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あの時より一歩強くなれた?第二十五章







私達はひたすら先へと進んでいた。

クレーターの奥、そのまた奥へ。

セフィロスの背中を追って。

途中でジェノバにも遭遇した。

戦って、すごく気分が悪くなって。

ジェノバは倒せたけど、ヴィンセントが大怪我をしてしまって。

ジェノバが黒マテリアを落として・・・。



「クラウド!!!」

がヴィンセントにケアルガをかけていると、ティファや他の皆が駆けて来た。

ティファは私達の元に来て、ヴィンセントの様子を確かめる。

「ヴィンセント・・・これじゃ、動かす事は出来ないわね・・・。」

は無言で頷く。

「クラウド、ここから先はヴィンセントの代わりに私が行くわ。いいでしょ?」

クラウドは少々考えた。

この先にはセフィロスがいるかもしれない。いや、いるのだ。

ティファを連れて行っていいものか、じっくりと考える必要があったのだ。

けど、ティファの表情は真剣そのもので、クラウドは仕方なく頷いた。

「クラウド、黒マテリア、誰かに預けた方がいいんじゃない?」

が言うと、クラウドは先ほどジェノバが落とした黒マテリアをポケットから取り出した。

しばらくそれを見つめ、クラウドはヴィンセントに近寄る。

「ヴィンセント、任せてもいいか?」

「・・・ああ。」

ヴィンセントはクラウドから黒マテリアを受け取る。

クラウドがヴィンセントから離れようとした時、ヴィンセントがクラウドを手招きした。

クラウドは首を傾げながらもヴィンセントに近寄る。

ヴィンセントは囁くように言った。

「・・・に何かあったら、その時は・・・わかっているな?」

クラウドは一瞬背筋がぞくりとした。

ヴィンセントの目。

緋色の目が鋭い眼差しでクラウドを見据えていた。

「・・・ああ。」

クラウドは頷く。

ヴィンセントもそれを確認して頷いた。

「それじゃ、ティファ、。行くぞ。」

クラウドはをティファにそれぞれ視線を送り、言った。

ティファとは無言で頷き、三人はセフィロスの元へと歩き出した。






三人はハッとして立ち止まった。

自分達の周囲が真っ白で、何にも見えないのだ。

とティファは瞬時に軽い混乱に陥った。

「何・・・コレ・・・?何が起こったの・・・?」

「落ち着け、。セフィロスが近くにいるんだ。何が起こっても不思議じゃない。」

はクラウドの声を聞き、少々安心した。

もしかしたら、異次元空間に自分一人が投げ出されてしまったのかと感じてしまったから。

クラウドの声を信じて、はひとつ深呼吸をした。








『                 』









光が目の前に広がり、気が付けば三人はニブルヘイムにいた。

・・・いや、ここが本当のニブルヘイムなのかはわからなかった。

「ニブルヘイム・・・。」

が呟く。

「でも、どうしてニブルヘイム?絶対に変よ、これ!」

クラウドは冷静なまま言った。

「これはセフィロスが創り出した幻覚さ。俺たちを混乱させようとしているんだ。

大丈夫。幻覚だとわかっていれば何も恐くない。さあ、このまま通り抜けよう。」

クラウドは大して気にしている様子も見せずにサラリと言った。

ティファは戸惑いながらも頷いたが、は両耳を塞いで、何かに脅えているような様子だった。

「あっ!」

ティファが声を上げた。三人はニブルヘイムの入り口に立ち尽くしたまま、『光景』を見ていた。

5年前のあの日。

本当ならば、セフィロスとクラウド、それから神羅兵に扮したがニブルヘイムの入り口に来るはずの光景。

【さあ、行こうか】

ぼやけたようなセフィロスの声が響く。セフィロスの後に続くソルジャーは、金髪の青年ではなかった。

黒髪の青年。は、その青年に見覚えがあった。

「・・・ザックス・・・。」

が呟いた。それはクラウドや、ティファの耳には入らなかったけれど。

「ねぇ・・・クラウドがいないよ・・・?」

ティファが呟く。は何かを振り払うように頭を振り、かすかな声で呟いた。

「やめて・・・セフィロス・・・。」

「くだらない・・・。」

クラウドは腕組みをしてその光景を睨みつける。

「私・・・幻覚なんて嫌・・・早く元の世界に帰ろうよ・・・!」

「クラウド・・・これは幻覚よ・・・気にしちゃダメよ・・・。」

すると、再び真っ白になった。

白の世界が広がり、再び混乱してしまう。






「今度は・・・なんだ?」

「もうやめてっ!!」

の悲痛な叫びは掻き消され、次に映し出された光景は火の海に包まれているニブルヘイムだった。

クラウドものティファも。全員が言葉を失った。

「・・・これは5年前、現実にあった風景だ。けれども・・・。

きっと、あの神羅屋敷から出てくるのは俺じゃない。またくだらない幻覚を見せようって気なんだ。」

神羅屋敷からは黒髪の青年が出て来た。クラウドは鼻で笑う。

「ほら・・・言った通りだろ?」

【おっ、あんたか!あんたは正気なんだろうな?】

ザンガンが黒髪の青年に話しかける。

【それならこっちに来て手伝ってくれ!】

は震える声で呟いた。

「こんなの・・・見たくないっ・・・クラウド・・・見ないで・・・。」

光景の中のザンガンが火の海の中を駆け回る。

【俺はこの家を見てくる。あんたはそっちの家を!】

「・・・・どうしたんだ、?さっきも言っただろ?幻だとわかっていれば 何も恐くない。」

その通りだった。けれど、には幻だと思えない理由があった。

ザックスのことを、思い出してしまったから。

5年前にニブルヘイムを訪れた時に、クラウドはいなかったことを思い出してしまったから。

そして、5年前のあの日に・・・クラウドがどこにいたのか、思い出せなかったから。

クラウドはの震えている様子を見て、軽く唇を噛んだ。そして叫んだ。

「セフィロス!聞こえてるんだろ!お前が言いたいことはわかった!

5年前・・・ニブルヘイム。そこに俺はいなかった。お前が言いたいのはそういうことなんだろ?」

クラウドが言うと、セフィロスがフッと現れた。

「理解してもらえたようだな。」

クラウドは鼻で笑った。

「お前が言いたいことはな。俺を混乱させたいんだろう?

しかし・・・こんなものを見せられても俺は何とも思わない。

何故なら俺は覚えている。この炎の熱さを・・・身体の・・・心の痛みを!」

セフィロスはクククと喉で笑う。

「さて、それはどうかな?」

はハッと顔を上げる。

「お前は人形・・・心など持たない・・・痛みなど感じない・・・。

そんなお前の記憶にどれほどの意味がある?

私が見せた世界が真実の過去。幻想を創り出したのは・・・お前だ。」

「クラウド・・・・。」

セフィロスは少々間を置く。まるでクラウドに考える時間を与えているかのように。

「・・・理解出来たかな?」

「理解する気なんかない。が、ひとつ聞きたい。何故・・・こんなことをする?」

セフィロスはニヤリと笑う。この嫌な笑みは、顔に貼り付けたように変わることはない。

「クックック・・・。お前には本来の自分を取り戻してもらいたいのだ。

そしていつかそうしたように黒マテリアを私に・・・・。

それにしても失敗作だと思われたお前が一番役に立つとは・・・。

宝条が知ったら悔しがるだろうな。」

その意味が、クラウド達には理解出来なかった。

「宝条!?俺と何の関係がある!」

セフィロスはゆったりと語り出す。

「お前は・・・そう、5年前だ。

ニブルヘイムが炎に包まれたその後に宝条の手で創り出されたのだ。

ジェノバ細胞の驚くべき生命力、能力と魔晄の力が創り出された人形。

セフィロス・コピー・インコンプリート。ナンバーリング無し。それがお前の真実。」

そのセフィロスの声を遮るようにが叫んだ。

もうその声は金切り声に近くなっている。

「クラウド!!相手しちゃダメ!!耳を塞ぐの!目を閉じるの!!」

「どうしたんだ、?俺は全然気にしてない。

・・・・・と言うか、途中から聞いてなかった。」

クラウドはわざと冗談めかして答える。だがは震えていた。

「宝条に創り出された?そんなのウソに決まってる・・・。

だって、私達にはたくさんの思い出があるじゃない・・・。

子供の頃・・・苛められていた私を慰めてくれたクラウド・・・。」

セフィロスは笑った。

「クックック・・・よ。その言葉とは裏腹にお前は何を脅えている?

ふむ・・・・・お前の心をここに映し出して見ようか?」

は耳を塞いだまましゃがみ込んだ。クラウドはその様子を見て沈黙する。

「クックック・・・都合が悪いそうだ。」

この時初めて、クラウドの瞳が不安に揺れた。

「・・・?セフィロスが正しいのか?」

はただ震えるだけで、何も答えはしなかった。

「何をそんなに恐れているんだ?俺のことなら大丈夫。

・・・俺はどんなに混乱していてもセフィロスの言葉なんて信じない。

確かに俺は自分自身がわからなくなることがある。

記憶だってあやふやな部分がたくさんあるんだ・・・。」

そこでクラウドは一回言葉を切った。そして、息を吸って話し出す。

「でも、

は言ってくれただろ?『やっぱりクラウドだ、久し振り!』・・・って。

のその言葉がいつでも俺を支えてくれる。

俺はの幼馴染なんだ。俺はニブルヘイムのクラウドなんだ・・・。

どんなに自分がわからなくなってもそれだけは真実。

・・・だから・・・・・そんなに脅えないでくれ。

誰のどんな言葉よりものその態度に、俺は・・・・・。」

は顔を上げて首を振った。

「ち、違うの、クラウド・・・。」

「何が違うんだ?俺は・・・の幼馴染のクラウドじゃないのか?」

「そういう意味じゃない・・・でも、上手く言葉に出来ない・・・。

クラウド、ほんの少しでいい。時間を・・・時間を頂戴・・・。」

セフィロスはの肩に触れてクラウドを見やった。

「クラウド・・・を責めるな。私が説明してやろう。」

セフィロスはクラウドの前に立ってクラウドを見下ろした。

「他人の記憶に合わせて自分の姿、声、言動を変化させるのはジェノバの能力だ。

お前の中のジェノバがの記憶に合わせてお前を創り出した。

の記憶に登場する少年達・・・・。

その中にはクラウドという名の少年がいたのかもしれないな。」

「クラウド・・・・・今は何も考えないで。お願い・・・・。」

「クックック・・・考えろ、クラウド。

・・・クラウド?クックック・・・これは失礼。お前には名前などなかったな。」

「黙れ・・・セフィロス・・・。」

クラウドは拳を握り締める。セフィロスはなおも続けた。

「まだわからないのか? ならば・・・村からニブル山へ出発するとき写真を撮ったのを覚えているか?

・・・、覚えているな?・・・クラウドは・・・知るはずもないか。

・・・さて・・・写真はどうしたかな?」

セフィロスは自分の懐を探った。そして一枚の写真を取り出した。

「・・・これだな。・・・見るか?なかなか良く撮れている。」

セフィロスはクラウドに写真を差し出した。

「クラウド・・・だめ・・・。」

クラウドはを見据えて、言った。

その言葉はまるで自分に言い聞かせているかのような言葉だった。

「俺は・・・写っているはずだ。

もし、写っていなくても心配ない。ここはセフィロスが創り出した幻想の世界。」

クラウドはセフィロスから写真を受け取り、それを見つめた。

写っていたのは右からセフィロス、、ティファ、ザックスだった。

クラウドは鼻で笑う。

「・・・やっぱりな。この写真はニセものなんだ。真実は俺の記憶の中にある。

・・・5年前、俺はニブルヘイムに帰った。魔晄炉調査が任務だった。16歳だった。

村は全然変わっていなかった。俺は何をした?・・・・そうだ・・・。

母さんに会った。村の人達に会った。

そう、と一緒にティファの部屋に入ったんだ。そこで俺は・・・。

ピアノを弾いた・・・!タンスを調べた!

一泊してからニブル山の魔晄炉へ行った。俺は張り切っていた。

何故なら、その任務は ソルジャー・クラス1STになって初めての仕事で・・・。

・・・ソルジャー・クラス1ST?・・・ソルジャー?俺はいつからソルジャーになったんだ?

ソルジャーってどうやってなるんだ?」

クラウドは頭を抱えてかがんでしまった。それに駆け寄ろうとするをセフィロスが手で制する。

「何故・・・思い出せない?俺は・・・俺は・・・。」

クラウドは頭を抱えたまま苦しんでいる。

は、そんな痛々しいクラウドを見ていられなかった。

セフィロスはふっと笑い、姿を消した。

と、クラウドが顔を上げる。その顔はもう諦め切った顔だった。

「そうか・・・・・・悩むことはなかったな。何故なら俺は・・・。」

「・・・クラウド・・・?」

諦め切ったクラウドの顔。イタズラが母親にバレてしまった子供の顔。

は、その時にクラウドがどこか遠くへ行ってしまったような錯覚にとらわれた。

目の前に、自分の目の前にクラウドはいるというのに。

「行こう、、ティファ・・・。俺は・・・大丈夫だ・・・。」

全然大丈夫なんかじゃない。は言おうとして、口をつぐんだ。

もう、手遅れのような気がしたから。

は、力なく頷くしか出来なかった。 






その頃、ルーファウスを始め神羅の者達はライフストリームの竜巻の中心部にいた。

「すっご〜い!これ、ぜ〜んぶマテリアだわ!」

スカーレットが周囲を見回して歓喜の声を上げた。ルーファウスが鼻で笑う。

「外は豊富な魔晄。そして中心部はマテリアの宝庫。これぞまさに約束の地だな。」

「約束の地など存在しない。伝説・・・言い伝え・・・馬鹿馬鹿しい。」

宝条が水を差すように言う。だが、ルーファウスは肩を竦めただけだった。

「想像していた通りのものがここにある。それで良いのではないか?その硬さが二流科学者の限界だな。」

宝条は大して腹を立てた様子も見せずにルーファウスに背中を向けた。

と、その時。急に地響きが鳴り始めた。

「どうした!?」

「壁の中よ! 何か入ってる!動いてる!」

スカーレットが壁の中を指差して叫んだ。

「ウェポン・・・・。・・・本当にいたのか。信じてはなかった。」

宝条が感激を受けたように呟いた。ルーファウスが聞き返す。

「なんだと言うのだ?」

「・・・ウェポン。星が生み出すモンスター。星の危機に現れて全てを無にする・・・。

ガスト博士のレポートにはそう記されていたな。」

宝条はかつて神羅カンパニーで働いていた博士の名前を出した。

「そんなレポートは見たことがない。・・・どこにある?」

ルーファウスのその問いに宝条は自分の頭を指差し、

「ここだ、ここ。」

「君は隠し事が多いな。」

ルーファウスは苦笑した。 




一方、クラウド達を待って待機しているヴィンセント達は沈黙していた。

だが、バレットが口を開く。

「クラウド達、大丈夫なのかよぉ?」

「クラウドに任せておけば大丈夫だろう。クラウドが駄目でもやティファがいる。」

「・・・そうだな、そうだよな。しかし、何だよな。このちっぽけなマテリアが星を滅ぼすなんてよ・・・。」

バレットはヴィンセントの持っている黒マテリアを指差して言った。

ヴィンセントは黒マテリアに視線を落とし、沈黙した。

と、ヴィンセントはハッとして辺りを見回す。自分の回りは異空間に囲まれていて、仲間の姿は見えない。

ヴィンセントはセフィロスの仕業だと勘付いた。

「・・・セフィロス・・・。」

すぐに異空間からは解放された。先ほど自分が立っていた場所に戻っている。

だが、仲間達の姿は見えない。その場には、ヴィンセントただ一人しかいなかった。

「よかった!!ヴィンセント、ここにいたのね!」

ヴィンセントは振り返る。そこには息を切らせたが立っていた。

?」

「ね、皆が待ってるの!クラウドが大変なの!お願い、来て!私達を助けて!あっちなの!」

ヴィンセントはを見つめた。

はかなり焦って説明している。もしも本当なら、皆がかなり危険な状態だと言う事が見て取れる。

だが。どこか違和感がある。

「ヴィンセント!」

ヴィンセントは駆け出したい衝動に駆られたが、冷静に考えてみる。

この違和感。どこか機械染みたの姿。

ヴィンセントはの目を見つめた。そして気付く。

「・・・緑・・・?」

「え?」

淡い緑色に輝く、の目。

ヴィンセントは瞬時に目を見開く。

ではない。何故なら、の瞳は薄い紫色なのだから。

「セフィロスッ・・・」

ヴィンセントは腰の銃に手を伸ばした。だが、セフィロスの方が速かった。

セフィロスはの姿のまま、キツいパンチをヴィンセントの鳩尾に打ち込んだ。

「ぐっ・・・は・・・・」

「うふふ。私の言う事を聞かないからこんなことになるのよ?ヴィンセント?」

ヴィンセントの体が前のめりに倒れる。ガクンと膝をつき、地面へと倒れこむ。ヴィンセントは気を失った。

ヴィンセントの服のポケットから黒マテリアが転がり出る。

セフィロスはその黒マテリアを拾い、の姿を解いた。

倒れたヴィンセントを見下ろし、笑う。

「黒マテリア・・・クク・・・いいシナリオだと思わないか?クラウド。」

セフィロスはそう言い、姿を消した。

それと同時に、消えていた仲間が現れた。全員倒れていたが、すぐに目を覚まして起き上がった。

最初に目に入ったのはヴィンセントの倒れた姿。ユフィが目を見開く。

「ヴィンセントッ!?」

他の仲間達も驚き、それぞれの反応を示す。

ユフィはヴィンセントに駆け寄り、ヴィンセントの体を揺さぶった。

「ヴィンセント!ヴィンセントッ!!どうしたんだよ!何があったの!?」

ヴィンセントはかすかに目を開け、一言呟いた。 





―――――すまない、黒マテリアをセフィロスに奪われた・・・と・・・。





<続く>


=コメント=
ぶわぁぁぁ!!(笑)長ッ!!!
クラウド二重人格が発覚しなかったよ(汗
でも次回には絶対に発覚しますね。
あっ!ちなみに、この小説ではヴィンセントが黒マテリアを預かってますが、
ゲームではヴィンセントに預ける事は出来ません(笑
バレットかレッド13です(笑
私はバレット嫌いなものでレッド13に預けてますけどね。
小説でもレッド13に預けるつもりでいたのですが〜・・・。
やっぱり話的にヴィンセントの方がいいと思いまして。
ゲームでは預けられませんよ!?あしからず(笑
ご存知だとは思いますが(笑