まさか分かれて行動することになるとは思わなかったよ。




けど、仕方のないことなんだよな?




だって俺達は・・・SeeDなんだから。










hat is your hope ?









スコール達男性陣が乗った車と、達女性陣がのった車はただひたすら砂漠を行く。

散々な目に遭った収容所をなんとか脱出したSeeD達は、とりあえず収容所から離れることを

優先して車を前進させていた。

は車を運転しながら、ただ自分の兄のことを考える。

拷問のときに聞かれたいくつかの質問の答え。

そう、“SeeDの本当の意味”だ。

戦闘のスペシャリスト。傭兵のコードネーム。

だが、はそういうことを尋ねているわけではなかった。

SeeDにしか知らされない重要な秘密。それを求めている。

けれど、残念ながらはSeeDの本当の意味など知るはずもないし、

そのような重要な意味があるということさえ知らなかった。

疑問はそれだけではない。

兄が、が、自分にガンブレードを返してきたことも不思議である。

恐らくは拷問の前に持っていかれてしまったのだろうが、妹とはいえ敵の武器を返すなんて、

敵に塩を贈るよりも分が悪くなるに決まっている。

なのに、はただに武器を返してきた。その行動の示す意味がさっぱりわからない。





ふと、が言っていたことを思い出しては口を開いた。

「おい、そういえば今大変なことになってるぞ。」

「大変なこと?」

問い返してきたのはキスティス。は前方を見据えたまま答えた。

「ああ。イデア・・・魔女がガーデンをミサイルで攻撃するらしい。」

「それ、誰から聞いたの?私も同じこと、アーヴァインから聞いた。」

リノアが少し身を乗り出し、に尋ねた。

「兄貴のだよ。何考えてんだか知らねぇけど。

攻撃目標はバラムとトラビアのガーデンだ。このままじゃ間違いなく死者が出る。」

「なんやってぇぇっ!?」

叫び声を上げたのはセルフィだ。彼女はトラビア・ガーデンの出身である。

恐らく、周りが思っている以上に驚愕しているに違いない。

「駄目やっ!、車止めてっ!!」

「は?止めてって・・・おいっ!ちょっと待て・・・わわっ!!」

セルフィが助手席から身を乗り出し、ハンドルを握って止めようとした。

車は思い切りカーブし、女性陣の悲鳴が上がる。

は慌ててブレーキを踏んだ。キキィッと音がして、車が急停車する。

ブレーキを踏まなければ、危うく横転するところだ。

は呆れたように髪をかき上げ、うらめしげにセルフィを睨んだ。

ふとバックミラーを見れば、男性陣も車を止めたようだ。

とりあえず達は車を降りる。すると、スコール達も車を降りた。

「何だよ。」

「魔女がガーデンをミサイルで攻撃するんですって!」

が言ってたってが言ってたよ!」

興奮気味の女性陣を見て、スコールは小さく溜息をついた。

そして、はっきりと言う。

「俺達に出来る事は可能な限り早くガーデンに戻って危険を知らせる事だけだ。」

「攻撃目標はバラムとトラビアのガーデンなんだよ〜!ミサイル発射妨害!発射阻止!」

セルフィがスコールに食い付くように叫んだ。

スコールはそれに困ったような溜息をつく。

セルフィの気持ちはとてもわかる。友達がいるガーデンを潰されるなんて嫌に決まっている。

けれど、簡単に動くことは出来ないのだ。何故なら、これはセルフィだけの問題ではないから。

沈黙するスコールに、なおもセルフィは叫んだ。

「あたし、トラビアから転校してきたばっかりなんだよ!

だからトラビア・ガーデンがピンチだって聞いて黙ってる訳にはいかないのよ!

だから、はんちょ、お願い!ガルバディア・ミサイル基地潜入作戦メンバー決めて〜!」

痛いほど伝わってくるセルフィの必死な想い。けれど。

「(簡単に言うなよ・・・メンバー選んで、もしもの事があったら俺は・・・)」

それは、スコールの責任になる。

恐らく、もしものことがあればスコールの判断ミスとされてしまうだろう。

いや、そんなことが嫌なわけではない。

自分達の中の誰かが死んでしまうかもしれない。そんな危険を許すことは出来ないのだ。

「決を採りま〜す! スコールがメンバーを決める。スコールは班長だからバラムへ戻る。

この考えに反対の人は手を挙げましょう!」

セルフィの問い掛けに手を挙げる者はない。

いつもならこの辺りで口を挟んでくるでさえ、何も言わずに腕を組んでいる。

「私、どっちチームでも何も言わないからね。」

「(あんたは部外者だろ?)」

声には出さず、心の中で突っ込んでおく。

「スコール、班長なんだからメンバーを決めて。」

「(班長なんだから? 俺が頼んでなった訳じゃないぞ。)」

なりたくてなった班長じゃない。けれど、班長には責任がある。

だからこそ、勝手な行動は控えたいというのに。

そのとき、かなり遠い場所から幾筋もの白い煙が立ち上がった。

全員の表情が凍り付き、白い煙を見上げて硬直する。

それは、ガルバディアが放ったミサイルに間違いないだろう。

「あのさ・・・ターゲットは最初がトラビアで、次がバラムって聞いたよ。」

アーヴァインがぽつりと呟いた。セルフィは青褪め、その場にストンと座り込んだ。

がっくりと肩を落としたまま、掠れた声で呟く。

「ごめんな、トラビアのみんな。あたし、何も出来へんかった・・・

せやけどみんな無事におってや。また会えるやんね。

今のミサイルは・・・きっとハズレだよね・・・。ハズレだよね・・・?」

いつもの明るいセルフィからは、絶対に考えられない落ち込みようだ。

当たり前だ。大切な故郷を奪われるかもしれないのだから。

はセルフィを一瞥し、スコールに向き直った。

「スコール、決めろ。班長には決定権がある。例え望んでなった班長じゃないとしても、

お前にはここにいる全員をまとめる義務があるんだぞ。」

の言葉が、スコールの胸に深く響いた。

は続ける。

「もう全員の気持ちは決まってる。お前の指示で、皆その通りに動く。

迷うな。考えるのは後でいい、今はとにかく指示を出してくれ!

さぁ、決めろ。報告班、バラム組は誰を連れていくんだ?班長!」

そのの言葉で、その場にはしんと沈黙が落ちた。

全員がスコールの言葉を待ち、ただ口を噤んでいる。

スコールを見つめて。じっと、沈黙したまま。

スコールは困ったように眉根を寄せ考えていたが、やがて溜息をともに軽く頭を振った。

そして、顔を上げる。

「リノアは俺とバラムに戻る。も出来ることなら報告班に回って欲しいが、

セルフィの希望によってははミサイル基地潜入チームに入ってくれ。」

せめてもの、慈悲だった。

キスティスがいるから大丈夫だとは思えるが、なんといってもがいるだけで心強い。

もしかしたら、セルフィはを連れて行きたいと思うかもしれないと考えた。

だからそこはセルフィとに任せる。

セルフィは戸惑った表情でを見つめた。どうすればいいのか困った顔だ。

はじっとセルフィを見つめ返していたが、小さく肩を竦めて言う。

「俺はどっちでもいいぜ。セルフィが希望するなら俺はミサイル基地潜入チームに入るし、

別にいいって言うなら報告班に回る。セルフィはどっちがいい?

俺がいなくても、キスティス先生がいるから大丈夫だぜ。」

セルフィはじっと黙って考え、それからすぐ顔を上げて笑顔で言った。

「うん、大丈夫。ははんちょ達とバラムの方をよろしくっ。」

「了解。」

も笑みを浮かべ、頷いた。

セルフィはキスティスを見つめて敬礼をする。

「先生、よろしくお願いします。」

「大丈夫。頑張りましょう。」

キスティスは頷いて、スコールに敬礼をした。

メンバーは以下の通りだ。

報告班がスコール、リノア、の3人。

そして、ミサイル基地潜入チームがセルフィ、ゼル、アーヴァイン、キスティスの4人だ。

スコールは確認のように全員を見つめ、口を開いた。

「これは今までの任務とは違う。誰の命令でも依頼でもない。セルフィ、何か作戦があるのか?」

「このガルバディア軍の車で行けば何とか基地には入れると思うんだ。

でも、その後は全然わかんないから基地の中で考えるよ。それでいいかな?」

スコールは頷いた。

きっとセルフィなら上手くやれる。面白い知恵が働く子だから。

セルフィはスコールに、笑顔で言った。

「ごめんね・・・ううん、ありがとう。」

それから、声を大きくして言う。

「きっと時間、あんまりないよ〜! 早くバラム・ガーデンへ!」

「セルフィ、頑張れよ。バラム・ガーデンで待ってるからな。」

スコール達は、車に乗り込み発進させた。

後ろから、セルフィの声が聞こえる。

「スコールはんちょ、いっそげ〜!!」

大丈夫。あれだけの度胸と気持ちがあれば、きっと成功するだろう。

こうしてスコール達は、二手に分かれて行動を開始した。






「なぁ、本当にがいなくても、いいって思ってたのか?」

スコール達の乗った車を見送り、遠く消えた頃、ぽつりとゼルが尋ねた。

セルフィはキョトンとしてゼルを見つめ、それからふっと微笑む。

キスティスはゼルの言葉に、少しムッとしたように言った。

「なぁに?私じゃ頼りないってことかしら?」

「い、いや、そうじゃなくって・・・。」

ゼルは焦って言葉に詰まり、それでもゆっくりと言った。

「ほら・・・って、どこか不思議な感じがしないか?

なんていうか・・・傍にいてくれるだけで心強いって言うか・・・。

スコールもそういう感じはするんだけど、スコールとはまた違う感じでさ。」

「まぁ、それは私もよく思うけどね。どこか不思議な雰囲気を持った子だわ。」

キスティスは同意し、車の去った方向を見つめる。

セルフィはじっと遠くを見つめて考え込んでいたが、ふと呟いた。

「ホントはね、に来て欲しいって思ったんだ。

キスティス先生がいるから、絶対大丈夫だよ?でも、そういうんじゃないの。

ゼルが言うように、傍にいてくれるだけで心強く思えるの。

何もしなくていい、ただ傍にいて欲しいって思うんだ。」

は昔からどこか頼り甲斐のある奴だったからね〜。

結構言うことやること冷たかったりするんだけど、だからこそ頑張ろうって思えるんだよね。

そういうとこ考えたら、まだスコールの方が優しいかも。

って結構キツいんだよね〜。だからこそ心強いんだけどさ。」

のおかげよ、スコールがあんなに丸くなったのは。

まだ少しわかりにくいけど、確実にスコールの雰囲気がやわらかくなったもの。」

仲間を思いやる言葉を、口にするようになった。

冷静な班長ではなく、頼り甲斐のある班長に変化した。

本当に小さな変化ではあるけれど、わかる人にはすぐにわかる変化だ。

不思議な雰囲気を持っているとスコール。

その2人がいないと、どうしてこんなに心細くなるのだろう。

けれども、立ち止まってはいられない。

前に進まなければ、とスコールの気持ちを無駄にしてしまう。

「さ!行こう!!」

セルフィは大声で言い、全員が笑顔で頷いた。

絶対に阻止してやる。ミサイルなんて。ガーデンを破壊するなんて、絶対に許さない。








「スコール。メンバー決定して動き出したのは良いけど、

ここはガルバディア領の砂漠真っ只中でしょ?どうやって戻る?」

後部座席のリノアが、スコールに尋ねた。

スコールは運転をしながらバックミラーでリノアを一瞥し、考えるように眉根を寄せる。

急いで案を考え目的場所を決めないと、車の燃料が切れてしまう。

そうなれば徒歩で行くしかなくなってしまうのだ。それだけは絶対に御免である。

スコールとは体力的にも大丈夫だろうが、リノアの体力がまず心配であるし、

何よりここはガルバディア領の砂漠。いつどこで敵と遭遇するかわからない。

また収容所に逆戻りなんてこともあるかもしれないのだ。

スコールがしばらく考えていると、助手席のが挙手して言った。

「俺ここらへんのことならちょっと詳しいぜ。バラムに戻るための良い方法がある。」

「良い方法?」

スコールはブレーキを踏み、車を停止させた。

そしてを見つめ、不思議そうに首を傾げる。

「このまま少し車を走らせれば、今はガルバディア兵しか使ってない駅があるんだ。

一般人は絶対に近付かないような場所だし、今はミサイル云々で兵も少ないと思う。

あるのは石炭を乗せてる列車くらいだろうけど、それでも走らせればバラムの近くに行くはずだ。」

なるほど、とスコールは頷いた。

とりあえず今はそうするしかあるまい。スコールは再びアクセルを踏み、車を前進させた。

ガルバディア兵に見つからないかというところが少々不安だが、どうせいるのは雑魚だろう。

ガンブレードで一掃出来れば良いのだが。



しばらく車を走らせていると、の言った通り寂れた駅が見えてきた。

まともな掃除はされていないということと砂漠のど真ん中にあるということもあり、

駅は砂だらけに見える。見ただけで咳が出そうになるのは1人だけではないだろう。

スコールは車を駅の傍に停車させ、車から降りた。

リノアとも車から降りて駅を見つめる。

好都合だ。

丁度駅には、古びた石炭列車が止まっている。

「あの列車を使ってみるか。」

スコールは言い、上手く陰に隠れながら列車に近寄った。

列車に乗っていたガルバディア兵が列車から降りたのを確認し、兵の目を盗んで列車に飛び乗る。

そして、すばやい手際で列車を動かし始めた。

列車はゆっくりと動き出し、それに気付き驚いた兵士が目を丸くしている。

「こ、こら〜!貴様ら何をする!!」

焦った兵士は、無謀にも走って追いかけてくるではないか。

はその様子に噴き出し、口を押さえて肩を震わせている。

「スコール!追いかけてくるよ!?」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

スコールは黙って余裕の表情を浮かべている。

は変わらず笑いをこらえている様子。

「ま、待て〜!ぬおおおおおおおおおお!ガルバディア魂を見せてやる!」

「ククク・・・ッ、あの兵士、馬鹿だ・・・!!」

小声で馬鹿にするのも忘れていない様子。

「兵隊さん、ごめんなさい!」

リノアは本気で兵士に謝る。そんな本気で泣きそうな顔をしなくても。

「あああああぁぁぁぁ・・・・」

「ぶはっ!“あああああぁぁぁぁ”だって!!!」

はこらえきれずに噴き出し、腹を抱えて大笑いした。

腰にくるような情けない声を出す兵士も兵士である。

声が遠ざかって行く様子が、とてつもなく間抜けでおかしい。

「緊急事態なの、許してください!」

リノアの言葉を最後に、兵士の姿は豆粒ほどになり、やがて消えていった。

頑張ったのだろうに。スコール達を相手にしたのが運の尽きということだ。

あああああぁぁぁぁ・・・あああああぁぁぁぁ・・・ッ・・・

、うるさい。」

兵士の声がよほどおかしかったのか、は声を再現しては笑っている。

目尻には涙が浮かんでいる。それほどおかしいことなのだろうか。

「だってよ、あんな情けない声出されたら誰だって笑うだろうよ!!

なんでお前はそんな平静な顔してんだよ。」

「お前がおかしいだけだろ。」

「ヒデェなぁ。兵士の頑張りを認めてやっただけじゃん。」

俺は兵士を馬鹿にして笑っているようにしか見えないが。

ヤッだぁ、スコール目がどうかしちゃったんじゃないのぉ〜?

「どうかしているのはお前の頭だ。」

いつもの通り、お約束の漫才である。

リノアはそんな2人を見て、苦笑を浮かべた。







列車に乗り込んでどれほどたったことだろう。

かなりの時間がたったとき、スコールは列車を停止させた。

「どうした?」

「バラムだ。」

言い、スコールは列車を飛び降りる。とリノアは顔を見合わせ、入り口から外を眺める。

そして、驚いて目を見開いた。

そこは、まだ離れて日もたっていないのに懐かしいと思える、バラムの景色だったのだ。

青い海が広がり、海鳥の鳴き声が心地良く耳に届くバラム。

潮の匂いが懐かしく、そして爽やかだった。

はふつふつと込み上げてくる喜びを押さえ切れず、大声で叫んだ。

「ぃやったぜー!!俺達、ちゃんとバラムに帰ってこれたんだぜ!!」

はリノアに笑顔を向け、列車から飛び降りた。

それに続いてリノアも列車を飛び降りる。

潮の香りが、潮の風が、青い海が、空が、どうしてこんなにも懐かしい。

とリノアはスコールの元に行き、それからバラムの町並みを見つめた。

平和。そんな言葉がぴったりの光景だ。

それから3人はバラム・ガーデンの方向に視線を移す。

ミサイルは?一体どうなったのだろうか。

「行こう、スコール。」

「ああ。」

3人はバラム・ガーデンの方へと駆け出した。







バラム・ガーデンは特にミサイルを受けた様子もなく、いつものようにそこにあった。

スコール達は胸を撫で下ろす。

「無事みたいだよ! 良かったね〜!」

「(セルフィ達、上手くやってくれたんだな。)」

そう思い、ふとそうではないかもしれないと考え直す。

もしかしたら、まだミサイルが来ていないだけであってこれからかもしれないのだ。

スコールはとリノアを見つめ、言った。

「早くシド学園長に知らせよう。」

とリノアは頷き、スコールの後に続いてガーデン内へと入る。

だが、ガードレール前まで来て3人は眉をひそめた。

中では、生徒達が何やら慌しく行動しているのだ。

「急げ急げ!」

ガーデンの教師が生徒にそう指示している。

スコールは首を傾げた。

「(? 避難、始まってるのか?)」

誰かがミサイルが来るということを報告した?いや、そんなことはないはず。

ミサイルが飛んでくるということを知っているのは、自分達だけのはずだ。

スコールは教師に何があったのか尋ねようと近寄った。

が。

「シド学園長を捜し出せ! 見つけたらバトルで始末しても構わん!

行けーッ! シド学園長を捕まえろーーッ!」

スコールは伸ばした手を止めた。

「(学園長を!?)」

「行けーッ! シド学園長を捕まえろーーッ!」

何が何やらわからない。スコールは困惑し、1歩後ろに下がった。

ふと見ると、とリノアも戸惑った表情で慌しい生徒達を見つめている。

「おい、スコール、これどういうことだ?」

「聞くな。俺にも何が起こってるかわからないんだ。」

すると、スコール達に気付いた教師がこちらに近寄ってきた。

瞬時には身構える。何やら嫌な予感がしたのだ。

「マスター派か学園長派か?」

教師の唐突な問いに、スコールは眉根を寄せた。

「(何だって?)」

「どうした! マスター派か学園長派かと質問している!」

「意味がわかりません。」

やっと帰ってこれたのにこの騒ぎは一体何だ。

スコールは小さく肩を竦めた。

「マスターのノーグ様に忠誠を誓うか!?」

「何が起こってるんですか?」

「質問しているのはこっちだ! 生徒は何も考えずに戦えばよい!

ん? 何だその反抗的な顔は!さてはお前学園長派だな!」

教師は憎々しげに表情を歪めると、スコールの体を強く突き飛ばした。

スコールはその場に踏み止まったが、教師の怒りは止まらない。

「待ってください、誤解です。俺達はノーグ様に忠誠を誓います。

マスター派の生徒です。」

スコールの後ろから、がそう言った。

スコールは驚いてを見つめる。一体何を言っているのか、と。

は「俺にも何が何だかわからない」という表情でスコールに向かって肩を竦めた。

つまりは、いつもの『嘘も方便』作戦だ。の得意な作戦である。

「本当か!?」

「ノーグ様こそが、ガーデンの真の支配者!そうでしょう?」

はニヤリと笑い、はっきりと言い放った。

それを見て教師は怒りを静めたのか、ひとつ頷くと言った。

「よし、ならば学園長を見つけて始末しろ!!いいな!!」

「了解。」

疑いを解いたらしい教師は、そのままどこかに行ってしまった。

それを見送り、スコール達は顔を見合わせる。

「さすがね。演技が上手い。」

「どうってことないさ。それより、ノーグだかハンバーグだかってのは、誰だ?

バラムにはそんな奴がいるのか?俺聞いたこともないぞ。」

スコールは首を横に振る。

「俺だって知らない。ガーデンはシド学園長が運営しているものだと思っていたが・・・。」

とりあえず、何が起こっているのかカドワキ先生にでも聞かないといけない。

3人は疑問を抱えたまま、ガーデン内へと進んでいった。

そのとき、ふと1人の男子生徒が話しかけてきた。

どうやらかなり深い傷を負っているようだ。制服が少々赤く染まっている。

「よ、よぉ・・・スコール、マスター派が訓練施設のモンスターを放ったんだ・・・

建物の中にも彷徨いてるから気を付けろよ・・・・」

スコール達は顔を見合わせ、眉根を寄せた。

意味がわからない。マスター派だの、学園長派だの、一体何が起こっているんだ。





ロビーに行くと、そこには雷神と風神の姿があった。

やっとまともに話が出来る相手が見つかったようだ。

雷神はスコール達の姿に気付いたらしく、軽く手を上げて振り向いた。

「おう! 帰ってきたか!」

「どうなってんだ、これ。」

困惑したスコールが尋ねると、雷神も少し混乱している様子で答えた。

「最初はSeeD狩りとか言ってたもんよ!

今はガーデンが学園長派とマスター派に分かれて戦ってるもんよ!」

「原因不明困惑。」

この2人にもよくわかっていないようだ。

風神は少し疲れたように溜息をついた。

「風紀委員としちゃ泣きたくなるぜよ。今までの苦労が無駄無駄だかんな!」

「なぁ、SeeD狩りって何なんだ?んでもって学園長は無事なのかよ?」

「俺たちゃ何も知らねえもんよ。」

それもそうだろう。何かを知っているのなら、こんなところでのんびりしているはずがない。

スコールが言った。

「俺達シド学園長に報告する事があるんだ。

ここは危険だ。ミサイルが飛んでくるかもしれない。」

驚く雷神と風神。

「さっさと逃げ出すもんよ!」

すかさず、雷神の足に風神の蹴りが入った。

かなり強烈だったのか、雷神は表情を歪めて足を押さえる。

「お、おう! 1人で逃げちゃ卑怯だもんよ!

みんなに知らせるかんな! 戦ってる場合じゃないもんよ!」

「俺達はシド学園長を捜すもんよ、なーんて雷神の真似してる暇はねぇな。」

は腕組みをして、溜息をつく。

周囲は変わらず生徒達が慌しく行動している。

と、風神が言った。

「注意!」

「各施設ともに戦闘が激しいもんよ!マスター派のSeeD狩りにも気を付けるもんよ!」

注意すべきはマスター派か。自分達はSeeDだからなお気を付けなければなるまい。

ふと思い、は尋ねた。

「なぁ、お前達は学園長派か?マスター派か?」

雷神と風神は顔を見合わせ、クスリと笑いを浮かべる。

「俺たちゃどっちでもないもんよ!俺たちゃサイファー派だもんよ!」

「はっははー、なるほどな。んじゃ俺はスコール派ってことで!!」

が笑うと、雷神と風神もいつもの明るい笑いを漏らした。

学園長派だの、マスター派だの、まったくもってくだらない。

雷神と風神はひとつ頷くと、生徒達にミサイルのことを知らせに走り出した。

さすがは風紀委員だ。

だが、その後ろ姿に向かってスコールはぽつりと呟いた。

「・・・サイファー、魔女派だぞ。いいのか?」

「いいんじゃねぇの?そんなん、人それぞれだろ。」

だから俺はスコール派だし。

は言い、笑った。





とりあえず3人はカドワキ先生のところへ向かうことにした。

慌しいガーデン内だ。行動するのに苦労はしない。

保健室への通路で、マスター派と学園長派が小競り合いをしているのを見つけた。

教師は憎々しげに吐き捨てる。

「シド学園長め、意外といい駒を持ってる・・・ラチがあかん、モンスターを呼ぶぞ。」

モンスターを呼ばれてたまるか。

スコール達はすかさず学園長派を助けに入った。

スコール達の姿を見て、教師は驚愕の表情を浮かべる。

「ここにもSeeDがいたか!」

「ほらほら、さっさと来いよ、俺達忙しいんだから。」

が軽く挑発すると、教師は即座にモンスターを呼んだ。

訓練施設にいるモンスターだ。今のスコール達にとって強敵ではない。

「行け、モンスター達よ!」

教師はモンスターを呼ぶと、すぐにどこかに消え去ってしまった。

どうせ追ったところで何もないだろう。

「とりあえず、今このモンスターを倒すことが先決・・・っと!」

はガンブレードでモンスターに切りかかった。

モンスターの雄叫びが上がる。なんと情けない。たかが一発で倒れてしまうとは。

モンスターを退治してふと見つめると、マスター派の生徒が倒れている。

怪我をしているようだ。

そこに現れたのは、カドワキ先生だった。

「まったく・・・ほら、立てるかい。」

「俺は、マスター派だぞ・・・」

生徒はそう呟くが、カドワキ先生は呆れたように額に手を当てた。

「馬鹿言ってるんじゃないよ。ケガ人に学園長派もマスター派もないだろ。

ほら、スコール、アンタ達もボサッとしてないで手伝いなさい。」

スコール達は頷き、怪我をした生徒を保健室まで運んだ。

保健室は随分と静かだった。ここでは争いも起こらないからだろう。

カドワキ先生は疲れたように溜息をつき、首を振った。

「マスター派だ学園長派だって、一体、何をやってるんだろうね、まったく。

あぁ、シド学園長かい?見ての通り、ここにはいないよ。」

「一体、何処に・・・・」

「さぁね、シュウなら知ってるんじゃないのかい?

と、言っても、そのシュウも何処にいるかわからないけどね。

そうだ、学園長に何の用だい?」

用などひとつしかない。スコールは言った。

「ここにミサイルが飛んでくるかもしれない。先生も逃げた方がいい。」

そう告げると、さすがに驚いたのかカドワキ先生は目を丸くした。

「何だって!? ますます逃げる訳にはいかないね。

私がいなくなったら誰がケガ人を診るんだい?」

「はは、さすがだなカドワキ先生。こりゃ頼もしいぜ。」

はそう言い、笑った。






変わらず慌しいガーデン内を、学園長を捜すためスコール達は駆け出した。










<続く>



=コメント=
結局こんな終わりかよ!と突っ込んでくださってもOKです(爆
すみません、こんな中途半端で(汗
次回出来れば学園長と再会、ガーデン起動まで行きたいですね。
ノーグとの戦いはまたその後かなぁ・・・。
この話はですね、実は結構迷って作ってたりします。
をスコール達バラム組に入れるか、セルフィ達ミサイル基地潜入組に入れるか、
ものすごく迷いました。
でもやっぱドリームなんで、スコールと一緒の時間を過ごしてもらおうと(笑

にしても、列車のとこでの兵士!あの人面白いですよねぇ(笑
あのシーン大好きだったりします。「あああああぁぁぁぁ」でいつも爆笑しているので(笑
可哀想な兵士ですよね。ああいうキャラ好きですよ(笑 [PR]動画