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あの時より一歩強くなれた?第二十九章






はそっと目を開ける。

辺りは何も見えない暗闇で、一人きりでそこに佇んでいた。

「ここは・・・?私は・・・ライフストリームに落ちて・・・。」

と、そこで一気に意識が覚醒する。

クラウドがいない。一緒にいたはずなのに、クラウドがいない。

「クラウド!?」

呼び掛けてみるが、自分の声は闇に吸い込まれて消えた。

「クラウド!どこ!?」

先ほどよりも声を大きくして叫んでみる。けれども、闇はほんの少しの光でさえも見せなかった。

は頭を振る。もしかしたら、このまま闇の中で、ただ一人きりで・・・・。

そんなの嫌だ。クラウドと一緒に皆の元へ帰りたい。

「そんなのは嫌!!クラウドを・・・クラウドを返して!!」

は叫んだ。そして、走った。

暗い闇の中。走っているのか走っていないのかわからない、不思議な錯覚に囚われてしまうけれど、

決して諦めようとは思わなかった。最初から『諦める』という選択肢は、の中に入っていなかったのだ。

クラウドを返して欲しい。それで、クラウドと一緒に・・・帰りたい・・・・。

クラウドの笑顔を忘れるなんて出来ない。笑顔だけじゃない。怒った時や寂しそうな時、悔しがっている時・・・

全てのクラウドは、の胸の中にある。そんなクラウドの存在を、消せる訳がない。

は走った。ひたすら、クラウドの黄金の色を求めて走った。

と、急に体がふわりと浮いたかと思うと、は“別の世界”にいた。

辺りは闇に包まれているのではなく、どちらかというとあのエメラルドグリーンのライフストリームの中にいるような感じ。

は辺りを見回した。そこには、ずっと求めていた色があった。

「・・・クラウド・・・?」

広間の真ん中には半透明のクラウドがいて、頭を抱えて震えていた。

そして、更に視線を走らせると、周りに三つの道が分かれていて、それぞれに別のクラウドが座っている。

「ここは・・・あなたの夢の中、なの?・・・それとも・・・あなたの意識・・・?」

クラウドは答えない。ひたすら震えていて、全てを否定したいという気持ちが溢れていた。

はそっとクラウドに近寄る。

「・・・探してるんだよね。クラウド・・・。本当の自分を、見つけたいんだよね?」

はかすかに微笑んだ。

「手伝うよ、私も。本当のクラウドに、私も会いたいよ。きっと、見つけよう?一緒に。」

は半透明のクラウドにそう語り掛けると、三つの道のひとつに歩を進めた。

その道に座っていたクラウドが立ち上がった。

「ニブルヘイムの門・・・5年前、セフィロスとともにこの門をくぐり・・・。

そうして・・・全てが始まった・・・・・・。」

全ての始まりはニブルヘイムだった。5年前のあの日から、全てが狂い始めたのだ。

は頷いた。

「ここ、ニブルヘイムに通じているのね?5年前・・・。そうだね、ここから始めよう。

行こう、クラウド。辛いかもしれないけれど・・・私も、その辛さを一緒に背負うから。」

の意識は、クラウドのニブルヘイムへと飛ばされた。
 





気付くと、はニブルヘイムの門の前に立っていた。

は門を見上げ、微笑んだ。そして、ニブルヘイムの村へと視線をやる。

「給水塔・・・。おじいさんの宿屋・・・。クラウドの家、ティファの家、私の家・・・。

これがクラウドの記憶の中のニブルヘイムなのね?・・・うん。私の記憶も同じ。

だから・・・ここは、私達のニブルヘイムだね・・・。」

クラウドが、座った体勢でふっと現れた。はその姿を見て、再びニブルヘイムを見やる。

「5年前・・・ここに二人のソルジャーと私が・・・来たんだよね。

セフィロスと・・・若くて陽気なソルジャー。そして・・・私。

憶えてるよ。でも、詳しく知りたい・・・。その時の様子・・・もう一度教えて?」

あの時の光景が映し出された。は真剣にそれを見ている。

『どんな気分なんだ?』

セフィロスが門の前に立ち、言った。

『久し振りの故郷なんだろ?どんな気分がするものなんだ?

・・・俺には故郷がないからわからないんだ・・・。』

そうか、セフィロスはこの頃、まだ自分のことを『俺』と言っていたっけ。そんなことを考える。

『ええと・・・両親は?』

クラウドの声だ。それにセフィロスが答える。

『母の名はジェノバ。俺を生んですぐに死んだ。父は・・・。』

そこまで言うと、急にセフィロスは口をつぐみ、軽く笑った。

自分の行動に呆れているような笑い方だった。

『俺は何を話してるんだ・・・・。・・・さあ、行こうか。』

そこで光景が一時停止になった。はそれを見計らって口を開く。 

「5年前・・・私はセフィロスに連れられて、ニブルヘイムにやって来た。

・・・セフィロスのことは大好きだった。いつもはクールなのに、私にはいつも優しくて・・・。

わからないこととか、色々おしえてくれて・・・。かっこよくて、クラウドが憧れるのも頷けるような人だった。

・・・この日、セフィロスに連れられて来たソルジャーはクラウドだって思って、今まで疑わなかった。」

光景が動き出す。セフィロスの後について行くソルジャーは、クラウドだった。

は首を横に振る。

「違うの、クラウド。」

は口をつぐむ。だが、隣で苦しそうにしているクラウドを見て、口をゆっくりと開いた。

「・・・言葉にすると・・・恐ろしいことになりそうでずっと隠してた・・・。

でも、今は隠さずに言うね。

・・・あなたはいなかった。クラウド、5年前、あなたはニブルヘイムには来なかったのよ。

私・・・待ってたのよ。ずっと、クラウドと一緒に仕事したくって。でも、クラウドは・・・来なかった。

あの時派遣されたのはセフィロスともう一人・・・。」

『さあ、行こうか。』

セフィロスの後に続いたのは、黒髪の青年だった。

はこの青年の名を知っている。だが、ここで口にしてしまえばクラウドの答えを見失ってしまう。

そう思い、あえて言わなかった。
 
光景が元に戻った。

「セフィロスとともにニブルヘイムに出向いたソルジャーは、俺では・・・なかった・・・?」

クラウドがぼんやりと呟く。は頭を振った。

「私には・・・もう、何も言えない・・・・。

答えはあなたが、自分自身で見つけなきゃ駄目なの・・・。

でも、急がないで、クラウド。ゆっくり・・・少しずつ、・・・ね?」

 


は、先ほどの場所に戻って来ていた。

相変わらず中心のクラウドは頭を抱え、脅えている。

は唇を噛んだ。けれど、きっとなんとかなる。そう思って、次の道へと進んだ。

その道のクラウドも座っていて、しきりに何かを考えているようだった。

「夕焼け空の給水塔・・・。あの日の会話も・・・気持ちも・・・偽りの記憶でしかないとしたら?」

は首を横に振る。

「焦っちゃ駄目。クラウド・・・答えを急いで、自分を追い詰めないで。

たくさんの小さな想いを確かめながら戻って行けばいいの。ゆっくり・・・少しずつ・・・。

そう・・・例えば、真っ赤に輝いていた、あの日の夕焼け・・・。」





光景が映し出された。

目の前では給水塔で子供のクラウドと子供のが一緒に遊んでいる。

クラウドは小柄なよりも身長が低かった。思い出す、真っ赤な夕方の風景。

クラウドとは縄跳びを持っていて、笑い合っていた。

「・・・懐かしいね。クラウド、この頃は私よりも身長が低かったんだよね。

・・・・可愛いね・・・。」

はクスリと笑った。

「間違いないよ。この時のことは、私ちゃんと憶えてる。

いつものように一緒に遊んで、そろそろ帰ろうっていう時になってクラウドに呼び止められたの。

少し、一緒に座っていよう、って。もちろん断る理由なんかなかったし、だから一緒に座ったんだよね。

・・・そしたら、クラウドがソルジャーになる、って言ったんだ。

・・・正直、かなりショックだったよ。だって、クラウドと会えなくなるってことだったから。」

はそこで言葉を切った。改めて口を開く。

「・・・いつかセフィロスが、クラウドは私の話に合わせてこの記憶を創り出したって言ってたけど・・・

この赤い夕焼けは・・・クラウドが自分自身で思い出したものでしょ?

私、クラウドと一緒に遊んで、お話したよね。私、信じてるよ。あなたがニブルヘイムのクラウドだって。

・・・でも、私が信じていても・・・クラウド自身は、信じていない・・・。

・・・この記憶だけじゃ、足りないよね。」 






ふっ、と光景が元に戻る。

はクラウドに向き直り、笑顔で話した。

「ねえ、クラウド。それなら・・・ほかの記憶は?・・・ううん、記憶じゃない。

記憶って、頭の中から無理矢理引っ張り出さなくちゃならないでしょ?

だから間違ってたり、カタチが変わっていたり・・・。

でも、胸の奥に眠る思い出は違うよ。」

クラウドは顔を上げた。はニッコリと笑って語り掛ける。

「きっとそれは、偽物なんかじゃない。もしそんな思い出を、呼び覚ます事が出来れば・・・。

私が何か言って、そのことをあなたが思い出すんじゃなくて・・・

クラウドが何か言って、もし私もそのことを憶えていれば・・・それが、あなたと私の思い出。

クラウド、何か話して?何でもいいから、クラウドにとって大切な思い出を・・・。」

はふと思った。

「そういえば、クラウドはどうしてソルジャーになりたいって考えたの?

私、ずっとクラウドが突然決心したんだと思ってたけれど・・・。」

クラウドは俯いた。拳を震わせるほど握り、静かに語り出す。

「・・・悔しかった。・・・認めて欲しかったんだ。強くなれば認めてもらえる、きっと・・・。」

「認めて欲しい・・・?・・・誰に?」

「・・・誰に、だって?・・・わかるだろ?・・・に・・・だよ。」

は驚いた。まさか自分の名前が出るとは思わなかったのだ。

きっとセフィロスとか、自分の母親とか、そういった人物が上げられると思っていたのだ。

「・・・どうして・・・?」

・・・忘れちゃったの・・・あの時のこと・・・。』

幼い声がした。けれど、聞き覚えのある声で、は振り向く。

「あなたは・・・。」

そこには、幼少のクラウドが立っていた。

身長も随分低い、夕焼けの日のクラウドと同じ洋服を着て・・・。

「ごめんね・・・何のことを言ってるの?」

クラウドは頭を振る。

「ううん・・・いいんだ。、あの時は大変だったしね。

自分のことで手一杯だったからあの時の俺のことなんか憶えてなくて当たり前だよ。」

「・・・あの時?」

「俺にとっては大切な・・・悔しかったけど・・・すごく大切な思い出なんだ・・・。」

幼少のクラウドは、最後の道へと歩んで行く。も、ゆっくりとその後に続いた。

その道に座っていたクラウドは、囁くようなかすかな声で呟いた。

「・・・封じ込められた、密かな・・・願い・・・・。

大切な想いは・・・誰にも知られることなく・・・・・。」

はそのクラウドの肩を優しく叩くと、幼少のクラウドに向き直った。

幼少のクラウドの後ろにはひとつの窓がある。

「この窓がどこに通じているかわかる?。」

は首を横に振った。

そして、意識が飛ばされる。

 






「私の部屋?」

は部屋を見回して呟いた。幼少のクラウドは頷く。

「俺、この日、初めてここに来たんだ。に、一緒に遊ぼうって呼ばれたんだ。」

全く記憶がない。そんなこと、あっただろうか?

「友達の家に遊びに行ったことなんてなかったから・・・嬉しかった。」

光景が映し出された。

子供はベットの上に座っていて、そこに子供のクラウドが入って来た。

はそれに気付いて立ち上がる。クラウドも笑っていて、二人は挨拶を交わした。

『やーい!クラウドが青髪女の家に入ってやんのー!』

外から声がした。仲良し三人組が家の前で悪口を言っている。

・・・そうだった。は村で孤立していたのだった。

そして、が村に越してくるまでは、クラウドも村で孤立していた。

「・・・俺、あの三人組が大嫌いだった。どうでもいいことでケラケラ笑っててさ、馬鹿で子供っぽかった。」

幼少のクラウドが呟くように言った。はそれに返事を返す。

「・・・だって、子供だったじゃない。」

「・・・わかってる。馬鹿は俺なんだ。・・・が来るまで、俺は村でずっと一人だった。

本当は皆と一緒に遊びたいのに、どうしても仲間に入れてって言えなかった。

そのうちさ・・・俺は皆と違うんだ・・・あんな子供っぽいヤツらとは違うんだって思うようになったんだ。」

幼少のクラウドは言葉に詰まる。

「でも・・・もしかしたら。」

『もしかしたら声を掛けてもらえるかもしれない。そう考えて皆の周りをうろついていた・・・。』

頭の中に声が響いた。それは、紛れもなくクラウドの声で。

『どうしようもなくひねくれてた。そして・・・弱かった。』

幼少のクラウドは俯いていたが、やがて顔を上げるとを真っ直ぐに見上げた。

「・・・そんな時、村に越してきたのことを知ったんだ。

引っ越してきた初日の夕方に・・・のお母さん達が、まだ子供が帰って来ないって・・・慌ててたんだ。」

そう。はあの仲良し三人組に追い詰められて、迷子になっていた。

「村中どこを探してもいないって言ってたから、きっとニブル山だって俺は思った。

だから、興味半分で・・・探しに行ったんだよ。」

子供のクラウドはが自分に助けを求めるなんて考えもしなかった。

「・・・ニブル山での姿を見つけて、声を掛けたら・・・。

、泣きながら俺に抱き付いて来たよね。びっくりしたけど・・・

俺、今この女の子に必要とされてるんだ、って思ったら、すごく嬉しかった。」

は頷いた。

あの時は、本当に心細くて、寂しくて、怖くて。クラウドが来てくれなかったら、自分はどうなっていたんだろうと思う。

けれど。

「・・・をおぶって帰る途中・・・俺、足を滑らせて転んだんだ。憶えてる?」

は驚いて首を横に振った。は、クラウドにおぶってもらって、家まで辿り着いたと思っていたのだ。

「・・・転んだ時に、・・・岩に頭をぶつけて・・・怪我して・・・。」

そして、意識を失った。

には、到底信じられる話ではなかった。

「・・・俺は、ヒザを擦り剥いただけで済んだんだ。けどは・・・・。」

意識不明で一週間。重体だった。

クラウドは、その所為で村中から批判された。

けれど、そのことをは知らなかった。

が・・・死んでしまうかと思った。・・・俺がちゃんとしてれば・・・。

・・・悔しかったんだ。何も出来なかった自分の弱さに腹が立った。

それから、がいつも俺を責めているような気がしてさ。

・・・怪我が治って、は一番最初に俺に話し掛けてくれた。びっくりして・・・嬉しかった。

けど、俺はもっとに認めて欲しかった。俺の存在を認めて欲しかった。

・・・そんな時にセフィロスのことを知って、強くなりたいと思ったんだ。」
 





は幼少のクラウドとともに元の場所に戻って来ていた。

『強くなりさえすれば・・・だって、俺のこと認めてくれると・・・。』

クラウドの声が響く。はきゅっと唇を結んだ。

申し訳ない気持ちが胸に広がって行く。

「ごめんね・・・クラウド・・・。私、クラウドがそこまで色々考えてくれてたなんて思ってなかった。

それに・・・あの時のこと、私がちゃんと憶えていればもっと早くに・・・・。」

クラウドは頭を振った。

の所為じゃないよ。俺の所為だ。」

「でも、あれは、確か・・・私達が8才の時よ・・・!」

はクラウドの肩を掴んだ。

「そうよ、見つけた・・・!クラウドは、5年前に創られたんじゃない。

幼い日の、その思い出は作り物なんかじゃない!クラウド頑張ろう!後ちょっとよ!

もう一度行きましょう、ニブルヘイムへ・・・。」

『真実は、すぐそこにある。もうすぐ答えが、手に入る・・・・』

 



 
再び記憶のニブルヘイムへとやって来た。

「待って、クラウド。」

先を行くクラウドを呼び止める。クラウドは振り返った。

「どこへ?どこへ行くの?」

クラウドは少々考え込み、呟く。

「・・・魔晄炉・・・?魔晄炉へ!5年前の魔晄炉へ!」

クラウドは駆け出す。も、その後に続いた。







5年前の魔晄炉。ティファがセフィロスに斬られた場面が映し出される。

そこへ駆け付けたのはクラウドではなく、黒髪の青年だった。

「クラウドじゃない・・・。」

は呟いた。

「ザッ・・・クス・・・ザック・・・ス・・・。ザックス・・・。」

クラウドのかすかな声には振り向き、頷いた。

「思い出したのね・・・?そうよ、クラウド。

セフィロスとニブルヘイムに来たのはザックスだったの。でもね、ひとつ気になることがあるの。

・・・クラウドは、どこにいたの?」

ザックスがセフィロスに吹っ飛ばされて来る。クラウドとはそれを見やる。

「ねえ、クラウド。あなたは・・・これを見ていた?」

その言葉をが言った直後、後からまた駆け付けて来る黒い影があった。

「見て・・・いた・・・。」

クラウドは呟く。

黒い影のひとつはティファの傍にしゃがみ込み、腰の剣でセフィロスに斬りかかって行った。

もうひとつの影はそれを止めようとして手を伸ばすが、その手は届かない。

影はセフィロスに吹っ飛ばされ、もうひとつの影とぶつかる。

「・・・これってもしかして・・・・。」

黒い影はぶつかって来た人物をその場に寝かせ、ザックスの剣を取りジェノバルームへと入って行った。

そして、後ろからセフィロスを突き刺す。

『ぐあぁっ・・・だ、誰だ・・・』

『母さんを・・・ティファを・・・村を返せ・・・。

あんたを尊敬していたのに・・・憧れていたのに・・・。』

「クラウド!?」

兵士はマスクを取った。そこには、金髪の少年の顔があった。

は口を手で押さえ、目を細めた。

「そうだったんだ・・・。うん、そうだったね・・・。」

クラウドはソルジャーじゃなかったけれど、ずっとと一緒にいた。

セフィロスに吹っ飛ばされてしまった神羅兵のもう一人は、自分だったんだ。

「・・・一緒に、いてくれたんだね・・・。」

はクラウドに向き直った。

その顔は喜びに満ちていて、本当に嬉しそうだった。

「クラウド、私と一緒に仕事してたんだね・・・。

トラックの中で気持ちが悪いって言ってた神羅兵は、クラウドだったんだね・・・。」

光景はまだ続いている。クラウドがの元に戻って来た時、後ろからセフィロスがよろめきながら現れた。

『お前如きに・・・。』

クラウドは身構えたが、セフィロスは逃げるようにその部屋を出て行った。

ザックスが呟く。

『クラウド・・・セフィロスにとどめを・・・。』

クラウドは頷き、セフィロスの後を追った。

魔晄炉内の橋のところで、クラウドは立ち止まる。

『セフィロス!!』

そう大声で叫び、セフィロスに斬りかかろうとした。

だが、セフィロスはそれをカウンターで受け、クラウドの肩を剣で突き刺した。

クラウドの表情が苦痛に歪む。

『調子に・・・乗るな・・・。』

クラウドはその言葉に目を見開き、刺されたまま抵抗した。肩に刺さった剣を引き抜き、セフィロスに最期の一撃を食らわせた。

セフィロスの体が宙に浮く。

『そ・・・んな・・・馬鹿な・・・・・。』

セフィロスの体は、魔晄炉の地下深くに落とされて行った。



 



が顔を上げると、そこは最初にいた地点だった。

周りに三つの道があり、それぞれの道にはクラウドがいて・・・。そして中心ではクラウドが苦しんでいて・・・。

けれど、は今中心に立っていた。苦しんでいたクラウドは、今は立ち上がっている。

傍には幼少のクラウドもいた。

「クラウド・・・。」

は呟いた。幼少のクラウドは少々寂しそうな笑みを浮かべ、言った。

「それじゃ・・・さよならだ、。また会うために、ね・・・。」

三つの道に座っていた三人のクラウドが、同時に立ち上がった。

それぞれが向かい合い、幼少のクラウドを中心にして一人ずつ重なって行った。

そして、ずっと苦しんでいた・・・今にも消えそうだった、半透明のクラウドと最後に重なり・・・一人のクラウドになった。

見つけた。見つけた。

それは、今までずっとが探し続けていたクラウドだった。

はたまらずにクラウドに抱き付いた。

「クラウド!!」

「う・・・。・・・。」

クラウドはゆっくりとを抱き締める。

は嬉しくて、喜ばしくて、何を言っていいのかわからなかった。

「クラウド・・・!本当にクラウドなんだね!」

クラウドは頷く。

「ああ・・・。・・・やっとまた・・・会えたな・・・。」

もう弱々しいクラウドの声なんかではなかった。

自分の一歩前に立って、手を差し伸べて笑っていたクラウドに、間違いなかった。

「くッ・・・!」

クラウドが急にしゃがみ込んだ。いきなりどうしたと言うのだろう。

は慌ててクラウドの肩を抱える。

「クラウド!?大丈夫・・・!?」

「こ、声が・・・ヤツらの・・・。」

は辺りを見回した。エメラルドグリーンの壁を見て、ふと思う。

「そっか・・・。私達・・・ライフストリームの中にいるんだね。」

クラウドは顔を上げる。そこにはの顔があって、にっこりと微笑んでいた。

「皆、待ってるよ。」

仲間達の顔が浮かぶ。

「帰ろう、クラウド。皆のところへ・・・。」

クラウドは頷いた。何だか、久し振りにの笑顔を見た気がする。

「ああ、そうだな・・・。帰ろう、。一緒に・・・・。」

クラウドはそう言うとの一歩前に立ち、微笑んで手を差し出した。

慣れていた仕草なのに、妙にこそばゆい。 

けれど、にはとても嬉しかった。

はクラウドの手を取る。そして、今にも泣きそうな笑顔で、ひとつ、頷いた。



辺りが白い光に包まれて行く。

けれど、もう不安ではなかった。

クラウドと一緒なら。





           


           帰ろう・・・・。






<続く>

=コメント=
ぎゃわぁぁぁ!(何)
早い〜〜〜!!上に長い〜〜!(汗
クラウドとの再会早過ぎる(笑)
しかも読んでると意味がわからないトコがたっくさん(汗
ごめんなさぁぁい!
さて、そろそろFFZも終盤に差し掛かってきます。
さんは誰を選ぶんでしょうね?
ずっと一緒にいてくれたクラウドか。
泣きたい時に、いつも傍にいてくれたヴィンセントか。
かつて、大好きだった彼、セフィロスか。
それは、あなたが決めることです。