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あの時より一歩強くなれた?第二十三章






エアリスの姿を探してしまう。

もういないのに、あの笑顔はもう見れないのに。

つい、視線がエアリスの姿を探して彷徨ってしまう。




夜が怖い。

目を瞑ると、瞼の裏にあの笑顔が浮かんでくるから。

セフィロスに刺されて、それでもなお笑っていた、あの悲痛な笑顔が浮かんでくるから。

赤い鮮血が、現実以上に鮮やかに浮かんでくるから。

?」




はっと目を開ける。

クラウドの顔が目の前にあって、心配そうに覗き込んでいた。

「・・・クラウド?」

「大丈夫か?」

どうやらうなされていたらしい。

汗をたくさんかいて、息も荒かった。

「・・・ごめん。」

「どうした?」

沈黙が降りる。思い出すだけで鼻がツンとして、涙が出そうになる。

「・・・消えないの・・・。エアリスの笑顔が、消えないの・・・。」

どんなに忘れようとしても、浮かんできてしまう心の傷痕。忘れようとすればするほど鮮やかに浮かんでくる想い。

クラウドはの隣に座った。は何も言わずに、かすかに震えていた。

「・・・散歩でも、してきたらどうだ?」

「・・・うん・・・。」

散歩、とクラウドは称したが、つまりはを一人にしてやりたいのだ。

は重たい腰を上げ、ゆっくりと民家を出て行った。





宛てもなくぶらぶらと歩く。

頭がすごく重い。昨日大泣きした所為だろうか?

クラウドはエアリスのことで頭がいっぱいで、はどうしたらいいのかわからなかった。

クラウドはエアリスを沈めた泉で、ずっと佇んでいたのだ。

泣き叫びたかった。けれど、彼がそんな調子なのに泣ける訳がなかった。

彼の背中が小刻みに震えるたび、何故だかわからないがとても胸が張り裂けそうになった。

モヤモヤとした変な気持ち。

泣き叫べたら、少しは楽になるだろう。だが、ここで泣く訳にはいかなかった。


そんなとき。


の手を引いて泉から離れてくれた人。

大きい手で頭を撫でて、「泣きたいのに無理をすることはない」と声をかけてくれた人。

優しく、胸を貸してくれた人物。

情けない。そうは思いつつも、大泣きしてしまった。

「後で・・・ヴィンセントにお礼を言わなきゃ・・・。」

は自分の目に触れ、自嘲気味に笑った。



と、違和感を感じて顔を上げる。

耳鳴りのような音。耳の奥で鳴っている、耳鳴りのような音。

「・・・エアリス?」

何故彼女の名を口にしたのかはわからない。けれど、呼ばれているような感覚だった。

は小走りに駆け出した。

エアリスを沈めた、あの泉へ。










胸騒ぎがする。

は泉のほとりに立ち、エアリスの姿を探した。

見つかるはずがないのに。

昨日、エアリスは自分の目の前で死んだのに。

けれど、探さずにはいられなかった。もしかしたら生きているかもしれない。

そんな想いが、の心の中を駆け巡った。

「エアリス・・・・。」

これで何度目かの名前を呼ぶ。

。何してるの?」

後ろから声がした。

は振り返る。

そこに、エアリスが笑いながら立っていた。

「エアリス・・・?」

「そうだよ、どうしたの?。」

エアリスはあの笑顔を浮かべて、に語りかけている。

まさか。そんな。

は体が震えてくるのを抑えられなかった。

にっこりと笑っているエアリス。けれど、違う。

何かが違う。

自分の目の前に立っているエアリスは、まるで人形のようだった。

無邪気な笑みを浮かべ、人形のように首を傾げた、操り人形だった。

「・・・違う。」

その一言を言った瞬間、エアリスの顔から笑みが消えた。

「・・・あなたは、エアリスじゃない。」

「・・・・そう。は私を裏切るんだ・・・。」

エアリスは一瞬暗い顔をして、その後に不敵に笑った。

そして、急にの首を掴んだ。

「うっ・・・あっ!」

ガッ、という音がして、の首が絞め付けられる。

エアリスの腕力では、とてもこのように絞め付けることは出来ないはずだ。

「フフフフフフ、、何してんの?」

エアリスは笑いながらの首を絞める。はエアリスの手を掴み、叫んだ。

「・・・・っ・・セフィロス!!!!」

叫んだ瞬間、エアリスの姿がセフィロスの姿に変わっていた。

セフィロスはの首を絞めたままを押し倒す。

「ククク・・・やはりにはわかってしまったか。」

「何をっ・・・・。」

セフィロスは笑ってを見下ろした。

。嬉しいとは思わないか?この場でお前が死ねば、お前はこの星の精神エネルギーとなる。

そして精神エネルギーは常に私とともにある。私の一部になれるのだぞ。嬉しいとは思わないか?」

セフィロスはそう言い、更に手に力を込める。

「お前は人並み外れた精神エネルギーを持っている。お前は私の一部になるために死んで行けばいい。

だが死は生。お前は私とともに生き続ける。」



―――――そう、永遠に・・・



セフィロスの声がやけに遠くで聞こえる気がする。

目の前がぼやけている。

苦しくて、悔しくて、は唇を噛み締めた。

自然と涙が出て来てしまう。

私はここで死んでしまうのだろうか。

そして、セフィロスが言うように精神エネルギーとなり・・・。



嫌だ。



まだ死にたくなんかない。

仲間達の笑顔が浮かんでくる。

ああ、これが走馬灯というやつなのだろうか。

幼い頃、ニブルヘイムに越してきたばかりの頃。

村の男の子達に苛められ、ニブル山に迷い込んでしまった時。

寂しくて怖くて心細くて、動く事が出来なくて泣いていた時。

物音がして、一人の男の子が来てくれた。

金色のツンツン頭。目付きは悪かったけれど、どこか寂しそうな瞳。

――――・・・なっさけねぇ。迷子かよ。

その一言で、泣き出してしまった自分。

男の子の、ギョッとして呆気に取られていたあの表情。

ほんの少し考えて、男の子は自分をおぶってくれた。

そして、ニブルヘイムまで送り届けてくれた。

・・・それが、とクラウドの出会い。

最初は怖い子だなって思っていたけど、本当は照れ屋なだけで全然そんなことなかった。

本当は、とっても心の優しい、ごくごく普通の男の子だった。








「セフィ・・・ロスッ・・・・。」

「ほう?まだしゃべれるのか。」

もう駄目だと思った。

意識がだんだんと遠のいて行く。

は最期に彼の名を呼んだ。




―――――クラウド・・・・。





ッ!!!」

声。

は手放そうとした意識を取り戻す。

手に力を入れ、力を振り絞って声に応答した。

「・・・っ、クラウド!!!!」

ふっとセフィロスの手が離れ、急に肺に空気が流れ込んだ所為か、は激しく咳き込んだ。

クラウドがこちらに駆け寄って来るのが見える。クラウドはの体を支え、セフィロスを睨み付けた。

「セフィロスッ・・・貴様ッ・・・!!」

セフィロスはクククと笑いを漏らす。

「クラウドよ。は死んだ方がよいのだ。にとって、幸せなのだ。」

「ふざけるな!!お前・・・エアリスを殺し、立て続けにまでもっ・・・。」

「クックック・・・。よ。お前は私のために、死ぬために生まれて来たのだ。」

、耳を貸すな!」

クラウドとセフィロスの声が交互に聞こえてくる。だが、意識が朦朧としていて何を話しているのかまではわからなかった。

が手に入らなかったのは惜しかったが・・・。まぁいい。寄り道が長くなってしまったようだ。

私は北の大地を目指す。・・・追い駆けるつもりならば、来るがいい。」

セフィロスはそう言うと、ニヤリと笑って空へと舞い上がって消えて行った。

クラウドはしばらくセフィロスが消えた空を睨み付けていた。

「・・・・・・。」

ふと、自分の腕の中のに視線を落とす。

は目を閉じていて、少々息が荒く肩で呼吸をしていた。

「・・・・・・・。」

クラウドはを抱き締める。は少し目を開けて、軽く微笑んだ。

「・・・大丈夫・・・。もう、平気だか・・・ら・・・。」

「平気じゃない・・・。もう少しで、まで死んでしまうところだった・・・。

俺が・・・セフィロスに対する警戒心を薄めてしまったから・・・。だから・・・。」

クラウドは更に強くを抱き締める。

かすかに震えているようだ。は微笑んだ。

私は何を考えていたのだろう。

一番辛かったのはクラウドだって気付いてあげられずに、エアリスに醜い嫉妬の感情を抱いてしまった。

こんなくだらないことを思っていた自分は、なんて酷い女なのだろうか。

クラウドは、こんなに自分のことを心配してくれていたのに。

言おうと思った。

クラウドに、エアリスが死んだときの自分の気持ちを包み隠さず話そうと思った。

「・・・クラウド・・・。」

声をかけてみる。返事はない。

それでも構わなかった。これは懺悔のようなものだから。

「・・・あのね、私・・・エアリスが死んだとき、嬉しかった・・・。」

「・・・・!?」

クラウドは少々驚いてから体を離す。

クラウドの表情は本当に驚いていて、信じられないという顔だった。

「・・・エアリスが死んで、その瞬間はとっても哀しかった。・・・というより、びっくりしたかな・・・。

・・・本当に哀しかった。それは事実。でもね・・・その後、不思議なくらいに・・・嬉しくなった・・・。」

クラウドは信じられないという表情を浮かべたまま、を見つめていた。

「・・・何でだか・・・自分でもわからなかった。エアリスが死んだのに、どうして嬉しいなんて思ったんだろうって・・・。

でもね・・・、今、その理由がわかったんだ・・・。」

はそこで一旦息をつき、戸惑うように口を開いた。

「・・・私、エアリスに嫉妬してたの。エアリス・・・ほら、とても明るい人だったでしょ?

・・・だから、私・・・ほんの少し、悔しかったの・・・。エアリスは何もしなくても・・・人から、好かれていたから。

皆に好かれていたから・・・だから、いつも悔しかったの・・・。

エアリスがいなくなって、悔しい思いなんてしなくて済むと思って・・・嬉しかった・・・。

でも結局は違うんだよね。皆、今でも、そしてこれからも・・・エアリスのことが、大好きだから・・・。」

そんなことない。

言おうとして、クラウドは口をつぐんだ。

「・・・それでも、は哀しかったんだろ?」

は頷く。

「・・・だったら、それで充分だと思う。他の気持ち、全部投げ出して・・・哀しいって思えたなら、

それだけでは・・・エアリスと一緒にいれてよかったって思えた証拠だと思う。」

はクスリと笑いを漏らす。クラウドらしい言い方だった。

「・・・ありがとう・・・。」

クラウドに自分の気持ちを話してよかった。

少し、誰かに許してもらえた気がして、安心した。

はセフィロスに絞められて青い痣が出来た首に触れた。

少々痛みはあるが、二、三日で治るだろう。

「首・・・大丈夫か?」

クラウドはの手の上から首に触れた。

青紫色の、痛々しい痣。

は笑って「大丈夫」と答える。

「ごめんね、ありがとう。もう平気。」

は地面に手をついて起き上がる。クラウドはそんなに手を貸し、立ち上がらせた。

「ヴィンセント、心配してるかも。行こう!」

は、いつもの元気さを取り戻していた。





クラウドとのやり取りを岩陰から覗いている人物が、そこにいた。

―――セフィロス・・・。を殺そうとした行為は、万死に値する・・・。

赤いマントを翻し、彼は・・・ヴィンセントは、その場を立ち去った。

拳を握り締め、クラウドに対するほんの少しの怒りを噛み締めながら。






<続く>


=コメント=
オリジナル色・・・(笑
濃い〜〜〜〜〜〜〜〜!!(爆笑
しかもいつもよりも短め(汗
こんなシーン原作にあったら大笑いだね!
あははは。
もちろんありませんv
ただ単にクラウドやセフィロスと絡ませたかっただけ(笑
ヴィンセント出番少ないよ!!
最後とさんの回想シーンだけ(笑
やっと次回から北へ向かう事になりますだ。
まぁ、ダンジョン内の出来事はカットする可能性がありますけど(笑