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つまらなかったんだ。





俺よりも強いヤツがいないガーデンなんて。









hat is your hope ?








「えぇと・・・。俺は今どこを歩いてるんだ?」

青年は腕を組んだ。

バラムガーデン。図書館や保健室はもちろん、訓練施設まである使い勝手の良いガーデンだ。

そんなバラムガーデンの入り口のところにある案内板。その前に一人の青年が立っていた。

青年の髪は深いこげ茶色で、瞳の色は銀。とても整った顔立ちだ。

青年は白いシャツの上に紺色のジャケットを羽織り、黒いズボンを履いている。

傍から見ればなんと美青年なんだろうと誰でも思うだろう。

だが、案内板と睨めっこを繰り広げるその姿は、なんとも不思議な光景であった。

「くそ〜・・・。俺はこういう建物とか苦手なんだよな、まったく・・・。」

青年は溜息をついて頭をかいた。そしてぐるりと辺りを見回す。

「・・・とりあえずはキスティスさんと会わなきゃ何も始まらねーな。」

そう思い、駆け出そうとした矢先の出来事だった。

「おわ!!危ねぇ!!!」

後ろから声がした。何事かと振り返った途端、顔に何かがぶつかった。

痛い。

そんなの当たり前だ。

青年の体がぐらりとよろめく。そして、後ろへと倒れて行った。

視界の向こうの方で、一人の青年が駆け寄って来るのが見えた気がしたが、それが現実だったのかはわからない。

サッカーボールが顔から離れ、青年は意識を失った。







「んー・・・・。」

ひんやりとした風が頬を撫でる。なんだかやけに顔が熱い。

「おや、気がついた?」

声がした。そっと目を開けると、そこには白衣を着た恰幅のいい女性が立っていた。

女性が白衣を着ているというところから、ここが保健室だということがわかる。

「あんたも災難だったねぇ。」

「俺・・・どうしたんだっけ?」

「サッカーボールを顔面に受けて気絶したんだよ。慌てたゼルが駆け込んで来るから何事かと思ったよ。」

「ゼル?」

「あんたにボールをぶつけた張本人だよ。」

そう言えばボールが顔面にぶつかった直後、青年が駆け寄って来るのを見た気がする。

あの青年はゼルという名前なのか・・・。

「それじゃ、先生に連絡するから待ってて。名前と学年、組、番号をおしえてくれる?」

「あの・・・。俺、ここの生徒じゃないんですけど。」

女性は目を丸くした。

「今日ここに転校する予定の・イオザムです。キスティスさんに会いたいんですけど・・・。」

そう言うと、女性は納得したように頷いた。

あんたのことはキスティスから聞いてるよ、今連絡をするから待ってて、と言い、女性は部屋を出て行った。

は再びベットに横になる。まだ顔面がヒリヒリしている。相当強くぶつけられたのだろう。

ひとつ溜息をつき、は寝返りをうった。その視線の先にはもうひとつベットがあって、そこに一人の青年が横になっていた。

顔面を怪我したらしく、包帯を巻いている。

と、ドアが開く音がして一人の女性が入って来た。

金髪で、鋭い目に眼鏡がよく似合っている。

女性はを見てしばらく考え込んでいたが、ゆっくりとに歩み寄ると口を開いた。

「えっと・・・こんにちわ。あなたが・イオザム?」

「あ、はい。」

聞かれ、頷く。は上半身を起こし、女性を見据えた。

第一感想は「綺麗」もしくは「美人」。

女性は不思議そうな顔をすると、に聞いた。

「ねぇ、それ本当よね?」

「本当・・・ですけど・・・。」

は首を傾げた。キスティスは「書類のミスかしら」と呟きながら眉をひそめている。

「おかしいわね・・・。書類には性別女と書かれてたのに・・・。」

「あ、俺女ですよ。」

キスティスは一瞬呆気に取られた表情をすると、口を押さえて笑い出した。

はポカンと口を開け、何事かとキスティスを見つめている。

キスティスは笑い終えると、右手をに差し出した。

「初めまして。あなたのクラスの担任を務めるキスティス・トゥリープよ。」

「初めまして。・イオザムです。」

はキスティスの握手に応え、微かに微笑んだ。

キスティスは言う。

「びっくりしたわ。見た目が女の子に見えないから、書類のミスかと思ったの。ごめんなさいね。」

「いえ。俺も女扱いよりも男扱いの方がありがたいですし。ちなみに制服って女子の制服じゃないと駄目ですか?」

キスティスは考え込んだ。本来ならば絶対に女子が男子の制服を着るなど許せないことなのだが、

の場合はどうしても許したくなってしまう。

それにが女子の制服を着た姿など想像したくもない。

「・・・まぁ、いいわ。特別よ?」

「ありがとうございます。」

はベットから起き上がった。これから教室に行かなければならない。

キスティスは隣のベットの青年にも声をかけた。

「スコール。やっぱりあなただったのね?問題児を一人預かっていると聞いて、あなたかサイファーだと思ったわ。」

青年は上半身を起こす。キスティスは小さく溜息をつき、青年の顔を覗き込んだ。

「練習試合なんだから、スコールも熱くなっちゃ駄目よ。第一魔法は禁止って言ってあったでしょう?」

「・・・魔法を使ったのはサイファーだ。」

「サイファーを挑発したのはあなたよ、スコール。」

キスティスは溜息をつき、に向き直った。

「この子はスコール。スコール・レオンハート。あなたのクラスメイトになるわ。」

スコールはを鋭い眼差しで見つめる。は内心ニヤリと笑い、見下すような笑みでスコールを見返した。

スコールは面白くなさそうに鼻を鳴らすと、ベットから起き上がった。

「さぁ、教室へ案内するわ。ついて来て。」

キスティスに言われ、は歩き出した。スコールもそれに続く。

はスコールの顔をチラリと盗み見る。その横顔は凛としているが、どこか精神的な弱さを含んでいる表情だった。

だが、ひとつだけわかる。こいつは、スコール・レオンハートは、強い。

は気分が高まるのを押さえられなかった。

いつかこいつと勝負をしてみたい。そして、絶対に勝ってやる。







「今日からバラムガーデンの生徒になった・イオザムです。これからよろしく。」

簡単に教室で自己紹介をし、は自分の席へと案内された。

そこはスコールの隣で、一番後ろの席だった。

席に着いてふと視線を走らすと、女子全員が自分を見ているのに気が付いた。

・・・何故?

別に怒っている風でもない。からかおうとしている風でもない。

その視線は確かに恋する乙女の視線だった。

はたじたじになる。

「それじゃ、今日はとりあえずこれで解散!SeeD候補生は実地試験が明日なので、ゆっくりと休んでおくこと。

スコールと。二人はちょっと私のところへ来て頂戴。」

キスティスに言われ、は席を立った。と、立った瞬間に数人の女子に取り囲まれる。

「ねぇ!君!君って彼女いる?」

「どんな子が好み?」

まさに質問攻めである。しかもどうやらを男だと思い込んでるようだ。は困った表情を浮かべる。

「えと・・・。ごめん、質問はまた今度でもいいかな?」

女子達の「えー?」という声が上がる。は苦笑し、ごめんね、と言いつつ女子達から離れた。

教壇のところにいるキスティスへと歩み寄ると、キスティスも苦笑を浮かべていた。

「転校初日から大人気ね。」

「別に構わないけどさ・・・。」

は溜息をついた。

「早速だけど、。SeeD試験は受けるつもりなんでしょ?」

「もちろん。」

キスティスは書類を見ながら頷いた。

「もうガルバディアガーデンの方で候補生試験は受けて来てるのね。だったら明日の試験を待つだけよ。」

「了解。ってか、もうさぁ、眠くって仕方ないんだよなー。」

「先生に向かってタメ口は駄目よ。私だから許してあげるけど。」

は苦笑した。

「で、生徒寮ってどこ?」

「ガーデン入り口にある案内板を見なさい。」








はやっとのことで生徒寮に辿り着いた。

案内板を見てもやはりよくわからなくなり、生徒達に聞き回りながらやっとのことで見つけたのだ。

もしかしたら、自分は方向音痴なのかもしれない。

はベットにうつ伏せで倒れ込むと、深く息を吐いた。

今日は疲れた。しかも明日はSeeD試験だ。

「・・・ま、俺が試験に落ちる訳ないけどさ・・・。」

そう呟き、目を閉じた。



スコールが自分の部屋へと帰って来たのは、もう日も落ちてからだった。

部屋のドアを開けて中へ入り、一番最初に目に飛び込んで来たのは熟睡中のの姿。

「・・・同室がこいつか・・・。」

スコールは溜息をついた。

今までずっと一人で部屋を使っていたが、転校生のと同室になってしまったらしい。

何故こいつと同室にならなければならないのか。そうは思ったが、確か今現在生徒寮の部屋を一人で使っているのは

自分だけだった気がしてもうひとつ溜息をつき、自分のベットに横になった。

この時スコールは、が女だなんて知る由もなかった。








「よう、ねぼすけ。」

朝起きた第一一声がそれだった。

スコールは寝ぼけ眼でを見やり、盛大な溜息をついた。

「・・・なんでよりにもよってお前と同室なんだ・・・。」

「んなこと俺に言うなよ。バラムガーデン問題児のスコール・レオンハート君。」

「お前に問題児呼ばわりされる筋合いはない。」

「そいつは失礼しました。」

はハムサンドを頬張りながらラジオを聞いていた。服はもう制服に着替えている。

スコールは溜息をつき、ベットに引き返して横になった。

「おーい。まだ寝るの?」

「・・・・・・。」

「返事くらいしろよ。スコール。」

「・・・・・・。」

「・・・駄目だこりゃ・・・。」

は軽く肩を竦めた。ふと時計を見る。そろそろ行かなければならない時間だ。

は立ち上がった。そしてスコールに声を投げ掛ける。

「おい、そろそろ行かないとまずいぜ。寝てていーのか?」

「・・・誰の所為だと思ってる?」

「おっと失礼。俺の所為か。んじゃ俺は行くぜ。」

はコーヒー牛乳のパックを片手に、部屋を出て行った。

残されたスコールは本日何度目かになる溜息をつき、ベットから起き上がった。

「・・・なんで俺があんなヤツと・・・・。」

溜息をついても仕方なかった。決定してしまったことは変えられないのだから。

だが、不思議と憎まれ口を叩いていても、本気で嫌だと思っている訳ではなかった。

何故?相手は男だというのに。

スコールは天井を見上げ、最後にもうひとつ、溜息をついた。







スコールがガーデン案内板の前に来た時には、サイファーを除く全員が集まっていた。

スコールは無言のままゼルの隣に立つ。

「なっ、マジで昨日は悪かったってー!」

ゼルが必死になってに謝っている。はというと、ゼルをからかうような面持ちでコーヒー牛乳を飲んでいた。

「だーめ。お前、自分のした事わかってんのかー?俺はお前にボールをぶつけられて、しかも気絶したんだぜ?」

「だから謝ってんじゃん!んなこ根に持つなよ、男らしくないなー。」

ゼルのその言葉には眉をひそめる。不思議そうにゼルを見やり、口を開いた。

「・・・別に男らしくを目指してる訳じゃないけどさ、・・・俺、女だぜ?」



「「「はぁっ!?!?」」」



その言葉に、ゼルだけでなくスコールまで目を丸くして驚いた。

その大袈裟な反応にはたじたじになっている。

「・・・もしかして、今まで気付かなかったとか?」

「ソレじゃわかるはずもねーよ!俺はてっきり男だと・・・。」

ゼルの言うことももっともだった。スコールもずっと男だと思い込んでいたのだから。

だとしたら何故女のが自分と同室に?疑問がスコールの頭の中に浮かんだ。

「・・・だったらなんで俺と同室なんだ?」

スコールが聞く。はケタケタと笑いながら言った。

「あ、それには俺も驚いた。俺さ、このガーデンで女扱いはやめて欲しかったんだよなー。でさ、そのことキスティス先生に言ったら

難なく承諾してくれてさー。で、実際俺は制服だけ男でお願いする予定だったんだけどさ、なんか全て男扱いになっちまったらしくて。

いやー、マジで助かったよ!俺男扱いの方が嬉しいからさー!」

アハハと笑うに、スコールは脱力した。

まさか。まさかこいつが女だったなんて。こんなヤツが女だったなんて。

「へー、お前が例の転校生か。」

声がした。はゆっくりと振り向く。

そこには、白いコートを着た青年が立っていた。

サイファー・アルマシー。バラムガーデンの問題児パート2だ。

いかにも問題児だという雰囲気を持っている。

「さぁ?俺が『例の転校生』かどうかは知らないけど?でもまぁ、転校生と言えば俺しかいねぇだろうな。」

は腕を組んでサイファーを見上げた。

充分身長が高いなのに、サイファーはそのを見下ろしている。

いい気分はしない。

はサイファーを睨み付けた。サイファーは片手での顎を持ち上げる。

「けっ。反抗的な犬の目をしてるぜ。」

「生憎犬じゃなくて狼なんでね。」

はサイファーの手を払い除け、再度サイファーを睨み付けた。

「喧嘩売ってるんなら、高値で買ってやるぜ?」

の態度はいたって反抗的だ。いや、喧嘩腰と言った方がいいだろうか。

サイファーは鼻で笑うと、の横を歩いてゼルの隣に並んだ。

それを見計らい、キスティスが口を開いた。

「班分けをするわよ。あなた達はB班。スコール、ゼル、。そして、班長はサイファーよ。」

サイファーが胸を張って鼻で笑った。

「頑張ってね、サイファー。」

「・・・先生。そういう言葉は出来の悪い生徒に言ってやるもんだ。俺には必要ない。」

サイファーはキスティスを睨み付ける。だがキスティスはちっとも気にした様子を見せずに「なるほど」と頷いた。

「頑張ってね、サイファー。」

挑発のようにキスティスはもう一度言った。サイファーの額に青筋が浮き出たように見えたが、それも一瞬だった。

「皆さん、集まっているようですね。」

バラムガーデン校長、シド。

エレベーターを降り、今案内板の方へと歩み寄ってくる。

どってりとした体格には似合わない愛想のよい顔をした校長は、キスティスの隣に並んだ。

「いよいよSeeD実地試験です。皆さん、頑張って下さいね。」

その言葉に合わせ、全員が敬礼をする。

「あなた達はSeeD達と一緒にドールへと向かい、ドール解放を行ってもらいます。

・・・まぁ、あなた達が倒れてもSeeD達が後片付けはしてくれるので、そこは心配しなくていいです。

ですが、これは訓練の時とは違って本物の戦場です。気は抜かずに、SeeDとして頑張って下さいね。」

「それじゃ、車に乗ってまずはバラムへと向かってください。バラムから船でドールへ向かいます。」

「「「「了解」」」」

最後に敬礼をし、全員はちりじりに駐車場へと向かって行った。

はその場で一回伸びをし、欠伸をする。キスティスはその様子を見て、「本当に大丈夫なのだろうか?」と思ったが、

次の瞬間その思いは掻き消されることとなる。

「――――――――・・・。」

「!」

が微かな声で何かを呟いた直後、の表情が引き締まったのだ。

先ほどまでのふざけていた雰囲気ではなく、どちらかというと『殺気』を振り撒いている。

近寄るだけでビリビリとしそうな雰囲気。

いつもふざけているしか見た事がなかったため、キスティスは度肝を抜かれた。

なんという殺気。いや、闘気だろうか。

キスティスは瞬時に悟った。

ガルバディアガーデンでは満足出来なくなった理由。

自分よりも強い者がいなくなったガーデンでは満足出来なかったの気持ち。

そして、ものすごいほどの『強さ』への執着心。

通常の女性ではまず有り得ないこのどろどろとした雰囲気。

一体何が彼女をこんな姿にしてしまったのだろうか?

キスティスは眉をひそめた。

あまりにの後姿が、痛々しかったから。




一同は、ドールへと向かう。




<続く>

=コメント=
ついに始まりました!FF[夢!!
いやぁ、悩んだよ。やろうかやるまいか(笑
でもまぁ、頑張りますね(笑
最後まで書く自信ないけど・・・(笑