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あの時より一歩強くなれた?第三十五章






クラウド達は走った。

ライフストリームと同じ色の空間の中を、ひたすら走っていた。

途中に出て来る雑魚モンスターなど相手にせず、目標を目指して。

走るごとに胸にひしひしと伝わる威圧感。

これがセフィロスの力なのか。これがセフィロスのオーラなのか。

けれど、迷ったり、逃げたりはしない。

セフィロスに勝つと決めた。だから、臆したりしない。

一人じゃないのだから。皆、仲間がいる。クラウドも、ヴィンセントも。

足止めをしてくれている仲間達だって。だから、負けない。

「怖いか?」

ヴィンセントが言った。はヴィンセントに視線を移す。

ヴィンセントは走りながら、少し優しい笑みでを見つめていた。

は微笑み返す。

「ううん。大丈夫。私、負けないよ。」

「上等だ。」

三人は更に走る速度を上げた。螺旋階段のような道を、ひたすら駆け降りていた。

そして、広い踊り場で立ち止まる。




「ここは・・・。」

妙に足場が悪い踊り場。岩ばかりが集まり、固まったような場所。

と、クラウドが急に武器を構えた。

感じたものは、殺気。体が震えてくるほどの、殺気。

瞬間、大きな球体が現れた。二本の長い触手のようなものが伸びている。

「ジェノバ・・・!?」

クラウドが呟いた。何もしていないのに、汗が流れてくる。

「来る!!」

ジェノバが空高く舞い上がり、そしてクラウド達の前に舞い降りた。

「私達は負けない!!こんなところで負けるわけにはいかない!!」

が叫び、武器を構える。ヴィンセントも腰の銃に手をかざし、ジェノバを睨み付けた。

「行くぞ!!」

クラウドが叫び、三人はジェノバの前に並んだ。

絶対に負けない。こんなところで負けたら、セフィロスになんて敵うわけがない。

「シヴァ!!!」

は瞬時にシヴァを召喚した。冷たい風が吹き荒れ、その中からシヴァが姿を現す。

「バハムート!!!」

クラウドもに続き、バハムートを召喚した。シヴァとバハムートは並び、ジェノバを睨み付けている。

ジェノバには感情がないのだろうか。全く臆せずにシヴァとバハムートを見つめている。

「ダイアモンドダスト!!!」

「テラフレア!!!」

とクラウドが叫んだ。

その叫びに答え、シヴァとバハムートがジェノバに攻撃を開始する。

シヴァのダイアモンドダストで凍ったところに、テラフレアが炸裂する。

ジェノバが雄叫びが聞こえ、三人は構え直した。

まだだ。クラウドが言った。

「頼む!もう少し、時間を稼いでくれ!!」

リミットがたまらない。もう少し、もう少し時間があれば。

けれど急がなければならない。ジェノバは、最上級呪文のアルテマを唱えようとしている。

その前に倒してしまいたい。アルテマを食らったら、無事ではすまないだろう。

「クラウド、任せるからね!?」

がジェノバに攻撃を仕掛ける。

ジェノバはよろめくが、それだけだ。







「クラウド!これで倒せなかったらお前の責任だぞ!!」

ヴィンセントも叫びつつ、クラウドに全てを託す。

ヴィンセントは姿勢を低く構え、連続でジェノバに発砲した。







「クラウド!急いで!!!」

が思い切り高く飛び上がり、ジェノバを切り倒す。







「そこまでだジェノバ!!リミットブレイク!!」


超究武神覇斬!!!



クラウドのリミット技が爆発した。

計15回の連続斬り技。それが、超究武神覇斬。

目に見えないほどの速さでジェノバを斬り付けるクラウド。

火花が飛び散り、それに混じって鮮血も飛ぶ。




先ほどとは比べ物にならない雄叫びを上げ、ジェノバが倒れて行く。

それを三人は見送っていた。

ジェノバが消滅し、クラウド達はその場に座り込む。

荒い息を押さえ、互いにケアルガで回復し合った。



と、その時地響きが起こった。

立ち上がろうにも、立ち上がれないような響きが地面から伝わってくる。

そして三人の意識は暗転し、どこか遠くへ飛ばされた。




気付いたのは、自分達が今空中に浮いているということ。

そして、暖かい光が目前に見えているということ。

「ひ・・・かり・・・・。」

クラウドが呟いた。

「光だ・・・・・。」

眩しいけれど、目を離したくない光。

優しい、包まれるような真っ白な光。

「これが・・・この光が・・・・ホーリー?」

エアリスが残してくれた最後の希望。

この優しい光が、ホーリーなのだろうか?

「イテテテ・・・」

声がした。ふと視線を走らせると、バレットやシド、ユフィ、レッド13、ティファ、ケット・シー・・・。

全員が、その場に集まっていた。結局、全員が集まってしまった。

仲間達は皆の無事を確かめ合い、微かな笑みを漏らす。けれど、その笑みはすぐに消え去った。

「うぐっ・・・!!」

クラウドが苦痛の声を漏らした。

暖かい光は遮られ、自分達のところまで届かない。

何に遮られている?黒い、闇の化身。

「・・・セフィロスッ!!」

ホーリーの前に立ち、セフィロスは笑っていた。

何も語ろうとはせず、ただ不適な笑みでその場に立っていた。

「グッ・・・!これが・・・本当のセフィロスの力だってのか!?」

「か、体が・・・言うことを聞きやがらねえ・・・・ウオッ!?」

「前足が・・・後ろ足が・・・シッポが千切れそうだ!!」

「アカン・・・やっぱりケタ違いや・・・。」

「ア、アタシもうダメ・・・かも・・・。」

「クラウド・・・・・・。」

仲間達は、それぞれ悲痛の声を上げている。

けれど、クラウドと、そしてヴィンセントは違った。

決して負けないと決めたから。セフィロスに勝つと決めたから。

「負けない・・・。絶対に、負けない・・・。」

「私は勝つ・・・。勝たなければ、何も変わらないっ・・・。」

とヴィンセントはセフィロスを睨み返した。

「・・・こに・・・ある・・・・。・・・・そこに・・・あるんだ・・・。」

クラウドは掠れた喉で必死に何かを訴えている。

仲間達は、クラウドを見つめた。

「・・・ホーリーが・・・ホーリーがそこにある・・・。

ホーリーが輝いている・・・エアリスの祈りが輝いてる・・・!」

ホーリー。エアリス。

この星に残された、最後の希望。

エアリス。エアリスの死は、無駄なんかじゃなかった。

ちゃんと、エアリスの祈りは、ホーリーとなって輝いている。

このホーリーは、エアリスの心。

真っ白で、一点の汚れもない白い心。

「まだ終わりじゃない・・・終わりじゃないんだ!!」

このままでは終わらせない。このままで終わらせてなるものか。

「エアリスだけじゃない・・・。ホーリーは、この星の人達の祈り!!」

「私は見届ける。人々のこれから・・・この星のこれから・・・。

ライフストリームを・・・・星の命を、変えさせはしない!!」

「エアリスの想い・・・俺達の想い・・・その想いを伝えるために・・・俺達は・・・来た・・・!!

さあ、星よ!答えを見せろ!そしてセフィロス!! 全ての決着を!!」



負けないよ。絶対に。

エアリスの願い、祈り・・・このまま、無駄になんかさせはしない。

そして・・・セフィロスの命も・・・無駄になんかさせない。

ねぇ、優しいセフィロスはどこに行ってしまったんだろうね・・・。

まだ・・・セフィロスの中に、優しい心は残ってる?

優しい言葉は?優しい仕草は?優しい笑顔は?

私の胸の中には残ってる。でも、セフィロスの中には?

・・・もう、消えてしまった・・・?





クラウドととヴィンセントは飛び出した。決着の時だ。



醜い姿へと変わってしまったセフィロス。

そして、貼り付けたように変わらない不適な笑み。

「・・・セフィロス・・・あなたは、自分のこんな姿を望んでいたの・・・?」

まるで蛾のような姿。こんな姿をセフィロスは望んでいたのだろうか?

あの優しかったセフィロスが。

いや、優しかったセフィロスを、ここまで変えてしまったものは何?

ここまで醜く歪めてしまったものは何?




「こんな姿・・・望んでないよね・・・・?」




セフィロス。

私は、あなたのことが好きだった。

大好きだった。

そして、あなたが豹変してしまってからも・・・

いつか、元のあなたに戻ってくれると信じていた。

・・・ねぇ、私の願いは、届かなかったのかな?



「・・・・・・?」

クラウドは驚いてを見つめた。

の様子に気付いたヴィンセントも、目を見張ってを見つめている。

「・・・私は・・・自分の願いが、届いたって・・・そう思いたい。」

の顔は、濡れていた。

白い肌が涙で濡れて、輝いていた。



「水神の舞い」



の究極リミット技。

は剣を構えると、セフィロスに向かって行った。

何度も舞うようにして敵を斬り付ける。

いや、本当に舞っているのだ。

瞬間的に移動し、そしてあらゆる角度から攻撃を仕掛ける。

「クラウド!!」

が叫んだ。その声を聞き、クラウドが飛び出す。

「超究武神覇斬!!!」

クラウドのリミット技が炸裂する。

セフィロスの攻撃がクラウドに当たり、クラウドの体が宙を舞う。

には、全てがスローモーションのように見えていた。

「ケアルガ!!」

クラウドにケアルガをかけ、クラウドに駆け寄る。

ヴィンセントは銃を構え、セフィロスにひたすら発砲している。

「サンダガ!!!」

クラウドが叫ぶ。サンダガがセフィロスに命中し、セフィロスがよろめく。




負けない。




セフィロスの全体攻撃が三人を襲う。三人の体が吹っ飛ばされ、それでも立ち上がる。

「ラストエリクサー!」

アイテムで全員の体力を回復させる。三人は武器を構え、そしてセフィロスと向き合った。

ヴィンセントが印を結び、ファイガを唱える。

その炎にクラウドが飛び込み、セフィロスに斬りかかった。

初めて、セフィロスの顔から笑みが消えた。




負けない。




「セフィロ――――ス!!!」

クラウドが叫んだ。剣を構え、セフィロスに駆けて行く。




超究武神覇斬!!!





二度目の超究武神覇斬。クラウドは渾身の力で斬りかかった。

斬りかかるごとにセフィロスの羽が折れ、顔が傷付き、触手が切れた。

セフィロスの顔が苦痛に歪む。

羽を失ったセフィロスは、ゆっくりと倒れて行った。






「俺たちに出来るのはここまでだな。」

気が付くと、元の場所へ戻って来ていた。

ジェノバと戦う前に、仲間達と無事を祈り合った場所。

セフィロスを倒したのだ。なかなか自覚が湧かなくて、不思議な気持ちだった。

時計を見ると、まだあれから30分ほどしかたっていない。

「ちょっと待てよ!ホーリーは!?星はどうなる?」

バレットが言った。セフィロスを倒したけれど、ホーリーがどうなったのかはわからない。

クラウドは少々考え、口を開いた。

「それは・・・わからない。あとは星が決めることだろ?」

「私達に出来ることは全部やった。だから、もういいんだと思う。」

が言葉を繋ぎ、全員が頷いた。


「さあ、皆。もう、考えてもしょうがない。不安やなんかはここに置き去りにしてさ・・・。」

皆、クラウドの口から出る最後の言葉を静かに待った。

「胸を張って、帰ろう。」

微笑む仲間達。

全ては終わった。もう、自分達に出来る事はない。

皆帰ろうと歩き出した。だが、が立ち止まっている。

クラウドは不信に思い、振り返った。そして、殺気を感じ取る。

「・・・感じる・・・。」

呟いた。ティファがその呟きに立ち止まり、振り向く。

「えっ・・・?」

「あいつは・・・まだいる。まだ・・・。」

クラウドが頭を抱え込んだ。それと同時に、が倒れ込む。

「クラウドッ!!!!」

やがてクラウドの視界もぼやけ、そのまま暗転した。



気付くと、目の前にセフィロスがいた。

辺りは真っ暗な闇で、その中にクラウドはぼんやりと立っていた。

「・・・最後、なんだな・・・。」

呟くクラウド。セフィロスは笑い、正宗を構えた。

それに応え、クラウドも武器を構える。

クラウドは駆け出す。セフィロスに向かって、最後の力で斬りかかった。

セフィロスは呆気なく吹っ飛び、血に塗れながら倒れた。


もしかしたら、セフィロスはこれを望んでいたのかもしれない。

闇に塗れてしまった自分を、こうして殺して欲しかったのかもしれない。

「セフィロスッ!!!」

声がした。クラウドはハッとして声がした方を振り向く。


そこには、今にも泣き崩れそうなの姿があった。

・・・。」

はクラウドを追い越し、倒れているセフィロスに抱き付いた。

大声で泣きながら、セフィロスを抱きかかえていた。










どうしては泣いている?



俺達はセフィロスを倒したんだ。なのに、何で泣いている?



――――ごめんなさい、クラウド・・・







――――私は・・・私には、セフィロスを見捨てる事が出来ない・・・。



・・・・・・・?



――――セフィロスは私達の敵。それはわかってる。でもね・・・死んでしまえば皆一緒なの・・・。



何を・・・言っているんだ・・・?



――――だから、私は今までの日常には戻れない。・・・ごめん・・・ごめんね・・・。



・・・





景色が薄れて行く。

とセフィロスが白い光の中へ消えて行く。

クラウドは叫んだ。彼女の名を叫んだ。

けれど、景色は薄れ行くばかりで。

喉が掠れるほどに何度も何度も彼女の名を叫んだのに。





「クラウド!!!」

目を覚ますと、そこにはヴィンセントがいた。

クラウドは体を起こし、ハッとしての姿を探す。

「ヴィンセントっ、は?はどこにいる!?」

ヴィンセントは頭を振った。

「聞きたいのはこっちの方だ。お前とが倒れて・・・」

「それで!?は!?」

ヴィンセントは一回そこで口をつぐんだ。先を言いたくないとでも言っているように。

けれど、クラウドの強い瞳を見て、ゆっくりと口を開いた。

「・・・・消えた・・・。」

クラウドは目を見開いた。

夢ではなかったのだ。が消えた。

探しても、あの優しい青は見当たらない。

・・・・・。」

クラウドは唇を噛み締める。その様子を見て、ヴィンセントも察したのだろう。

目を伏せ、拳を握り締めた。






・・・セフィロスのために、私は消えた・・・。

優しいセフィロスを、取り戻したくて・・・。


は、セフィロスを抱きかかえたまま白い空間でぼんやりとしていた。


・・・どこからか、声が聞こえてくる・・・・。



―――――あなたの選択は、間違ってないの?


聞いた事のある声。高いトーンで、けれど優しい声。

「エアリス?」

は尋ねていた。


―――――あなたは、本当にそれでいいの?


声は、の問いには答えずに聞く。

は俯いた。


「・・・わからないよ・・・。少なくとも、間違ったことをしたとは思ってない・・・。」



けど・・・・。












クラウドに・・・会いたいよ・・・・。




ヴィンセントは・・・どう思ってるかな・・・。




・・・ううん。やっぱり、私は間違っていない・・・。