていると、ドドンナと教師の話し声が聞こえた。

普通に通り過ぎてもよかったのだが、何やら気になるので立ち止まってみる。

「・・・何?ノーグ様が?」

「ええ、今いらしてるそうです。ドドンナ様にお会いしたいと。」

「・・・そうか、わかった。今すぐ向かおう。ご苦労だった。」

「は。」

珍しく、あの嫌味なドドンナが焦りを見せている。

冷静を保とうとしているようだったが、にはお見通しだった。

こいつは面白そうだぜ。

は思い、ドドンナの後を尾けた。





「ノーグ様。お久し振りです。」

は物陰に隠れ、ドドンナの様子を窺った。

ドドンナの前には、明らかに人間ではない人物が立っている。

黄色い、カブのような肌をした人物。あれが「ノーグ」だろうか?

「フシュルルルル・・・お前・何も・変わりはないが?」

「はい。ガルバディア・ガーデンも、私も、変わりありません。」

は笑いを堪えるのに必死だった。

あのドドンナが、こんなし下手にでるなんて思いもしなかったのだ。

よっぽど「ノーグ」様とやらは、素晴らしいお方らしい。

見た目はそうは思わないが。

は陰から顔を覗かせ、ノーグを見てふと眉根を寄せた。

「フシュルルルル・・・なら・いい。」

気味の悪いノーグの声に紛れて、何かが聞こえるような気がした。

何を言っているかはわからない。けれど、助けを求める信号を見た気がした。

頭の中に、海龍のビジョンが映し出される。

これが一体何なのか、全然わからなかった。

青い光。美しい海龍。

助けを求めているのは、この海龍?

はそう思った瞬間、ドドンナ達の前に飛び出していた。

「おいっ!!」

急に響いた幼い声に、ドドンナとノーグは驚いて振り向く。

まだ12歳の子供だ。恐らく、かなり情けなく見えただろう。

・イオザム!?お前、何故こんなところに・・・!今すぐ戻れ、命令だ!!」

焦ったドドンナに、負けてはいられない。

「ざけんなよドドンナのばーかっ。オレは、そいつに用があるんだよっ。」

ビシリと剣をノーグに突き付け、そう言い放つ。

ドドンナが顔を青くしたのが、横目でもはっきりわかった。

!!ノーグ様に謝れ、今すぐ!!」

「うるさいって言ってんだよ、ドドンナのアホッ。」

ノーグは体が大きい。だから、自然を見下ろされる形になる。

けれど、全然恐怖を感じなかった。

助けを求めている者を、助けたい。それだけだった。

「・・・フシュルルル・・・小僧・わじに・なんの用だ?」

尋ねられ、は更に目を鋭くした。

「お前、なにをもってるんだ?あおい光が見えるんだ。」

「あおい・ひがり?」

ノーグはの言葉を繰り返し、それから大声で笑った。

嘲笑われている気がして、なんだか腹が立つ。

ノーグは一頻り笑うと、ニヤリと笑みを浮かべて言った。

「ブジュルルル!お前・ごの役立たずのごとを言っているのが?」

「やくたたず?」

は眉根を寄せる。

「海龍・リヴァイアサンのごとだ。わじがマスターなのに、こいつ・わじの言うこと聞かない。

だがら、役立たずだ。こんな奴、役立たずだ。」

「言うこと聞かない?そんなの、お前にしたがいたくないだけだろっ!オレにはわかるぞっ。」

リヴァイアサン。その名前が、胸に深く刻まれた。

ノーグは笑い、続ける。

「なら、お前・こいつを操るごと・出来るが?」

「いいじゃん。あやつってやるよ。その代わり、オレがリヴァ・・・なんとかを操れたら、

そいつ、オレにくれよ。いいだろ?」

「ブジュルルル・・・いいだろう。お前なんぞに・操れるわげが・ない。」

青い光が、ノーグの手からに渡される。

光が体に入った瞬間、暖かな気分になったのを、はしっかり覚えている。

「リヴァ・・・・イアサン?」

光が反応して、輝く。

それに勇気付けられ、は両手を広げて叫んだ。





「リヴァイアサン!!」





オォォォォォォンッ!!!




リヴァイアサンがの声に反応し、その美しい姿を現した。

ノーグもドドンナも驚愕し、リヴァイアサンを見つめて呆然としている。

リヴァイアサンはの傍らに寄り添い、まるで甘えるような仕種を見せている。

それは、の勝利を意味していた。

「約束通り、こいつ・・・もらうぜ?」

ニヤリと笑ったを見て、悔しげに表情を歪めたノーグ。

けれど約束は約束。言ったことに二言はないはず。

は、悔しいと喚くノーグを見つめ、傍らのリヴァイアサンを撫でた。

温かく、やわらかい。

はなんだか嬉しくなって、笑顔で言った。

「これからよろしくな、リヴァ!!」








「懐かしいな。・・・あれからもう5年か。速いもんだぜ。」

は目を細めた。それから、リヴァイアサンを真っ直ぐ見つめて言う。

「もしかしたら、俺はノーグと戦うことになるかもしれねぇ。いいか?」

自分達は、どちらかといえば学園長派だ。

マスターノーグがいれば、ガーデンの混乱は続く。

それを防ぐために、マスターノーグは排除しなければならない。

それは、きっとSeeDである自分達に課せられる任務だろう。

リヴァイアサンとしては辛いかもしれない。思い出したくもない人物なのだから。

けれど、リヴァイアサンは少し微笑んで答えた。

「いいも何も、私はについて行きますよ。私のマスターは、なのですから。

それに、ノーグと戦うのなら手助けが出来るでしょう。私は、彼の弱点を知っていますから。」

は頷いた。

そして、やっと笑顔になって、言う。




「お前はさ、やっぱ俺の最高の相棒だよ。」


「最近は話しかけてもくれなかったじゃないですか。」


「悪かったって思ってるよ。」




クスクスと笑う。

でも、この空気が心地良いと感じる。それが嬉しかった。



ふと、は部屋の扉に目をやる。

気配がする。誰かがこの部屋に近付いているようだ。

「リヴァ、戻れ。」

「はい。」

が短く言うと、リヴァイアサンは頷き、青い光となっての体に戻った。

青い光が収まると同時に、部屋の扉がノックされる。

間一髪だった。こんなところを見られては、混乱の種になりかねない。

「開いてるぜ、どうぞ。」

扉が開き、入ってきたのはスコールだった。

は少々驚きつつも、首を傾げる。

「スコールが俺んとこに来るなんて珍しいな。何かあったのか?」

尋ねると、スコールは頷き言った。

「“マスターノーグ”が呼んでいるらしい。エレベーターで下に降りろと言われた。」

「ははーん、いよいよマスター様とご対面ってことか。おし、行くぜ。」

は立ち上がり、壁に立て掛けてあったガンブレードを腰に装着する。

それから、軽く肩や首を回してストレッチをした。

「んじゃ、行くとしますか、マスター様のところへよ。」







スコールとは、リノアを連れてマスタールームへ向かった。

とはいえ、先のガーデン混乱時に争ったマスターが一体何の用だろう。

どっちにしろ排除するつもりでいたのだから、呼ばれて得はしたのだが。

エレベーターで地下に降りると、誰かが口論しているのが聞こえてきた。

『これだけ言ってもわからないのか!?』

スコールとは顔を見合わせる。

「(あの声は・・・)」

随分と口調が変わってしまっているため、わかりにくいが、あの声は聞き覚えがある。

『くっ、離せ! まだ、話は終わってない!』

スコール達は頷き合うと、声のする方へと駆け寄った。

やはり。思った通りだった。

口論していたのは、シド学園長だったのだ。

「金の亡者のクソッタレの大馬鹿野郎!あんたに相談したのが間違いだった!

SeeDはなあ、未来のために蒔かれた種だ!その未来が今なんだよ!

それはあんただってわかってるだろうが!

クッソ〜! 過去へ戻れるなら十何年か前の自分に伝えてやりたい。

ノーグを信じちゃいけない! ノーグは金の事しか考えないってな!」

随分なしゃべり方である。スコール達はぽかんと口を開け、シドを見つめた。

シドはハッとし、振り返る。スコール達を見て、罰が悪そうに眉根を寄せた。

「スコール!? ・・・見ていましたか?」

「・・・はい。」

正直に答えるスコールに、シドは苦笑した。

「大人だからって何でも我慢出来るって訳じゃありません。さあ、戻りましょう。」

エレベーターの方へ歩き出すシド。スコールは顔を上げ、シドに言う。

「学園長、報告があります。どさくさに紛れて遅くなりました。」

「では、後で学園長室に来てください。」

シドはそれだけ答えると、落胆の色を隠せないまま戻って行った。

丁度そのタイミングで、ガーデン事務員がやって来た。

スコール達は振り向く。

「お前達はガルバディアから帰ってきたSeeDだな?」

「・・・そうです。」

「やっと来たか。マスター『ノーグ様』がお呼びだ。来るが良い・・・」

事務員は、スコール達を更に奥へと連れて行った。

事務員は立ち止まり、言う。

「ノーグ様がお呼びの時は3秒以内に来るように。」

「フシュルルル・・・3秒・までなーい。」

異様な声に、スコール達三人は顔をしかめた。

見ると、巨大な獣のような人物がしゃべっている。

「(・・・これがガーデンのマスター? これがガーデンの経営者?

・・・人ではないのか? 俺達は、そう言えば何も知らなかった。

・・・・・・・・ショックだ。)」

スコールは小さく頭を振る。

「フシフルフシフル・・・お前・魔女のごと・報告せよ。」

「(何処から話せば・・・)」

スコールが戸惑っていると、事務員が言った。

「速やかに報告だ。結果が先、経過は簡潔にな。」

速やかにと言われても。少しくらい、言葉の整理をさせてくれてもいいではないか。

スコールは溜息をつき、話し出した。

「・・・我々は魔女イデアの暗殺に失敗しました。」

自分で言っても反吐が出る。なんと情けない報告だろう。

「ガルバディア・ガーデンでシド学園長からの命令書を確認。

ガルバディア・ガーデン所属アーヴァイン・キニアスをメンバーに加え、

バラム・ガーデンとの共同命令『魔女暗殺』の遂行に当たりました・・・」

「ブジュルルル! 共同・命令だど!?ブジュルルル! お前ら・ダーマされだ!」

急に叫んだノーグに、スコール達は驚いて顔を見合わせる。

騙された?意味がわからない。

「どういうことすか?俺達、意味がわかんねぇんですけど。」

が投げやりに問うと、ノーグは言う。

「フシュルルル・・・説明じてやれ。」

言われた事務員が、一歩前に出て話し出す。

「ノーグ様はガルバディア大統領と魔女が手を結ぶ事を早くからご存じだった。

ガルバディア・ガーデンのマスターから相談を受けていたのだ。」

「ガルバディア・ガーデンのマスター?・・・ドドンナですか。」

が憎々しげに言う。

「フシュルルル・・・ガルバディア・ガーデンのマスタードドンナは・わじの・手下だ。」

「そう、魔女とガーデンはいろいろと因縁があるのだ。

だから魔女は必ず、各地のガーデンを自分の物にしようとするはず。

そこでノーグ様はガルバディア・ガーデンに伝令を送った。

今のうちに魔女を倒してしまえ、とな。方法は暗殺がベストだと思われた。だが、しかし・・・」

事務員の言葉を遮り、ノーグは叫ぶ。

「ブジュルルル! 小賢しい・ドドンナは・いざという時のために

お前達・暗殺に・利用したのだ。わじの指示で・やったと言い逃れる・ために。

小賢しい・小賢しい奴め。」

飼い犬に手を噛まれたな。は内心ほくそ笑んだ。

スコールがノーグに問う。

「あの命令とバラム・ガーデンは関係ない。・・・そういう事ですか?」

「作戦実行を前に、たまたま現れたお前達が利用された。

しかし作戦は失敗。魔女は生きている、そして・・・」

「我々の予想通り魔女は復讐してきた。恐らくミサイル攻撃も魔女の報復だろう。」

「何とか魔女の怒りを静めなくてはならない。

それには暗殺の関係者を魔女に差し出し、バラム・ガーデンの誠意を見せる必要があった。」

そこまで言われ、スコール達は少々慌て出す。

「ちょっと待ってくれ。それは・・・」

スコールの声を遮り、ノーグは言う。

「ブジュルルル! SeeDの・首・差し出して魔女に・従うふり・するのだ!」

スコール達は驚愕した。それでは、自分達の立場がないではないか。

スコールは吠えた。

「何故魔女と戦わないんですか!?

俺達が毎日受けている訓練は何のためですか!?」

「何だど!? 魔女に・負けたくせに! 偉そうに・吠えるな!」

「偉そうに、だって?ならテメェが魔女と戦ってみろよ!!

こんなとこで事務員に守られて、ただ金のためだけに動いてる奴に何も言われたくねぇ!!

テメェが運営してるガーデンなんて俺はヤだね!シド学園長がマスターになった方がいい!!」

が叫んだ。ノーグは、シドという言葉に過敏に反応し、半狂乱に怒鳴る。

「ブジュルルル! シドだど!? シドのアホが・SeeDを魔女討伐に・送り出した。

失敗・したら・どうする?このガーデン・終わりだ。わじの・ガーデン!

わじの・ガーデン・終わりだ! シド・あのアホ・許さん。

貧乏シドに・ガーデン建設・金出してやったの・忘れたか!?

おお・SeeDの首・一緒に・あいつの首も・魔女に・差し出すべし・思った。

シド捕まえろと・命令したら・生徒・シドの味方・しやがった!

ブジュルルル! ブジュルルル!わじの・ガーデンなのに・だ!」

「ふざけんな!ガーデンはあんただけのモンじゃねぇんだよ!!」

「ブジュルルル! では・何だ!?

シド学園長と・魔女イデアの・物か!? あの夫婦の物か!?」


「「何だって!?」」


スコールとは驚愕した。横を見ると、リノアも驚いた表情を浮かべている。

シドとイデアが夫婦?そんなことがあるというのか?どういう事だか理解出来ない。

「フシュルルル・・・今・わかった。シドとイデア・わじからガーデン・乗っ取る気だ。

お前らも・シドの手先・だな。ゆ・許せん。」

「スコール!!」

が叫ぶ。

怒りに我を忘れたノーグが、襲いかかってきた。

スコールはガンブレードを抜き、リノアも武器を構える。

だが、だけはガンブレードを抜かずにじっとノーグを見つめていた。

目を細め、まるでノーグを嘲笑っているかのように。

は、ノーグにはっきりと言い放った。

「ノーグさんよ、5年ぶりだな?」

ニヤリと笑ったの顔。スコールとリノアは首を傾げる。

知り合いだったのか?

「ブジュルルルルッ!お前・誰だ!!」

「俺を忘れたってのか。まぁ、あんたのその脳味噌ならまぁ仕方ねぇか。

あんたからもらったリヴァイアサンは、立派に俺の相棒をやってくれてるぜ?」

その言葉に、ノーグの怒りが更に跳ね上がる。

「ブジュルルル!思い出した・お前・あの時の・小僧!!」

「ヘヘ、久々に会ったんだ。俺とリヴァの見事な連携プレーでも見て逝けよ!」

はそう言うなり、両手を頭上でクロスさせ、リヴァイアサンを召喚した。

風が吹き荒れ、水流が舞い、美しい海龍が姿を現す。

それを見て、ノーグが驚愕の声を上げた。

「フシュルルル!お前・わじのリヴァイアサン!!わじの・わじの!!」

「いつからテメェのもんになったんだよ。こいつは俺の相棒だ!」

ノーグはよっぽど悔しいのか、手足をじたばたさせている。

そして、叫んだ。

「お前・わじが・助けたの・忘れたが!!わじ・お前・助けた!!

何故・わじの・言うこと・聞かない!?わじ・お前の・マスターだ!!」




   
―――――私のマスターは世界でただ一人。だけです。―――――




リヴァイアサンの透き通るような声が、その場にいる全員の耳に届いた。

ノーグは悔しげに両手を振り回し、狂気に満ちている。

はニヤリと笑い、言った。

「フラれて残念だったなぁ。これでわかっただろ?こいつは、俺の相棒だ!

リヴァイアサン、暴れて来いよ!!!!」

リヴァイアサンはの言葉に応えるように、高く舞い登りノーグを見下ろした。

ノーグの顔は、恐怖に怯えている。

リヴァイアサンは、大海嘯を巻き起こした。

大きな津波がノーグを襲う。

スコールは、それを見てガンブレードを振り上げ、ノーグに向かっていった。

連続剣。スコールの得意技だ。

ジャキン、ジャキンと音がして、ノーグを追い詰める。

「フシュルルル・・・わじ・もうダメ!魔女は・恐いが・こいつらも・恐い!

何故・何故・わじが・こんな目に・・・」

波がなくなり、リヴァイアサンが青い光とともにの中へと戻る。

ノーグはいない。スコールは、ガンブレードを腰に戻している。

あの時、スコールが飛び出してくれなければノーグはまだ生きていただろう。

リヴァイアサンの力だけでは、さすがに弱過ぎた。

ここはスコールに感謝である。

ガーデンの創始者であるマスターノーグは、滅んだ。

これで、バラム・ガーデンの最高責任者はシドになるはずだ。

リノアがスコールに尋ねる。

「マスター、どうなったの?」

「気にするな。訳のわからない事が増えただけだ。」

「だって・・・」

問うリノアに、スコールは叫んだ。

「どうして俺に聞くんだ! わからないのは俺だって同じだ!

俺、何も知らないんだ。何も・・・知らないんだ。

だから・・・騙される。だから・・・利用される。」

悲痛なスコールの声。リノアとは、目を細めてスコールを見つめた。

いつもそうだ。スコールは、時折普段からは想像のつかない弱さを見せるときがある。

「スコール・・・」

「学園長に会いに行く。」

学園長に聞きたいことが増えた。報告だってしなくてはならない。

ここで、仲間内で口論している場合ではない。

スコールは、話はこれで終わりだとでも言うように、とリノアを置いて先に行ってしまった。

エレベーターの音がして、その場は静まり返る。

は小さく溜息をつき、肩を竦めた。

「あいつも精神的に疲れてるんだろうよ。たまには休ませてやれ。」

「でも・・・わかんないよ、いろんなことがあり過ぎて・・・。」

「それはスコールも同じだ。俺だってわかんねぇことだらけだぜ?

俺達だって、わからないのに聞かれれば、どうすればいいのかわからなくなるだろ?」

その言葉に、リノアは俯く。

「班長だから、リーダーだからって、いつもあいつに頼っちゃダメだ。

リーダーは頼るためにいるんじゃない。俺達の指揮を執るためにいるんだ。

そして俺達は、リーダーを支えるためにいる。だろ?」

「うん・・・。」

リノアは頷いた。

は、スコールを本当に理解しているんだと思った。

きっと、スコールが本当に困ったとき、助けてあげられるのは一人だけだと。

そう思うと、スコールとの存在が遠く感じて、少し寂しかった。

「んじゃ、俺達も行くか。学園長は保健室かそこらへんにいるだろ。」

「うん。」

二人は少し微笑み合い、マスタールームを後にした。









<続く>


=コメント=
今回はリヴァイアサン大活躍です。
この話は始めの頃から書きたいと思っていた話なので、満足です。
リヴァイアサン擬人化!!これが書きたかったんです。
TOD2をご存知の方は、もしかしたら元ネタがわかるやもしれません。
とリヴァの位置関係のモデルになったのは、
TOD2より、ジューダスとシャルティエの位置関係なんです。
シャルティエみたいに主人のことを「坊ちゃん」とは呼びませんけど(笑
だから、リヴァイアサンの声は石川英郎さん希望。
アーロンっぽい声じゃなくて、シャルティエ系の可愛い声で。
いつかリヴァ擬人化のイラスト描かせて下さい。
というか、もしかしたらリヴァイアサンのイメージが崩れてしまった人もいるかもしれません;
そういう方は、ごめんなさい;;
もっと偉大なカンジを予想してた人は空振りです。
ごめんなさい;

次回は、スコール委員長宣言(笑)
それと、F.Hまで行けるかな?もしかしたら幕間挟むかもしれません。
早くイデア(2回目)との戦闘まで行きたいよー・・・!
ご期待ください。 [PR]動画