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真っ白な風景。

何も見えないところに、私はいた。

私は何をしていたんだっけ?確かセフィロスと出会って・・・

そう、それから、急に酷い頭痛に襲われて・・・

あれからどうなったの?クラウドは?セフィロスは?

何もわからないまま、多分私は意識を失った。

そして今いるこの白い空間。ここはどこ?

クラウド?架月?・・・セフィロス?誰かいないの?

呼んでも返事は返ってこなかった。

この空間には、誰もいないの?それともただ夢を見ているだけ?

この広くて真っ白な空間に、私はただ1人。

ああ、なんて寂しい孤独。なんて寂しい場所。

私これからどうなるの?この夢から覚めることは、本当に出来るの?

疑問ばかりが浮かんで、そして消えていくこの空間。

疑問と一緒に、希望まで消えていく・・・そんなような気がした。










I love my life.










。」

声が、響いた。

とても低くて、怪しい。そんな、不気味な声。

はハッとして振り返る。この白い空間にいるのは一体誰?

今、自分のことを呼んだのは誰?クラウド?それとも架月?

振り返ったの前に立っていたのは、クラウドでも架月でもなかった。

はその人物を見て、後退りする。

背中が冷えた。ぞっとするほどの殺気、いや、その人物の持つオーラに圧倒された。

こんな人間がいるものかと否定しながら、心ではその人物を肯定している。

そこにいたのは、セフィロスだった。

長く美しい銀色の髪を靡かせ、セフィロスは冷笑を浮かべて立っている。

纏う空気は冷たく、そして触れると壊れそうになるような。

、何故逃げるのだ。」

「寄らないで。」

近寄ってくるセフィロスにはキツく言い放つ。

近寄って欲しくなかった。例えようもない恐怖が、自身を包んでいる。

白い背景に浮かび上がる黒。それが、なんとも言えず怖い。

白と黒のコントラストが、異様な雰囲気を放っているのだ。

「ククク・・・良いご身分だな、。古代種の裏切り者よ。」

「言っている意味がわからないわ。」

裏切り者と繰り返すこの男。けれど自分は裏切った覚えなどないのに。

セフィロスはゆっくりとした動作で腕を組み、を見据えた。

「何も知らぬ裏切り者。だからお前は裏切り者なのだ。

神である私を恐れぬその姿勢だけは褒めてやるがな。」

恐れていないわけじゃない。本当は逃げ出したいくらいに怖い。

けれど、ここで逃げれば全ての人生から負けるような気がしたから、逃げないだけ。

大体、こんな奴が神のはずがない。

こんな奴が神だったら、この世界の行く末は真っ暗ではないか。

平和な世界になどなるわけがない。荒れ果てた世界になるに決まっている。

神は尊き者。世界の頂点に立つ救世主のはず。

よって、セフィロスが神というのは絶対にあり得ない。

「あんたは神なんかじゃない。嘘をついても無駄よ。」

ははっきりと言う。けれど、セフィロスは怒るどころか急に笑い出した。

腹を抱え、上を向いて笑う。

その笑いがとにかく無気味で、は眉根を寄せた。

「面白いことを言うな、。出来れば私を笑わせて欲しくはないのだが。」

「私はあんたを笑わせるつもりなんてこれっぽっちもない。それよりここはどこなの?

私をクラウド達の元へ返しなさい。今すぐに。」

「気の強い古代種だな。だが、その気の強さが命取りになるということを忘れてはいけない。」

「命取りですって?」

「ああ・・・そうだ。」

セフィロスはふと表情を消すと、腰の正宗を抜いて瞬時にの首筋へと伸ばした。

は目を見開き、体を硬直させる。

髪が数本切れて、空中に舞った。

「私はいつでもお前を殺せるのだぞ?ん?それともまだ私に何か言うことがあるとでも?」

の肝が冷えた。

この男に逆らってはいけないとサイレンが頭の中で鳴り響いている。

酷い耳鳴りがを襲い、体が急に重くなった。

セフィロスはニヤリと笑い、正宗を腰に戻した。それでも、の体の硬直は取れない。

体が震えた。セフィロスの恐ろしさに。セフィロスの隠された力に。

「お前が何故裏切り者なのか、教えてやろう。」

は眉根を寄せる。ずっと知りたかったことだ。

けれど、こんなふうに単刀直入に言われるとどう反応して良いのか困ってしまう。

とはいえ、いつかは知ることになるのなら。今知っても同じかもしれない。

は決意を固め、顔を上げた。

それを見計らってセフィロスが口を開く。

「お前の2000年前の祖先。その者はこの世界にいた。

星より生まれ、星と語り、そして星を開く。セトラの旅をしながら、暮らしていた。

お前もクラウドからの話で聞いただろう。ジェノバの話を。」

はビクリとして後退りした。ジェノバという単語に、必要以上に驚いてしまった。

何故だか自分でもわからない。

セフィロスは続ける。

「ジェノバとセトラの戦い。それは激しいものだったという。

セトラの犠牲もどんどん増え、ついにはお前の先祖を含めた十数名になってしまった。

お前の先祖以外のセトラは言った。『お前は生き延びろ。ここで死んではいけない。』と。

そして、十数名のセトラの力によってお前の先祖は異世界へと飛ばされた。

・・・それがお前の育った『地球』とかいう世界だ。」

は目を見開いた。信じられない。

確かに自分は今異世界に存在している。けれど、まさか本当に異世界と繋がりがあったなんて。

「そして、その災厄から2000年の時が過ぎ・・・お前が誕生した。

本来なら古代種の血もほとんど薄れ、ただの人間として生まれてくるはずだった。

なのに、神はそれを許さなかった。お前は本来の古代種の力を持って生まれたのだ。

『地球』とやらにいた頃も、星の声が聞こえるときがあったのではないか?」

星の声。“そうだ”と肯定することは出来ないが、心当たりは数え切れぬほどある。

声をかけられたと思って振り返っても誰もいなかった、ということなど何度もあるし、

誰かと話をしていたら友人に「誰と話をしてるの?」と言われたことだって何度もある。

セフィロスの顔に、笑みが浮かんだ。

「裏切り者の祖先を持つお前は裏切り者だ。古代種の裏切り者。

何も知らずに古代種の力を受け継ぎ、何も知らぬまま生き、そして死ぬはずだった。

私はそんなこと許さない。決してな。」

「私の祖先がどんな人か知らないけど、でもその人は裏切り者なんかじゃないわ。

仲間達が逃がしてくれたんでしょ?ならその人の責任じゃない。

仲間達が『死なせてはいけない』って思うほど、良い人だったんじゃないの?」

「戦いから逃げた。その事実は変えられない。逃げたということは裏切り者ということだ。

。お前も裏切り者なのだ。」

セフィロスは突然にものすごいスピードで近寄ると、その腕を掴んだ。

は短い悲鳴を上げ、セフィロスの手から逃げようと体をよじらせる。

けれどセフィロスはそれにさえ嬉しそうな笑みを浮かべ、更に強くの腕を掴んだ。

そして、の体を自分の腕の中に閉じ込める。

は目を見開き、小さく震えた。

セフィロスは低いその声で言う。

・・・お前は私のものだ・・・。」

「嫌ッ!放し・・・」

「どんなに足掻いても事実は変わらぬぞ!!」

セフィロスの声にビクンと身を竦ませ、は硬直した。

動けない。この男に捕らえられたものは、きっと一生逃げられない。

セフィロスは更に強くを抱き締めると、その耳元で甘く囁いた。

「さぁ、お前は進まねばならない。私を追うのだ。そして、最後の時を・・・」

「セフィロス・・・。」

は小刻みに震える。体が言う事を利かない。

震える唇で、はセフィロスに尋ねた。

「セフィロス・・・私を元の世界に帰して・・・。この世界ではない、家族の待つ世界へ・・・。」

「帰りたいか。」

は小さく頷いた。

セフィロスの体が震える。だが、それは笑っているためだ。

セフィロスは言った。

「お前はもう2度と自分の世界へ帰ることは出来ない。お前は私から逃げられぬ。

覚悟を決め、神を恨むが良い。神・・・そう、この私をな。」

は目の前が真っ暗になったような気がした。

もう、自分の世界へは帰れない?家族は?友達は?皆に、もう会えない?

そう考えると、信じられないほどの不安がを襲った。

この世界で生きていく。どうやって?

帰る方法を探す。セフィロスが言っていることが嘘ではないと思ってしまうのに?

セフィロスは冷笑を浮かべ、自分の腕からを解放した。

「後戻りは出来ない。お前が振り向けば、そこに必ず私の影がある。」

は力なくその場に座り込んだ。

今まで心の奥に封じ込めてきた“帰りたい”という気持ちが、溢れ出した。

止めたいのに止まらない。後から後から流れ出して、を恐怖で包んでいった。

「さぁ、行くが良い。私を追え。私を追うのだ。」

そう告げると、セフィロスは姿を消した。

白い空間に、今はただ1人。

「架月・・・父さん・・・母さん・・・。」

名を呼ぶ。優しかった家族の名を。

会いたい。夢で良いから。夢で良いから、皆に会いたい。

「加奈・・・冬也・・・・。」

優しい友人達の名前。瞼の裏に、笑顔の友人達が浮かんでくる。

夢で会わせて。偽りの幸せで良いから、皆に会わせて。

そして、叶うのならばその夢が永遠に続けばいいのに。

希望のない現実になんて、目覚めたくない。










「クラウド・・・の様子、どう?」

クラウドは振り向いた。そこにいたのは、ミルクを温めて持ってきたティファだった。

クラウドは小さく頭を振る。

「・・・目覚める気配もない。何が起こってるんだ?に・・・。」

ティファは落胆の溜息をつき、ベッド傍のテーブルの上にホットミルクを置いた。

ベッドに横になっているの顔は、まるで死人のように真っ白だ。

けれど、うなされているでもなく静かに眠っている。

それが、余計に不安を刈り立たせた。

「何があったの?機関室で。セフィロスと会って・・・。」

ティファが尋ねると、クラウドは俯いた。

そして、おずおずと口を開く。

「セフィロスと会って・・・セフィロスが、に言ったんだ。

『お前は私から逃れることは出来ない』って。そして、が急に意識を失った。

その直後、ジェノバとの戦闘があって・・・けど、戦闘が終わってもは目を覚まさなかった。」

ジェノバにはかろうじて勝てた。クラウドとレッド13の2人で倒したことはすごいと思う。

だが、は一向に目を覚ます気配を見せなかったのだ。

何故。の身に、一体何が起こっている?

クラウドは額を手で押さえた。

不安が襲う。もし、このまま目覚めなかったら。

「・・・俺のせいだ・・・。」

ティファはハッとしてクラウドを見つめた。

ついこの間までとクラウドはいがみ合っていたと思ったのに。

ケンカばかりしていたと思ったのに。

クラウドは膝の上に置いた手をキツく握った。その手は小刻みに震えている。

ティファは黙ってクラウドを見つめ、そしてその肩をそっと叩いた。

「・・・大丈夫よ。そのうち目を覚ますわ。けど、クラウドにもにも今は休息が必要なの。

だから、今はゆっくり休んで。も休ませればきっと大丈夫よ。・・・ね?」

優しく言うティファに、クラウドは俯いたまま小さく頷いた。

そうであって欲しい。

目を覚まして欲しい。

頼むから。お願いだから。

ティファはひとつ頷き、気を利かしたのか静かに部屋から出て行った。

バタンと閉じられた部屋の扉。

コスタ・デル・ソルに来られたのに、全然嬉しくない。

だって、が眠っているから。

不安に思わせる寝顔で、静かに眠っているから。

目を覚まして欲しい。

クラウドは、そっとの頬に手を伸ばした。

白いの頬は、触ってみても冷たかった。

クラウドはその手をの首筋に滑らせる。生きているか確認したかった。

冷たい首筋は、確かに息衝いている。鼓動の音がする。

けれど、信じられないくらいに不安だった。

・・・。」

クラウドはに顔を近付ける。耳元で囁くように静かに言った。

「・・・聞こえてるんだろ?」

返事はない。それが無償に、どうしようもない怒りや哀しみを呼ぶ。

「・・・。」

込み上げてくる“何か”。それが涙だと気付くまでに時間はかからなかった。

俺に涙?似合いもしないものが、込み上げてきている?そんな馬鹿な。

熱いものが、頬を伝った。

クラウドは自身の頬に触れ、驚いたように顔を上げた。

涙。温かい、涙が流れた。

「何故・・・。」

、お前のせいだぞ。自分でもわからない涙が流れてくる。

なあ、どうしてなんだ

俺の涙の理由を教えてくれ。自分で考えてもわからないんだ。

お前じゃないと・・・じゃないとわからないんだ。

、教えてくれ。俺の涙の理由を。

早く目を覚ませ。

早く目を覚ますんだ。

いつもみたいに、俺をからかってくれ。

いつもみたいに、笑ってくれ。

声を聞かせてくれ、お前の声を。お前の笑い声を。

「っ・・・・・・。」

クラウドはから顔を背けた。

を見ているのが辛かった。見ていられなかった。

・・・。」









声がする。

誰かが、泣きながら私を呼んでいる。

誰?架月?それとも母さん?父さん?

冬也?そこで泣いているのは加奈?

一体、誰?


は顔を上げた。

辺りは変わらず真っ白。自分を呼んだ人物は見えない。

またセフィロス?だったらやだなぁ。

そんな能天気なことを考えて、は上を見上げた。



そう言えば、自分はなんでこの世界にいるんだっけ?

セフィロスに呼ばれて・・・そして来たこの世界だけど。

今この白い空間にいるのが、何故だかとても心地が良い。

クラウド?ティファ?エアリス?・・・誰?それ。

どこかで聞いたことのある名前だけど、私には関係ない。

寝かせて。もう、眠らせて。



―――――・・・。



誰?私を呼ぶのは。

もう呼ばないで。夢の世界で眠らせて。




―――――・・・。




誰なの?・・・この優しい声は。

なんなの?この哀しそうな声は。

そして、今かすかに見える金色の光は、何?




は顔を上げる。

白い世界に浮かび上がる金色。まさか、この白い世界の出口?

声が光の中から聞こえる。自分を呼ぶテノールヴォイス。

「クラウド?」

は無意識のうちに立ち上がっていた。

そして、声のする光に向かって駆け出す。

「クラウドなの?」

走っても走っても光は近くならない。それは、自分の気持ちの迷いの現れだろうか。

自分は迷っているのかもしれない。

この夢の世界にずっといたいと。ここにいれば夢が見れるのだと。

だから、光に向かうのを戸惑っているのかもしれない。

けれど。

「・・・クラウド。」

は一度立ち止まり、それからもう一度駆け出した。

迷わない。

私はクラウドの元へ戻る。

そう決意した瞬間、ぐんぐん光が近付いてきた。

近付く。走れる。向かえる。どんどん、光へと。

うん、今行くよ。

夢をずっと見れたらいいなって思ってたけど、それじゃ逃げてるのと同じだもんね。

私逃げないよ。クラウド達が待ってくれているのなら。

光は目前。

は、迷わず光に飛び込んだ。








「・・・?」

クラウドは顔を上げた。

の頬が、だんだんと優しい桃色に変化していく。

その頬に触れてみれば、ほんのりと温かい。

・・・。」

クラウドは身を乗り出す。そして、の手を強く握った。

。」

呼びかける。すると、少しが眉を寄せた。

の手を更に強く握る。想いを込めて。

そして、ゆっくりとその瞼が開いていく瞬間を見たときには、また涙が流れるかと思った。

目頭が熱くなる。目の前のが歪んで、何も見えなくなる。

「・・・クラウド・・・?」

涙を見られたくなくて、クラウドは顔を背けた。

痛くなるほど唇を噛み締めて、震えるほどの手を強く握り締めて。

それでも、涙は止まらなかった。

は不思議そうにクラウドをぼんやりと見つめていたが、やがてゆっくりと体を起こした。

少しまだ言う事を利かない体に力を入れ、そっと静かに体を起こす。

そして、心配そうにクラウドを見つめた。

「クラウド・・・?」

その声は間違いなくのもので。クラウドは目を大きく見開いた。

が、目を覚ましてくれた。

心にあった不安や怒り、哀しみが驚くほどすんなりと薄れていく。

「クラ・・・」

がもう一度口を開きかけたとき、クラウドは急にの腕を引っ張って自分の方へ倒れこませた。

いきなりのことには目を丸くし、けれど抵抗することもなくクラウドの胸に倒れこむ。

クラウドは、逞しいその腕でしっかりとを抱き締めた。

ぎゅっと。強く。

は突然のクラウドの抱擁に驚き、顔を真っ赤に染める。

けれど抵抗すればするほどクラウドはを強く抱き締めた。

「見るな。」

クラウドは短く言った。その言葉に、は動きを止める。

「こんな顔・・・見て欲しくない。」

「クラウド・・・。」

ボロボロに泣いた情けない泣き顔なんて。

赤く腫れた瞳なんて。

はそっとクラウドの背中に腕を回すと、その背中をポンポンと叩いた。

「大丈夫。私笑わないわ。私のために泣いてくれたんだよね?ありがとう。」

自分のことを想って泣いてくれた。そんな涙を何故笑える?

笑うはずがない。嬉しくてたまらないというのに。

クラウド。

「ありがとう。・・・クラウド。」

はそっとクラウドの腕を解いて、体を離した。

そして、俯いているクラウドの顔に両手で触れる。

濡れた頬が痛々しくて、は眉を寄せた。

俯いたその顔を、ゆっくりと自分の方に向かせる。

赤く腫れた瞳。そこから流れ出している涙。赤くなった頬。

は、やわらかく微笑んだ。

「私ここにいるわ。生きてる。クラウドが待っててくれるのなら、何度でも戻ってくる。」

例え死の淵にいても。

クラウドの元へ、戻ってくる。必ず。

いつもならいがみ合って顔を背けてしまう仲なのに。

何故だろう。今日は互いに素直になれた気がする。

は自分でも思っている。今日の自分は自分らしくないと。

泣いてる男なんて見たら、その背中を思いきり叩いて「情けない!」と怒鳴るような自分が、

今日はどうしてこんなにやわらかく接せられるのだろう。

けど、やっぱり最後は自分らしくしたい。

はクラウドの顔をじっと見つめて、その額にかなり力を込めてデコピンをお見舞いした。

クラウドは小さく声を発し、表情を歪めて額を手で覆う。

その手の下から覗いたうらめしそうな瞳。

それが可愛らしくて、面白くって、は声を上げて笑った。

クラウドは少し顔を赤く染め、そのまま顔を背けてしまった。

ああもう。この男は。

は布団をめくり、体を床に下ろそうとした。それをクラウドが慌てて制す。

「病み上がりだろ。急に動くとまた倒れるぞ。」

「平気よ。私が倒れたのはセフィロスの所為だもの。夢で見たこと、皆に話さないと。」

セフィロスが自分に言ったことを、皆に話さなければ。

全てを話すのはとても辛いけれど、きっと皆になら話せる。

何故なら、今この世界で頼れるのはクラウド達しかいないのだから。

自分が裏切り者だという道理はわかった。けれど、「はいそうですか」と納得なんて出来ない。

セフィロスの言ったことに従うのは嫌気が差すけれど、今は従うしかない。

けれどやすやすとセフィロスに勝利をくれてやるわけもない。

自分で物語の最後を見送り、自分で納得する結果を見出してみせる。

それが、“”なのだから。






クラウドとともに宿屋のロビーに向かうと、そこには仲間達全員がそろっていた。

ロビーに足を踏み入れた途端に全員の視線が集まり、少し戸惑ってしまった。

驚いた目。歓喜している目。心配そうな目。全て、仲間達の瞳。

!!」

一番に叫んで飛び付いて来たのはエアリスだった。

涙を浮かべて、に抱き付いて動かない。それほど、心配してくれていたのだとわかった。

そしてその直後、泣くのをこらえた笑みを浮かべたティファが近寄ってきた。

が笑みを浮かべると、ティファはエアリスごとに抱き付いた。

その手がかすかに震えている。

は申し訳ない気持ちになった。心配してくれていた。待ってくれていたのだと実感させられる。

バレットとレッド13もほっとしたような微笑みを浮かべて、女3人の抱擁を見守っている。

「皆、心配かけてごめんね。もう大丈夫よ。」

・・・。ごめんね、守ってあげられなくてごめんね。同じセトラなのに・・・守ってあげたかったのに」

「エアリス・・・。」

エアリスは体を離すと、辛そうな顔をしていた。

けれどが笑みを浮かべると、笑ってくれた。

「皆に話したいことがあるの。セフィロスによって意識を失って、見ていた夢の話。」

古代種の裏切り者の話。自分の世界の話。全てを。


が言うと、皆真剣な表情をして各々座り込んだ。

の話をしっかりと聞こうとしているのだろう。

クラウドとも皆に近寄り、腰を下ろした。

一呼吸おいてから、はゆっくりと語り出す。

「私はセフィロスに『古代種の裏切り者』と呼ばれてる。それが何故か、私にもわからなかった。

でも、夢でセフィロスは教えてくれた。私は、『古代種の裏切り者』なのだと・・・。」






今から2000年前、ジェノバという災厄が星に降りそそいだ。

セトラとジェノバの激しい戦い。セトラは犠牲を増やし、とうとう十数名になってしまったという。

そして、そのセトラ達はある1人のセトラを異世界に逃がした。

そのセトラが、の祖先であるという。

本来なら2000年も経てば古代種の血は薄まり、滅するはずだった。

も、普通の人間として生まれるはずだった。

なのに、は通常よりも強い古代種の力を持ち、生まれてきた。

逃げた古代種の子孫。それが

逃げた古代種は裏切り者。その子孫であるも、裏切り者だという。





「そして、私はセフィロスに言った。私を、元いた世界に・・・『地球』に帰して、と。」




セフィロスはその願いを冷笑で振り払った。

冷たい笑みを浮かべて、言ったのだ。




―――――もう2度と、元の世界に帰ることは出来ない、と・・・。





全員が驚いてを見つめた。

が異世界から来たというのは知っている。けれど、いつか帰るものだと思っていたのだ。

それが叶わないだなんて、そんな皮肉な話はないじゃないか。

だって、家族や大切な友人は、その元いた世界にいるのだから。

家族や友人に2度と会えなくなる。そんな残酷な話があるというのか。

・・・。」

ティファが眉を寄せて言った。

けれどは苦笑を浮かべる。

「ま、仕方ないわね。私の、ひいひいひいひい・・・おばあちゃんかおじいちゃんが裏切り者なんだから。

どうやってこの星で、この世界で暮らしてこう、とかそういうこと考えるのはやめる。

だって今考えても何にもならないじゃない。

今はセフィロスを追うことだけ考える。でないと、また倒れかねないでしょ?」

その言葉が本心なのか、強がりなのかは見て取れなかった。

ただ、辛そうには見えた。寂しいのか、哀しいのか、不安なのかはわからないけれど。

「以上、私の話は終わり!何か質問はある?」

声を大きくしては言う。おずおずと口を開いたのはエアリスだった。

「もし・・・もし、よ?元の世界に帰る方法が見つかったとしたら・・・は、どうするの・・・?」

問われて、逆に自分が問い返したくなった。『そんな方法本当にあるのか』と。

はその言葉を飲み込み、しばし考えて言った。

「・・・さぁ。その時になってみないとわからないわ。」

嘘じゃない。きっと、今考えても答えは出ない。

自分は、帰る方法が見つかったら本当に帰るか否か。

むしろ、今は考えたくないのかもしれない。

「とにかく、心配かけてごめん。もう大丈夫だから、気にしないでね。

クラウド、いつ出発するの?」

隣のクラウドに尋ねると、クラウドは急に話を振られて驚いたのか目を丸くした。

でもすぐに仲間達を見回すと、結論を出す。

「・・・もう少し休憩したら、出発しよう。メンバーは俺と、それからレッド13で行く。」

は少し意外そうな顔をしてクラウドを見つめた。




その場は解散となり、仲間達も散り散りにどこかへ行ってしまう。

ロビーに残されたのはとクラウドの2人だけだ。

はしばらくしてから、クラウドに尋ねた。

「どうしてメンバーに私を加えてくれたのかしらね、クールなリーダーは。」

クラウドはチラリとを一瞥すると、まるで独り言のように呟いた。

「・・・見張ってないとまた倒れたり、一人でどこかに行ってしまうかもしれないからな。

・・・あんなに焦るのは、もうごめんだ。」

は目を丸くした。

彼なりに、心配してくれていたのだとわかる。

は苦笑にも似た笑みを浮かべると、言った。

「ちゃんと見張ってよね。どこかに行っちゃわないように。」

「ちゃんと見張ってるさ。どこかに行かないようにな。」












<続く>


=コメント=
とりあえずコスタ・デル・ソルに到着しました。
次回からコレル&ゴールドソーサー編です。
出来たらバレットのお話まで到達したいねぇ。
この話からクラウドの態度がだんだん変わっていきます。
自覚したのかねぇ(笑
とにかく、どんどんやわらかくなりますよ、態度が。
んでもってラブラブになっちゃえ!(笑

ご期待ください!