[PR]動画 ドリーム小説  





あの時より一歩強くなれた?第三十三章







「皆に、話しておきたいことがあるの。」

宝条を倒し、ハイウィンドに戻ってきたクラウド達。

仲間達もブラウド・クラッドを倒し、無事に戻って来ていた。

そして、ハイウィンドに戻り、仲間達全員が集まっている事を確認してが言った。

全員の視線は、自然とに集まる。

「・・・話しておきたいこと?」

ティファが眉をひそめながら聞き返す。は、目を閉じながら頷いた。

「・・・私の秘密。私の全て。」

全員は顔を見合わせ、首を傾げたりしている。

クラウドは心配そうな瞳でを見つめているが、は俯いたままだ。

「・・・わかった、聞こう。」

クラウドは言った。仲間達も、その声に静かに頷く。

はクラウドに「ありがとう」と言い、語り出した。




「クラウドは・・・覚えてないかもしれないけど・・・、

昔・・・ううん。つい最近まで・・・魔晄に浸されてたこと・・・覚えてる?」

クラウドは少々驚き、首を横に振った。

「・・・だよね。覚えてるはず・・・ないよね・・・。」

は俯き、再び語り出した。

「私とクラウド、そしてザックスは・・・ニブルヘイムの神羅屋敷の地下室で、

魔晄の入った大きなビーカーに浸けられていたの。」

全員が驚いた。けれど、その中でも一番驚いたのはクラウド本人だった。

は続ける。

「私達は逃げようとした。緑色の液体に浸けられてるだけの毎日なんて・・・生きてるなんて言えない。

だから、食事の時間に・・・私達は逃げ出した。看守を殴り、殺して・・・そして、三人で走って逃げた。」

静かなの語りは、沈黙に余韻を残しながら空間に広がる。

「けれど・・・私もクラウドも・・・魔晄中毒になっていて・・・・。

クラウドはしゃべる事も出来なかったし、走るなんてとんでもないことだった。

それでもザックスは、見捨てずに一緒に逃げてくれた・・・。」

クラウドは黙って聞いている。

自分が魔晄中毒だったのなら、その間の記憶が抜けていてもおかしくない。

「・・・けれど、途中で追っ手に捕まって・・・。ザックスとクラウドだけ、逃げられた。

・・・私は、魔晄中毒の症状で・・・動けなくて・・・。

・・・ザックスは立ち止まって助けてようとしてくれたけど・・・でも、私はそれを断わった。

確かに私は魔晄中毒だったよ?でも・・・私以上に苦しんでるクラウドがいるのに、

私だけのためにザックスやクラウドまでが捕まる事なんてないでしょ?」

誰も口を挟もうとはしない。いつもならバレットやシドあたりが口を挟むのに、

今日は二人とも静かに聞いている。

「・・・そして私は、ニブルヘイムに連れ戻されて・・・再び、魔晄に浸けられた。

もう、記憶とか気持ちとか、全部がグチャグチャになってて・・・。

でも、その数日後に急にビーカーから出されて・・・。ジェノバ細胞を注入されて、私は捨てられた。

液体に浸けられてる時の記憶はすっぱり抜け落ちてて、私はひたすらに歩き出した。

・・・ミッドガルに向かって。」

ここまで話して、は一旦息をついた。

そして顔を上げ、口を開く。

「・・・ミッドガルの丘の上で・・・血だらけで息絶えてるザックスを見つけて・・・。

びっくりしたけど、ザックスとクラウドが一緒に逃げたという記憶は思い出せなくて・・・。

・・・ミッドガルに入ってすぐにアバランチの噂を聞いたわ。・・・だから、すごく嬉しかった。」

クラウドは戸惑いを隠せない表情でを見つめている。

「・・・そして今日。・・・宝条を倒した後で、私は思い出した。

・・・ニブルヘイムで、魔晄に浸けられていたこと。既にジェノバ細胞が植え付けられている体に、

更にジェノバ細胞を注入されたこと。・・・これが私の真実。

もしかしたら私は・・・宝条みたいに、化け物になってしまうのかもしれない・・・。

もう私は・・・人間じゃないのかもしれない・・・。」

は俯いた。

沈黙はまだ続いている。全員が驚き、目を見開いてを見つめている。

いや、視線が外せないのだろう。

「・・・だからどうしたというのだ。」

低い声が響いた。全員の視線はから離れ、ヴィンセントへと向けられる。

は顔を上げ、今にも泣きそうな顔でヴィンセントを見つめた。

「・・・宝条みたいに化け物になるかもしれない?ならば私はどうだというのだ?

私だって宝条に遊ばれた体だ。・・・感情が高ぶると、それこそ化け物になってしまう。

・・・私は人間ではないというのか?」

言われ、は慌てて首を横に振った。

そんなつもりで言ったのではない。ヴィンセントは確かにモンスターへと変身することもある。

だが、ヴィンセントは人間だ。決して化け物などではない。

慌てるを見て、ヴィンセントは軽く微笑んだ。

「・・・だろう?ならば。お前も同じことだ。

・・・確かに、ジェノバ細胞を注入されたことで私は歳を取らない。

それはクラウドもも同じだ。だが、だからと言って人間とは別物になったわけではない。」

は、ゆっくりとだがコクンと頷いた。

ヴィンセントに続いて、仲間達は皆大丈夫だよと元気付けてくれた。

なんて暖かいのだろう。皆の心が、暖かい。




「メテオが落ちて来るまであと何日だ?」

クラウドが言った。レッド13が答える。

「あと七日って、じっちゃんが言ってた。」

クラウドは腕を組み、考える。

仲間達の顔を見比べ、静かに目を閉じた。

「なあ、レッド13。コスモキャニオンの人達に会いたいか?」

クラウドが目を瞑ったまま言った。レッド13は躊躇しながらも頷く。

「バレット、マリンに会いたいだろ?」

「そんなこと聞くなよ。」

バレットはクラウドから顔を背ける。クラウドは頷く。

「俺達がセフィロスを倒して・・・そしてホーリーを解き放たないと

七日後にはこの星そのものが死んでしまう。

俺達がセフィロスを倒せない・・・。それは・・・俺達が死ぬということだ。

メテオで死んでしまう人より何日か先に、だ。」

「戦う前から負けること考えるんじゃねえ!」

弱気なクラウドの発言に、バレットが吠えた。だがそれに反論するようにクラウドが叫ぶ。

「違う!俺は・・・・なんて言うか・・・。

皆が何のために戦っているのか、それをわかっていて欲しいんだ。

星を救う・・・星の未来のため・・・・確かにその通りなんだと思う。

でも、本当はどうなんだろう?

俺にとっては、これは個人的な戦いなんだ。セフィロスを倒す。過去との完全な決別。

それが星を救うことに繋がっているんだ。」

バレットは聞いて口を閉ざした。クラウドの思っていることを察したのだ。

「俺、考えたんだ。」

クラウドが言う。

「やっぱり俺達は自分のために戦っているんだ。

自分と・・・自分が大切にしている誰か?何か?そのために戦う。

そのために星を救う戦いを続けているんだ。」

皆頷いた。

「確かに・・・星を救うってのは、なんとなくカッコいいよな。

でも、オレ達に出来たのはあの、魔晄炉爆破だ・・・。

今となっちゃあ、あんなやり方はいけなかったってことは良くわかる。

仲間達や関係ない大勢の人間を不幸にしちまった。

最初は神羅への復讐だった。オレの故郷を奪った・・・。

でも、今は・・・そうだぜ。オレはマリンのために戦ってるんだ。

マリンのために・・・マリンの未来のために・・・。

そうか・・・オレはマリンのために星を救う戦いをしてるのか・・・。」

クラウドは頷いた。そして腕を下ろし、仲間達を見据える。

優しい表情で、クラウドは言った。

「会いに行けよ。その気持ち、確かめて来いよ。

皆も、一度船を降りてそして、自分の戦う理由・・・。

それを確かめて欲しいんだ。そうしたら、帰って来て欲しい。」

「誰も戻って来ないかもしれねえぜ。

メテオでどうせ死んじまう。ムダな足掻きはやめようってよ!」

シドが言った。けれどクラウドは頭を振り、寂しそうな笑みを浮かべた。

その表情に、シドが言葉を詰まらせる。

「・・・俺は自分が戦う理由を知っている。紛れもなく、星を救うために戦う。

でも、その中には個人的な・・・とても個人的な俺の想いがあるんだ。

皆は・・・どうだ?俺は皆にも、そういうものを見つけて欲しいんだ。

見つからなかったら仕方ない。理由なしで戦えはしないだろ?

だから、帰って来なくても・・・仕方ないよ。」



諦めたようなクラウドの言葉。けれど、クラウドの想いは伝わったのだろう。

仲間達は、一人、また一人とハイウィンドを降りていった。

そして、ハイウィンドにはクラウドとティファ、が残された。

「二人はどうする?」

尋ねるクラウドに、ティファは軽い笑みを漏らした。

「忘れちゃったの?私・・・一人なんだもん。どこにも行くところがないんだもの。」

「私も同じ。もう、帰れる場所なんてないよ。」

クラウドは頷いた。

 


三人は、風を浴びに外へと出た。

夕日が綺麗に輝いていて、けれど風は少し冷たかった。

ティファは早々にハイウィンドの中へと戻り、外にはクラウドとが残された。

「皆、行っちゃったね・・・。」

「ああ、俺達には帰るところも待っていてくれる人もないからな。」

は伸びをして、深呼吸をした。

「そうだね・・・。でも・・・きっと、皆・・・戻って来てくれるよね?」

「さあ・・・。どうかな・・・?皆それぞれ、かけがえのない大切なものを抱えてるし・・・

それに今度ばっかりは、相手が相手だ・・・。」

は風を背に振り向いた。夕日で赤く染まった山が見える。

そんな背景に、クラウドが立っている。

「うん・・・。それでも私・・・平気だよ。例え、誰も戻って来なくても。

クラウドと一緒なら・・・クラウドが、傍にいてくれるなら・・・怖くても、負けないよ、私。」

少し照れているように顔を赤くしながら、優しい笑みを浮かべてが言った。

クラウドはそんなの姿に目を細め、軽く微笑んだ。

「私達・・・これまでずっと遠く、離れ離れだったんだね。例えどんな近くにいても。」

言葉を探し、選びながらは語る。

クラウドは黙ってを見つめ、そして夕日に視線を移した。

「でも、でもね?ライフストリームの中でたくさんの悲しい叫びに囲まれた時・・・

クラウドの声、聞こえたような気がしたの。小さな声だったけど・・・。でも、

私のことを呼んでくれている気がしたよ・・・。」

こんな風に思うのは自惚れかもしれない。

クラウドの気持ちも知らないで、もしかしたら自分はクラウドに感情を押しつけているのかもしれない。

けれど、言葉は止まらない。口から溢れるように流れ出て、クラウドへと届けられる。

止めたくても止まらない言葉。気持ち。

わかっているけれど、今だけは素直になりたい自分がいる。

クラウドはに歩み寄った。小石を踏む音が風に溶け、クラウドはの前に立つ。

「ああ・・・。あの時、俺にもの叫ぶ声が聞こえたよ。

『クラウドを返して』って叫ぶ声・・・。すごく、嬉しかった。

の声がライフストリームの意識の海から俺を呼び戻してくれたんだ。」

は泣きそうな顔で微笑み、頭を振った。

「ねえ、クラウド・・・。私達の声を、星達も聞いててくれると思う?

頑張ってる私達の姿を見ていてくれると思う?」

もし叶うのなら、エアリスにも見ていて欲しい。

彼女が残してくれた最後の希望なのだ。自分達が頑張っている姿を、エアリスに見守っていて欲しい。

「さあな・・・でも・・・。誰が見ていようといまいととにかく、出来ることをやるだけさ。

『自分自身を信じて』・・・。ライフストリームの中で、がそう教えてくれただろ?」

「うん・・・そうだね・・・。」

二人は傍の岩に腰掛けた。まだ岩には太陽の暖かさが残っていた。

夕日がだんだんと沈んで行く。

それとともに、風の温度も少しずつ下がっている。

は、クラウドに寄りかかった。

クラウドは少々戸惑いながらを見つめたが、は目を瞑ったまま微かに笑っただけだった。




どれだけの時間がたっただろう。

山の向こうから、朝日がチラリと覗いている。

はまだ夢の中で、クラウドはが寒がらないようにを抱き締めていた。

クラウドの膝の上にが乗っていて、の上半身はクラウドの右腕で支えられている。

クラウドは左腕もの背中に回し、そのまま優しく抱き締めていた。

そうして抱き締めていれば、クラウドも寒くなかった。

静かな寝息を立てて眠るの表情はいたって穏やかだ。

クラウドはそんなの表情を見つめ、微笑んだ。

「・・・もうすぐ、夜明けだな・・・。」

「ん・・・。」

が身動ぎした。どうやら起きたようだ。

「ごめん。起こしちゃったか・・・。もうすぐ夜が明けるよ、。」

「うん・・・おはよう、クラウド・・・。」

が起きたことを確認し、クラウドは体を離そうとした。

だが、がクラウドを止めた。クラウドは首を傾げる。

「あのね・・・もう少しだけ・・・このままでいさせて・・・。

二度と来ない、この日のために・・・。せめて、今だけは・・・。」

クラウドは少し驚き、だがすぐに優しく微笑んだ。

自分だってと同じ気持ちだった。だから、の言葉がとても嬉しかった。

「ああ・・・いいよ。これは、俺たち二人に許された最後の時間かもしれないから・・・。」

そう、これが最後の時間かもしれない。 

もしかしたら、セフィロスと戦い・・・そして、命を落とすかもしれないのだ。

もちろん、クラウドだって死ぬのは嫌だ。けれど、なるようにしかならない。

いくら“生きたい”と願っても、それが叶わないことだってある。

ザックスは・・・どう思いながら死んでいったのだろう?

ぼんやりと霞がかった記憶の向こうで、ザックスが自分を庇いながら必死に戦っている姿が映し出される。

そうだ。ザックスは、自分を庇って死んだ。

クラウドは、少しずつ・・・けれど、確実にザックスやと逃げた時のことを思い出していた。

緑色の魔晄に浸けられ、逃げ出そうと約束した時のことも。

が倒れ、ザックスは自分を助けるためにを見捨てたことも。

ミッドガルに辿り着いたけれど、ザックスが自分を庇い・・・射殺されたことも。

一番の親友だった。

自分のことを、本当の弟のように思い、接してくれた。

そんなほんの少しの優しさが、無性に嬉しくて。

「ザックス・・・。」

クラウドは呟いた。

「・・・・ありがとう・・・・。」



もう二度と同じようなことにはさせない。決して。

クラウドは自分の腕の中のを見つめた。


失いたくない。

離したくない。


これは自分の我侭だとわかっている。けれども。

「・・・絶対に、守るよ・・・。」

例え自分が死のうとも、だけは、生きてニブルヘイムに帰してやりたい。

必ず、生きて・・・。



クラウドはの顔に触れた。

寝息を立てる彼女が、今にも消えてなくなりそうで。

そんな錯覚と、感じたこともない恐怖がクラウドの中に入ってきた。

はここに存在している。

間違いなく、自分の腕の中に存在している。

けれど、何故こんなにも消えそうなんだ?

自分の手からするりと抜けて、そして風に溶けていなくなりそうな、そんな感じ。


クラウドは、の顔に自分の顔を近付けた。

そして・・・ゆっくりと、口付けた。

彼女の存在を消したくない。消えるわけないのに。

けれど、の存在を確かめるように・・・クラウドは、何度も何度もに口付けた。

「・・・消えないで・・・」

クラウドの口から漏れた一言は、風に流されていった。





<続く>


=コメント(勘弁してください・・・)=
ぐほっ・・・や、やってしまった・・・。
チュウー!!ぎゃーーーーーー!!(何
すみません、今めっさ恥ずかしいです!!!(汗
なんやねん、この展開!!(笑
しかもクラウドくん・・・襲ってます。
さんを襲ってます!!
寝てるとこにチューなんてするか、普通!!(汗
極甘・・・。いや、コレ以上は書けません。
絶対に無理です。これが限界です。
あーーーーーーーーー!!!(叫/自己嫌悪