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『俺さぁ、仲間って大切だと思うんだよな』

弟の声がする。小生意気だけれど、大切な弟の声が。

『架月?・・・どこにいるの?』

辺りを見回しても、どこにも姿が見えない。

ただ、自分の足音と声が響くだけの空間だ。

を支えてくれるのって、きっと大切な仲間の存在だと思うんだ』

『架月!』

声に向かって叫ぶ。どこにいるのか見えないのに、声だけが聞こえる。

『架月!あんたどこにいるの!?隠れてないで出てきなさい!』

不安になって、叫ぶ。

真っ暗な場所に自分の声が響き渡り、消えた。

はいつでも頑張り過ぎなんだよ。仲間に頼ってみろよ、もっと』

『仲間?・・・誰のことを言っているの?架月!』

はふと立ち止まる。ぼんやりとした光が見える。

その光の前に、誰かが立っている。

次第にそのシルエットがはっきりとしてきて、は目を細めた。

『・・・架月?』

『きっと、にとって何よりも大切な存在が現れるさ』

辺りに、急に光が満ちた。それとともに、はっきりとしていたシルエットが掻き消される。

は目を見開いて走り出す。

けれど、行けども行けども何も見えない。

『架月ーーーーっ!!!』

最後に叫んだ自分の声も、光の中に消えていった。










I love my life.










エレベーターでエルジュノンに上がり、はふぅ、とひとつ溜息をついた。

レノとルードの名前のおかげで上に上がることは出来たが、ここからどうするかが問題だ。

とりあえず元の世界に戻るには、セフィロスとやらに会う必要がありそうだ。

それは前々から思っていた。

何故なら、自分をこの世界に引き込んだのはセフィロスなのだから。

セフィロスに会えば、元の世界に戻れるかもしれない。いや、恐らく戻れるだろう。

そして、そのセフィロスに会うにはエルジュノンを通過する必要がある。

はもう一度溜息をつくと、ゆっくりと歩き出した。



エルジュノンは機械だらけだ。

壁に訳のわからないボタンがあったり、ふと覗いてみた扉の向こうには不思議な機械があったり。

すれ違う神羅の兵士達は忙しく走り回っているし、ルーファウス歓迎式典があるというのは本当のようだ。

こうしてただ歩いていても仕方がない。

は、目の前から来た神羅兵のひとりを呼び止めた。

「ちょっと聞きたいんだけど。」

「はっ。自分に何かご用でありましょうか?」

偉そうに話し掛けたからだろうか。自分を上司と勘違いしているらしい。

だがまぁ、それも好都合というものである。

「タークスのレノとルードを知らない?ここに来るのは初めてで、迷っちゃったのよ。」

「は、レノさんとルードさんですか?レノさんは見ておりませんが、ルードさんなら先ほど

エルジュノン大通りにある酒場にいるところを見ました。」

「エルジュノン大通りの酒場ね。大通りはどっち?」

「そこを真っ直ぐ行けば大通りに出ます。」

随分と丁寧におしえてくれたものだ。

は神羅兵に礼を言うと、大通りに向かって歩を進めた。

相変わらず忙しく走り回る神羅兵とすれ違ったが、気に止めることもなかった。

そういえば、すれ違った兵士達の中で一人じっと自分を見つめた兵士がいたような気もしたが、

まぁ、きっと気のせいだろう。







エルジュノンの大通りに出て、は額に手を当てて空を仰いだ。

なんと大きい通りなのだろう。ルードを探すのにも手間取りそうだ。

酒場と簡単に言っても、こんなに広い通りなのだ。

簡単に見つかるはずもない。

「はぁ・・・。」

は溜息をつき、再び歩き出した。

酒場を求めて大通りをフラフラ。嫌な相手に見つからなければ良いのだが。

例えばクラウドとか。ルーファウスとか。ツォンとか。

見つからないという保証はどこにもない。ここは早いところルードを見つけた方が良さそうだ。

は少し足の速度を速めた。

それからふと立ち止まり、目を細める。

見覚えのあるスキンヘッドがひとつの店から出てくるのが見えたのだ。

サングラスに黒スーツ。

間違いない、ルードである。

探すのに手間取るかと思ったが、幸運なことにルードの方から現れてくれた。

はルードに向かって一直線に駆け出した。

「ルード!!」

に気付いたルードが振り向く。そして、少し驚いた表情を浮かべた。

・・・。お前、どうしてここに。」

「いろいろと訳があって、クラウドとケンカ別れしたの。ルードがエルジュノンにいて良かったわ。」

ルードはしばらく沈黙していたが、やがて口を開いた。

「・・・俺に、何か用だったのか?」

「そう。聞きたいことがあって。セフィロスがどこにいるか、もしくはどこに行ったか知らない?」

ルードは腕を組んで考え込んだ。

ぐるりと辺りを見回し、改めてを見つめる。

「・・・俺達タークスは今、セフィロスを追うという任務を与えられている。

情報としては、セフィロスはここ、ジュノンにいるはずだ。けれど見当たらない。

何にしろ、セフィロスに会うつもりなら海を越える方がいいだろう。

セフィロスがジュノンに来たということは、海を越えるつもりか、もしくは越えた後だろうからな。」

しゃべるのが苦手のはずのルードが、ここまで丁寧におしえてくれた。

なんだか嬉しくなって、は笑顔を浮かべて礼を言う。

「海を越える、か・・・。まさか泳いで越えるわけにはいかないでしょうし・・・困ったわね。」

「今なら海を越える船がある。タイミングも丁度良いだろう。」

ルードはを酒場の中に誘った。は首を傾げる。

酒場の中に、何かがあるらしい。

ここはルードについて行った方が良さそうだ。

はひとつ頷くと、ルードとともに酒場の中に入って行った。



「マスター。奥の部屋を借りるぞ。」

ルードは酒場の店主にそう声を掛けると、を酒場奥の部屋に連れ込んだ。

その部屋にはロッカーがいくつかあり、何やら小さな会議室のような雰囲気もある。

「何?ここ。」

「・・・これに着替えろ。」

ふと振り向くと、ルードは黒スーツを手にしていた。

見るからに女性用のようだが、何故それに着替える必要があるのかがわからない。

「何で?」

「今のままの格好じゃ、きっと追っ手に捕まる。タークスとして船に乗れば、まず捕まることはないだろう。」

は改めて黒スーツを見つめた。

つまりは、変装しろ、と。そういうことか。

なるほど、確かに今のこの姿のままでは少々危険かもしれない。

はルードからスーツ一式を受け取ると、辺りをキョロキョロと見回した。

隠れて着替えられそうな場所はない。

「・・・ルード、後ろ向いててもらえるかしら。」

少々睨んでルードに言う。

ルードはハッとすると、ゆっくりといつも通りの動きで後ろを向いた。

このルードが覗き見などするとは思えない。それが唯一の救いだった。

エアリスからもらった服を脱ぎ、タークスのスーツに着替える。

サイズは驚くほどぴったりだった。本当にタークスになった気分だ。

「ルード、もう良いわよ。」

ルードは振り向く。それから小さく頷き、サングラスをひとつに手渡した。

「それもかけた方がいい。」

サングラスを受け取り、かける。ふむ。

今自分がどのようになっているのかはわからないが、サングラスもあった方がしっくりくるのだろう。

「その脱いだ服も今後使うだろう。この鞄を持っていけ。」

「何から何まで悪いわね。助かったわ。」

黒い鞄を受け取り、笑顔で言う。

だが思い出したようには付け加えた。

「あ、けどまだタークスになるって決めたわけじゃないからね。

今回は本当に感謝してるけど、タークスになるつもりは、実はまだないの。」

「承知している。・・・お前のことだからな。何かに縛られるよりも、今の方が良いだろう。」

「あら、私のことなかなかわかってるのね。さすがはタークスってトコかしら。」

クスクスと笑って、は改めてルードを見つめた。

「ウソ。本当に感謝してるわ。ありがとう、ルード。」

「・・・気にするな。」

もうおしゃべり出来るのも終わりらしい。

「ルード、最後にひとつお願いがあるの。レノによろしく伝えておいて。

怪我してるって聞いたから。・・・あんまり無茶するんじゃないわよって言っておいて。」

「・・・了解。」

さっきまでいろいろとしゃべっていたのに、あっという間に無愛想に戻ってしまった。

そのギャップがおかしくて、やはりは笑った。

「それじゃ、ありがとう。私行くわ。」

「・・・ああ。船着場に行けば、乗る船はわかるだろう。ひとつしかないからな。」

「わかったわ。本当にありがとう。セフィロスを追っていれば、いずれまた会えるでしょう。

そのときまでのさよならね。」

はそう言うと、部屋を出た。

酒場のマスターに礼を述べ、船着場に向かって駆け出した。







大通りを突き抜け、真っ直ぐ行ったところに船着場はあった。

はいかにも偉そうな態度で止まっている船へと近寄る。

すると、やはりというか一人の神羅兵が話し掛けてきた。

いくら見た目がタークスとは言え、何も聞かれずに船に乗れるとは思っていなかったが。

「この船はコスタ・デル・ソルへ向かう船ですが、えぇと・・・タークスの方ですか?」

「ええ。ある任務でコスタ・デル・ソルへ向かうことになったの。ルーファウスからの許可は得ているわ。」

我ながら良く出来た言い訳だと思う。

なんだか、嘘をつくのにも慣れたようだ。神羅兵は疑っている様子を全く見せない。

神羅兵は敬礼し、を船の中へと促した。

は乗船し、階段を上がって甲板に出た。

まだ船が動き出すには時間があるらしい。船の上では神羅兵が忙しく働いている。

は適当なところに鞄を置き、座り込んだ。

潮風が爽やかで気持ちが良い。日本の汚れた海とは違い、随分と澄んだ海だ。

だから恐らく風も綺麗なのだろう。

ふと自分の周りを見ると、働いている神羅兵の一人がチラチラと自分を見ている。

は眉をひそめ、首を傾げた。

「・・・私の顔に、何かついてるかしら。」

自分を見つめている神羅兵にそう声を掛けてみる。

神羅兵は声を掛けられたことに驚いたようで、少しビクリと身を竦ませた。

だがすぐに顔を背けてしまう。

「・・・ん??」

何かがおかしい。確かタークスは神羅兵よりも階級が上のはずだ。

ということは、たかだか神羅兵ごときが上司の質問を無視して良いはずがない。

なのにこの神羅兵は顔を背けてしまったし、その上背を向けてどこかへ行こうとしている。

おかしい。何かが違っている。

「ちょっと、そこのあなた。」

はその神羅兵を呼び止めた。

神羅兵は足を止める。

「去るなら私の質問に答えてからにして欲しいわね。」

「・・・・・・。」

神羅兵は黙っている。は眉をひそめた。

「聞いているの?」

「・・・・・・。」

口を開こうとしない神羅兵。はだんだんと苛立ってきた。

尋ねても答えない。逆に質問してくるでもないし、その前にしゃべろうとしない。

なんだか無償に腹が立つ。

「・・・ふぅん、そういう態度取るんだ。」

ならもう容赦はしない。

は立ち上がると、神羅兵に飛び掛かった。

いきなりのことで神羅兵は驚いて慌てているが、そんなことは気にしない。

「その被り物を剥いで、顔に一発お見舞いしてやるわ!!」

「・・・!!」

嗚呼哀しきかな。暴力に向いてしまうのは自分の悪いところだ。

だがわかっていても自分の性分は変えられないもので。

けれど、こうして飛び掛かっていなければ、もしかしたら驚愕の再会はなかったのかもしれない。

は神羅兵の被り物を剥ぎ、それから目を丸くした。

「はぁっ!?」

「かっ・・・返せ!!」

が奪い取った被り物をひったくり、その神羅兵は顔を背けた。

いや、正しくは神羅兵などではなかった。

約二日振りに見たその顔を忘れる者など、どこにいるだろうか。

金色の髪に青い瞳、そして白い肌。

「クラウドっ!?」

「声が大きいっ!!静かにしろっ!!」

クラウドに言われて、は慌てて口を手で塞いだ。

「なんだぁ?何かあったのか??」

クラウドの後ろから神羅兵(これは純粋な神羅カンパニーの社員である)が歩み寄ってきた。

騒ぎを聞きつけて来たらしい。

クラウドは慌てて被り物を装着すると、敬礼をしながら振り向いてはっきりと言った。

「はっ。こちらは異常なしであります!」

「そうか?なら、良いんだが・・・。」

神羅兵は頷いてその場から去っていった。

クラウドの演技も上手いものだ。下っ端兵士の役が演じられるとは思いもしなかったが。

完璧に2人きりになったところで、クラウドはやっとに向き直った。

どことなく空気が重い。というか、気まずい。

怒っているのだろうか?クラウドは何も言おうとしない。

「・・・クラウドが何も聞かないなら私から聞く。何でここにいるの?ティファやエアリスや、皆は?」

が尋ねると、一拍の沈黙の後クラウドが口を開いた。

「・・・俺達はコスタ・デル・ソルに向かう途中だ。ティファやエアリス達も神羅兵に変装して紛れている。」

「ほぅ。」

沈黙。

会話終了か?

「それはそうとして。」

会話再開。

「私が聞きたいのは、何でコスタ・デル・ソルに向かってるかってことよ。」

「・・・セフィロスが海を渡るという情報を手に入れた。だからこうして俺達も海を渡っている。」

「ほぅ。」

沈黙。

どうでもいいが、なかなか会話が進まない。

こちらから話したくてもクラウドは何も尋ねて来ないし、かといって自分からベラベラ話すのは癪に障る。

もう縁は切ったのだから、自分のことを話す必要はないはず。

参ったな、とは内心思いながら髪をかき上げた。

クラウドと対峙してる今、黙ってこの場を離れるわけにはいかないだろう。

沈黙が痛い。

「・・・悪かったな。」

「え?」

はふとクラウドを見つめた。急なことに口をぽかんと開けてしまったではないか。

今、クラウドは一体なんと言った??

「ごめん、私耳が遠くなってるみたい。なんて言ったのか聞こえなかったわ。

よければもう一度言ってくれると助かるんだけど。」

「・・・二度と言うか、馬鹿。」

クラウドは顔を背けてしまった。

は少々混乱する頭を抱えて、眉をひそめてクラウドを見つめた。

「今・・・もしかして、謝罪の言葉を述べたかね?クラウドくん。」

「・・・・・・。」

クラウドは何も言わない。この男の沈黙は、肯定と取って良いことになっている。

はサングラスを上げ、クラウドの顔をまじまじと覗き込んだ。

「・・・なんだよ。」

ばつが悪そうにクラウドはを睨む。

その顔が、何故かとても可愛らしくて、は笑いを噛み殺した。

この無愛想男でも、こんな表情するんだ。

自然と笑みが浮かんでくる。とても、とても嬉しかった。

「・・・ううん。私も言い過ぎたって思ってたの。謝ってくれてありがと。私からも謝る勇気が出たわ。」

軽く微笑んでは言い、改めてクラウドに向き直った。

「私こそごめん。頭に血が上って、クラウドにとても酷いこと言ったと思う。」

はレノが大好きだ。レノが敵とわかっていても、やはり大好きという気持ちは変えられない。

だから、その大好きなレノを傷付けたクラウドが許せなかった。

けれどクラウド達だって、もしかしたらレノと戦いたくなかったのかもしれない。

互いに不本意のまま、仕方なく剣を交えたのかもしれないのに。

あまりに幼く、そして酷いことをクラウドに言ってしまった。

「私としたことが、すっごく幼いこと言っちゃって恥ずかしいわ。」

苦笑を浮かべてクラウドに言う。

クラウドは小さく鼻を鳴らし、俯いた。

その顔が赤く見えたのは、の錯覚かもしれないし、そうじゃないかもしれない。

「・・・撤回するんだろ。」

「は?何を?」

唐突に言ったクラウドに、は頓狂な声で返す。

「・・・お前、“縁を切る”って言った。」

ああ、とは手を叩いた。勢いに任せていたら、そんな言葉を言ってしまったのだった。

もちろんあの時は本気のつもりだったし、もう縁なんて修正しないと思っていたけど。

「・・・撤回するよ。ありがとう、クラウド。」

わかり合えたのなら、もう良い。

なんだか、そんな気持ちになった。

「・・・お前がいないと、何故か調子が狂う。」

「あら奇遇ね。私も同じことを思っていたところよ。」

互いに言い合い、顔を見合わせて同時に噴き出した。

心が温かい。こんなに、“仲間”が大切だなんて思いもしなかった。

「クラウド。私、クラウド達の仲間だって思って良いの?」

クラウドは一瞬きょとんとした表情を見せ、それから口を尖らせて言った。

「・・・お前、俺達の仲間じゃないのなら、今までなんのつもりだったんだ?」

おどけたその一言で充分だった。

「・・・さーんきゅ。」

ニカッと笑い、サングラスをかけながらクラウドに言った。

夢で見た架月の言葉。あれが真実なのか本当の夢なのかはわからない。

けれど、思う。

うん、仲間に頼るのって、悪いことじゃないかもしれない。

きっと、仲間がいてくれるだけで何倍も強くなれるんだ。

架月、いつもあんたには助けられてるんだね。

「クラウド!!そんな美人さんとお話ししてる暇があったら、の情報を集めなさいよ!」

大声で言いながら、一人の兵がこちらに歩み寄ってくる。

被り物を被っているから顔は見えないが、声で誰だかすぐにわかった。ティファだ。

けれど、すぐに正体を明かしてしまったのでは面白くない。

は声を少し低めにして、言った。

「下っ端兵士が、随分な口を叩くわね。何様のつもりかしら?」

言うと、ティファはビクリと身を竦ませて敬礼をした。

「す、すみません。」

あまりに可愛らしい反応に、つい噴き出してしまう。

声を上げて笑うを不思議そうに見やりながら、ティファは首を傾げた。

「ごめん、冗談よティファ。」

サングラスを上げて、は笑った。

ティファは一瞬呆気に取られてを見つめる。ぽかんと開けた口が面白い。

ッ!?」

「どう?なかなかの変装でしょう。」

ティファは驚きを隠せない様子でを見つめている。

がいなくなって、俺がどれだけ酷い目に遭ったと思ってるんだ?

ティファとエアリスには怒鳴られるし、バレットとレッド13には質問攻めにされるし・・・。」

溜息をつくクラウドに笑い、は改めてティファを見つめた。

「仲直りしたからもう大丈夫。心配かけたかしら。ごめんね。」

「ううんっ。大丈夫。どうせクラウドが馬鹿なこと言ったんでしょ?

が戻ってきてくれただけで私は満足よ、本当に良かった・・・。」

心底安心したというようにティファは言った。

自分が戻ってくることを、望んでくれていた。

それが何より嬉しくて、はやわらかい笑みを浮かべる。





『緊急連絡! 不審人物を発見の報告アリ!作業のない各員は艦内を調査。発見しだい通報のこと!

繰り返す。不審人物を発見の報告アリ!作業のない各員は艦内を調査。発見しだい通報のこと!』

クラウド達はハッと顔を上げた。

随分と急な放送だ。不審人物なんて、今のところこの船上では見ていない。

クラウド達は顔を見合わせ、そして青ざめた。

「俺達の中の誰かが見つかったのか!?」

「そういえば、バレットを見てないの!まさか・・・!!」

三人は即座に立ち上がり、仲間達の姿を探した。

階段を駆け登って現れた随分と華奢な兵士。エアリスだ。

「大丈夫!?」

「皆大丈夫か!?」

後ろからも声がした。そこには、バレットとレッド13の姿がある。

クラウド達は確認するようにその場に集まってきた仲間の顔を見渡した。

全員そろっている。

エアリスはに目を止めて声を上げた。

!?今までどこにいたの?心配してたの、どうしてここに・・・!

でも無事で良かったわ、何があったのかちゃんと話して!」

「大丈夫、私は平気だったから。ちゃんと後で詳しく話すわ。

それよりも今は状況確認よ。私達の中でいない人物はナシ。

全員集まっているということは不審人物は私達じゃないということよ。」

「ということは・・・。」

全員の視線がに集まる。

ははっきりと言った。

「ええ、十中八九セフィロスでしょうね。」

仲間達がそれぞれのリアクションを示す。青ざめる者もいれば、驚く者もいる。

その中でただ一人冷静な顔をしているのはクラウド。

クラウドは言った。

「確かめよう。、それからレッド13、ついて来てくれ。」

とレッド13は頷く。

は心のどこかで確信していた。

セフィロスに会える。そして、会えばきっと何かがわかる、と。







クラウド達は甲板を降り、船倉へ向かった。

そこは酷い有様だった。幾人もの兵士達が血まみれで倒れていて、

息がある兵士も多分もう少しで事切れてしまうだろう。

息のある兵士が、息絶え絶えに言った。

「・・・機関室に・・・不審・・・人物・・・!

いや・・・ちが・・・う・・・あれ・・・は・・・人間なんかじゃ・・・な・・・」

機関室。これほどまでに兵士達を傷付けて行く強敵。

兵士達の傷口を見ればわかる。刀で斬られた痕だ。しかも刀身の長い刀。

その刀を使える人物が、この世界に一人しかいないことを知っている。

三人は顔を見合わせ頷き、ゆっくりと機関室へ足を進めた。



機関室で三人は立ち止まった。

そして、目の前に後ろ向きで立っている人物をじっと見つめる。

「セフィロス・・・・なのか?」

クラウドが尋ねると、ゆっくりと振り向く【ソレ】。

いや、それはセフィロスではなかった。神羅の兵士だった。

兵士は既に事切れている。しかし不安定にも佇んでいる。

「違う・・・セフィロスじゃない!」

クラウドが叫ぶと同時に兵士は倒れ、その場に嫌な空気が流れた。





――――――――・・・・・長き眠りをへて・・・・・時は・・・・――――――――






                       ≪ 時は・・・・・満ちた・・・・・ ≫






声が聞こえた。

はハッとして耳を押さえる。

ゆっくりと、目の前にセフィロスが姿を現した。

銀色の髪が風もないのに靡き、その目はまるで何も見ていないかのよう。

「セフィロス! 生きていたんだな!」

クラウドが叫ぶ。だがセフィロスはぼんやりとクラウドを見つめ、口を開いた。

「・・・・・・・・・・・・・・・誰だ」

「俺を忘れたっていうのか! 俺はクラウドだ!」

叫びを止められないクラウド。セフィロスは目を細める。

「クラウド・・・」

「セフィロス!何を考えている!何をするつもりだ!」

セフィロスは何も言わない。は一歩前に出て、セフィロスに叫んだ。

「セフィロス!!私は!私を古代種の裏切り者と呼んだのはあなたね!?

何故私をこの世界に呼んだの!?何故私は裏切り者なの!?

元の世界に戻る方法をおしえて!!今すぐに!!」

の叫びを耳にし、セフィロスは多少目を見開いた。

そして、抑揚のない声でに告げる。

「・・・お前か・・・、古代種の裏切り者よ・・・。お前は私から逃れることは出来ない・・・。

何故ならお前は・・・私の一部なのだから・・・・。」

セフィロスの口元が、にやりと歪められた。

その不気味な笑みにぞくりと悪寒が走る。は一歩後退った。

だがセフィロスはに一歩近寄る。

「・・・何故逃げる?・・・お前は私から逃げられない。さあ、私の元へ・・・。」

近付いてくるセフィロスに、嫌な息苦しさを感じては後ろに下がった。

クラウドがの前に立ち、セフィロスを睨みつける。庇ってくれているのだろうか。

「・・・時は・・・満ちた・・・」

セフィロスが呟く。

「何!?何を言ってるんだ!? もっと・・・!」

クラウドが言い掛けたとき、セフィロスが宙に浮いた。

そして、その鋭い瞳でを見据える。




ガツン、と、頭に鋭い痛みが走った。

!?」

体に力が入らない。鼓動の音が、耳の奥で響く。

それがやけにうるさくて、頭の痛みを増幅させた。

体が重い。重力に逆らうことが出来ない。

全てがスローモーションだ。

ニヤリと笑うセフィロスも、自分に駆け寄ってくるクラウドの姿も。

どくん、どくん。

うるさい。鼓動の音が、うるさい。








――――――――・・・お前は私と来るが良い・・・――――――――








この人は何を言っているの?

は疑問を浮かべながらも、強制的に襲ってくる意識の遠のきを感じていた。











≪ クラ・・・ウド・・・・ ≫














せっかく再会して、仲直りが出来たというのに。

意識が暗転する。

皮肉なものだ。

意識をなくす前に呼んだ名は、大切な弟の名前ではなく、

彼、の名前だったなんて。














<続く>


=コメント=
久々の更新かもしれません。
あー・・・自分が進めたい方向に物語が進んでくれないのは問題ですね(爆
こんなところで意識失うなぁ!てかセフィロス、さんに余計なことすんなぁ!(爆
まぁ、なってしまったものは仕方ないとして。
ここらへんからクラウドの態度が一変していきます。
そろそろ自覚してもいいでしょーよ、クラウドくん(笑
次回はセフィロスのお話と、クラウドがだんだんと自覚するお話。

ご期待ください!