[PR]動画 ドリーム小説  





あの時より一歩強くなれた?第三十二章







現在、ハイウィンドはミッドガル上空にいる。

クラウド達は甲板で互いに背中のパラシュートの点検を行っている。

「うん、クラウドとヴィンセントのパラシュートは大丈夫みたい。」

が言った。それまでに背を向けていたクラウドとヴィンセントは振り向き、頷いた。

「そっちはどうだ?」

「全員パラシュートに異常なし!いつでも行けるよっ!」

クラウドが聞くと、ユフィがブイサインを見せながら答えた。


これで準備は整った。

あとは、ミッドガルに投下するだけだ。


ケット・シーから聞いた宝条の現状。このままではミッドガルが滅んでしまう。

神羅は許せない。けれど、ミッドガルに住む人々には無関係の事件だ。

無関係の人達を、巻き込むわけにはいかない。

「皆、いいか?」

クラウドが言った。全員の目をひとつずつ確かめながら、クラウドは仲間達を見つめた。

無論、肯定に決まっている。

「行くぞっ!」

第一にクラウドがハイウィンドから飛び出した。その後にとヴィンセントが続き、

他の仲間達も続々と飛び出す。


久々のミッドガル。

何故だか、とても懐かしく思えた。

こんな時に懐かしいだなんて考えてる場合じゃないことはわかってる。

けれども、どうしても、そう思わずにはいられなかった。

「あっ。」

投下中に一瞬だけ見えた、あの教会。

エアリスは、あそこで花の世話をしてたんだっけ。

今も、あの教会に花は咲いているのだろうか。

「どうした?。」

「ううん、なんでもない。」

クラウドに笑顔で答え、はパラシュートを開いた。

クラウドやヴィンセントもパラシュートを開く。仲間達も同様だった。

地面が近付いて、軽く足に衝撃が走る。

よろめきそうになりながら、なんとか地面に足をつけ着地した。

「ここは・・・8番街ね。」

ティファが呟く。ケット・シーが言った。

「皆さん、気を付けてください!ハイデッカーが皆さんを狙ろてますのや。

そやから、外は危険です。地下を通りましょ!!」

「ハイデッカーが?」

「ハイ。なにやら、新兵器を持ち出すとかなんとか言ってました。

見つかったら危ないです。とにかく今はボクを信じてください!」

全員がしっかりと頷いた。

そして、ケット・シーに案内されて螺旋トンネルへと入って行った。



どれだけこのトンネルを走ったことだろう。

もうかなりの距離を走っている。にも関わらず、まだ宝条のいる魔晄キャノンには辿り着けない。

クラウドは先頭を走っているが、後ろの仲間達に気を使いながら走っているようだ。

たまに立ち止まって後ろの様子を確認している。

はそんなクラウドを見て、クスリと笑みを漏らした。

ちゃんとリーダーをしてるんだな、と思って、なんだか微笑ましかった。

「あ、来ちゃった!」

声がした。その声で、全員がピタリと立ち止まる。

聞き覚えのある声だったのだ。まだ幼さを残した、女性の声。

全員武器を構えた。トンネルの先から歩いて来たのは、タークスの三人だった。

イリーナ、そしてレノとルード。

彼らの服装はいつもと同じだったが、あちこちが汚れている。

先ほど受けたウェポンの攻撃の爆発で汚れたのだろうか。

「どうするんですか、先輩!もう、命令なんて無視していいと思うんですけど。」

確かにそう思った。

ルーファウスは死んだ。ここまで来て、まだクラウド達とやり合うつもりなのか。

「・・・イリーナ。甘えるなよ、と。」

「俺達はタークスだ。」

レノとルードの答えは明白だった。

けれど、きっとタークスの仕事は彼らの誇りなのだろう。

「・・・わかりました。そうですよね。」

イリーナが頷いた。

「さて・・・仕事だ。」

「あまり気乗りはしないが、と。」

タークスの三人はそれぞれ武器を構えた。

そして、イリーナが口を開く。

「私達に与えられた命令はあなた達を発見次第・・・殺すこと。

もう会社はボロボロだけど命令は命令なの。タークスの意地と心意気!受け取りなさい!」

クラウドが口を開こうとした。けれど、が一歩前に出てクラウドを制した。

クラウドは首を傾げながらを見た。

は穏やかな笑顔で、タークスを見つめていた。

「な、何をしている!行くわよ!」

イリーナが吠えたが、は首を横に振った。

「やめましょう。」

「な、情けをかけるつもり!?タークスを舐めないで!」

「舐めてるわけじゃないわ。イリーナ、わかってるでしょう?もうこんな戦い、無意味なの。」

イリーナはハッとしたように口を閉ざした。

「私がもしタークスをまだ続けていたとして、こんな状況に陥ったら・・・

いくら敵でも、戦おうなんて思わない。イリーナ、あなただってそう思ってるんでしょう?」

イリーナは俯いた。



かつて、自分の先輩だった人。

ずっと憧れてて、何かわからないことがあったら真っ先に質問をしに飛び回ってた自分。

きっと迷惑だったろうに。

けれど、迷惑がったり、嫌そうな顔をひとつもせずに、は丁寧におしえてくれた。

イリーナが何か失敗をしても、「頑張れ」と声をかけてくれた。

そんな優しさがとても嬉しくて、わざと失敗をすることも何度かあった。

いつかこの人と一緒に仕事をしたい。そう思って頑張っていたのに。

気付いたらは自分の手の届かないところに行ってしまっていた。

そして、気付いたらは敵側の人になっていた。



「イリーナ。昔、私とした約束、覚えてる?」

「・・・え・・・?」

はニッコリと笑った。

「“イリーナが困っていたら、必ず私が助けてあげる。その代わり、イリーナも頑張ること。いいわね?”・・・。

私、そう言ったよね。」

イリーナはハッとして口を押さえた。

霞がかった記憶の向こうで聞こえる、の声。

ああ、そうだ。確かに、そんな約束をした。

「今、イリーナは困っているんでしょう?悩んでいるんでしょう?

タークスの誇りを貫き、ここで私達とケリを付けるか。それとももうタークスなんてやめてしまうか。

神羅カンパニーはもうボロボロ。命令に従っても、あなた達にはなんの得もない。」

イリーナは唇を噛んだ。

「で・・・でもっ!!それでも、命令は命令よ!!」

「待て、イリーナ、と。」

レノが口を開いた。イリーナはレノの方に振り向き、言った。

「せ、先輩!まさか命令違反をっ・・・!!」

レノは頭を振っている。

「神羅も、もうお終いだ。こんな事態になっちまっちゃな、と。」

「先輩・・・。」

イリーナは再び俯いた。

は優しく微笑み、言った。

「イリーナ。あなたは立派なタークスだったと思うよ。」

「俺もそう思う、と。」

イリーナは俯いたまま、鼻をすすった。

「・・・先輩・・・やっぱり、・・・あなたに会えて、嬉しかったです・・・。」

「仕事は終わりだ・・・。」

レノはクラウド達に改めて向き直り、クラウド達に初めての笑顔を見せた。

「じゃあな。お互い生きてたら・・・。命あってのものだねだぜ、と。」

は頷いた。

「・・・元気でね。私達、最後まで頑張るから。」

レノ達はその言葉に頷き、その場からゆっくりと去って行った。


タークスの、最後だった。





全員、再び駆け出した。

宝条を止めるために。けれど、後ろから追いかけてくる巨大兵器に気付き、全員が立ち止まった。

信じられなかった。神羅の、新兵器。

「ウ、ウソでしょ・・・。」

「・・・・!」

全員が驚愕の表情を浮かべていた。

この新兵器を動かしているのは、ハイデッカーとスカーレットだ。

兵器の中から笑い声が聞こえてくる。

「ガハハハハハハハ!! 来たな来たな!」

「キャハハハハハハ!! やっぱり来たよ!」

二人が操縦席から顔を出した。

クラウド達は身構える。

「よ〜くも今までコケにしてくれたな!」

「私のかわいい兵器たちをたっくさん壊してくれたわねえ!」

「ガハハハハハ!だが、対ウェポン用兵器のこいつはどうかな!」

「お前たちでは役不足だがこの私の絶対の自信作!このブラウド・クラッドの破壊力!見せてあげるよっ!」

クラウド達は険しい表情でブラッド・クラッドを見つめている。

だが、そんな中は眉間にシワを寄せて何やら考えている。

「・・・ねぇ、スカーレットさん。」

「キャハハハハっ!命乞いならしても無駄よ!!」

いやそうじゃなくて。

は真剣な表情で、言い切った。


「ブラウド・クラッドって名前の由来・・・もしかして、クラウドから取った?」


ハァッ!?


全員が口をあんぐりと開け、ぽかんとを見つめていた。

はと言うと、真面目に考えこんでいる。

「だって・・・ブラウドのブをクに変えたらクラウドになるし、クラッドの小さいツをウに変えたらクラウドになるし・・・。」


そんな事考えてる場合かい??


突っ込めなかった。


だが、今はそんなことを考えている場合ではない。

シドとバレットがブラウド・クラッドの前に立ちはだかった。

「バレット!」

「クラウド、お前らは先に行け!この馬鹿はオレ達が食い止めてやるからよ!」

バレットが言った。

「オレ様が戦ってやるんだから感謝しろい!」

「オイラも戦うよ、クラウド達は宝条を止めて!」

「ユフィちゃんも頑張っちゃうよ!」

「クラウド、、ヴィンセント!ここは任せて、いいから早く!!」

シドも、レッド13も、ユフィも、ティファも。

皆が、心を合わせて戦闘準備に入った。

「でもっ・・・。」

「おう、迷ってる場合かぁ!?いいから行けって!」

が口を開こうとしたら、バレットが遮って言った。

仲間達の、強い瞳。クラウドは、の腕を掴んだ。

「行こう、。」

は戸惑いながらも頷き、クラウドに引っ張られて駆け出した。

螺旋トンネルの先にいる、宝条の元へと。



皆、仲間だ。

皆、傍にいてくれる。

自分は、独りなんかじゃない。

大丈夫。必ず、生きて皆で会うんだ。

そして、皆で・・・セフィロスを倒すんだ。



螺旋トンネルの終わりが見えた。

光が見えている。その光を見た途端、自然と走る速度は上がる。

クラウドと、ヴィンセントは、迷わず光へと飛び込んだ。

「宝条!そこまでだ!!」

クラウドが立ち止まって叫んだ。

魔晄キャノンの操作席。そこに、宝条は座っている。

そして、魔晄キャノンの操作を行っていた。

宝条はクラウドの声に手を止め、首だけで振り返った。

「ああ・・・失敗作か。」

クラウドは“失敗作”という呼び名に唇を噛み締める。

そして、ものすごい形相で宝条を睨み付けた。

「名前くらい覚えろ!俺はクラウドだ!」

「お前を見ると私は・・・私は自分の科学的センスの無さを痛感させられる・・・。

私はおまえを失敗作だと判断した。だが、セフィロス・コピーとして機能したのはお前だけ。

クックックッ・・・自分が嫌になるよ。」

宝条はクラウドの言葉を聞かずに言った。クラウドはその宝条の言葉を遮って叫ぶ。

「なんでもいいからこんなことはやめろ!」

言われて宝条は視線を泳がせた。そして、大袈裟に肩を竦めてニヤリと笑う。

「・・・こんなこと?おお、これか?クックックッ・・・。

セフィロスはエネルギーを必要としているようだからな。

私が少しばかり力を貸してやるのだ・・・。」

「どうして!?どうしてこんなことをするのよ!!」

が一歩前に出て大声で言った。宝条は顔から笑みを消すと、心底呆れたような表情をした。

そして頭を振り、鋭い目でを見つめる。

「何故、どうしてとうるさいヤツらだ。

フム・・・科学者としては向いているのかもしれないな。」

宝条は目の前のモニターに視線を移し、呟いた。

「エネルギーレベルは・・・83%か。時間がかかり過ぎだ。

息子が力を必要としている。・・・理由はそれだけだ。」

その宝条の一言に、三人は固まった。

今、宝条が何気なく口にした一言。たったひとつの単語に、三人の目が見開かれる。

「・・・息子?」

確かめるようにクラウドがその単語を口にする。

宝条はニヤリと口元を歪め、クラウド達を見やった。

「クックックッ・・・あいつは知らないがな。クックックッ・・・クァックァックァッ!!」

壊れた笑い声。三人は、沈黙したまま驚愕の表情を浮かべている。

「セフィロスの奴・・・私が父親だと知ったらどう思うかな。

あいつは私のことを見下していたからな。クァックァックァッ!!」

「セフィロスがあんたの息子!?」

「・・・・!」

クラウドが一歩後ずさった。ヴィンセントが、怒りと驚きに満ちた表情で宝条を睨み付けている。

宝条は気にせずに続ける。

「クックック・・・私の子を身ごもった女をガストのジェノバ・プロジェクトに提供したのだ。

クックッ・・・セフィロスがまだ母親の体内にいるころにジェノバ細胞を・・・クァックァックァッ!!」

は思い出す。セフィロスの母親のことを。

頭の中で、ヴィンセントとクラウドの声が木霊した。


――――・・・ルクレツィア。セフィロスを生んだ女性だ。


――――生んだ?セフィロスの母親はジェノバではないのか?


――――それは・・・間違いではないがひとつの例えなのだ。実際には美しい女性から生まれた。

    その女性がルクレツィア。ジェノバ・プロジェクトチームの責任者ガスト博士の助手。

    美しい、ルクレツィア・・・。雰囲気が君に似ているな。



ルクレツィアのことを話していたヴィンセントの目。あれは、憧れの人に対する目ではなかった。

明らかに、恋愛感情を抱いている、優しい瞳だった。

そのルクレツィアと、宝条の間に・・・セフィロスが生まれた?

「き、貴様・・・・!」

ヴィンセントの目が更に見開かれ、怒りが露になる。

宝条がルクレツィアを孕ませたのは明白だ。

クラウドが少々俯き加減になり、宝条に言う。

「あんたがこんなことをしているのは・・・セフィロスへの罪滅ぼし・・・。」

「ヒーッヒッヒッヒッ!違う違う!科学者としての欲望だ!ヒーッヒッヒッヒッ!」

は口を押さえて首を振った。

「・・・狂ってるわ・・・。そんなのおかしいよ!!酷過ぎる・・・。」

「ヒーッヒッヒッヒ!、お前も悠長なことを言ってられなかったかも知れんぞ!?

私は幾度と無く、お前にソルジャー以上のジェノバ細胞を注入する機会を覗っていた!

そしてお前に子供を生ませようとしたのだ!クァックァックァ!もしかしたらお前も、

ルクレツィアの二の舞になっていたかも知れんな!!ヒーッヒッヒ!!!」

は青褪めた。

自分がルクレツィアの二の舞に?第2のセフィロスの母に?ならば父親は誰?



は急にペタンと座り込んだ。クラウドが駆け寄り、その肩を支える。

ヴィンセントは俯いている。

唇を噛み締め、震えるほどに拳を握り締め・・・。

「私は・・・間違っていた。眠るべきだったのは・・・。」


三十年間眠っていた、ヴィンセント。

全てはルクレツィアに対する罪滅ぼしのためだった。

けれど、本当の罪滅ぼしをするべきだったのは自分ではなかった。


ヴィンセントは、怒りの形相で宝条を睨み付けた。

「貴様だ、宝条・・・・!!」

宝条は大声で笑い、そして席から立ち上がった。

「私は科学者としての欲望に負けた!この前もな、負けてしまった。

自分の身体にジェノバ細胞を注入してみたのだ!ソルジャーの倍以上のジェノバ細胞だ!

ヒーッヒッヒッヒッ!結果を見せてやろう!!」


宝条は狂った笑いを続けながら、クラウド達の前に立ちはだかった。

クラウドはを片腕で支えながら剣を構えた。

ヴィンセントは拳銃を構えて宝条を睨み付けている。

「ルクレツィアだけでは物足りず、にまで手を出そうとしたのか。」

低い声でヴィンセントが問う。

「クァックァックァ!何を怒っている!?あの女を守れなかったお前が、

今になって何をエラそうにほざいている!?片腹痛いわ!クァックァックァ!」

ヴィンセントはカッと目を見開いた。


許せない。許せるはずもない。

そうだ。確かに自分はルクレツィアを守れなかった。

だからこそ、その罪滅ぼしとして悪夢へと踏み込んだのだ。

そして、だからこそ、もう恋などというものはしないと決めた。

けれど、もう引き返すことは出来ないのだ。


に初めて会った時。

一瞬、ルクレツィアかと見間違えた。

だが、よく見てみると全然ルクレツィアになんか似てなどいない。

けれど、雰囲気はまるで同じだった。だから、見間違えたのかもしれない。

透き通るような青い髪。全てを見透かしてしまいそうな紫煙の瞳。整った顔立ち。

そして何より・・・彼女の、優しさ、暖かさ。

ヴィンセントの凍った心は、の暖かい心に溶かされていった。

歯止めが利かず、膨らんで行く自分の気持ち。

駄目だとわかっていても、止まらない、溢れ出す気持ち。


もう引き返すことは出来ない。




を、愛してしまったのだから。






「うああああああぁあぁああああ!!!」

雄叫びのような、悲痛な叫び声。

クラウドは傍らのに、ヴィンセントは自分の後ろにいるに、視線を向けた。

二人とも驚きを隠せない表情でを見つめている。

は頭を手で押さえ、必死に言葉にならない声で叫んでいる。

っ!!」

クラウドがの両肩を掴み、前後に軽く揺らした。

だがはそのクラウドの手を払い除け、立ち上がりながらも叫び続けている。

っ!?一体どうしたと言うんだ!」

「わからない!様子が変だ!」

ヴィンセントも顔を青くしてに駆け寄った。

クラウドが必死にに呼び掛けているが、は叫ぶだけだ。

ヴィンセントとクラウドはの体を押さえつけ、落ち着かせようとした。

だが、それが逆効果だったようだ。はクラウドとヴィンセントを突き飛ばした。

「ぐっ!」

「うあっ!」

クラウドとヴィンセントは互いに地面に叩き付けられ、顔を苦痛に歪めた。

「あああああああああああああ!!!!」

は叫び続けている。だが、クラウドがの名を呼ぼうとした時、クラウドは気付いた。

の顔を濡らす涙の存在に。


―――・・・泣いている?


は自分の剣を構えると、宝条の反応を見ずに駆け出した。

クラウドとヴィンセントが気付いた時には遅かった。

「な、何っ!?」

!!止まれ!!」

に声は届かない。は剣を振り上げると、思い切り宝条へと振り下ろした。


鮮血が飛び、宝条がよろめく。

は宝条の返り血を浴びたまま、やっと叫ぶことをやめ、今度は冷徹な瞳で宝条を見つめていた。

全てがスローモーションのように見える。

空中に舞う赤い華も、よろめいて倒れそうになっている宝条の姿も。


「クッ・・・では魔晄ジュースの効果はどうかな?」

宝条が呟くように言うと、宝条の体が歪んでいった。

人間から、化け物へと。

腕が曲がり、首はねじれ、目は虚ろながらもニヤリと笑っている。

肌の色は変色し、もはや人間とは言えないモンスターの宝条。

極限生命体宝条NA。



ヴィンセントの銃声が響く。

一発、二発、三発、四発・・・・計四発の銃声。

頭、右腕、左腕、そして心臓に命中した弾丸。

宝条がよろめくのを見計らい、ヴィンセントを追い越してクラウドが飛び出した。

が宝条の後ろへ回り込み、宝条の逃げ場を塞ぐ。



「宝条、これで最後だ!!」




超究武神覇斬!






クラウドのリミット技が炸裂した。

計連続十五回の斬り技を宝条にぶちかます。

出来る限りの力を込め、宝条を何度も何度も斬り付けた。

宝条の体は変な方向に曲がり、そして倒れた。




無残な化け物の死体。

戦いの後に残ったものは、それだけだった。

「・・・・。」

クラウド達は、沈黙していた。

だが、ヴィンセントが銃を仕舞い、宝条を見据えて呟いた。

「宝条・・・永遠に眠れ・・・・。」

終わった。

いや、まだ終わっていない。

最後に、セフィロスを倒すまで、自分達の戦いは終わらない。



、大丈夫か?」

クラウドが声を掛ける。は俯いたままコクンと頷き、ペタンと座り込んだ。

「一体どうしたんだ・・・先ほど、お前は何を思っていた?」

ヴィンセントがに言う。

急に叫び出した先ほどのは、普通ではなかった。

は、小さな声でぽつり、ぽつりと話し出した。

「・・・私の中の・・・ジェノバ細胞・・・が・・・、・・・暴れ、出したの・・・。」

「ジェノバ細胞が?」

クラウドが聞き返した。は再びコクンと頷く。

「何かはわからないけれど・・・多分、ジェノバ細胞だと思う・・・。

体が急に熱くなって・・・頭が痛くなって・・・。・・・もしかしたら、宝条のジェノバ細胞と、

・・・共鳴・・・してたのかも・・・。」

クラウドは黙ったまま頷き、の肩を支えて立ち上がらせた。

は消えそうな声で呟く。

「・・・私・・・・壊れちゃうかもしれない・・・・。」

クラウドはその言葉に動きを止める。


まるで、今のは以前の自分のようだ。

エアリスやを傷付け、壊れそうになった自分。

そして、そのことについて頭を悩ませていた自分。

そんな頃の自分と、が重なって見えた。

あの時はの言葉に救われた。今度は自分が救う番だ。



「大丈夫だ。何も心配はいらない。は壊れたりなんかしない。

皆仲間がいる。そのことをおしえてくれたのは、だろ?」




を壊しはしない。決して、例え自分が壊れようとも、だけは。



最後の時は、着実に近付いている。




<続く>


=コメント=
ぎゃおーす!!(何
超長ッ!!!何、この長さ!!
もしかして最長記録かも!!(爆笑)
いやー、すごいな、この長さ。

それにしてもどんどんEDに近付いてますね!
明希妃ウッキウキ!(何
早くEDが書きたいYO!
・・・ってか、クラウドの超究武神覇斬て・・・なんて読むの?(笑
ちょうきゅうぶしんはざん?で、いいのかな?(笑