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あの時より一歩強くなれた?第二十一章






夜のゴールドソーサーで過ごした二人は、何も言わずに歩いていた。

繋いだ手だけが二人のぬくもりを伝え合っている。

沈黙は続いていたが、不思議と嫌な沈黙じゃなかった。

心が温まってゆく、そんな沈黙だった。

だが、その沈黙が不意に破られる事となる。

が立ち止まった。手を繋いでいるため、自然とクラウドも立ち止まる。

「・・・・あれ?ねぇ、あれ、ケット・シーじゃない?なんか様子が変みたい・・・」

クラウドはの視線の先を見る。

そこには、何やらキョロキョロと辺りを見回しながら歩いて行くケット・シーの姿が。

そして何より、ケット・シーが持っているものを見て驚いた。

「・・・!! あいつが持ってるのはキーストーンじゃないのか? おい!ケット・シー!」

ケット・シーはビクッと竦みあがると、そのままクラウドとの方を見る事なく

逃げ出した。クラウドとは慌てて追い駆ける。



ゴールドソーサーを走り回り、チョコボスクウェアに辿り着いた。

だが、辿り着いた時には既にキーストーンは神羅の手に回っていたのだ。

「ほら!これや!キーストーンや!」

ケット・シーが叫ぶ。目の前には神羅のヘリコプターが。

そしてヘリコプターにはツォンが乗っている。

ケット・シーは迷う事なくツォンにキーストーンを手渡した。

「ツォン!!!」

空気を切り裂くようなの声。だがツォンはとクラウドの姿を見て

かすかに笑っただけだった。

ヘリコプターが遠ざかって行く。クラウドとはケット・シーに駆け寄った。

「おい!」

クラウドが怒鳴る。ケット・シーは慌てて振り向き、首をぶるぶると振った。

「ちょちょ、待って〜や、逃げも隠れもしませんから。

確かにボクは、スパイしてました。神羅の回しモンです。」

「ふざけないで!」

も怒鳴ったが、ケット・シーは肩をすくめるだけだ。

「しゃあないんです。済んでしもたことはどないしようもあらへん。

なぁ〜んもなかったことにしませんか?」

その言葉にクラウドは吠えた。

「図々しいぞ、ケット・シー!スパイだとわかってて一緒にいられる訳ないだろ!」

それでもケット・シーは脅えたような様子も見せない。

「ほな、どないするんですか?ボクを壊すんですか?そんなんしても、無駄ですよ。

この身体、もともとオモチャやから。本体はミッドガルの神羅本社におるんですわ。

そっから、このネコのオモチャ操っとる訳なんです。」

「貴方が神羅の人間だって事はわかってたわ。聞いた事のある声だったから。でも誰なの?」

「おっと、名前は教えられへん。」

「話にならないな。」

クラウドとはまだ怒りを納めてはいない。だがケット・シーも普通の表情のままだ。

「な?そうやろ?話なんてどうでもええからこのまま旅、続けませんか?」

「ふざけるな!!」

クラウドが言うと、少々ケット・シーは黙り込んだ。

「・・・確かにボクは、神羅の社員や。それでも、完全に皆さんの敵っちゅう訳でもないんですよ。

・・・ど〜も、気になるんや。皆さんのその、生き方っちゅうか?

誰か給料はろてくれる訳やないし、だぁれも褒めてくれへん。そやのに、命かけて旅しとる。

そんなん見とるとなぁ・・・自分の人生、考えてまうんや。

なんや、このまま終わってしもたらアカンのとちゃうかってな。」

「下手な演技でウソつくのはやめて。」

が呟くように言う。

「正体は明かさない。スパイはやめない。

そんなヤツと一緒に旅なんて出来ないからな。冗談はやめてくれ。」

クラウドとはケット・シーに背を向け、去ろうとした。

だがケット・シーは止めようとしない。その代わりに言った。

「・・・まぁそうやろなぁ。話し合いにもならんわな。

ま、こうなんのとちゃうかとおもて準備だけはしといたんですわ。

これ、聞いてもらいましょか。」

二人は立ち止まる。そして、何だか嫌な予感がして振り返った。

ケット・シーの手にはひとつの携帯電話が。

『父ちゃん!ティファ!』

電話から聞こえてくる幼い少女の声に、クラウドとは目を見開いた。

「マリンちゃん!?」

『あ!お姉ちゃんの声だ!!あのねっ・・・!』

そこまでマリンの声を聞かせると、ケット・シーは電話を切った。

「・・・という訳です、皆さんはボクの言う通りにするしかあらへんのですわ。」

クラウドは拳を握った。

「・・・最低だ。」

地の底から響くような低い声。いつものクラウドの声ではなかった。

「そりゃ、ボクかてこんな事やりたない。人質とか卑劣なやり方は・・・。

まぁ、こういう訳なんですわ。話し合いの余地はないですな。今まで通り、仲ようしてください。

明日は古代種の神殿でしたな?場所知ってますから、後でおしえますわ。

神羅の後になりますけど、まぁ、そんくらいは我慢してくださいな。」

ケット・シーはそこまで言うと、そのままホテルへと帰って行った。

残されたクラウドと。クラウドはため息をつく。

「・・・仕方ないな。言う通りにしよう・・・。」

「・・・・マリンちゃん・・・。」

二人の呟きは、ゴールドソーサーの音楽とともに流れて消された。

 



翌朝。

クラウドが目を覚ましてフロントに行くと、既に全員が集まっていた。

心成しかの表情は暗い。

「えらいゆっくりですな クラウドさん!せや、古代種の神殿の場所やけど、

ここからタイニー・ブロンコで海に出て東に進んで行けばありますわ。

ほな、そろそろ行きましょか。誰が行くんです?」

ケット・シーが言うと、エアリスが急に立ち上がった。

「私、行きたい!絶対、行くから!」

顔は笑顔だったが、言葉には何故か切羽詰ったような雰囲気が込められていた。

クラウドは最初は少々悩んでいたが、エアリスの真剣な顔を見て仕方なく頷いた。

「・・・それじゃ、俺とエアリス、それからで行こう。」

「了解、リーダー。」
 
は言った。そして出発の間際にヴィンセントに声をかけられた。

。」

は振り向く。

「何?どうしたの?ヴィンセント。」

「・・・気をつけろ。」

今回とヴィンセントは別行動を取る。

心配なのだろうか。はふっと微笑んだ。

「ありがとう、ヴィンセント。」




 





タイニー・ブロンコで海を渡る事数時間。

やっと陸が見えて来た。その陸には不思議な雰囲気をまとったひとつの建物が見える。

古代種の神殿。

ケット・シーが言っていた事は正しかったようだ。三人は上陸し、建物の入り口へと向かった。




建物の入り口まで来ると、エアリスが呟くように言い出した。

「ここ・・・古代種の神殿・・・・。

私、わかる・・・感じる・・・。漂う・・・古代種の意識・・・。

死んで、星とひとつになれるのに・・・。意志の力でとどまってる・・・・。

未来のため?・・・私達のため?」

エアリスは目を瞑って考えている。いや、会話をしているのかもしれない。

「なんて言ってる? わかるのか?」

「不安・・・でも、喜んでる?私、来たから?ごめんね・・・わからない。」

エアリスはクラウドとに向き直り、言った。

「早く、ねえ、中に入りたい!」

エアリスは一番先に神殿の中へと入って行った。

とクラウドもその後を追う。 





「あっ! ツォン!」

神殿の中に入ってすぐのところに祭壇がある。

エアリスはそこで立ち止まっていた。

祭壇には、血だらけの姿で座りこんでいるツォンの姿があったから。

は言葉を失っている。

「タークスのツォンか!?」

クラウドがツォンと距離を保ちながら言った。

ツォンは自嘲気味にかすかに笑い、クラウド達を見上げた。

「くっ・・・・やられたな・・・。セフィロスが捜しているのは・・・約束の地じゃない・・・。」

「セフィロス?中にいるのか!?」

ツォンは鼻で笑った。

「自分で・・・確かめるんだな・・・。くそっ・・・。

エアリスとを・・・手放したのがケチの・・・つき始め・・・だ・・・。

社長は・・・判断を、あや・・・まった・・・・・。」

「もう・・・、もういいよ、しゃべらないでっ・・・。」

は唇を噛み締めながらツォンに歩み寄り、ツォンの腕の怪我に手を当てて回復呪文を呟いた。

緑色の光とともに傷がかすかに消えたような気がした。けれど傷自体が深過ぎるのか、

大して治りはしなかった。

そんな様子を見ながらエアリスが口を開く。

「あなた達、勘違いしてる。約束の地、あなた達が考えてるのと違うもの。

それに、私・・・協力なんてしないから。どっちにしても、神羅には勝ち目はなかったのよ。」

その言葉を聞き、ツォンは口元に笑みを浮かべた。

「ハハ・・・厳しいな。エアリス・・・らしい・・・言葉だ・・・・。」

ツォンはよろよろと立ち上がる。は慌てて止めようとしたが、ツォンは

に笑いかけただけだった。傷を押さえてクラウドに近寄る。

「キーストーンを・・・祭壇に・・・・。」

キーストーンをクラウドに差し出すツォン。クラウドはキーストーンを受け取り、頷いた。

ふと見ると、エアリスが俯いている。クラウドは言った。

「・・・泣いてるのか?」

エアリスは首を横に振った。

「・・・ツォンはタークスで敵だけど子供のころから知ってる。

私、そういう人少ないから。世界中ほんの少ししかいない。私のこと、知ってる人・・・。」

が苦笑しながら言った。

「エアリス・・・、ツォンはまだ生きてるよ・・・・。」

見るとツォンも苦笑を浮かべている。

「でも・・・そうだよね、考えたら・・・エアリスとツォンは昔からの知り合いなんだもんね・・・。」

「何・・・?どうしたの・・・?」

「ううん。何でもない。ただ、ほら・・・・、ツォンは私にとって元上司でしょ?

タークス時代は一緒にコンビ組んで仕事してた仲だし。

だからなんか不思議な気がしちゃってね。昔はすごく憎んだもんだけどさ、

今こうしていると・・・・、そんな気が全然しないの。」

はふっと笑いながら言った。

「ツォン、ひとつだけ聞いてもいい?」

「・・・なんだ・・・。」

「・・・もし今、私が神羅に戻るって言ったら、ツォンはどう思う?」

クラウドとエアリスは驚いた。それと同時に不安になる。

は神羅に戻るつもりなのだろうか?そう考えてしまう。

ツォンはかすかに笑った。少々呆れているような顔だ。

「戻ってくれるのか?」

「まさか。」

ツォンは顔を上げ、を見つめた。

「ならばその質問は仮定の質問だろう・・・。答える・・・義務はない・・・。」

「義務とかそういうのじゃなくて。ツォンは純粋にどう思うか、ってこと。」

は少し拗ねたように頬を膨らませている。ツォンは苦笑した。

こういう愛らしさは、昔から全く変わらないのだな、と思いながら。

「・・・これ以上はない、という程に・・・嬉しい・・・かな・・・。社長もさぞかしお喜びになるだろう・・・。」

は寂しげに微笑み、「そっか」と呟いた。

「クラウド、エアリス、行こう。」

は立ち上がり、言った。クラウドもエアリスもほっとした表情になっている。

クラウドは祭壇に向き直り、手に持っているキーストーンを見つめた。

「ここにキーストーンを使えば・・・。」

クラウドが祭壇にキーストーンを置くと、一瞬意識が跳ね飛んだ。

そしてはっと気付くと、先ほどの祭壇とは別の場所にいた。

とても入り組んだ道なりの神殿。一言で表すと、そんなカンジだった。

「言葉が・・・思いが・・・たくさん、ここにある。」

エアリスが呟いた。

「不思議な場所ね。私達、歓迎されてるの?」

エアリスは「わからない」と言い、クラウドとに向き直った。

「・・・クラウド!!ここ、色々大変だと思うけど・・・。

投げ出さないで!頑張ろう、ね!」

クラウドとは改めて自分達が行くべき道を見た。

・・・・気が遠くなりそうだった。






色々な道を歩み、自分達が来た道がわからなくなったころ、

エアリスが何かを見つけた。帽子を被っていて、真っ白な髭をつけた、

人間・・・・いや、妖精のようだった。

エアリスはその妖精を無我夢中で追い駆けた。クラウドともその後を追う。

妖精はひとつの部屋へ入って行った。迷わずクラウド達も部屋の中へ入る。

「ねむねむ・・・。」

妖精はそう言った。なんと言っているのかクラウドとにはわからなかったが、

エアリスにはわかっているようだった。

「うん!やっと、会えたね。ごめんね。待っててくれたんだ。」

妖精とそう会話をすると、エアリスはクラウドとの方を向いて言った。

「彼らは古代種の精神体。ず〜っと長い間、星に帰らずこの神殿を守り続けてる。

長い年月から言葉を失わせた。ううん、最初から言葉はいらなかった。

神殿にとどまった者達の目的はひとつだったから。」

エアリスは古代種の精神体に語りかけた。

「ねえ、教えて!・・・だめ、後はわからない。脅えているの・・・?

セフィロスが神殿にいるから?それとも、他のこと?。」

もう精神体は何も語ろうとはしなかった。エアリスは軽く溜息をつき、

先に行こうと促した。








「げっ、な、なにコレ!!!」

の叫び声が響いた。

目の前の道には大岩が転がって来ている。いくつもいくつも、止まる事なく。

その大岩にはひとつ必ず窪みがあり、タイミングを合わせてそこに入り込めば前に進めそうだった。

「進むしかない。行くぞ!!」

クラウドが先に駆け出した。エアリスともその後に続く。


が、


「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「っ!?!!」

最後尾からついて来ていたが大岩の窪みに入りそびれたのだ。

つまり、現在と大岩が追い駆けっこをしているという意味だ。

「く、く、クラウド〜〜〜!!どうしよう〜〜〜〜!!!」

「落ち着け!!とりあえずさっきの場所まで戻るんだ!!」

は言われた通り、先ほどの場所に戻った。目の前を大岩が通り過ぎて行く。

「はぁ・・・。」

は溜息をついた。せっかくいいところまで行ったというのに・・・。

「クラウドー!エアリスー!ちょっと待っててね〜!!」

はそう叫び、再び大岩に挑戦した。

タイミングを合わせ窪みに入り込む。

そして何度か大岩に轢かれそうになりつつ、はなんとかクラウドとエアリスの元へと着いた。

「ふぅ〜〜、やったね!」

エアリスがの手を取りながら言った。

「大丈夫か?さすがに堪えたな・・・。」

クラウドも安心したようだ。ほっと胸を撫で下ろす。

と、エアリスが言った。

「あっ・・・クラウド、!大変!!早く、こっち!」

エアリスが走り出す。クラウドともエアリスの後に続き、目の前に広がる光景に息を飲んだ。

紫色の光を放つ小さな泉。の瞳の色とまったく同じ、薄くて透明感のある綺麗な紫。

「古代種の知識がいっぱい・・・。」

エアリスが呟く。

「ううん、知識なんかじゃない。そう・・・意識・・・生きてる心・・・・。

何か、言いたがってる。ごめんね、わからないの。」

エアリスが必死に古代種の言葉を聞き取ろうとしている。

「えっ?な〜に?・・・・・危険?邪悪な・・・・・意識?

えっ?見せる?見せてくれるの?」

と、その瞬間目の前が光に包まれた。眩しいけれど、暖かい光。

「・・・どうなってる?」

つい、クラウドが呟いた。

「待って!ほら、見て・・・始まるわよ。」

エアリスの表情は真剣だった。クラウドとは目を見張った。

ぼうっと、だんだん風景が浮かんでくる。ふわふわと、不思議な感覚に包まれる。

そこは。浮かんだ風景のその場所は。

・・・見事と言うべき壁画の部屋だった。

『ツォンさん、これは?これで約束の地がわかるんですか?』

声の主はイリーナだった。先ほどこの部屋であった出来事のようだ。ツォンが顎に手を当てて呟く。

『・・・どうかな。とにかく社長に報告だ。』

『気をつけてくださいね。ツォンさん。』

心底心配そうなイリーナの顔。ツォンは軽く微笑んだ。

『ああ・・・。イリーナ、この仕事が終わったら飯でもどうだ?』

イリーナの表情が明るくなった。

『あ、ありがとうございます!それじゃ、お先に失礼しますっ。』

イリーナが部屋から出て行った。ツォンは再び壁画に向き直り、見つめた。

ここが約束の地なのか?そう思うが、まさかとも思ってしまう。

「・・・・!!」

その光景を見ていたの顔がはっと強張った。ツォンの後ろ。

ツォンが気付いて声を上げる。

『セフィロス!!』

セフィロスは笑みを浮かべて、ツォンの後ろに立っていた。

いや、ツォンを見ていたクラウド達にはしっかりと見えた。

セフィロスは、いきなり現れたのだ。その場所に、一瞬にして現れたのだ。

『お前が扉を開いたのか。ご苦労だった。』

セフィロスは言った。

『ここは・・・なんだ?』

『失われた知の宝庫。古代種の知恵・・・・知識・・・。私は星とひとつになるのだ。』

『星とひとつに?』

セフィロスは鼻で笑う。

『愚かなる者ども。考えたこともあるまい。

この星の全ての精神エネルギー。この星の全ての知恵・・・知識・・・。

私は全てと同化する。私が全て・・・。全ては私となる。」

『・・・そんなことが出来るというのか?』

『その方法が・・・ここに。』

セフィロスは長い刀・・・正宗を構えた。

『お前達には死あるのみ。しかし、悲しむことはない。』

ツォンが身構えようとした時には既に遅かった。セフィロスの腕が勢い良く下ろされる。

赤い鮮血が散った。

『死によって生まれる新たな精神エネルギー。やがて私の一部として生きることが出来る・・・』



 


全員の意識がはっと現実に戻される。

先ほどの泉に、三人は立っていた。

「見えた?」

エアリスが聞く。

「・・・見えた・・・。」

「・・・壁画の部屋はどこだ?」

エアリスは続く道の先を見て言った。

「もうすぐ、ね。」

「セフィロスがいるんだな?あいつが何を考えようとここで終わりだ!」

クラウドが大声を上げた。

「俺が倒す・・・!!」

「私達だっている。ね?」

はエアリスを見て言った。







三人はその後もひたすら先へ進んだ。

大きな時計の部屋を通り、扉の鍵をかけて逃げてしまった古代種の精神体を捕まえ。

そしてその古代種の精神体が扉を開け・・・。

扉の向こうは、先ほど見た壁画の部屋だった。

光景で見た壁画も見事なものだったが、実物となると息を飲むほどのものだった。

「ここが壁画の間・・・。」

エアリスが呟く。

「どこだ!? セフィロス!!」

クラウドが声を上げる。と、は自分の背中に悪寒を感じた。



ざわり。



心臓の音がやけに大きく聞こえる。

そして次の瞬間、は首を捉まれた。

「あっ・・・・」

「冷たいな。私はいつでもお前達の傍にいる・・・。」

セフィロスの手がギリギリとの首を締め上げる。

!!」

セフィロスはククッと喉で笑うと、を解放した。

は急に空気を吸い込み、激しく咳き込んだ。

エアリスが慌ててに駆け寄る。

「大丈夫・・・!?」

「大丈夫・・・。大したコトない・・・。」

セフィロスはを見下ろし、視線を先へと向けた。

「来るがいい。」

セフィロスの姿が消えた。セフィロスの姿を慌てて探す。

と、随分と先の方にセフィロスが現れた。

クラウド達は走り出す。

「まったく、素晴らしい。知の宝庫・・・。」

「お前が言ってることは意味不明なんだよ!」

クラウドが吠える。セフィロスは笑った。そして、また姿を消した。

「よく見ておくがいい。」

姿は見えないのに声は聞こえる。クラウドの怒りを煮え滾らせるには充分な炎だった。

「何を!!」

セフィロスが姿を現す。

「古代種の知に与えるもの。私は星とひとつになるのだ。」

セフィロスは天井を仰ぐ。

「・・・・母さん・・・・。・・・もうすぐだよ。

もうすぐ・・・・ひとつになれる・・・・・・・・。」

「星とひとつになって、一体どうするつもり?」

が言った。セフィロスは手を大きく広げ、語り出す。

「簡単なことだ。星は傷が出来ると治療のために傷口に精神エネルギーを集める。

傷の大きさに比例して集まるエネルギーの大きさが決まる・・・。

・・・・星が破壊されるほどの傷が出来たらどうなる?

・・・・どれほどのエネルギーが集まる?

クックック・・・。その傷の中心にいるのが私だ。エネルギーは全て私のものだ。

星の全てのエネルギーとひとつになり、私は新たなる生命・・・新たなる存在となる。

星と交わり、私は・・・今は失われ、かつて人の心を支配した存在・・・『神』として生まれ変わるのだ。」

「星が破壊されるほどの傷?傷つける?星を?」

「壁画を見るがいい。最高の破壊魔法・・・メテオ。」

「そんなことさせない!!!」

が叫んだ。


『目を覚ませ!!』


セフィロスが消えた。クラウドが慌てて探し回る。

「どこだ!セフィロス!!」

クラウドは駆け出した。が慌てて叫ぶ。

「待って、クラウド!」

追い駆けようとしたが、クラウドがひとつの壁画の前で止まった。

「クラウド!!」

「ねえ、クラウド!」

エアリスとが呼びかける。だがクラウドは振り向きもしなかった。

そこで気付く。クラウドの様子がおかしい。

何やら笑っているのだ。

「クックック・・・・黒マテリア・・・・。クックック・・・メテオ呼ぶ・・・。」

クラウドじゃない。まるでセフィロスのような・・・。

「クラウド!! しっかりして!!!」

がクラウドに近寄った。だがクラウドは反応を示さない。

「クラウド・・・。俺・・・クラウド・・・・。どうやるんだ・・・・。」

クラウドは何度も体を動かした。とエアリスはどうしたらいいのかわからなかった。

「・・・思い出した!俺のやり方・・・。」

「・・・・クラウド・・・。」

が思わず声を出す。クラウドは不思議そうな顔で振り向く。

「ん?どうした。なんか変か?」

元のクラウドだった。いつもの、クラウドだった。

エアリスとは顔を見合わせ、小さく頷く。

「・・・なんでもないから。気にしないで。」

「ね、!なんでもないよね。」

は無言で頷いた。

エアリスは無理矢理話題を戻す。

「逃げちゃったね、セフィロス。」

「・・・気にするな。あいつの言ってることはわかった。これがメテオだな?」

クラウドは目の前の壁画を見上げた。

「空から何か降って来るの?」

エアリスが答えた。

「・・・魔法ね、これは。セフィロスが言ってた通り。

・・・究極の破壊魔法メテオ・・・・。

宇宙を漂っている小さな星を魔法の力で呼び寄せるの。

そして・・・衝突。この星、完全に壊れちゃうかも・・・。」

エアリスは急に俯いた。だが、すぐに顔を上げる。

クラウドが部屋の奥へと歩き出す。とエアリスも後に続いた。





「これはなんだ?」

部屋の一番奥には祭壇のようなものがあって、そこには何かが書いてあった。

「・・・何か書いてあるよ。・・・ク・ロ・マ・・・テ・リ・ア・・・。」

「黒マテリア!!」

「黒マテリア・・・どうするの?クラウド。」

クラウドが考えた時、エアリスが天井を見上げた。

古代種の意識が何かを言いたいらしい。

「ちょっと待って。私、聞いてみる!」

エアリスは天井に向かっていくつか相槌を打った。

「そうなの!?」

エアリスはクラウド達に向き直った。

「この神殿そのものが黒マテリアだって。」

「どういうことだ?」

「だから、この大きな建物自体が黒マテリア、なんだって。」

クラウドは驚いた。は驚愕の表情を浮かべている。

「この、でかい神殿が?これが黒マテリア!?それじゃあ、誰にも持ち出せないな。」

「う〜ん、難しいところね。ここにあるのは神殿の模型なの。」

エアリスは祭壇の上のものを指差した。

「この模型には仕掛けがあって、パズルを解いて行くと、どんどん模型が小さくなるんだって。

「模型が小さくなると、神殿自体も小さくなる。どんどん、折り畳まれて行って、

最後には手のひらに乗るくらいにまで小さくなるの。」

クラウドは「なるほど」と呟く。

「つまり、この模型のパズルを解けば黒マテリアは小さくなって持ち出せるようになる訳だな?」

「そう、でもね・・・・、パズルを解くのは、この場所でしか出来ないの。

だからパズルを解くと、その人はこの神殿、いいえ、黒マテリア自体に押し潰されちゃうの。」

「なるほど・・・危険な魔法を簡単に持ち出させないための古代種の知恵か・・・。」

「だったら尚更持ち出す方法を考えなくちゃ・・・。」

が呟く。

「ああ。セフィロスにはたくさんの分身がいるじゃないか。

あいつら、命を投げ出して黒マテリアを手に入れるくらいなんでもない。

この場所はもう安全じゃないんだ・・・。」

「でも、どうするの?」


「私がやる。」


クラウドとエアリスはを見た。

「そんな、ダメよ!私の話聞いてたでしょ!?、死んじゃうんだよ!?」

「でもこのまま放っておくよりもずっといいじゃない。だって今、私一人の命なんかじゃ全然足りない、

この星全体の人々の命がかかってるのよ?私一人の犠牲で済むならそれに越した事はないじゃない。」

「やめろっ。そんな方法、俺は認めない!!!」

と、その時クラウドのPHSが鳴った。クラウドは舌打ちをひとつしてPHSに応答する。

「もしも・・・・」

『もしもし〜!?クラウドさん。ボクです、ケット・シーです〜!!!』

耳が割れそうな勢いだった。クラウドは耳からPHSを少々離し、溜息をついた。

『話、聞かせてもらいましたよ!!ボクのこと忘れんといて欲しいなぁ。

クラウドさんの言うてることはよぉ、わかります。この作りモンの身体星の未来のために使わせてもらいましょ。』

クラウドは再び溜息をついた。

「セフィロスに黒マテリアは渡せない。でも、神羅にも渡せない。」

『でもなぁ、クラウドさん。どないしようもないんとちゃうか?まぁ、信じてみいな。』

クラウドは三度目の溜息をついた。

まさかにパズルを解かせる訳にはいかない。

「・・・・仕方ない。」

『よっしゃ!ほな、任せてもらいましょか!皆さん早う脱出してください!

出口のとこで待ってますから!!』

クラウドはPHSを切ると、腰のポケットにPHSをねじり込んだ。

「出るぞ。」






 

クラウド達は神殿の出口のところで待機していた。

まだケット・シーが現れないのだ。

「お待ちどうさん!!ケット・シーです〜!」

三人の心配はその一言で吹っ飛んでいった。

ケット・シーはいつものテンションで現れた。

「さ、後のことは任せてもらいましょ!ほな、皆さんお元気で!」

と、沈黙が降りる。

「ケット・シー・・・。ほら、クラウド・・・何か言ってあげよう?」

「・・・苦手なんだ。」

ケット・シーは苦笑いを浮かべる。

「ん〜、ようわかりますわ〜。ボクも同じような気持ちですわ。」

エアリスが思い出したように手を上げた。

「そうだ!ねえ、占ってよ!」

「そうやな〜。それも、久し振りですねぇ。

わくわくしますなぁ〜。当たるも〜ケット・シー、当たらぬも〜ケット・シー!

ほんなら、何占いましょか?」

エアリスは顎に手を当てて考え込む。

「そうねえ・・・・。クラウドと私の相性!」

ケット・シーはケラケラと笑った。

「そりゃ、たこうつくで。デート1回やね!ほんな、やりまっせ!」

ケット・シーは不思議な動きをして、一枚の紙を取り出した。

だが、それを見ていそいそと後ろを向いてしまう。

「こりゃあかんわ。ちょっと、言えませんわ。さんに悪いわ。」

は苦笑を浮かべて首を傾げた。

エアリスはケット・シーに飛び付き、言う。

「ダメ!教えて!ぜっ〜たい驚かないから。」

ケット・シーは困ったように笑い、紙を見ながら口を開いた。

「そうですか? ほな、言いますよ。ええカンジですよ。お二人の相性、ぴったりですわ!

エアリスさんの星と、クラウドさんの星!素敵な未来が約束されてます!

クラウドさん、ボク、司会でも仲人でもスパイでもなんでもしますわ〜。

そんときにはきっと、呼んで下さいね。」

ケット・シーはクラウド達に背を向けた。

「スパイのボクのこと信じてくれて、おおきに!

ほんまに、ほんまに・・・・行って来ます!!」

ケット・シーは飛び跳ねながら、壁画の部屋へと向かって行った。

はその背中に無意識のうちに叫んでいた。

「頑張れ!ケット・シー!!」



 


『頑張れ、やって。なんや、嬉しいなぁ〜』




『うわっ!いててて・・・・どないなったんやろ?まだ動けるようやな』

 


『これやな!古代種さん達 こんな仕掛けよう作りはったなぁ〜』





『ボクも、この星を守るんや!なんや、照れるなぁ・・・』





『このおんなじボディのんがようさんおるんやけどこのボクは、ボクだけなんや!』





『新しいケット・シーが仲間になっても忘れんといてな』











『ほんな、行きますわ!しっかり、この星を救うんやで〜!!』

 



 








クラウド達は神殿の外にいた。

ゴゴゴゴ、と地鳴りのような音がした後、神殿は徐々に小さくなって行った。

大きな大きな穴の中に、小さな黒い点が見えた。

「あれが、黒マテリア・・・・。」

クラウドが穴を覗き込みながら言った。取りに行かなければならない。

クラウド、エアリス、はゆっくりと穴を降りて行った。

穴の最下部まで降り、黒マテリアを手に取る。

「これを俺たちが持ってる限り、セフィロスはメテオを使えないって訳だ。」

クラウドは黒マテリアを空にかざして見つめる。

と、そこで疑問が浮かんだ。

「・・・ん?俺達は使えるのか?」

エアリスは頭を振った

「ダメ、今は使えない。とっても大きな精神の力が必要なの。」

「たくさんの精神エネルギーってことか?」

「そう、ね。一人の人間が持ってるような精神エネルギーじゃダメ。

どこか特別な場所。星のエネルギーが豊富で・・・・。・・・あっ!」



「「「約束の地!!」」」



三人の声が重なった。

「約束の地だな!!いや、しかし・・・。」

「セフィロスは違う。古代種じゃないから。」

「ああ。約束の地は見つけられないはずだ。」




ざわり。





また、この感覚。









『・・・・が、私は見つけたのだ。』

どくんっ、と。全身が波立った。

セフィロスが三人の前に姿を現す。顔に不適な笑みを貼り付けたまま。

「私は古代種以上の存在なのだ。ライフストリームの旅人となり古代の知識と知恵を手に入れた。

古代種滅びし後の時代の知恵と知識をも手に入れた。・・・そして間もなく未来を創り出す。」

が叫んだ。

「そんなことさせない!未来はあなただけのものじゃないのよ!!!」

セフィロスは喉で笑った。口に手を当て、さも可笑しいと言うように。

「クックック・・・・。どうかな?」

セフィロスは一頻り笑い、クラウドを見据えると、目を見開き言った。



『さあ、目を覚ませ!!』




―――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!





空気が振動するような、耳鳴りのような、気持ちの悪い音が三人の耳を襲った。

特にクラウドは頭を押さえてうずくまってしまった。

「だ、黙れ!!」

必死に抵抗しているようだ。セフィロスは笑っている。

「う・・・うるさ・・・い・・・・!!」

「クラウドッ!!」

セフィロスはしゃがみ、クラウドの目線に自分の目線を合わせた。

そして、信じられないような甘い声で、クラウドを誘った。

「さあ、クラウド・・・・良い子だ・・・。」

「う・・・あ・・・・ぁ・・・・・。」

クラウドはゆっくりと動き出す。クラウドの手には黒マテリア。そして、

クラウドが向かおうとしているのはセフィロスの元。

クラウドの耳には聞こえていた。誰か、聞き覚えのある子供の声が、

自分を必死に引き止めようとしている。

か、もしくはエアリスかと思ったが、二人とも不思議な音の所為でそれどころではない。

駄目、怖がっては駄目・・・そういった意味の言葉を、必死に自分で投げ掛けている。

『・・・ごめん・・・誰だか知らないけど・・・体が動かないんだ・・・・。』

クラウドは、セフィロスに黒マテリアを渡した。

セフィロスはニヤリと笑う。

「・・・・・ご苦労。」

セフィロスは黒マテリアを手に飛び去って行った。

クラウドの体が崩れ落ちる。

「クラウド!!!」

真っ先にがクラウドに駆け寄った。 

「クラウド、大丈夫・・・!?」

「・・・俺はセフィロスに 黒マテリアを・・・・?

お、俺は何をしたんだ・・・・エアリス、、教えてくれ・・・。」

はクラウドの肩を抱きながら唇を噛み締める。

「クラウド・・・しっかり。大丈夫だから、ね?」

「ククククク・・・俺は何をした!!」

「クラウド・・・あなたは何もしてないわ。・・・あなたの所為じゃない。」

クラウドはとエアリスを突き倒した。

クラウドは男だ。男の力で突き倒されてはもエアリスも堪ったもんじゃない。

は崖の岩に背中を打ち付け、エアリスは反動で転がった。

「俺は!俺は―――っ!!!」

クラウドはとエアリスに殴りかかった。

もう、混乱と悔しさでぐちゃぐちゃだった。

「こりゃあかん!えらい時に来てしもた!」

上から声がした。

「ボク、ケット・シー2号機です〜。よろしゅうたのんます〜!」

相変わらず能天気な声だった。だが、その声のおかげでは立ち上がることが出来た。

クラウドの手をかわしながら立ち上がり、クラウドの背後へジャンプで回り込む。

そして、後ろから抱えるような格好でクラウドの両手を押さえた。

「クラウド、何してるの・・・!?」

クラウドはうずくまる。エアリスは少々驚いた目でクラウドを見ていた。











真っ白だ・・・・・












俺は何をした?憶えていない・・・・・・



































記憶・・・いつからなのか・・・・?全てが夢なら覚めないでくれ・・・・・・

















この後、もっとすさまじい悲劇がクラウドを襲うなどと、誰が予想していただろうか。

は見た。エアリスの、何かを決心したような凛とした表情を。






<続く>

=コメント=
ほわぁぁぁぁぁ!!!(笑
長ッ!!!必要以上に長ッ!!!(笑
最長記録だよ!!!
でもやっと古代種の神殿まで終わったよ・・・(汗
うふふふ・・・次回はあそこですね!!
Zをクリアした人なら誰もがあそこで泣いたであろう、
超有名なあのシーン!!
やっとここまで来ることが出来たよ(感激
ああ、そう言えば、最後の方のおかしくなってしまったクラウドのセリフ、
何箇所かいじってます(笑
元々は「ウヘヘヘヘ・・・俺は何をした!」
っていうセリフだったんですけど、
・・・ウヘヘヘ、ってないだろ?(笑
だから「ククククク・・・俺は何をした!!」
にしました(笑
大した違いはないけどね・・・・。

さぁ、次は彼女とのお別れです。
ハンカチの用意をどうぞ(笑