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あの時より一歩強くなれた?第二十七章







ハイウィンドから垂らされたロープに掴まっていたとティファは、

ジュノンから大分離れた頃、ロープを登り出した。

ジュノンから離れるまでは神羅からの追っ手に気を使い、振り切る必要があった。

そのため、乱暴な運転を行っていたハイウィンドのロープを登るのは不可能に近かったのだ。

ヴィンセントが手を伸ばしてくれた。はその手を掴み、ハイウィンドの甲板へと降り立つ。

そしてはティファに手を伸ばす。ティファもの手を掴み、ハイウィンドの上へと降り立った。

・・・ありがと・・・。」

「皆、無事でよかったね・・・。」

ティファはに抱き付いた。強気を見せてはいたが、よほど不安だったのだろう。

はティファの気持ちを察し、ティファの背中を優しく叩いた。

「他の皆は船内にいるぞ。心配していたからな・・・。会って来たらどうだ?」

ヴィンセントはティファに言った。ティファはから離れ、ひとつ頷く。

「・・・私、生きてるんだよね・・・。」

「生きているからこそここにいる。そしてこれは現実だ。」

ヴィンセントはティファに優しく告げた。ティファはもうひとつ頷き、船内へと入って行った。

ヴィンセントとはそれを見送り、そして改めてお互いの無事を確認した。

「・・・とにかく、無事でよかった。」

「ヴィンセントもね。皆を助けて誘導してくれたんでしょ?ありがと。」

ヴィンセントは首を横に振った。

「仲間を助けるのは当たり前だ。」

そう言い、ヴィンセントはふと気付く。

ゆっくりと手を伸ばし、の頬にそっと触れた。

そこは、赤くなっていたから。

は舌をペロリと出すと、両肩を少し上げた。

「スカーレットと女の勝負、しちゃった。」

冗談めかして言ってみたが、ヴィンセントはの頬を見つめているだけだ。

白いの頬。そして、今は赤味を帯びているの頬。

ヴィンセントはの頬に顔を近付けた。

「――――――――――――――!?」

ヴィンセントは赤いマントを翻し、無言で船内へと入って行った。だが、は動く事が出来なかった。

今、ヴィンセントは自分に何をした――――?

は頬に触れる。少々熱を持っている頬。

そしてそこに、確かに優しい唇の感覚が残っていた。

みるみるうちにの顔が赤く染まって行く。

まさか。まさかあのヴィンセントにキスされるなんて。

口付けではない。けれど、の顔はユデダコのようになったままだ。

頬にかすかに残るヴィンセントの香り。

銃の火薬の匂い。けれど、はこの匂いが好きだった。

「・・・・っぷ・・・・・。」

「うわぁぁっ!?」

後ろから声がして、は飛び上がった。

ギシギシと音がしそうな感じでゆっくりと振り向く。

そこには、ユフィがうつぶせで倒れていた。

「はぁ・・・はぁ・・・・うっぷ・・・・。・・・・ぶ、無事でよかったね・・・。

う・・・・海でも空でも・・・船は駄目なんだよ、アタシ・・・・・・。」

ユフィは倒れたままに手を伸ばした。は引き攣った顔でおずおずと聞く。

「・・・あの・・・見てた?」

「・・・っぷ・・・・・・・何を・・・?」

あんなシーンをユフィに見られていたら大変だった。だが、ユフィはそれどころではなかったらしく、

とりあえずは見られていなかったようだった。

「・・・はぁ・・・ハッ・・・な、何か・・・あったの・・・?」

「なっ!何もないよ!?うん、ホントーに何もないの!!」

「あそ・・・。アタシ・・・も少し・・・・ここにいるから・・・。」

どうやら本当にそれどころではないらしい。は苦笑を浮かべ、船内へ入って行った。

 






「てめえ、飛空艇が使えるんなら最初っから言えよな!オレはよ・・・ティファやともサヨナラかと思ったぜ。」

船内のコックピット、いや、中央広間とでも言うべきだろうか。

そこには皆集まっていた。レッド13やシド、バレット、ケット・シー、ティファ、ヴィンセントもいる。

そして、バレットはケット・シーに話し掛けていた。

ケット・シーはへらっと肩を竦める。

「すんませんな〜。でも、敵を欺くにはなんとやら、ですわ。」

「ケット・シーが飛空艇を用意してくれたの?」

が後ろから話し掛ける。ケット・シーとバレットは振り向き、ガッツポーズを見せた。

「そうですわ。皆さんを助けようと思ってた矢先、ヴィンセントさんと合流したんです。

そしたら、なんかわからんけど、神羅兵が走ってこっちへ向かって来てたんですわ。

が逃げた』って叫んでたもんで、こりゃぁもしかすると・・・と思って、飛空艇を機動させたんです。」

「そっか・・・本当にありがとう、ね。」

ケット・シーとバレットは顔を見合わせ、ニッと微笑んだ。

「ようこそ、オレ様の飛空艇ハイウインドへ!」

シドが両手を広げて言った。だが、のあんまり感激していない表情を見て、口を尖らせる。

「どうしたい!もちっと感激しろい!」

そう言われ、はますます表情を曇らせる。ヴィンセントが叱咤した。

「シド。」

ヴィンセントの言わんとしたことがわかったのだろう。シドは小さく返事を返した。

「メンバー・・・足りないね・・・。」

が寂しげな笑みを浮かべ、呟いた。

沈黙が降りる。

本来ならば、このハイウィンドの中心に立っているであろう人物。

あの金髪を探しても、どこにも見当たらない。

は俯き、唇を噛み、必死に涙を堪えた。

さん、ボク、いろいろ神羅の情報を流しますからね。わからんことあったらボクに聞いて下さいな!」

は顔を上げる。

ケット・シーが合図だったかのように、他の面々も口を開き出した。

「そうだよ、。元気出して!」

「そうそう。オレ達が乗っちまった列車は途中下車出来ねぇんだからよ!」

「人生色々だぜ、ネェちゃん!ツンツン頭の居場所さえわかればこのハイウインドでひとっ飛びよ!」

仲間達の優しい声に、は俯いて、ひとつ頷いた。

さっきよりももっと、涙が出そうになった。

でも、だからこそ泣いてはいけない。そう思い、は誤魔化すように額に手を当てた。

「・・・もしかしたら」

レッド13が口を開いた。

「北のクレーターの奥底で地面が崩れてクラウドはそのまま・・・・。」

ここまでの言葉なら、なんて絶望的な言葉なのだろう。けれど、それにはまだ続きがあった。

「更に地中の奥深く・・・・・。」

ピンと来る。は顔を上げ、呟くように言葉を口にした。

「地中の奥深く・・・ライフストリーム?」

「そのライフストリームが海底スレスレを通っていて、ときどき地上に噴き出す・・・。

そんな場所があるって話を聞いたことがあるんだ。もし、もし、もしかしたら クラウドも・・・。」

は頭をフル回転させた。

昔、神羅カンパニーのビルでそんな資料を見た気がする。

ライフストリームが噴き出す村。そういう名称の資料だったはずだ。

けれど、随分と曖昧な記憶で思い出せない。

どうしても悔しくて、苛立ってしまう。けれど、冷静さをなくしたらお終いだ。

「・・・シド。南へ・・・向かって欲しいんだけど・・・。」

「ん?おう!任せとけ!!」

シドは新米パイロットに南へ向かうように指示した。

・・・何故、南へ・・・と思ったのかは、正直わからなかった。

けれど、曖昧な記憶の中に南という単語が出て来たような気がしたのだ。

今は、ほんのわずかな希望でも信じるしかない。

 


 






南へ数時間。ひとつの村が見えて来た。

はそこでハイウィンドを着陸させるように言った。

ハイウィンドがゆっくりと村の近くに着陸する。

「ヴィンセント、ティファ。一緒に来てくれる?」

は声をかけた。二人は頷き、とともにハイウィンドを降りて行った。





「えっと・・・こんにちわ。」

村の入り口に立っている老人に声をかける。老人はニッコリと笑い、頷いた。

「ほい。こんにちわ、べっぴんさん。ここはミディール。のどかな温泉村じゃよ。」

「温泉村・・・?」

「わしらのような年寄りがのんびり暮らすにはうってつけの場所じゃて。」

老人は、ほっほっほと笑った。

「どうも外では、何やら大変な事になっとるらしいがまだここは静かなもんじゃよ。」

は老人に笑顔で返し、村の奥へと進んで行った。


静かでのどかな村。まさに『平和』という単語がぴったりの村だ。

向こうから野良犬が駆けて来る。見たところ、まだ子犬のようだ。
 
は屈み込んだ。

「どうしたの?お前・・・。 独りぼっちなの・・・?

それとも、見失っちゃったのかな・・・?大切な誰かを・・・。」

つい、金色の光を探してしまう。

いつも自分の一歩前に立ち、優しく手を差し伸べてくれた彼。

生きていて欲しい。そして、出来る事なら会って確かめたい。

クラウドは、クラウドでいられるのか。今までの彼は偽物だったのか。

「・・・もう一週間にもなるかのぉ、海岸に打ち上げられた・・・あの、ツンツン頭の若いの・・・。」

「ああ、惨いこっちゃが・・・。でも、ありゃどうも変だで・・・。どでかい長剣、握り締めて・・・。

なんや不吉な気がするんや。なんちゅうても、ほれ・・・・あの、不思議な青い目・・・・。」

は反射的に顔を上げた。村人達の話が聞こえた。

目の前で老人二人が会話をしている。聞き間違いではないようだ。

まさか。そんな。

けれども特徴は一致している。もしかしたら。ここがライフストリームの噴き出す村だとしたら。

「すみません!あの、今のお話を聞いてしまったのですが・・・。今の話の若い人って・・・!!」

冷静に。思ってはいたが、興奮は収まるどころかエスカレートしてゆく。

自分の心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。

老人はは見て、言った。

「ああ・・・この先の海岸で村の者が見つけたんじゃよ・・・。もう一週間ほど前のことじゃ。」

「うん、可哀相に・・・。ありゃ、かなり遠くから流されて来たんやで・・・。」

は、もう感情を押さえられなかった。

「クラウドよ・・・!!間違いない!!クラウドだわ!!」

!やったね!!」

「大当たりだったな。」

ティファとヴィンセントも笑みを浮かべている。

は頷き、老人に向き直った。

「それで、その人は!?無事なんですか!?今、どこに・・・!?」

「ああ・・・この先の・・・ほれ、その治療所に・・・。」

老人は道の先にある小さな小屋を指差した。

あそこに、クラウドがいる。そう考えると、もうの心は止まらなかった。

「生きてる・・・クラウドが・・・クラウドが生きてる!!」

は駆け出した。ヴィンセントとティファもその後を追う。





クラウドが生きている。





それだけで、もう充分だった。









「クラウド!!」

は治療所に駆け込んだ。中にいた医者が苦笑を浮かべて振り向く。

「おやおや。そんなに慌ててメテオでも降って来たかね、お嬢さん?」

は上がった息を押さえ、医者に聞く。

「すみません、どうやら友人がこちらでお世話になってるらしいと聞いたもので・・・。」

医者は少し考え込んだ。

「ああ・・・!あの若者のことか!?安心なさい。君の友人なら、隣の部屋だよ。ただ、まだ具合が・・・」

は医者の言葉を最後まで聞かずに隣の部屋に飛び込んだ。

そして視界に入った、金色の色。

「クラウド・・・!?」

ずっと探していた金色の光。そこには、車椅子に座っているクラウドがいた。

もう全ての感情が失われてしまうほどの喜びで、は口を押さえた。

「クラウド!!」

はクラウドに抱き付いた。

「クラウド・・・!!よかった、無事だったのね!?」

嬉しくて嬉しくて、は何を言っていいのかよくわからなかった。

クラウドが生きていた。ちゃんと人間のぬくもりもある。

「・・・・」

クラウドは何も言わない。そこで、は初めて不信に思った。

「・・・クラ・・・ウド・・・?」

かすかに彼の口から漏れている声。だが、言葉ではない声だった。

「う・・・ああ・・・・?」

は目を見開いた。

「ど・・・どうしたの・・・クラウド・・・・?」

「あ・・・・うあ・・・?」

は目を見開いたまま頭を左右に振る。

尋常ではないクラウドの様子に、言葉を失った。

「クラウド・・・!どうしちゃったの・・・・!?」

「魔晄中毒だよ・・・。それも、かなり重度の、ね・・・・。」

背後から声がした。医者だった。

「どうもこの若者は強烈な魔晄エネルギーに長時間さらされたようだな。

恐らく、自分が誰なのか、自分が今どこにいるのかすら理解していないだろう・・・。

可哀相だが、君の声も届いてはいまい・・・。本当の彼は別の場所にいるんだ。

誰も行った事がないような遠い場所に・・・独りぼっちでね・・・・・。」

は、これは夢だと思った。

まさか、こんな現実があるなんて思わなかった。

「そんな・・・!!」

ティファが呆然と呟きながら、クラウドに近寄った。

けれど、にはそんなことすら視界に入っていなかった。

こんなに酷い話など、あるだろうか。

こんなに辛い事など、あるだろうか。

こんなに胸が張り裂けそうになることなど、今までにあっただろうか。

は呆然としていた。

「こんな話って・・・こんな事って・・・・ないよ・・・・。」

医者と看護婦、そしてヴィンセントは、静かに外へ出て行った。

部屋には、とティファ、そしてクラウドが残された。

ティファはクラウドの手を握り締めたまま泣き続けている。

の目には、もう何も映っていなかった。

「・・・私が・・・クラウドみたいになればよかったのに・・・。」

が呟いた。

「・・・私が・・・魔晄中毒になればよかったのに・・・・。」

どうして彼の傍にいてあげられなかったのだろう。

クラウドはあの瓦礫が振って来る中、セフィロスに寄り添っていたのだ。

どうして、彼の手を掴んであげられなかったのだろう。

どうして、彼に手を差し伸べてあげなかったのだろう。

彼は、いつだって自分に手を差し伸べてくれていたというのに。

・・・。私・・・クラウドの傍にいる。」

ティファが涙を拭って立ち上がった。

、お願い・・・。クラウドを・・・クラウドを、助けてあげて・・・。」

ティファは、の目を真っ直ぐに見つめて言った。

はティファを見つめ返し、そして視線をクラウドに移した。

クラウドは、しきりに首を上下に振っているだけだ。

こんなのって、酷過ぎる。

は心に決めた。

クラウドを助けないと、自分自身も前に進めなんかしない。
 
「・・・わかってる・・・。ティファ、クラウドのことは・・・任せたからね・・・?」

ティファは頷く。

「・・・ね、ひとつだけ、お願い聞いて・・・?」

ティファは首を少し傾げ、を見つめる。

「・・・今だけ・・・クラウドと、二人きりにさせて・・・。」

は泣いてなかった。唇を噛み締め、前を見据えていた。

ティファは頷き、部屋を出て行った。

いい幼馴染でよかった。は安心する。

ゆっくりとクラウドに歩み寄り、膝を付いた。

クラウドを見つめた途端、糸が切れたように涙が溢れ出した。

もう、涙を我慢するのは限界だった。

「どうして・・・?ねぇ、どうして・・・!?お願いクラウド・・・答えてよ・・・。

ちゃんと私のこと見てるって、私の声が聞こえるって・・・言ってよ・・・・。」

はクラウドの手を握り、ひたすら涙を流し続けた。

 







「ドクター。本当のところを教えてくれないか。クラウドはどうなんだ?元に戻るのか?」

ヴィンセントは医者に話し掛けた。

今ティファが治療所から出て来て、とクラウドを二人きりにしたと話を聞いたところだ。

医者は軽く溜息をつき、説明する。

「繰り返すが彼は重度の魔晄中毒だ。あそこまで酷いのは、私も見たことがない・・・。

魔晄エネルギー内に潜む膨大な知識の量・・・それが一気に彼の頭の中に流れ込んだんだろう・・・。

普通の人間には堪え切れるものじゃない・・・。生きているだけでも、奇跡だ・・・。」

「・・・無理もないか。ライフストリームに落ちて、ここまで流されて来たのだからな。」

医者は言った。

「しかし、どんなところにも希望の光はある。諦めてはいけない。

いいかい?君達が希望を捨ててしまったら・・・一体彼はどこへ帰ればいいというのかね?」

希望。

そうだ。今、自分達に残されているのは、希望だけかもしれない。

ならば、最後の最後まで希望を持ち続けても悪い話ではないだろう。

「あ・・・・・・。」

が治療所から出て来た。目は真っ赤に腫れ上がっており、泣いていたのが一目でわかった。

けれど、誰も何も言わなかった。それは、の気持ちを痛いほどよく理解出来たから。

「大丈夫か?」

ヴィンセントが声をかける。は無言で頷き、口を開いた。

「うん・・・。心配かけて、ごめんね・・・。」

全員は頷いた。別に構わない、そういった感じだった。

ティファが言う。

「私、ここに残る。クラウドの傍にいてあげたいの・・・。」

視線がティファに集まる。

「私も・・・それが一番いいと思って。だから・・・私は、クラウドを助ける方法を探したい。」

二人の眼差しは真剣だった。

真剣、それでいて決意と覚悟の光が輝いていた。

「・・・わかった。皆には、私から話をしよう。」

ヴィンセントは頷く。ティファとはお互いに顔を見合わせ、少し笑った。

今後の計画は決まった。後は実行するだけだ。

「クラウド・・・早く良くなるといいな。」

「ティファ。後は任せたからね?」

ティファは口をしっかりと結んで頷いた。

ヴィンセントとはクラウドをティファと医者達に任せ、ミディールの村を後にした。









戻って来たとヴィンセントから話を聞き、仲間達はそれぞれの反応を示した。

だが、誰も反対をする者はなく、今後のことを話し合うことになる。

「さ〜て、どうするよっ!オレたちに出来ることはなんだ?」

バレットが腕を回しながら言う。

誰も何も言わない。バレットは口を尖らせる。

「クラウドの回復を待つなんてのはナシにしてくれよな。」

もちろん、そんなのはナシだ。それでは時間がいくらあっても足りないというもの。時間の無駄である。

「あの〜、情報があるんですけど。」

ケット・シーがおずおずと言った。視線がケット・シーに集まる。

「おう!逆スパイか?」

「はぁ・・・もう、開き直りましたわ。」

皆は苦笑した。

「ガハハとキャハハの二人がなんや、やらかすようです。」

どよめく。何をやらかすつもりなのだろうか。ケット・シーの話は続く。 

どうやら神羅は現在二つの課題を抱えているらしい。

ひとつはメテオの崩壊、そして二つ目は北の大空洞のバリアを取り除きセフィロスを倒す事。

メテオの崩壊という課題は、もう既にクリアも同然らしい。

神羅は各地にあるヒュージマテリアを回収していて、ヒュージマテリアは特別なマテリアだ。

ヒュージマテリアから引き出されるエネルギーは、通常マテリアの約330兆倍にもなるという。

そのヒュージマテリアを一同に集め、メテオにぶつけるという作戦を考えているそうだ。

ニブルヘイムのヒュージマテリアは既に回収されており、残るはコレルとコンドルフォートただ二つ。

しかもコレルには既に軍隊を向かわせていると来た。

さぁ、自分たちはどう出るべきなのだろうか?

バレットは吠えた。

「コレルだと〜!!これ以上コレルをどうしようってんだ!」

レッド13がバレットを見やり、そして俯いて口を開いた。

「ヒュージマテリア・・・。大きなマテリアのことでしょ?オイラ、聞いたことがあるんだ。

えっと、オイラ達の小さなマテリアを大きなマテリアに近づけると何かが起こるはずだよ、きっと。

だからオイラ達がマテリアの力を借りて戦いを続けるのなら・・・・」

「ヒュージマテリアを神羅に渡すわけにはいかねえ!

それによ、クラウドが帰ってきたらヒュージマテリア見せてびっくりさせてやろうぜ。」

レッド13の言葉を遮ってバレットが言った。

そこにケット・シーが茶々を入れる。

「なぁ〜んや、バレットさん。なんやかんや、言うてもクラウドさんが帰って来はったらええなと思ってはるんや。」

バレットはふん、と鼻を鳴らす。

「いいじゃねえか、そんなことはよ。それより、なんだ・・・。

団体行動にはリーダーが必要だ。リーダーはオレだ!

・・・そう言いてえところだがオレはリーダーには向いてねえ。

最近気づいたんだけどよ・・・」

バレットの視線が一点を見つめた。自然と全員の視線がバレットの視線の先へと向く。

「ぇ・・・・・・え!?わ、私!?」

は自分を指差して驚く。全員の視線は、間違いなくへと向いていた。

全員は納得するように頷いている。はぶんぶんと首を横に振った。

、オレはお前がリーダーに相応しいと思うぜ。」

「そうだね、オイラもそう思うよ。」

「全く持って異議ナシだな。ピッタリじゃねぇか。」

「ってか、さんしかおりませんなぁ。」

は俯く。

「そんな・・・無理だよ、だって・・・。」

「オレはクラウドがこの場にいたとしたら、間違いなくお前をリーダーに決めると思うぜ。」

はどうしようか悩んだ。

自分がリーダーなんかに向いているとは到底思えない。

リーダーの補助なら出来るだろうが、リーダーとなると話は別だ。

は首を横に振る。

「私には・・・出来ないよ。私は皆をまとめることなんて・・・仕切ることなんて、出来ないよ・・・。

シドの方がいいよ。この大切な船を仕切ってるのはシドでしょう?シドの方が適役だと思うし」

「オレ様はそんな面倒な事はパスだ。」

の言葉を遮ってシドが言った。

沈黙が降り、全員の視線はに注がれたままとなっている。

は戸惑っていた。

「・・・。クラウドを助けて欲しいとティファに言われたのはお前だろう?」

は顔を上げる。

今までずっと黙っていたヴィンセントが、静かに口を開いたのだった。

「マテリアとか魔晄とか・・・そういった知識が一番あるのは、この中でだと思う。

となると、をリーダーにすることでクラウドを助ける一番の近道になるのではないか?」

クラウドを助ける一番の近道。

その言葉が、の胸にズンと響いた。

そうだ、何を迷っていたのだろう。今までクラウドはリーダーだった。

そのクラウドがいない今、クラウドを助けるという責任はが負っているも同然なのだ。

はクラウドを助けたい。必ず、“クラウド”に会いたい。

は顔を上げた。その顔に、もう迷いはなかった。

「・・・私がリーダーに適任だとはどうしても思えない。でも・・・ヴィンセントが言ったように、

私がリーダーになることでクラウドを助ける一番の近道を歩めるのなら・・・。」

皆黙っている。の最後の言葉を聞き逃さぬように。




「・・・リーダーの役目、引き受けます。」




皆、その言葉を聞いて微笑んだ。

に逆らおうとか、の指示を聞かないなんてヤツはこの中にいやしない。

皆クラウドを助けたいという気持ちは同じなのだから。

は凛とした声で言った。

「メンバーは私とヴィンセント、それからユフィ。」

ヴィンセントとユフィは頷く。まぁ、ユフィは気持ちが悪くてそれどころではなさそうだったが。

「シド、今すぐコレルに向かって。神羅の手にヒュージマテリアが渡るのを阻止します。」

「おうよ!!」









ハイウィンドの行く先は決まった。



コレルへ。





<続く>

=コメント=
最近長くしか書けないな〜(笑
ちょっと皆さんには予想外の展開だったかもですね。
ティファの代わりにさんがクラウドの傍に残ると思ったでしょ?(笑
もちろんそれも考えたんですけどね。
さんがクラウドの傍に残ると、話が続かないんですよ(笑
でもご安心を。
ピーを戻すシーンはさんがピーますから(わからんて)