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あの時より一歩強くなれた?第三十四章







は、明るく輝く朝日の光で目を覚ました。

自分は紫色の洋服に包まれていて、自分の頭上には彼の顔があった。

寝ている。

それはそうだろう。夜通しで仲間が帰ってくるのを待っていたのだから。

けれど、子供のような寝顔の彼に、はクスリと笑いを漏らした。

その笑いの振動がクラウドに伝わったのか、彼が目を開ける。

「・・・おはよう。」

彼の口が動く。は妙にこそばゆくなりながら、けれど笑顔で「おはよう」と返した。

彼の顔が、こんなに近くにある。彼は、自分をずっと抱き締めていてくれたんだ。

そのことが何故だかすごく嬉しくて、はほんの少し、顔を赤らめた。

「・・・・。」

沈黙が続く。だが、クラウドがの体を起こし、立ち上がって言った。

「そろそろ時間だ。」

は目を見開く。

「でも、まだ・・・!?」

そう、まだ誰も戻って来ていないのだ。

時間もまだ早い。もう少し、もう少し待っていれば、誰かが戻って来てくれるかもしれない。

そんな思いが交差する。けれども、クラウドは頭を振った。

「いいんだよ、。昨日、も言ってたろ?」

昨日。クラウドと、二人だけの時間を過ごした時。

とても短く感じるけれど、とても大切な二人っきりの時間。

「少なくとも俺達は、一人ぼっちで行かなきゃならないってわけじゃない。」

そうだ。ハイウィンドにはティファがいるし、それに何よりもクラウドがいる。

昨日クラウドに言ったばかりだ。クラウドさえいれば、怖くても負けたりしないと。

それに、行かなければならない。例え誰も戻って来なくても、自分達は進むと決めたのだから。

「うん・・・。そうだね!」

「よし!それじゃ、行こうか!」

いつもの仕草で、クラウドはの一歩前に立ち、手を差し出した。

もいつものように、その手を取る。

うん、大丈夫。私達、負けないよ。




「・・・こんな人数だと、飛空艇・・・広過ぎるね。」

ハイウィンドに戻ったクラウドと。ティファも目を覚まし、三人は通路に立っていた。

ティファが最初に口を開いた。もティファの言葉に答えるように口を開く。

「やっぱり、ちょっとだけ・・・寂しいな。」

俯くに、クラウドは笑顔で言った。

「心配するな。大丈夫だ。俺が皆の分も大騒ぎしてやる。それに、パイロットは俺だ。

今までみたいに安心して乗っていられないからな。寂しがっているヒマなんてないぞ、きっと。」

彼なりの励まし方に、はやはり笑いを漏らした。

優しいなぁ。こんな時なのに、安心してしまうのは何故だろう?

と、突然飛空挺のエンジンが動き出した。

誰もいない無人の操縦席に、誰かがいる?三人は顔を見合わせた。

「動き出した・・・。」

三人は急いで操縦席に向かった。

もしかしたら。もしかしたら、誰かが戻って来てくれたのだろうか?



「バレット!シド!」

クラウドが人影に向かって叫んだ。人影は振り向き、照れたような笑みを浮かべている。

「お、おう・・・もう、いいのか?」

バレットが言うと、傍で寝ていたレッド13も体を起こした。

物陰に隠れて寝ていたため、レッド13に気付かなかったのだ。

「レッド13!?」

「どうして声、掛けてくれなかったの!?」

二人は夜通しで仲間が帰って来るのを待っていたのだ。

なのに、声を掛けてくれなかったなんて、あんまりだ。

だが、バレットとシド、レッド13は言葉を濁らせると視線をそれぞれ泳がせた。

「だって・・・ねえ、シド。」

レッド13はシドを見上げる。シドは困ったように頭をかき、言った。

「なあ、レッド13よう・・・。邪魔しちゃ、あとでナ〜ニ言われっかわかんねえもんなぁ・・・。」

その言葉に、クラウドとは顔を真っ赤に染める。

そういえば、二人とも寝ていた空白の時間があった。丁度明朝の辺りだ。

その頃に、バレットやシド、レッド13は戻って来たのだろうか?

だとすれば、クラウドやが気付かないのも当たり前で、寝ていた二人を目撃されたのも当たり前だ。

「・・・見てたの?」

は照れと怒りで顔を真っ赤にし、ぷるぷると震えている。

と、そこに足音が聞こえてきた。

がちゃりと操縦室のドアが開き、そこにはヴィンセントが立っていた。

「ヴィンセント!」

クラウドは驚き、彼の名を呼ぶ。

ヴィンセントは眉をしかめ、クラウドを見つめ返した。

「なんだ、その驚いた顔は。私が来てはいけなかったのか?」

「いつも冷めてたから・・・関係ないって顔してただろ?」

クラウドの子供っぽい理由に、ヴィンセントは喉で笑った。

「冷めて?ふっ・・・私はそういう性格なのだ。悪かったな。」

ヴィンセントの視線は無意識にを探す。

は帰って来たヴィンセントを見て、とても嬉しそうな表情をしていた。

ヴィンセントはふっと微笑む。

がセフィロスの元に行くのに、自分が逃げたりいなくなるわけにはいかない、と言っているように。


「帰って来たみてえだな。神羅の部長さんがよ。」

バレットが言った。その直後に操縦室のドアが開き、着ぐるみのようなボディが現れる。

ケット・シーだった。

「ボクも本体で来ようと思たんですけど、いろいろやらなあかんことがあって・・・。

ほんで、ミッドガルの人達ですけど一応避難してもろてますのや。

すんませんけど、この作りモンのボディで頑張らせてもらいます。」

がケット・シーを見てガッツポーズをした。

ケット・シーはそれを見て、同じようにガッツポーズで示す。

「さて・・・全員そろったな。」

バレットが呟いた。だが、もう一人来ていない人物がいる事はわかっている。

「待ってよ、バレット。ユフィがまだ来てないわ。」

が言う。だがバレットは苦い顔をしている。

「あいつは・・・来ねえだろ、きっと。

でもよ、オレ達のマテリアを盗んでいかなかった。それだけでも良かったんじゃねえのか?」

嫌だった。ユフィとも一緒に最後まで行きたいのに。

急に表情を暗くする。バレットはを見て俯いた。

だが。

「ひっどいな〜!!」

聞き覚えのある声とともに、天井から人影が降って来た。

「ユフィ!!」

が表情を明るくして彼女の名前を呼ぶ。ユフィはにブイサインを見せる。

「船酔いに負けないでここまで来たんだよ!最後の最後に抜けちゃって、

おいしいトコぜ〜んぶ持ってかれるなんて絶対イヤだからね!」

のコトも心配だし、と一緒にいたいし・・・とユフィは付け足す。

はユフィに抱き付いた。ユフィもそれを受け止め、嬉しそうに笑っている。

「おかえり、ユフィ。」

クラウドが言った。ユフィは不思議そうにクラウドを見やり、

「おろ〜・・・・クラウド優しいねぇ。なんかあった?

ま、いいか。じゃ、アタシは通路の指定席で待機・・・ウッ!・・・ウップ!」

早々と通路へ向かってしまった。

はそんなユフィを優しい眼差しで見送り、クラウド達に向き直る

「皆、ありがとう。」

クラウドが言うと、真っ先にバレットが反論した。

「お前のために戻って来たわけじゃねえ!オレの大切なマリンのため。

それと同じくらい大切なオレの・・・・オレの気持ち・・・ってのか?

オレはよ・・・・今、ここにはいねえ・・・・」

バレットは、一旦そこで言葉を切った。

「・・・ここにはいないけどオイラたちにチャンス、残してくれた・・・・」

「このままってわけにゃいかねえよな。」

皆の気持ちは、ひとつ。

「・・・・・エアリス・・・。」

が呟いた。

「・・・エアリス、最後に微笑んだんだ。」

クラウドが思い出すように言葉を繋いだ。

「その笑顔、俺達がなんとかしないと貼り付いたまま、動かない・・・。皆で行こう。

エアリスの想い・・・星に届いたはずなのに邪魔されて身動き出来ないでいる・・・。

エアリスの想い、解き放つんだ!」

クラウドの強い言葉が、胸に重く響いた。

エアリスの想い、決して無駄にはしない。エアリスの死を、決して無駄にはしない。

エアリスは覚悟していたはずだ。ホーリーに祈りを捧げていた時に、既に覚悟は出来ていたはずだ。

ならば、自分達も覚悟を決めなければならない。そして、その覚悟を成果に出して見せなければならない。

それが、エアリスに対する最後の約束だから。

「気が変わったってヤツ、いねえよな?」

いるはずない。皆の気持ちはひとつ。

「頼む、シド。」

シドは「任せろ!」と笑った。

クラウドは仲間達を見つめ、口を開く。

「俺達の最後の戦いだ!目標は北の大空洞 敵は・・・セフィロス!!」

セフィロス。とうとうここまで来た。

後戻りは、もう許されない。

「行くぜ、皆!」

クラウドの声に、全員がしっかりと頷いた。



北の大空洞が見えて来た。シドの操縦で飛空挺は真っ直ぐ北の大空洞へ向かっている。

「もうすぐ北の大空洞だな!セフィロス!待ってろよ!」

「おう!突っ込むぜい!」

シドが操縦桿を思い切り倒した。そして、そのまま大空洞へ入ろうとする。

だが、シドの思い通りに機体が動かない。機体は思い切り揺れている。

「どうした、シド!」

「あががががが!コントロールできねえ!すげえエネルギーだ!」

これもセフィロスの力の影響なのか。操縦室が不安に包まれた。

すると、そこに飛空挺ハイウィンドのクルー達が駆け付けた。

息を切らせ、シドに敬礼している。

「なんだ、てめえら!実家へ帰れって言ったじゃねえか!」

シドが怒鳴ったが、クルー達ははっきりと告げた。

「そうです!ここがボク達の家でっす!!」

言った後で、ニッと笑うクルー達。

シドはクルー達に笑みを返した。

「ケッ・・・カッコつけやがって。わかったぜ、おめえら!オレ様をしっかり押さえやがれ!!」

それぞれの想いを胸に、大空洞へと突っ込む。

は、隣に立っているクラウドの手を強く握った。

クラウドは視線をに移し、少し微笑んでの手を強く握り返した。

「大丈夫だよ、。」

「・・・うんっ。」


北の大空洞、突入だ。





大空洞の入り口は、とても肌寒かった。

風が大空洞の中に吸い込まれている。クラウドが崖から身を乗り出して底を確かめ、言った。

「滑り降りるしかなさそうだな。」

クラウドは仲間達を振り返った。

いつでも準備OKだとでも言うように、仲間達はクラウドに頷き返した。

「行くぞ!」

『了解!!』

全員が飛び出した。

我先にと崖を滑り降り、足場まで辿り着く。

そして、全員いることを確認してからダンジョンの奥へと歩を進めた。







感じる。



セフィロスが、だんだんと近付いている。



胸に襲ってくる威圧感。



そして、押し潰されそうになる自分。



ああ、もうそろそろなのだろうか。



タイムリミットが迫っている。



お願いだから、もう少しだけ頑張って。



私の体・・・消えないで・・・・。







「ここが、星の中心・・・・?」

ダンジョン内をさ迷い歩き、辿り着いた場所。

ものすごいエネルギーが地面から噴き出している。

「いよいよ・・・なのね。」

が呟く。クラウドは頷いた。

不安な気持ちは消えない。それは、きっとこの先もずっと消えることはないだろう。

けれども、不安に立ち向かわなければ何も変わらない。

自分達は、星の運命を変えるために立ち向かわなくてはならない。

そして、それは全て自分達の意志だ。

「終わるのだな。これで・・・・。」

ヴィンセントが言った。

「この星のあらゆる生命や、この星の全ての命運はオイラ達に、かかってるんだね。」

レッド13が一歩前へ出る。

「皆さんに会えて、ほんま嬉しかったわ・・・!」

ケット・シーが涙を拭いながら言った。

「さーて、バレットさん最後の大仕事だぜ!」

バレットは腕を回している。


全ての人の想いが、ここに集結した。

応えなくては。その想いに、応えなくては。

星が流れる。きっと、エアリスも見ていてくれるはずだ。



エアリス、とうとう私達、ここまで来たよ。

もう少しで、全てが終わる。

エアリス、私、きっとこの戦いが終わったら・・・エアリスの傍に行くから。

・・・待っててね。



「これで・・・・これで終わりにするんだ!」

クラウドが振り向いた。

「行くぜ!!」

頷く面々。いざ、セフィロスの元へ。



雄叫びが聞こえる。モンスターの鳴き声、雄叫び、悲鳴、叫び声。

「なんだ?」

バレットが呟いた。

「すごい数だ・・・。」

「チッ!皆さん総出でお出迎えかよ!クラウド!おめぇは先に行け!」

シドが叫ぶ。だがクラウドは首を横に振る。

「俺もここで戦う。」

「バ〜カ!こんなところで全員グダグダしててもしょーがねぇだろ。」

クラウドに答えたのはバレットだった。

シドはニッと笑い、頷いた。

「だな、バレットの言うことも尤もだぜ。クラウド、お前さんはあと2人くれぇ連れて先に行ってろ。

残ったこっちもスグに追い着くからよ!」

クラウドは躊躇する。

三人。たった三人でセフィロスに立ち向かえるだろうか?

――・・・クラウドが、傍にいてくれるなら・・・怖くても、負けないよ、私・・・。

クラウドは拳を握った。

一人じゃない。独りじゃない。皆傍にいる。

どんなに離れていても、心は繋がってる。

「ま、本番前の 準備運動ってところかしら?」

「なんかえらい準備運動やなぁ・・・。」

「へへ、アタシはへっちゃらだよ。(下でセフィロス相手にするより楽かもしれないし)」

「ふっ・・・暇つぶしには最適だな。」

「ヴィンセント・・・暇つぶしとか言って、やせ我慢してる?」

「来る!もう、隣のフロアまで来てる!」

「クラウド!早く決めろ!」

ティファも、ケット・シーも、ユフィも、ヴィンセントも、レッド13も、シドも、バレットも、

・・・も。

皆、もう心は決まっている。

後は、行くだけなのだ。

!ヴィンセント!行くぞ!」

ヴィンセントとは頷いた。

クラウドの傍まで駆け寄って来て、仲間達を振り返る。




決して、負けない。

一番の強敵は、弱い自分自身の心。

それを打ち破れば、絶対にセフィロスなんかには負けない。

そう、皆で無事に帰って、祝うのだ。

もう星はメテオなんかにやられたりしない、平和になったのだと。

祝うためにも、ここで一人でも死んではいけない。


「皆!」

クラウドの声に、全員が振り返る。

「後でまた!」

さよなら、でもなく、じゃあな、でもなく。

必ず、生きて会おうという意志を込めた言葉。

仲間達は、微笑んだ。


クラウド達は駆け出した。

星の中心。セフィロスに向かって。




最後の時は着実に近付いている。

けれど、その分・・・一人の仲間との別れも、着実に近付いていた。







消えないで・・・









願いは届くのか。

祈りは届くのか。














消えないで・・・・。

















<続く>


=コメント=
わぁーお!!もうこんなところまで来てるんだね!
次回かその次で終わります〜。
長かったなぁ、ここまで・・・(そういうことは終わってから言え)
次回はー・・・そうだな、ジェノバとの戦いがあって、
リバースセフィロス、セーファセフィロスとの戦いまで終わるかな?
・・・で、その後EDと!
さんは一体どうなるんでしょうかね?
何やら「消えないで」としきりに申しておりますが(爆笑
ED間近!FF7よ永遠に!!!
そしてその後はアドチル!!!(笑