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  ドリーム小説
 





あの時より一歩強くなれた?第十八章







冷たく暗いニブル山を越えるのは、そんなに容易いことではなかった。

途中で蜘蛛のような巨大なモンスターに襲われ、命からがらの目に合ったのだ。

それでもなんとかクラウド達はニブル山を抜け、ロケット村へと辿り着いた。

「あれは・・・!?」

ロケット村に着いた直後のクラウドの第一声がそれだった。

ロケット村の中心に、錆び付いた巨大なロケットが仁王立ちしていたのだ。

「何のためにあんなものが・・・?」

もそう呟く。

ロケットは右側にかなり傾いていた。

 



クラウド達は村人の話を聞いていくうちに、『艦長』と呼ばれる人物がロケットの所有者であることを知った。

名前はわからなかったが、村人はその人物を『艦長』と呼んでいるようだった。

村人の一人が丁寧に『艦長』の家の場所をおしえてくれた。クラウド達は、その家に向かう事にした。



艦長の裏庭にて・・・。

「神羅のマークがついている。タイニー・ブロンコか・・・いいな、これ。」

クラウドが呟いた。

「・・・もしもし?クラウドくん?まさかとは思うけど、盗もうなんて思ってないよね・・・?」

「もちろんだ。」

クラウドはそう答えたが、何故だかその背後に燃え盛る火炎を見たような気がしたのは気のせいだったのだろうか。

と、一人の女性がやって来た。女性は髪をポニーテールに結わいていて、白衣を着ていた。

「あの・・・何か?」

女性が言うのも無理はない。裏庭にやって来たら、何故だか人がいるのだから。

「いや、何でもないんだ。見せてもらっていただけだ。」

クラウドがそう言うと、女性は何やら考え込んだ。

「・・・もしそれが使いたいなら艦長に聞いて下さい。艦長はきっとロケットのところにいると思います。」

女性は名乗った。

「私、シエラといいます。貴方達は?」

「俺はクラウドだ。」

「私はです。」

「ヴィンセントだ。」

クラウド達が名乗ると、女性は少々残念そうな表情になった。何やら理由があるらしい。

「はぁ・・・神羅の人達じゃないんですね。私、宇宙開発再開の知らせが来たのかと思って。」

クラウド達は顔を見合わせた。シエラは続ける。

「新社長のルーファウスさんがここへいらっしゃるそうなんです。艦長は朝からそわそわしてますわ。」

こんなところで憎きあいつの名を聞くとは思わなかった。

「ルーファウスが!?」

これは早いところ『艦長』に話を聞いた方が良さそうだ。

クラウド達はシエラにお礼を言い、すぐさまロケットに向かって駆け出した。

 


ロケットは近くで見るとますます大きいものだった。

錆び付いたロケットは随分と古いものらしく、あちこち痛んでいた。

ロケットの内部に艦長はいるという。三人はロケットの外壁のハシゴを使い、ロケット入り口まで登って来た。

確かにロケットはあちこち痛んでいたが、それとなく修理をした跡もたくさんあった。

クラウドはロケット入り口のドアを開け、中へと入った。

中では一人の男が何やら手を動かしていた。クラウドは近寄って声をかける。

「お前達、何だ?」

「艦長さんがここにいるって聞いて来たんです。」

が言うと、男は豪快に笑った。

「艦長だと? 艦長とはオレ様のことだ!」

艦長は言った。

「親からもらった名前はシド。みんなは艦長って呼ぶけどな。で、なんの用でい?」

色々と聞きたいことはあったが、まずはロケットのことに関してだ。

「このロケットのことおしえてくださいますか?」

「おっ! 若いモンにしちゃなかなか感心じゃねえか。よし、ここはオレ様自ら説明してやることにしよう。」

シドは人のいい笑みを見せ、語り出した。

長くてくだらない戦争中に神羅カンパニーがいろんな技術を開発したのはクラウド達も知っていた。

今は魔晄エネルギーを売る魔晄屋だが、昔は兵器開発会社だったという。

そん中、ロケットエンジンが開発されたそうだ。

今まで夢の夢だった宇宙へ行けるかもしれない。そんな話は手の届く夢としてどんどん広がって行った。

予算も次々とつぎ込んで、神羅は試作を作りつづけた。そして完成したのがこのロケット、神羅26号。

パイロットにはシドが選ばれ、いよいよ打ち上げの日がやって来た。

何もかも上手く行っていた。そして、上手く行くはずだった。

だが、シエラの所為で計画は全て失敗に終わった。シエラはロケットの点検をしっかりと行うため、

ずっとエンジンの中にいたのだ。ロケットが発射されれば、エンジンの中は何千度という温度になる。

発射の直前、シエラを救うためにシドは急遽エンジン停止ボタンを押したのだった。

だがおかげでロケットは傾き、神羅は宇宙開発計画を捨てた。

今回ルーファウスがやって来ることだけが、シドに残された最後の望みだという。

「あの・・・ルーファウスが来るって、本当ですか?」

「おう!きっとよ、宇宙計画が再開されるって話にちげえねえ。やっぱり若い社長に限るぜ!夢があっていいやね。」

シドは笑った。だが、やクラウド、ヴィンセントには、ルーファウスが宇宙計画を再開するなどと

いうことが信じられなかったのだ。今現在神羅はセフィロスの行方を追うので精一杯のはずなのに。

「えっと・・・それじゃあ、あとひとつだけ・・・」

「おう、なんでぇ?」

「えっと・・・タイニー・ブロンコ、貸してくださいv」

語尾にハートマークもつけてみた。だがシドは鼻で笑うと、

「な〜にバカなこと言ってやがるんだ!あれは大切なもんなんだ。貸せねぇよ。」

と言い捨てた。 







「はぁ・・・やっぱダメかぁ。どうする?タイニー・ブロンコ。」

「どうもこうも・・・貸してくれないのなら仕方ないな。」

「盗もうという考えは捨てたのか?クラウド。」

そんな会話をしながら、三人はシドの家へ戻ってきた。

家の扉を開けると、シエラが顔を出した。

「あ・・・クラウドさん。艦長、何か言ってました?」

「いや・・・。」

クラウドは頭を振って答えた。シエラの表情が沈む。

「そうですか・・・。」

そこへ、シドが帰って来た。シエラの顔を見た途端、機嫌悪そうな表情に変わる。

「ケッ! シエラよう。どうしてテメエはそんなにどんくせえんだよ!客が来たら茶くらい出せよな、このウスノロ!」

先ほどロケットで会った時のシドとは随分な変わりようだ。

「ご、ごめんなさい」

「シエラさん、いいですよ。私達のことは気にしないで下さい。」

上手くフォローしようと思って言ったことだったが、余計にシドの機嫌を悪くしてしまったようだ。

「うるせぇ!ウダウダ言うな!客は、椅子に座って大人しくしてろ!あ〜〜っ!腹が立って来た!

おい、シエラ!オレ様はタイニー・ブロンコを整備しに裏庭に行ってるからな!客に茶ぁ、出しとけよ!わかったな!」

シドは大声でそう言うと、裏庭へと行ってしまった。

なんて言うか・・・・

「・・・暴力的夫・・・?」

はつい口走ってしまった。

「悪かったな。俺たちの所為で。」

クラウドも少々気に病んでいるようだ。だがシエラは「いつものことだ」と言って笑って見せた。

「いつも?いつもあんなこと言われてるんですか?」

シエラは寂しそうに頭を振った。

「いいえ・・・私がドジだからしょうがないんです。私があの人の夢を潰してしまったから・・・。」

「あの・・・ロケットのエンジン部に残ってたっていう話ですか?」

「ええ・・・。あの人は、私を助けるためにエンジンの緊急停止スイッチを押したのです

あれ以降、宇宙計画縮小が決まってロケット発射は中止になりました。私の所為で、

あの人の夢が逃げていったんです・・・。だから・・・いいんです。艦長がどう思おうと、

私はあの人に償わなくてはなりません。」

と、そこにシドが帰って来た。

「シーエラッ! ま〜だ茶出してねえな!」

シエラは慌てて茶をいれ始めた。

「ご、ごめんなさい」

シドは鼻で笑うと、椅子にドカリと座りこんだ。そしてクラウド達に手招きをする。

「ほれ、とっとと座れ!オレ様の持て成しが受けられねえってのか!」

何だかシドはそわそわしている。

「遅いな・・・ルーファウスはよ。」

ルーファウスが来ないからそわそわしているのだろうか。

それとも宇宙計画再開の希望が目前にあるからそわそわしているのだろうか。

「うひょ!久し振り!シドちゃん、元気してた?」

聞いた事のある声がして、クラウド達は振り返った。

もちろん、そいつの顔を見てすぐに名前が浮かんで来た。

「よう、太っちょパルマー。待ってたぜ!で、いつなんだ?宇宙開発計画の再開はよぉ?」

シドが嬉しそうに聞く。だが、パルマーはくるくると回転しているだけだ。

「うひょひょ!わし、知らないな〜。外に社長がいるから聞いてみれば?」

シドの舌打ちがしっかりと聞こえた。

「ケッ!相変わらずの役立たず太っちょめ。」

「太っちょって言うな〜!」

シドは立ち上がると、外へ出て行った。

パルマーはシエラの手元を見て飛び跳ねた。

「うひょ! お茶だ!わしにも頂戴。サトウとハチミツたっぷりでラードも入れてね。」

「うわ、高カロリーでしかもマズそう・・・・。」

ついは突っ込んでしまった。 





クラウド達が外に出ると、シドとルーファウスが言い合っているところだった。

「な、な、な、なんでい!期待させやがって!そんなら今日は何の用で来た?」

ルーファウスは髪をかき上げながら言う。

「タイニー・ブロンコを返してもらおうと思ってな。我々はセフィロスを追っている。

ただ、どうやら今まで見当違いの方向を探していたようだ。だが今は大体行く先が掴めて来たのでな。

我々は海を越えなくてはならないんだ。それでお前の飛行機を・・・。」

「ケッ!最初は飛空艇、次はロケット今度はタイニー・ブロンコか。

神羅カンパニーはオレ様から宇宙を奪っただけでは足りずに今度は空まで奪う気だな!」

「おやおや・・・今まで、君が空を飛べたのは神羅カンパニーのおかげだ。それを忘れないでくれたまえ。」

「なんだと!」

そんな言い合いを見ていると、後ろからシエラに肩を叩かれた。

「貴方達タイニー・ブロンコを使いたがっていましたよね。パルマーが持って行くそうです。お話ししてみたら?」

クラウド達は顔を見合わせ、裏庭のタイニー・ブロンコの元へ向かった。 




裏庭にはパルマーがいた。タイニー・ブロンコに乗って、エンジンを機動させようとしている。

「うひょ・・・なんでわしがこんなこと・・・わし、宇宙開発部門総括・・・。」

「そのタイニー・ブロンコは俺達がもらう。」

「うひょっ。・・・お、お前達!神羅ビルでプレジデント神羅が殺された時に!け、け、警備兵!!!」

パルマーは警備兵を呼んだつもりだったが、警備兵は現れない。

パルマーは「お尻ペンペン」をしたりしてクラウド達をからかっていたが、やがて逃げ出した。

・・・・つもりだった。

「うげっ!!」

タイミング良くそこに到着した神羅トラックに跳ね飛ばされ、気絶をしたようだ。

がタイニー・ブロンコに飛び乗り、なんとかエンジンを止めようとする。

「クラウド!!これ止まらなくなってる!!」

「構うな!乗り込め!!」

クラウドとヴィンセントが飛び乗る。その瞬間、エンジンが本格的に動き出した。

一気にタイニー・ブロンコが空へと舞い上がって行く。

振り落とされそうになりながら、クラウドはに近付いて操縦桿を握った。

上手く操縦桿を引いて、クラウドはタイニー・ブロンコをシドの前に飛行させた。

シドがそれに気付きタイニー・ブロンコに飛び乗る。

が、神羅兵の銃での攻撃によって尾翼が撃たれてしまった。

それでもタイニー・ブロンコは飛び続ける。海の上まで飛んで来てしまった。シドが叫ぶ。

「シィィーット!!尾翼がやられてるじゃねえか!」

「不時着か・・・。」

クラウドが呟く。シドは鼻で笑い、言った。

「さあ、でっけぇ衝撃が来るぜ。チビらねえようにパンツをしっかり押さえてな!」



じぃー・・・・(以外、全員の視線)



「なんでそこで私を見るのよ〜〜〜〜〜!!!」

の叫びは風にかき消され、タイニー・ブロンコは海へと不時着した。

水飛沫が上がり、しばらく前進してからタイニー・ブロンコは止まった。

「・・・と、止まった・・・?」

「ああ。止まったようだな。」

シドはタイニー・ブロンコのエンジンを見て、呟いた。

「こいつはもう飛べねえな。」

「ボートのかわりに使えるんじゃないか?」

いけしゃあしゃあと言い放つクラウドに、シドは少々ムッとしたようだ。

「好きにしろい!」と言い、そっぽを向いてしまった。

「シドさん、あなたはこれからどうするんですか?」

「さあな。神羅とは切れちまったし村は飽きちまった。」

クラウドが口を開く。

「奥さんは? シエラはいいのか?」

「奥さん?笑わせるない!シエラが女房だなんてトリハダが立つぜ。お前らはどうすんだ?」

クラウドはタイニー・ブロンコの上を歩きながら言った。

「セフィロスという男を追っている。神羅のルーファウスもいつか倒さなくちゃならない。」

聞くとシドはフッフッフと含み笑いをし、ニヤリと笑った。

「なんだかわからねえが・・・。面白そうじゃねえか!オレ様も仲間に入れろ!」

いきなりの申し出だったが、クラウド達に断る理由はなかった。

「皆、どうだ?」

「私は賛成だよ。」

「いいんじゃないのか?」

意見は一致した。シドは満足そうに笑い、言った。

「よろしくな、クソッタレさん達よ。」

「クソッタレ・・・。」

クラウドが呟く。シドは豪快に笑いながら腰に手を当てた。

「この時代、神羅に逆らおうなんて馬鹿野郎のクソッタレだ!気に入ったぜ!で、どこへ行くんだ?

ルーファウスのヤツはセフィロスを追って【古代種の神殿】に行くってほざいていたが。」

クラウド達はハッと顔を上げる。

「本当か?!・・・どこだ?その【古代種の神殿】っていうのは?」

シドは肩をすくめる。

「さあな。あのクソ息子は『見当違いの方向』って言ってたからここからかなり離れた所じゃないのか?」

クラウドは考え込み、ひとつ頷いた。

「情報を取るためにとにかく陸地を探そう。【古代種の神殿】・・・気になる名前だな・・・。」





<続く>



=コメント=
ふぃ〜。やっとロケット村編終わりました!
早くエアリスの話が書きたいよ〜〜〜vv(悪趣味)
次はやっと古代種の神殿ですよ!!
あ、でも古代種の神殿の前に休幕が入ります(笑
キーストーンを手に入れるまでの休幕が(笑
では、次をお楽しみにぃ〜v