あの時より一歩強くなれた?第十七章
しばらくして、クラウド達は帰って来た。だが、そこにレッド13の姿はなかった。
クラウド達の話によると、ブーゲンハーゲンとともに洞窟の奥へと進み、見つけたのはレッド13の父親の姿だったらしい。
一人逃げ出した卑怯者と言われ続けても、洞窟の奥でコスモキャニオンを守っていたレッド13の父、戦士セト。
ギ族に毒矢を刺され体が石化しても・・・ギ族が全て逃げ出した後も・・・・・そして今も、コスモキャニオンを守っている。
そんなセトの姿。
ブーゲンハーゲンはレッド13と二人きりにして欲しいと言い、クラウドとエアリスは一足先に戻ってきたとのことだった。
「戦士・・・セト・・・か。」
が呟く。そんなセトの姿を、レッド13はどんな思いで見たのだろうか。
「・・・・そろそろ出発するぞ。バギーは修理してもらったからな。」
「レッド13ともお別れか・・・。」
「結構頼りになるヤツだったんだけどな・・・。」
皆、レッド13にそれぞれの思いを馳せ、立ち上がった。
赤い色で染まる谷、コスモキャニオン。
その谷をクラウドとは一度見やり、出入り口を出ようとした。
「待ってくれ!オイラも行く!」
「うん?」
本当ならば聞こえないはずの声。クラウドとは振り返った。レッド13が息を切らせながら駆けて来る。
「クラウドよ、ナナキを頼む。」
ブーゲンハーゲンは笑顔で言った。
「どうしたんだ?」
「オイラ、少しだけ大人になった。そういうこと!」
そう言うと、レッド13はバギーに向かって走って行った。
どうやら、レッド13とのお別れはもう少し先のようだ。クラウドとは苦笑した。
だが、はハッと気付いてふと顔を背けた。クラウドは首を傾げたが、はそそくさと行ってしまった。
再びバギーを発進させ、次の目的地へと向かう。
次の目的地は、本来ならばニブルヘイム跡・・・のはずだった。が。
「なんで・・・・!?」
が口元を押さえながら言った。
クラウドも驚愕の表情を浮かべるしかなかった。
ニブルヘイムは存在していた。
あの火事で、全て燃え尽きてしまったはずなのに。残っているものは、何ひとつとしてないはずなのに。
ニブルヘイムは、5年前と変わらぬ姿で、存在していた。
「どうして・・・?燃えちゃったはず・・・なのに・・・。」
「ああ・・・そのはずだ。」
「クラウド・・・・・・オイラ達に、嘘ついてたの?」
「俺は嘘なんか言っていない。もだ。」
あの火の熱さが嘘なはずがない。覚えているのだ。あの炎の熱さを。あの憎しみを。あの時覚えた、悔しさを、哀しさを。
「とにかく、誰かに話を聞いてみるしかなさそうよ。」
ニブルヘイムは静まり返っていたが、人の気配はする。クラウド達は、現在の住人に話を聞くことにした。
住人達の話や答えは、ほぼ同じだった。
住人達にクラウドとが14歳までここに住んでいた事を話してみたのだ。
この村が、5年前に全て燃えてしまった事も。すると、住人達は声をそろえて同じことを言った。
――――なにを寝惚けたことを言ってるんだい!顔洗ってからおとといおいで!
――――はぁ?何を言っているんですか?嘘はいけませんよ。
――――変な事言わないで下さい!私はこの村で生まれ育ちました。そんなことは全然なかったですよ!
全て反応は同じだった。
クラウドとには何が起こっているのかさっぱりわからない。
燃えてしまったはずのニブルヘイムが存在している。もちろん、クラウドや、ティファの家もそのままの姿で。
やはり、本当に自分達が寝惚けているだけなのだろうか?
いや、そんなはずはない。もしも今この状況が事実なら、あの時に感じた憎しみはなんだったのか説明出来ない。
村のあちこちで、黒いマントを羽織った男がさまよっていた。それぞれの腕にイレズミがあった。
男達はセフィロスを求めてさまよっている様子だった。
ニブルヘイムにセフィロスはいない。そう、ニブルヘイム内には・・・・。
クラウド達の視線は、自然と村のはずれの神羅屋敷へと向けられる。
5年前が見納めだと思っていた神羅屋敷は、5年前よりももっと不気味な姿で構えていた。
本当はもう見たくもない、行きたくもない場所だった。だが、セフィロスの気配を感じている今、神羅屋敷に乗り込むほかない。
「・・・行くぞ。」
クラウドの低い声がやけに響いて聞こえた。
異議を唱える者はなかった。
神羅屋敷の中も、全く変わっていなかった。
中の構造はもちろん、5年前に置いてあった本や開かれたページまで、何もかもが。
「・・・ん・・・?」
テーブルの上になにか手紙が置いてある。中を開いて見てみると、それは宝条の手紙だった。
手紙にはこう書いてあった。
『私の研究の邪魔をする者を全て取り除かなければならない。タークスのあの男も例外ではない。
私はタークスの男に生体的な改造をほどこし、地下に眠らせた。もし興味があるなら探してみるがよい。
ただし・・・これはあくまで私が気まぐれで思い付いたゲームに過ぎない。無理に付き合ってくれる必要はない。
金庫のダイヤルを回し、開けてみるがいい。金庫のダイヤルは 右36 左10 右59 右97 の四つだ。』
クラウドとは顔を見合わせる。レッド13は難しい顔をして考え込んでいる。
「・・・どうする?」
「どうするったって・・・・ここまで見たからには、そのタークスの男に会ってみるしかないんじゃないか?」
「そうだね。オイラもちょっと興味があるよ。」
全員の意見が一致し、クラウド達は金庫を開けることにした。
ダイヤルを回すと、「チン」という音とともに金庫が開かれた。中には金色に輝く鍵が入れられていた。
「この鍵・・・どこの鍵かな。」
「・・・宝条の手紙には、『地下に眠らせた』って書いてあったよな?地下に・・・開かずの扉があったと思うが。」
ああ、と思い出したようにはポンと手を叩いた。
「・・・でも、とりあえずはセフィロスよね。」
「・・・そうだな。どっちにしろ地下に行かなければならない。レッド13、、行くぞ。」
クラウドを先頭に、達は地下へと向かった。
ひんやりとした風が吹いて来る。背筋がゾクっとする。この気配はセフィロスのものだ。
クラウド達は奥の部屋まで進み、そっと扉を開けた。
足がすくんでしまうほどの悪寒。気配。殺気。セフィロスが、ゆっくりと振り向いた。
「セフィロス・・・・。」
「懐かしいな。ここは。」
セフィロスの低い声が響く。もクラウドもレッド13も、動けずにいた。
「ところで、お前達はリュニオンに参加しないのか?」
「私達はリュニオンなんて知らない・・・。」
が呟くように言うと、セフィロスは喉で笑った。
「ジェノバはリュニオンするのだ。ジェノバはリュニオンして空から来た厄災となる。」
「ジェノバが空から来た厄災?古代種じゃなかったのか!?」
急にセフィロスの顔から笑みが消える。
「・・・なるほど。お前達には参加資格はなさそうだ。私はニブル山を越えて北へ行く。もしお前達が自覚するならば、私を追って来るがよい。」
「リュニオン・・・?空から来た厄災・・・?」
セフィロスは含み笑いをすると、そのまま飛び去ってしまった。
結局セフィロスの目的も、約束の地を目指す理由も、ほとんどわからなかった。
ただひとつだけわかったのは、セフィロスはニブル山を越えて北へ向かったということ。
今後の進むべき道は決まった。
北へ。
それが、セフィロスや古代種についての鍵を握っていると、クラウド達は信じていた。
「ここね。開かずの扉・・・。」
地下の開かずの扉の前で立ち止まる。ちゃんともうひとつの目的を忘れてはいなかった。
鍵を鍵穴に差し込み回すと、ガチャリと音がした。そのまま扉を押すと、見た事のない部屋がそこにあった。
棺桶がいくつも無造作に並べられた部屋。ただ、その棺桶のほとんどのフタが開けられていて、中はカラだった。
その中にただひとつだけフタの閉められた棺桶がある。大きさから見て男性のものだと考えられる棺桶。
クラウド達は開けようか開けまいか迷った。
別に中からゾンビが出て来ようが構わない。ただ、中に死体が安置されてあるかもしれないという可能性を考えると、
安らかに眠る死者に迷惑をかけていいものか、という感じだった。
だが、宝条の手紙にあった場所とはここで間違いないだろう。そのタークスの男の姿が見受けられないところを見ると、
この棺桶の中に入っていると考えるのが一番妥当だった。
がそっと棺桶に近付く。クラウドとレッド13の方を振り返ると、二人とも同時に頷いた。
は心を決め、棺桶のフタに手をかけ、ゆっくりと開けた。
一瞬、息が止まった。
棺桶の中に安置されていたのは、目鼻顔立ちの整った男性だった。
静かに呼吸をしているが、何やらうなされているようである。
「っ・・・・!!」
「!!」
は飛び退こうとしたが、それは叶わなかった。急に目を開けた男に、手首を掴まれたのだ。
「・・・私を悪夢から呼び起こすのは誰だ・・・・。」
クラウドやセフィロスとはまた違った低い声。だが、不思議と怖い感じはしなかった。
男はクラウド達の顔を見回し、最後にの顔で目を止めて言った。
「・・・見知らぬ顔か。出て行ってもらおうか。」
「随分とうなされていたようだけど・・・。」
「こんなところで寝たら、夢だって暗くなっちゃうよ。」
さりげなくレッド13が突っ込む。だが男は鼻で笑っただけだった。
「ふっ・・・悪夢にうなされる長き眠りこそ私に与えられた償いの時間。」
「何を言ってるんだ?」
クラウドは首を傾げる。
「他人に話すようなことではない。ここから出ていけ。この屋敷は悪夢の始まりの場所だ。お前達のような者が来る場所ではない。」
「悪夢の始まりの場所・・・か。・・・確かにそうだな。」
「おや?何を知っているのだ?」
聞かれてクラウドは言葉に詰まったが、セフィロスのことを話す事にした。
「あんたが言った通りこの屋敷が悪夢の始まり。いや、夢ではなく現実だな・・・。
・・・セフィロスが正気を失った。この屋敷に隠された秘密がセフィロスを・・・・・」
「セフィロスだと!?」
突然男が叫んだ。
「「セフィロスを知っているのか?」」
クラウドと男の声が重なる。そこで沈黙が流れそうになったが、男が言った。
「・・・君から話したまえ。」
クラウドは今まであった出来事を簡単に話した。男はそれを黙って聞いていた。
「・・・という訳だ。」
それまで黙っていた男が口を開く。
「セフィロスは5年前に自分の出生の秘密を知ったのだな?ジェノバ・プロジェクトのことを?
・・・以来、行方不明だったが最近姿を現した。多くの人々の命をうばいながら約束の地を探している、と・・・。」
「今度はあんたの話だ。」
クラウドは男の話に耳を傾けようとした。が。
「悪いが・・・話せない。」
「えぇ?どうして?」
が聞く。男は今までにないほど辛そうな表情になり、
「君達の話を聞いたことで私の罪はまたひとつ増えてしまった。これまで以上の悪夢が私を迎えてくれるだろう。」
そう告げた。
「さあ・・・・行ってくれ。」
「待って。あなたが何者かぐらいは教えてくれてもいいんじゃないの?せめて名前くらいは。」
男は苦い顔になり、ため息をついた。
「私は・・・元神羅製作所総務部調査課通称タークスの・・・ヴィンセントだ。」
「タークス?」
「元タークスだ。今は神羅とは関係ない。・・・ところで君達は?」
「元ソルジャーのクラウドだ。」
「同じく元ソルジャー、そして元タークスのよ。」
「オイラはレッド13。またの名をナナキ。」
ヴィンセントはふむ、と考え込んだ。
「君達も神羅か。ではルクレツィアを知っているか?」
「・・・誰だって?」
聞いた事のない名前だったので、クラウドは聞き返していた。
「・・・ルクレツィア。セフィロスを生んだ女性だ。」
「生んだ?」セフィロスの母親はジェノバではないのか?」
そう、クラウド達が知っているセフィロスの母とは、ジェノバだけだったのだ。
ヴィンセントは説明が難しいというように眉をひそめた。
「それは・・・間違いではないがひとつの例えなのだ。実際には美しい女性から生まれた。その女性がルクレツィア。
ジェノバ・プロジェクトチームの責任者ガスト博士の助手。美しい、ルクレツィア・・・。雰囲気が君に似ているな。」
ヴィンセントはを見て言った。
「・・・人体実験?」
「実験を中止させることが出来なかった。彼女に思いとどまらせることが出来なかった・・・。
それが私が犯した罪だ。愛する、いや、尊敬する女性を恐ろしい目に会わせてしまった。」
ヴィンセントは俯く。レッド13が言った。
「その償いが眠ること?それって・・・なんか変だと思うな。」
「眠らせてくれ・・・・」
ヴィンセントはそれ以上何も言わなかった。ただ静かに掴んでいたの手首を放し、棺桶の中に横になり目を瞑った。
はずっとヴィンセントに掴まれていた手首をさする。クラウドとレッド13は部屋を後にしようとしていた。
「、行くぞ。」
「・・・うん。」
はしばらくヴィンセントを見つめていたが、クラウドに促されたため部屋を後にした。
――――ルクレツィア・・・。
ヴィンセントは目を瞑ったまま考えていた。
――――・・・ルクレツィア。私は・・・お前以外に私の心を動かせる女性はいないと・・・そう信じていた・・・。
――――・・・もう二度と、恋などというものは・・・しないと思っていた・・・・。
――――ルクレツィア・・・お前は、許してくれるだろうか・・・・?
――――罪人の私が・・・人を愛していいと、そう言ってくれるだろうか・・・・?
――――お前を愛していた私が、再び人を愛してもいいのだろうか・・・・?
――――・・・ルクレツィア・・・・
ルクレツィア・・・・・・・・
「待て!!」
クラウド達は振り向いた。ヴィンセントが息を切らせてこちらを見つめている。
「お前達について行けば・・・宝条・・・宝条に会えるのか?」
クラウドとレッド13が顔を見合わせる。その二人を代弁したのはだった。
「わからないわ。でも、宝条もセフィロスを追っているとすれば、いずれは・・・」
ヴィンセントにとって、その言葉だけで充分だった。
「・・・わかった。お前達についていくとしよう。」
「へ?」
「随分と急な心変わりだな・・・。」
ヴィンセントは肩をすくめた。
「元タークスということで何かと力になれると思うが・・・。」
クラウドは頷いた。
「よし、いいだろう。それじゃ、レッド13。これからはティファ達と行動してくれるか?」
「うん、わかった。それじゃ、オイラはティファ達と行くね。」
レッド13はクラウドの言葉に頷くと、一足先に神羅屋敷を出て行った。
「これからよろしくね、ヴィンセントさん!」
「ヴィンセント、でいい。」
ヴィンセントはかすかに笑みを浮かべた。
<続く>
=コメント=
わぁぁぁvやっとヴィンセントが出せたよぉv
甘さひかえめだったはずなのに・・・
途中で逆ハーだということに気付いて、
急遽ヴィンセントにはさんに惚れてもらいました(笑
だぁって、ねぇ?(笑
さて、次回は艦長と出会います!(笑
艦長ですよ、艦長!!
ではでは。