久々の故郷のガーデン。





バラム・ガーデンに来たのはついこの間だけど、ガルバディア・ガーデンは久しぶりだった。





ガルバディア・ガーデンを出てすぐにバラムに行ったわけではなかったから。










hat is your hope ?










「・・・サンキュ、スコール。なんだかマジで恥ずかしいとこ見られちまったな。」

苦笑して、頭をかきながらは言った。

スコールはそれにいつもの無表情で「気にするな」と答える。

全く。優しいんだか優しくないんだか。

ついそんなことを思ってしまう。

「じゃ、皆のとこに戻ろうぜ。そうしたらガルバディア・ガーデンに出発だ。」

「ああ。」

はやっといつもの笑顔に戻った。

自然に笑えることが、こんなに嬉しいと思ったことは一度もない。

こんなに、喜びを感じられるとは知らなかった。



がスコールの後について元の場所に戻ろうとした。だが、スコールは動こうとしない。

不信に思い、は首を傾げてスコールに尋ねた。

「・・・どした?早く戻ろうぜ。」

「いや・・・。」

スコールは口篭もる。は眉根を寄せ、ますます首を傾げた。

「・・・適当に走ってきたから、道がわからない。」

「・・・は、はぁ?」

は頓狂な声を上げ、ポカンと口を半開きにした。

スコールは少し赤くなって顔を背けている。これはからかってみると面白いかもしれない。

はニヤリと笑うと、言った。

「・・・道がわからなくなるくらい、頑張って俺のこと探してくれたんだ?」

「誰もそんなことは言っていない。」

「ちぇっ。つまんねぇ奴だなー。」

からかってはみたが、上手く乗ってはくれなかった。つまらん。

「ま、そういうことなら俺に任せろよ。ここらの地形は完璧に把握してるからな。」

ずっとこの森を遊び場にしていたのだ。道に迷うような間違いは絶対にない。

はニッと笑うと、スコールの前を先導して歩き出した。

ガサガサと草をかき分けてリノア達が待っているあの場所へ戻る。

急に駆け出してしまったから、心配しているはずだ。

しばらく草をかき分けて歩いていると、リノアの青い服が見えた。

ちゃんと目的地に辿り着けたようだ。当たり前だが、やはり安心する。

「おーいっ!!」

大声でそう言い、思い切り手を振る。すると、皆が気付いてこちらを向いた。

セルフィが嬉しそうな顔で駆け寄ってくる。

!はんちょ!!もー、急に走ってっちゃうから心配したよ〜。」

「ワリ。もう大丈夫だ。心配かけたな。」

は笑顔でそう返し、それからスッとリノアを見つめた。

リノアは一瞬ビクリと身を竦ませ、それから哀しそうに目を細める。

は苦笑してリノアに近寄り、少し屈んでリノアに言った。

「・・・さっきは、ごめんな。俺、いつもやっちまうんだ。感情コントロール出来ずにさ、

急にあれこれギャンギャン言っちまったから驚いただろ?・・・ホント、ごめんな。」

リノアはの突然の謝罪に驚いている。予想外だったらしい。

けれどすぐに、少しぎこちない笑みを浮かべてに言う。

「ううん。悪いのは私。自分の勝手でいろんなこと言っちゃったから。私も謝らなくちゃ。

ごめんね、。・・・私、が女の子だって知らなかったの。男の子だって思ってた。

同じ女の子だもんね。私もに負けてられないよ。」

「おっ、俺と勝負でもしてみるか?」

「あはは、バトルはちょっと勘弁。絶対に敵わないもん。」

よかった。いつものリノアだ。

先程かなり強い言葉で言ってしまったから、落ち込んでいないかと心配していたのだが、

この分ならその心配もなさそうで安心した。

リノアはから離れスコールと向き合うと、言った。

「あのね、スコール。さっき、言い過ぎた。ごめんね。」

ちゃんとスコールにも謝れた。リノアにはその勇気がある。

もう大丈夫だ。は確信して、かすかに口元を上げた。

「さ、それじゃガルバディア・ガーデンに向かって再出発だ!

皆、いろいろ迷惑かけてごめんな。もう大丈夫だから。しっかり道案内するぜ!」

はそう言って笑い、周りの皆もそれにつられて笑みを浮かべた。





達5人は、やっとのことで森を抜けてガルバディア・ガーデンに辿り着いた。

ガルバディア・ガーデンは最大規模を誇るガーデンである。

ガルバディア政府との結び付きが非常に強いが、立場としては中立。

学園内は校則が厳しく、重苦しい空気が漂っている。

多くの卒業生を軍部に送っているためか、多額の委託金を受け取っている。

そのため起動兵器の導入など、設備の投資も積極的に行っている。

「かなり雰囲気違うなぁ」

ガーデンに着いて最初に口を開いたのはセルフィだった。

その後に皆がそれぞれ口を開く。

「静かだなー。」

「・・・いいところだ。」

「いや、こんなとこ全然良くもなんともねぇぞ、スコール。」

しっかりとスコールへの突っ込みも絶やさない

「何かシケたツラした奴等ばっかりだぜ。」

「スコールのとこのガーデンともまた違うのね。」

リノアはガーデン自体が珍しいのかキョロキョロとしている。

セルフィはトラビアやバラムのガーデンとの違いを感じ取っているらしい。

はとりあえず伸びをすると、全員に言った。

「俺がとりあえず学園長に訳を話してくるからさ、皆は待機しててくれよ。」

「待機?・・・ここでか?」

ここというのはガーデン入り口の外である。こんなところで待てと言われても困るものだが。

はふむ、と考え込むと、思い出したように懐から一枚のカードキーを取り出した。

そしてそれをスコールに手渡す。

「・・・これはなんだ?」

「俺の部屋のカードキー。3階の一番端の部屋だから、そこで適当にくつろいでてくれよ。

ちょーっとガーデン内広くてわかりにくいかもしんないけどさ。そんときは近くの女子生徒に聞いて。

間違っても男子生徒には聞くなよ。」

「・・・え?なんで女子生徒なの?」

リノアが首を傾げる。は困ったように言葉を濁らせると、

「・・・とにかくっ、男子生徒に聞いても良い事ひとつもねぇから!んじゃ後でな!」

そう言っては駆け出した。

言えるはずもない。

男子生徒に自分の名前を出すだけで、戦いを申し込まれてしまうなどと。

は女子生徒には人気が高いが、その分男子生徒からは反感を買っているのだ。

ああ、まったくややこしい。

細かいことはグチグチ気にすんじゃねぇっての。








「・・・まさかまたお前に会うとはな、・イオザム。」

「俺だってあんたになんて会いたくなかったさ。ドドンナ学園長?」

学園長室に、重く嫌な空気が漂う。

ドドンナはを睨み付け、はそれに挑発的な笑みで返す。

しばらく互いに見つめ合っていたが、ドドンナが鼻を鳴らして顔を背けた。

それから手元にある書類を片付けながら、の目を見ずに問う。

「・・・で?一体何の用だ。ここに来たからには理由があるんだろう。」

「さすが。話の早い学園長で助かるぜ。」

小さく肩を竦めながらは言った。

「情報の早いあんたのことだ。ティンバーの放送局であった事件は知ってるだろ?」

「・・・大統領襲撃事件のことか。」

「ああ。俺達はあの事件の関係者でね。事件の終始を見ていた。犯人の男とも知り合いだ。

あの事件の所為でバラム・ガーデンに戻れなくなっちまってさ。ガーデン心得に従って

一番近いガルバディア・ガーデンまでやって来たってわけだ。」

ドドンナは鼻で笑い、手を止めてを見つめる。

「それで私にどうしろと?」

「いくつか聞きたいことがある。バラム・ガーデンは無事なのか?

それから、犯人の男がどうなったのか知りたい。」

ドドンナはふぅ、と溜息をついた。

いちいち皮肉な行動をする奴である。だが、は気にもとめない。

ドドンナは言った。

「バラム・ガーデンは無事だ。ティンバーでの大統領襲撃事件は犯人の単独行動だと判明した。

バラム・ガーデンの責任は問わないとガルバディア政府から通達があった。」

「んで。犯人の男は?」

「お前もわかっているだろう。大統領に手を出したんだ。裁判は終わって、もう既に刑も執行されている。」

はその言葉を聞いて、深い溜息をついた。

わかり切っていたことだ。けれど、それが言葉として伝えられるとこんなにも虚しい。

サイファーは処刑された。こんなに苦しい気持ちになる理由がわからない。

「・・・現実は優しくはないってことか。・・・仕方ねぇな・・・。」

「それで・イオザム。お前の仲間は今どこにいる?バラム・ガーデンのSeeDと一緒なのだろう?」

「ああ。今はとりあえず俺の部屋に通してある。待機する場所もなかったからな。」

「なるほど。」

ドドンナは息をつくと、書類を置いて立ち上がった。

「まぁいい。とりあえずもうしばらく待機していろ。お前の部屋で構わない。」

「了解。」

はそう言うと、誠意の見えない形だけの敬礼をドドンナに残し、学園長室を出て行った。







とりあえずは自分の部屋に行き、唖然として固まった。

扉の前でただ硬直して動けなくなる。

部屋の中にスコール達がいることは間違いないだろう。だが。けれど。

様!?」

様だわっ!帰っていらしたんですねっ!?」

様っ!!」

部屋の扉の前には、十数名の女子生徒が目を輝かせて待機していたのだ。

は頬をひくつかせて後退る。

だがその分、女子生徒達はずんずん近寄ってくる。

紹介しよう。彼女達はのファンクラブ『“銀色の風”会』の会員だ。

何故“銀色の風”というかと言うと、の瞳の色とさっぱりとした風のような性格から取ったらしい。

『”銀色の風”会』の会員数は約500名。主に女子中心のファンクラブである。

がバラム・ガーデンに移動になってからもファン達の情熱は変わらず、

むしろが帰ってくるのを信じる生徒が増え、会員も増したという。

・・・とはいうものの。

様っ!!私達はずっと信じておりました、様が戻られる今日という日を!」

「いや、えーと、ホラ、俺は今だけ戻ってきただけだから。」

困って後退る。早く部屋に入ってスコール達にいろいろと報告したいというのに。

女子生徒達の瞳の輝きは増すばかりである。

「えー・・・と、とりあえずさ、俺今ちょーっと忙しいからそこ通してくんないかな?」

「皆っ!様のお通りよ!!」

「イェッサー!!」

なんという忠誠心だろう。自分でも驚愕するほどだ。

女子生徒達は一気に退き、部屋への道が開かれた。

は困って頭をかきながら、とりあえず部屋に入ろうとする。

その時。

「えーいっ!」

ボフ。

1人の女子生徒が、何を思ったのか急にに抱き付いてきたのだ。

うむ、可愛い。可愛いが周りの殺気もものすごいぞ。

とにかく、今この殺気をなんとかしないと自分に抱き付いている女子生徒の命が危ない

は諦めたように溜息をつき、両手を上げて大声で言った。

「わーった!わーかったって!後で今ここにいる全員ガーデン入り口に集合しな。

他言無用にしないって言うなら、ガーデン入り口で全員の手にキスしてあげるよ。これでいいだろ?」

数えてみても十数人だ。そう時間はかからないだろうし、恐らく大丈夫だろう。




「「「キャァァァッwww」」」




女子生徒達の叫び声が響いた。そんなに嬉しいのかオイ。

はキーンとする耳を押さえながらも、部屋に入って鍵をかけた。

「遅かったな。」

部屋には案の定スコール達が待機していた。ちゃんと迷わずにここまで来れたらしい。

はガクリと床に膝をつくと、深い溜息をついた。

〜?どうしたの〜?」

セルフィがの顔を覗き込む。はパタパタと手を振って、何でもないと答えた。

「どうだったんだ?」

「とりあえず俺達の事情は理解してもらった。それからバラム・ガーデンも無事。

ティンバーでの大統領襲撃事件は犯人の単独行動だと判明したらしいぜ。

バラム・ガーデンの責任は問わないと言うガルバディア政府の通達があったってさ。」

「犯人って・・・サイファーのことか!?」

は一瞬躊躇ったが、一回目を閉じると静かに告げた。

「・・・裁判は終わって、・・・刑も執行されたらしい。」

その言葉に、一同が固まった。

驚いている者。哀しみを隠せない者、無関心の者。様々なリアクションがあった。

しばらくの沈黙が流れ、それを破ったのはリノアだった。

「・・・処刑されちゃった?・・・そうだよね。大統領を襲ったんだもんね。

私達『森のフクロウ』の身代わりにあいつは・・・・。」

「確かにサイファーを巻き込んだのはリノアだよな。でも、レジスタンス活動してるんだし、

最悪の事態の覚悟はあっただろ?サイファーだって考えてたはずだ。

だから自分の身代わりになったとかそういう考え方はしない方がいい。」

が言った。それは自分にも言い聞かせているような言葉だった。

自覚している。サイファーが処刑されたと聞いて、少し自分も混乱しているのだ。

ゼルは俯いている。

「嫌な奴だったけどこういう事になるとなぁ・・・あの・・・野郎・・・」

「ゼルなんか、サイファーの事大嫌いだったよね。」

「そりゃそうだけどよ・・・同じガーデンの仲間だったからな。

悔しいし、出来るなら敵討ってやりたいぜ。」

「何か、ブルー。」

空気が重くなる。

キスティスはいなくなってしまった生徒のことを思い出すように目を閉じ、語り出した。

「彼の事で良い記憶なんて全然ないの。

問題児ほど可愛いって言うけど彼はその範囲を越えてたわ。

ま、悪人ではなかったけど。結局SeeDになれなかったわね、サイファー・・・」

また、沈黙が流れる。は口を開かずに、ただぼんやりと皆の会話を聞いていた。

サイファーのことを過去のように言う皆が、何故かおかしくて。

口を挟む気にもなれなかった。

「私は・・・あいつの事、大好きだった。」

リノアが、口を開いた。

「いつでも自信たっぷりで何でも良く知ってて・・・・

あいつの話を聞いてると何でも出来るような気持ちになった。」

遠い方向を見て語るリノア。そんなリノアに、セルフィは問う。

「彼氏?」

「どうだったのかな。私は・・・恋、してたと思う。あいつはどう思ってたのかな・・・」

「ねえ、今も好き?」

「そうだったらこんな話出来ないよ。あれは1年前の夏の日々。

16歳の夏。いい思い出よ。」

思い出・・・か。

は思った。ついこないだまで生きていた人物が、あっという間に思い出の人だ。

好きだった。悪人じゃなかった。仲間だった。全て過去形で話される会話。

自分も死んだら、こんな風に語られるのだろうか。

はこうだった、ああだった。全てが過去形で。

けれど、それが死ぬことなのだと思う。

過去形にされるのは嫌だ。けれど、死ぬということはそういうことなのだ。

は黙って目を閉じた。

「スコール、どうしたの?」

ふとキスティスが黙り込んでいるスコールに声を掛けた。

するとスコールはいきなり立ち上がり、大声で叫び出した。

「俺は嫌だからな!」

「な、何だよ。」

「怒ってるう!?」

ゼルとセルフィが驚いて退いた。

はスコールの言葉に眉をひそめる。

「俺は過去形にされるのはごめんだからな!」

そう叫び、部屋を飛び出して行ったスコール。

は無意識のうちに、スコールを追い駆けていた。



同じなんだ。



過去形にされたくない。過去の人になりたくない。死にたくない。

そう思ってるのは、自分だけじゃなかった。スコールも、そう思っていたんだ。

それが何故かとてもに安心感を与えた。

自分だけじゃない。独りだけじゃなかった。それが、とても嬉しい。

はひたすらに階段を駆け下り、スコールの姿を探す。

階段下にスコールの姿を見つけ、は思い切り叫んだ。

「スコールッ!!!」

ピクリとスコールの肩が揺れ、ゆっくりと振り向いた。

その顔を見て、は一瞬動きを止める。

まるで何かから逃げて、苦しんでいるような表情だったから。

は階段を10段くらい上から飛び降り、スコールに勢い良く飛び付いた。

グラリとスコールの体が揺らぐ。

はスコールに抱き付いたまま、腕に力を込めて言った。

「俺さ、今すげー嬉しいんだ。」

ぎゅうっ、と腕に力を込めると、スコールのやわらかい髪がの頬をくすぐった。

ふわりと、シトラスの匂いもする。

「俺もな、同じこと考えてた。過去形にされたくない、思い出の人にされたくないって。

死ぬってそういうことなのか、俺は嫌だ、って。スコールも、同じこと考えてたんだよな。」

スコールは目を細める。何も、言葉が出てこない。

はそれでも構わなかった。今のこの安心感を、スコールに伝えたかった。

「過去形にされたくない。そりゃ、されたら辛いよな。好き勝手なこと言われるんだから。

うん、俺もそう思うよ。過去形にされるのは絶対に嫌だ。

でもさ・・・俺、こうも思うんだ。時間がたてば必ずそれは過去になる。

けど、俺達はそんな時間の中、未来へ向かって今を生きてるんだ。

きっと誰もが、過去を振り返らずに生きるなんて無理なんだ。けど、時間は必ず流れる。

だから」

はスコールから体を離し、ニッと笑みを浮かべた。

「だから・・・過去形にされないように、俺は生きようって、思うんだ。」

スコールは黙っている。はスコールの手を握って、ぶんぶんと振った。

「だからっ。スコールも一緒に生きようぜ。俺、さっきスコールに命令されたよな?

『泣きたいときは1人で泣くな』って。なら俺からも言わせてくれよ。

1人でなんでも抱え込むな。俺で良ければ愚痴でもなんでも聞くし。

班長の思ってること、もっともっと、知りたいよ。」

知りたい。この男が何を思っているのか。

何に怒りを感じ、何に苛立ちを感じ、何に幸せを感じ、何に喜びを見出しているのか。

知りたい。





「おおっ! スコール!!」

後ろから、聞き覚えのある声が自分達を呼んだ。

スコールとは振り返り、目を丸くした。

「風神!雷神!」

「何をしている?」

雷神と風神に近寄りながらスコールが尋ねる。

「何をしてるってお前、伝令だもんよ。

お前にシド学園長から新しい命令持ってきたんだかんな。」

新しい命令。シドからそんなものが持ってこられるとは思ってもいなかった。

「どんな命令だ?」

「知らんわ、そりゃ。このガーデンの偉い人に渡しちまったもんよ。

シド学園長に言われた通りだかんな。」

「おー、そりゃご苦労だもんよ。」

が雷神の口調を真似して言った。それに雷神は大口を開けて笑う。

「説明。」

風神が雷神に説明を促し、雷神は頷いた。

「俺たちゃティンバーまで行く予定だったさ。でも列車止まってるもんだしよ。

仕方ないからここに来たらお前達来てるって聞いてホッとしたもんよ。」

「おー、そりゃラッキーだもんよ。」

、お前その口調似合わないもんよ。」

「失礼だもんよ。」

互いに言い合って、と雷神は噴き出した。

この2人は、なかなか気が合うのかもしれない。

「サイファー?」

風神が尋ねる。

「おお、そうよ! サイファーは一緒じゃねえのか?」

その問いにスコールとは顔を見合わせ、視線をさ迷わせた。

言い辛い。風神と雷神、そしてサイファーはとても仲が良かったから。

だから、言い辛い。

けれど、言わなければ始まらない。口を開いたのはスコールだった。

「サイファーは死んだらしい・・・ガルバディアで裁判にかけられて処刑されたって聞いてる・・・」

スコールが言った言葉に、風神と雷神は一瞬驚いた表情をした。

が、すぐに噴き出して2人で笑い出す。

「嘘!」

「がはははははは! そりゃ嘘だもんよ! 大人しく裁判なんて受けないもんよ!

黙って処刑なんかされないもんよ!サイファーに似合わないもんよ!」

「訪問!」

「おおっ!? サイファーに会いに行くのか?

んじゃな、スコール、。俺たちゃ、サイファー捜しにガルバディア行くかんな。」

そう言うと、2人はガーデンから走って出ていってしまった。

サイファーの死を信じなかった2人。良いのか悪いのかわからなくなってくる。

その時、放送が流れた。



『バラム・ガーデンのSeeD部隊はゲート前に集合してください。』



「・・・んじゃ行くか?スコール。多分新しい任務の話だろ。」

「ああ。・・・行くか。」

2人はそう言い、互いにかすかに笑い合うとゲート前に向かって駆け出した。







ゲート前には既に皆集まっていた。

ここで待っていれば学園長が命令を持ってきてくれるはずなのだが、遅過ぎる。

ゼルもセルフィもリノアもキスティスも、退屈だというように各々ブラブラしている。

ゼルは少しでも体を動かして苛立ちを解消させようとしているようだ。

「ま、悪いけどもうちょっと待ってくれよ。ドドンナは時間には全然気が回らないんだ。」

「誰?ドドンナって。」

リノアが尋ねる。

「この学園のマスター、学園長さ。最悪な皮肉野郎だ。挑発されんなよ。」

その時、一台の車が近付いてきた。どうやら来たようだ。

リノアが言う。

「私もSeeDだって事にしてね。色々説明面倒だからさ。」

「ほいさ、了解。」

が言ったと同時に、車が停止した。

それを見てスコール達は一列に整列する。

ゆっくりとした動作で、ドドンナが車から下りてくる。

そして、偉そうにスコール達の前に立つと、彼らを見下ろしながら口を開いた。

「・・・ご苦労。」

「ケッ。何が『ご苦労』だ。偉そうに。」

がわざと聞こえるように言う。ドドンナはを睨み付けた。

「何か言ったかね?・イオザム」

「いーえ何も?麗しきドドンナ閣下。」

ドドンナは不快そうにを見つめていたが、やがて本題に入った。

「君達にバラム・ガーデンのシド学園長から命令書が届いている。

我々は規定に従い、命令書を確認した。

検討の結果、我々は全面的にシド学園長に協力するという結論に至った。

実は我々も以前から同じ目的のために作戦の準備を進めていたのだ。

この任務の重要さを理解してもらうために現在の情勢を説明しておく。楽にしたまえ。」

言われ、全員が緊張体制を解く。それを見計らって、ドドンナは続けた。

「魔女がガルバディア政府の平和使節に任命された事は知っているな?

しかし、平和使節とは名ばかり。行われるのは会談ではなく脅迫だ。

魔女は人々に恐怖を与える存在だ。よって、公平な話し合いなど不可能だ。

ガルバディアは魔女が振りまく恐怖を使って自分達に有利な条件を

他の国に認めさせるつもりなのだ。

最終的にはガルバディアによる世界支配が目的なのは明白である。

もちろん、我々や君達のガーデンも例外ではないだろう。

事実、既に魔女はこのガーデンを本拠地にすると通達してきている。

・・・我々に残された選択肢はそれほど多くない。

我々は君達に世界とガーデンの平和、そして未来を託す。

具体的な任務内容は命令書で確認したまえ。質問は?」

なんとまぁ長ったらしい話だろう。はわざとらしくあくびをした。

スコールは命令書に目を通し、ドドンナに尋ねる。

「命令書によると方法は『狙撃』とあります。

しかし、我々の中には確実に狙撃出来る技術を持つ者がいません。」

「その点は心配しなくてもいい。ガルバディア・ガーデンから優秀な狙撃手を出そう。

キニアス! アーヴァイン・キニアス!」

ドドンナは1人の青年の名を呼んだ。はその名にピクリと反応する。

「アーヴァイン??」

全員の視線が近くの草むらに集まる。そこには、1人の青年が寝転がっていた。

ピストルの形にした手を空に向けていて、そこに寄ってきた蝶を撃つ仕草で追い払う。

そして、彼は立ち上がった。非常に背丈が高い。

黄色いコートにカウボーイハットを被ったその青年は、笑みを浮かべるとこちらに歩み寄ってきた。

「アーヴァイン・キニアスだ。狙撃は彼が完璧にやり遂げるだろう。

では、準備が出来次第出発したまえ。失敗は許されないぞ。」

そう言うと、ドドンナは車に乗って去って行ってしまった。

はアーヴァインの隣に並び、ドドンナの車を手のピストルで狙う。

アーヴァインも同じように手でピストルを作り、車を狙った。

「「BANG!!」」

2人で車を撃つ仕草をして、ニヤリと笑って顔を見合わせる。

スコール達はその様子をただ見つめている。

「ぃよーうっ!久しぶりだなアーヴァイン!!」

はアーヴァインの背を叩きながら言った。

アーヴァインは苦笑する。

「相変わらずだね、〜。」

2人は互いに右手で拳を握り、それを拳同士でぶつけた。

随分と仲が良いようだ。

アーヴァインはスコール達に向き直ると、少しキザっぽい動作で言った。

「バラムの田舎者諸君、よろしく。」

その言葉にいきり立つゼルを宥めながら、は苦笑した。

「僕のサポート、大丈夫か?」

「それはあんたの態度次第だ。」

「あ、僕の言う事って、人の反感を買う事が多いんだよね。

まあ、あんまり気にしないでよ。それが僕と上手につき合うコツさ。」

スコールは納得したように頷いた。

ゼルとアーヴァインを一緒にしない方がいいと考えているのだろう。

セルフィがスコールに尋ねた。

「次の仕事、どんなの?」

「次の仕事は・・・いや、これは仕事ではない。

バラムとガルバディア。両ガーデンからの命令だ。

俺達は・・・魔女を暗殺する。手段は遠距離からの狙撃だ。

このキニアスが狙撃手を務める。俺達はキニアスを全面的にサポートする。

狙撃作戦が失敗した場合は直接バトルで正面攻撃だ。」

その言葉に少しムッとしたのか、アーヴァインが言う。

「僕は失敗しない。ドント・ウォーリーだよ。」

「確実に魔女を倒すべし。これが新しい命令だ。

これからガルバディア首都のデリング・シティに向かう。

そこでカーウェイ大佐と会って具体的な作戦の打ち合わせをする。さあ、出発だ。」

とはいうものの、デリング・シティまでのパーティを決めなくてはならない。

アーヴァインはスコール達5人を見比べ、言った。

「さ〜て。デリング・シティまでのパーティーを決めるって事で。」

アーヴァインはとセルフィ、リノアの腕を引っ張り、

「こんなもんかな?」

いけしゃあしゃあと言い放った。

スコールは眉間にシワを寄せる。

「俺が決める。これでいいだろう。」

スコールはメンバーを、アーヴァイン、自分、

リノア、キスティス、セルフィ、ゼルの2グループに分けた。

「な〜んだ、ちゃんとわかってるんじゃん。」

そう思うのなら自分勝手な行動をするな、キニアス。

とスコールが心の中で突っ込んだのは、ここだけの話である。




ついでに出発しようとしたスコール達の行く手を『“銀色の風”会』会員十数名が遮り、

に手へのキスを求めたこともここだけの話である。







<続く>

=コメント=
はい、やっとガルバディア・ガーデンに到着です(笑
さんとアービンは知り合いでしたね。
設定としては厳格なガーデンの中で、唯一心を許せる親友、というところです。
それはさんにとっても、アービンにとっても、お互いということで。
次回・・・うーん、魔女狙撃まで行けるといいなぁ。
多分無理(笑
デリング・シティで狙撃イベント直前で切れると思います。
でも行けそうなら行きます(笑

というか、この話を書いててもっと膨らませたかったところがあるんですよ。
雷神とさんの会話(爆笑

「おー、そりゃラッキーだもんよ。」

、お前その口調似合わないもんよ。」

「失礼だもんよ。」

ここ、もっともっと長くしたかった!!(爆笑
一応私の妄想としては、

「おー、そりゃラッキーだもんよ。」

雷神「、お前その口調似合わないもんよ。」

「失礼だもんよ。」

風神「、止。」

「・・・駄目?楽。面白。最高。笑。(えー?駄目なのかよ、楽しいし面白いし最高じゃん、あはは)」

風神「・・・呆。」

って、感じで、風神も混ざる予定だったんですよ(笑
でも漢字だけってのが難しかったんでやめました(笑 [PR]動画