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『俺はさ、ありのままので良いと思うけど。』

『何よ、急に。』

『いや?最近・・・頑張りすぎじゃないかって思うから。』

『そんなことないわよ。あんたこそ、勉強しっかりやってるの?』

『ちぇっ。何かと心配すれば、すぐにそれだもんなぁー。』

『あんたのこの前の答案用紙を見れば、誰でも心配になるわよ。』

『あれはただ単にやる気がなかっただけ。』

『あんたの世界はやる気で廻ってるわけ?』

『まぁね』

『はぁ・・・なんて手のかかる弟かしら。』

『それを言うなら、だって手のかかる姉だけど?』

『私のどこに手がかかるってのよ。』

『ん?んん・・・そうだなぁー・・・。』





《今にも壊れそうだから、放っておけない。無理してるってわかるから、支えたくなるんだよ。》










I love my life.










・・・ッ!」

自分を呼ぶ声がする。必死に、自分を呼んでいる声。

それが夢なのか現実なのか区別がつかなくて、は曖昧に返事をした。

もしこの声が夢なのだとしたら、多分弟の声だ。

もしこの声が現実なのだとしたら・・・

「おいっ!いつまで寝惚けてるつもりだっ!!」

ぼんやりと目を開けて、目の前の人物を確認する。

は、ふと名前を呼んだ。

「・・・架月・・・?」

それは、大切な弟の名前。4つ年下の、弟の名前。

「カヅキ・・・?違う、、俺はクラウドだっ!」

「クラウド・・・?」

言葉を繰り返し、それでやっと目が覚めた。

ここは夢ではない、現実だ。金髪の彼が、少し怒ったような、不安そうな顔で見つめている。

は目を見開いて、がばっと体を起こした。

浅く眠るつもりだったのが、随分とぐっすり眠ってしまったようだ。

「ごめん・・・熟睡しちゃった。」

「別に構わない。休むために睡眠をとったんだからな。」

ぶっきらぼうに彼は言う。

だが、ふと沈黙が流れた。は不思議そうにクラウドをみやる。

必死になって自分のことを起こしていたのだから、何かがあったのに違いない。

なのに、クラウドは不機嫌な顔をして顔を背けてしまっているのだ。

「・・・クラウド?」

「・・・“カヅキ”って・・・男の名前か。」

「はぁ?」

は素っ頓狂な声を出した。それほどまでに、クラウドの言葉が唐突だったのだ。

不機嫌な表情のまま、「カヅキって男の名前か」なんて聞かれても。

「・・・そうだけど。」

間違ってはいない。弟の名前だから。

だが、肯定した途端クラウドの機嫌は益々悪くなった。

真っ黒なオーラが立ち上っているようにも見える。

「・・・言っとくけど、弟の名前だから。変な誤解しないでよ。」

そう、自分は誰も好きにならない。恋愛なんてくだらない。

ただ一人、自分のことだけ信じていればいい。

そう思って生きてきたのだから。

変な誤解をされても困る。

「・・・ブラコンか、お前は。」

一瞬本気で殴り飛ばそうかと思った。

「・・・うるさい。たまには可愛い弟のこと、思い出したって良いでしょう。」

軽くクラウドを睨み付けて言う。

クラウドは軽く鼻で笑うと、すっと立ち上がった。

不機嫌そうな表情は変わらないが、先ほどまでと違い、大分やわらかいオーラになっている。

何故だか知らないが、機嫌が少し良くなったようなので安心した。

「・・・で?何があったのよ。私を必死に起こしてたからには、何か理由があるんでしょ。」

ベッドにティファはいないし、牢屋の扉は開いているし。

見ればすぐに何かがあったのだと理解出来る。

「様子がおかしい。外を見てみろ。」

は立ち上がり、牢屋を出て外の様子を見た。

外には既にエアリスやティファ、バレット、そして紅蓮の毛を持つ獣が待機していた。

そして、床には血だらけの警備員が倒れている。

どうやら、もう既に事切れているようだ。

「・・・一応自己紹介をしておこうか。」

獣がに言った。動物がしゃべったことに少し驚きを感じたが、

こんな世界なのだから何が起こってもおかしくないと思い直す。

「私はレッド13。訳あってクラウド達に同行している。お見知りおきを。」

「初めまして、レッド13。私はよ。よろしく。」

軽く挨拶を交わして、改めて今の状況確認を試みた。

床には警備員の死体。そして、静まり返ったフロア。

「人間の仕業ではないな。私がこの先の様子を見てくる。」

「こいつの後始末はオレに任せて、お前らは先に行け。神羅に見つからねえうちによ!」

レッド13とバレットがそれぞれ言う。

先に行ってしまったレッド13を一度見てから、バレットの方を向き、はしっかりと頷いた。

「さ、レッド13の後を追いましょう。」

ティファが言い、クラウド達は出来るだけ目立たぬようレッド13の後を追った。




レッド13を見つけたのは、神羅ビル67階のサンプル室だった。

血まみれの研究員の死体が無造作に置かれている。明らかに変である。

そして、壊れた機械の中にはなにもない。

「ジェノバ・サンプル・・・察するに上の階に向かったようだ。

奥のサンプル用エレベーターを使ってな。」

「ジェノバ・・・?」

はレッド13に尋ねた。だが、答えたのはクラウドだった。

「・・・ジェノバ。忌まわしき化け物だ。」

憎々しげにクラウドは言葉を吐き捨てる。は眉をひそめ、壊れた機械を見つめた。

乱暴に壊されたような痕跡。何故かその痕跡を見ていると、胸の辺りがざわめいた。

「何か目的に向かっているような・・・上に・・・?」

レッド13が呟く。引き摺られたように残っている血の跡は、エレベーターへと伸びている。

そして、エレベーターの行く先は上だけだ。

クラウド達は無言で頷き合うと、血痕を追って上へと向かった。

エレベーターを使い、階段を登り、上を目指す。


そして、神羅ビル70階の社長室。

クラウド達が到着してすぐにバレットが追い付いた。

全員は、硬直して動けなくなった。目の前の光景に。

静まり返った空間が気持ち悪い。その静けさが、何かを暗示しているようで。

「死んでる・・・神羅カンパニーのボスが死んだ・・・」

バレットが呟いた。

社長室で無惨にも殺されていたのは、神羅カンパニーの社長、プレジデントだった。

生々しいほどの赤。プレジデントは大きく目を見開き、絶叫を上げたような表情で殺されていた。

ティファがプレジデントの死体に近付き、そして声を上げる。

「この刀は?!」

「セフィロスのものだ!!」

クラウドも声を上げる。

やけに長い刀。剣ではなく、刀である。は目を細めた。

気味が悪いほどに美しく、艶のある刃。

「・・・セフィロスは生きているのね?」

ティファの声で、ハッと我に返った。気持ち悪いほど美しい刀身に、正気を失っていたようだ。

そんなの様子に気付く者はなく、話が進んでゆく。

「・・・そうみたいだな。この刀を使えるのは セフィロスしかいないはずだ。」

「誰がやったっていいじゃねえか! これで神羅も終わりだ!」

バレットの言う通りだ。神羅のボスがいなくなった今、神羅が続く理由はない。

と、そこへ急に人影が飛び出した。神羅の幹部、パルマーだった。

クラウドとバレットははじかれたように駆け出し、逃げようとしたパルマーの腕を掴む。

ここで何があったのか知っているのは、恐らくこいつだけだろう。

「こここここ殺さないでくれ!」

かなり気が動転しているようだ。怯えた目でクラウドを見つめている。

「何があったんだ?」

「わ、わ、わ、わ、」

よほど混乱しているのだろう。自分でも何を言っているのかわからないようだ。

クラウドが何を尋ねても、舌が上手く回らないせいかしゃべれない。

そんなパルマーの様子を見ているうちに、なんだかだんだんイライラしてきた。

は黙ってパルマーに近寄ると、その親父面を思いっきりぶん殴った。

「うひょっ!!!」

ものすごい音がして、パルマーの横っ面が真っ赤に染まる。

衝撃で鼻血まで出してしまったようだ。

そんなパルマーに、は鋭い睨みを利かせながら言う。

「良い年して言葉もまともにしゃべれないわけ?目の前で人が殺されたくらいで情けない。

あんたそれでも世界を牛耳る神羅カンパニーの社員なわけ?バッカみたい。

本当に大した事ないのね、神羅って。」

の毒舌が炸裂した。パルマーは呆然としてを見つめている。

「仮にもお年寄りみたいだから、一発で我慢してあげたわ。」

その言葉に、一同固まった。

特に一度に平手打ちを食らっているクラウドは、ポカンとを見つめている。

確かクラウドに平手打ちをかましたときは、はこう言っていた。

『綺麗な顔だから平手打ちで我慢してあげたわ』と。

平手打ちで我慢した、というのは確かにわかる。だが、『一発で我慢した』というのは・・・。

「・・・。本当だったらあと何発くらい殴りたいの?」

「あと9発は殴りたいところね。計10発ってとこかしら。」

この時初めて、この場の全員がの本当の恐ろしさを理解した。

クラウドなど、少し青褪めているようだ。無理もない。

「・・・で?一体何があったのよ。」

ハッとして、パルマーが答えた。

「セ、セフィロスが来た。」

「セフィロスを見たの?」

「ああ、見た!この目で見た!」

「本当に見たのね?」

念を押すに、パルマーが苛立ったように答える。

「うひょっ! こんな時にウソなんか言わない!」

「言葉も上手くしゃべれなかったくせに大きな顔するんじゃないわよ。もう一発食らいたい?」

冷たい声で言われ、パルマーはぐっと押し黙った。まさにその通りである。

「そ、それに声も聞いたんだ、うひょっ!えっと『約束の地は渡さない』って ブツブツ言ってた。」

まるで大人と子供のやり取りのようだ。

はまだ不満そうだったが、「ご苦労様」と言い顔を背けた。

真っ赤に腫れた親父面を見るのは、さすがに嫌なのかもしれない。

「それじゃあ、なに?」

ティファが言った。

「約束の地っていうのは本当にあって セフィロスは約束の地を神羅から守るためにこんなことを?」

「良い奴じゃねえのか?」

バレットとティファが顔を見合わせるが、クラウドの表情は真剣なままだった。

何かを思いつめたような顔で、思い切り叫ぶ。

「約束の地を守る? 良い奴? 違う!!」

痛々しい叫び。

「そんな単純な話じゃない! 俺は知ってるんだ! セフィロスの目的は違う!」

そんなクラウドの様子を見て、は理解した。

やはり、過去にクラウドとセフィロスの間に何かがあったのだ。

何か、計り知れない何かが。



一瞬の隙を突いてパルマーが逃げ出した。

はその後を追おうとしたが、レッド13が制したのでその場に止まった。

その時、大きな音が聞こえてきた。ヘリコプターの音だ。

バレットが叫ぶ。

「ルーファウス! しまった! アイツがいたか!」

「誰?」

が尋ねると、バレットが表情を歪めて答えた。

「副社長ルーファウス。プレジデントの息子だ。」

普通に考えてプレジデントが死んだ今神羅カンパニーを継ぐのはルーファウスということになる。

つまり、まだ神羅は終わらないということか。

「どんな人なのかしら・・・。」

「血も涙もない、そう聞いたこと、あるけど。」

ティファとエアリスが言う。

どちらにしろ、ロクな人物ではないことがわかる。

6人はヘリポートに向かって駆け出した。




ヘリポートに着くと、ルーファウスがヘリから降りて来ているところだった。

鋭い瞳はどことなくレノに似ている気もするが、オーラが全然違う。

「そうか・・・やはりセフィロスは生きていたか。・・・ところで」

独り言のように呟いて、ルーファウスはクラウド達を見つめた。

そして、不快そうに眉をひそめる。

「お前達はなんだ?」

クラウド達は身構える。

「元ソルジャー・クラス1ST。クラウドだ。」

「アバランチだ!」

「同じく!」

「・・・スラムの花売り。」

「・・・実験サンプル。」

が黙っていると、全員の視線がに集まった。

は一瞬たじろいだが、ルーファウスを見つめ返して胸を張って立つと、言った。

。自慢はIQが180あることよ。何か文句でもあるかしら。」

ルーファウスを睨み付けたまま、は言い放った。

堂々とした立ち振る舞い。オーラだけなら、ルーファウスにも負けていない。

ルーファウスはじっとを見つめて、ふっと鼻で笑った。

「おかしな組み合わせだ。」

それは確かに否定出来ないので、あえて無視をしておく。

「さて、私はルーファウス。この神羅の社長だ。」

「パパが死んだら早速社長?子供の遊びみたいな社長就任ね。」

わざと相手を挑発させるつもりで言ったのだが、ルーファウスは見切っているようだ。

挑発に乗ることなく肩を竦めただけだった。

「社長就任の挨拶でも聞かせてやろうか。

親父は金の力で世界を支配しようとした。なるほど上手くいっていたようだ。

民衆は神羅に保護されていると思っているからな。

神羅で働き、給料をもらい テロリストが現れれば 神羅の軍隊が助けてくれる。」

なるほど。完璧なサークルである。しかしルーファウスは言った。

「一見完璧だ。だが私のやり方は違う。

私は世界を恐怖で支配する。親父のやり方では金がかかり過ぎるからな。

恐怖はほんの少しで人の心を支配する。愚かな民衆のために金を使う必要はない。

私は親父とは違うのだ。」

ルーファウスに言わせてみれば完璧なサークルの設計なのかもしれないが、

に言わせてみればルーファウスの設計は穴だらけだった。

は言う。

「あんたわかってない。IQ180の私の考えを甘く見るんじゃないわよ。」

「・・・何か私の思想に文句でもあるのか?」

「突っ込みどころ満載でどこから突っ込んでいいのかわかったもんじゃないわ。

まず『世界を恐怖で支配する』なんて言ってるけど、そんなことが本当に可能なのかしら。

あんたジャンヌ・ダルクの話を知らないの?魔女扱いで火あぶりにされたジャンヌの話。」

ジャンヌが出陣した戦争は、必ず勝った。ジャンヌは勝利の女神と言われた。

だが、一部の民が言った。『必ず勝ってしまうなんておかしい、きっとヤツは魔女なんだ」と。

「民衆に恐怖を与えると、確かに民衆を押さえ付けることは出来るでしょうね。

けれどその民衆の中にも勇気あるものがいるのよ。

魔女だって言われたジャンヌを殺そうとした者がいるようにね。」

結果、ジャンヌは火あぶりにされた。無実の罪を着せられ、魔女として。

「ジャンヌは聖女、正義の味方だけど、アンタの場合はどうかしら。

民衆は頭が良いのよ。アンタが悪者だってことくらい、とっくに理解してるわ。

せいぜい火あぶりにされないように、頑張ることね。世間知らずのお坊ちゃま。」

ルーファウスの表情が鋭くなった。

さすがにここまで言われてしまっては、我慢も出来ないのだろう。

とても冷たい空気。明らかにを威嚇している。

「・・・ほう。確かにお前の言う事も一理ある。・・・私の秘書にはふさわしいな。」

「残念。秘書なんて堅苦しい職業はごめんだわ。」

がキッパリと言った。

「エアリスを連れてビルから出てくれ!」

その時、クラウドが言った。

唐突だ。バレットは首を傾げている。

「なに?」

「説明は後だ! バレット! 本当の星の危機だ!」

「なんだそりゃ?」

バレットが首を傾げるのも無理ない。本当に、唐突だったのだから。

だがクラウドは焦った表情を崩さないままバレットを見つめている。

「後で話す! 今は俺を信じてくれ! 俺はこいつを倒してから行く!」

真剣な瞳。バレットは一瞬目を細めてクラウドを見たが、すぐに頷いた。

「わかったぜ、クラウド!」

バレットはエアリスとティファ、そしてを先に行くよう促す。

女3人はしばし顔を見合わせていたが、頷いて先に駆け出した。

その後を、バレットとレッド13が追う。

5人は、クラウドをヘリポートに残して神羅ビルの中へと引き返して行った。






「クラウド、なんか、思いつめてた」

69階まで下りた時、エアリスがぽつりと言った。

苦しげな、叫びに聞こえたクラウドの言葉。

クラウドは何かを知っている。そして、その重大さも。

「・・・私、クラウドを待つわ! 皆はエレベーターで先に!」

達は頷いた。ここはティファに任せた方がいい。

ティファを残して、達4人は駆け出した。

クラウドのことが心配だが、ティファがいれば大丈夫だろう。

「急げ!」

バレットの声が響く。レッド13とバレットは既にエレベーターに乗っている。

エアリスが飛び乗り、の続いて飛び乗ろうとした時だった。

急に、体が引っ張られた。

ぐいっと強い力で引っ張られ、エレベーターからどんどん遠ざかって行く。

!!」

エアリスが叫ぶ。バレットはもう間に合わないと思ったのか、エレベーターの扉を閉めた。

瞬時に理解した。置いていかれたのだと。

「馬鹿。あいつらと一緒に行動してたら、お前今頃大ピンチだぞ、と。」

「レノッ!?」

は驚いて、自分の腕を握っている人物を確認した。

突然のことに驚き過ぎて、自分が何故引っ張られているのかすらわからなかったのだ。

自分の腕を握っていたのは、レノだった。

どうやら、エレベーターに乗ろうとしたを目撃してエレベーターに乗るのを阻止したらしい。

「レノ、あんたどうして・・・」

「エレベーターの方にはもう追っ手が行ってる。

タークス候補のお前を危ない目に遭わせる訳にはいかないからな、と。」

レノが悪戯な笑みを浮かべながら言った。

「・・・つまり、助けてくれたの?」

「言い方を変えればそうなるな。」

敵なのに。

レノはの手を取り、階段を駆け下り出した。

「ちょ、ちょっと!どうするつもりなのよ!!」

「階段で60階まで駆け下りる。そこから社員用のエレベーターを使えば追っ手の心配もない。

安心しろ、今ビルの中には機械兵しかいない。お前の実戦練習にもなるだろ、と!」

レノがの腰の剣を一瞥しながら言った。

は思い出したように腰の剣を見つめた。

確かに、まだこの剣を使ったことはない。レノにもらってからまだ一度も使っていないのだ。

「そら、お出ましだぞ、と!」

レノが武器の電気ロッドを構える。目の前に、機械兵が3体迫っていた。

も冷静に腰から剣を抜き、構えた。

レノが言う。

「攻撃するときは腰を低くして、出来るだけ相手の動きをしっかりと見るんだ。

攻撃は補助武器の方からだぞ、と。」

「補助武器?」

「攻撃力が弱い方の武器のことだ、と。今のお前で言えば、短い方の剣のことだ、と。」

は腰を低くし、敵の動きをしっかりと見つめた。

それから、瞬時に飛び出して攻撃を仕掛ける。

「間合いに飛び込み過ぎると逃げられなくなる、自分の感覚で間合いを計るんだ、と!」

は機械兵に2回の攻撃を食らわした。

よろめく機械兵。レノはそのタイミングを見計らい、電気ロッドでトドメをさした。

残りの2体がたじろいでいる。

レノは口笛を吹いてを見た。

「なかなかやるな。心配する必要もなさそうだ、と。」

「どうも。」

レノは思った。

やはり面白い女だ、と。




その後レノと60階まで駆け下りたは、社員用のエレベーターに乗らされた。

「このまま放っておけば3階につく。俺がしてやれるのはここまでだ、と。」

60階のエレベーター前でレノに言われた。は目を細める。

「レノは来ないの?」

「これでも神羅社員だからな・・・悪いが、俺はここから先には行けない、と。」

きっと、この先に来てしまえばを助けたことがバレてしまうのだろう。

は静かに頷き、「ありがとう」と呟いた。

「礼なんていらないぜ、と。・・・頑張れよ、。」

何故だかその一言が、やけに心に沁みた。は頷く。

レノは小さく微笑んで頷き、ウィンクを見せた。

ゆっくりとエレベーターの扉が閉じてゆく。

レノは、扉が閉まる寸前、言った。

「また会おうぜ、







エレベーターが止まり、3階に着いた。はエレベーターを飛び出す。

早くクラウド達と合流しなければ。

そう思って焦っていたのだが、は目の前の人物に目を丸くして驚いた。

「クラウド!?」

展示されているバイクにまたがり、エンジンをふかしている人物。

それはまさしく、先ほど別れたクラウドだった。

クラウドも多少とはいえ驚きを見せ、の名を呼んだ。

「お前どうして・・・。エアリス達と一緒だったんじゃないのか?」

「いろいろとあったの!話は後でしょ!」

クラウドは呆気にとられていたが、やがてふっと微笑んだ。

駆け出すの背中に向かって叫ぶ。

、乗れ!」

が振り返る。クラウドはバイクの後ろを指差している。

はそれを見てこちらに駆け寄ってきて、ひらりとクラウドの後ろ、バイクにまたがった。

それを見計らってクラウドがバイクを発進させる。

「しっかり掴まってろ!」

「言われなくてもわかってるわよ!」

階段を駆け下り、1階に着くと仲間皆が待機していた。

クラウドはそれを確認して再び階段を駆け上がり、窓ガラスを突き破って外へ出た。

窓ガラスの外はハイウェイ。

後ろから来る追っ手を確認しながら、クラウド達はハイウェイを疾走した。












「さて、どうするよ?」

神羅の追っ手から逃げ切り、一息ついたときバレットが言った。

現在いる場所は、ハイウェイの最終地点である。

眩しい朝日が、ミッドガルを照らしている。

クラウドは言った。

「セフィロスは生きている。俺は・・・あの時の決着を付けなくてはならない。」

クラウドとセフィロスの決着。それが何を意味するかはわからないが。

「それが星を救うことになるんだな?」

「・・・恐らく、な。」

そのクラウドの言葉には、大きな意味があった。

これからの未来を暗示する、何か大きな意味が。

「おっし、オレは行くぜ!」

バレットが意気込み、その様子を見てぽつりとエアリスが言った。

「私も、行く。・・・知りたいこと、あるから。」

「古代種のことか?」

「・・・いろいろ、たくさん。」

少し寂しそうな笑みを浮かべて、エアリスが言った。

「さらばミッドガル、ね。」

「私は故郷に帰るつもりだ。それまでは一緒に行ってやる。」

は仲間達の会話を聞きながら、朝日を見つめていた。

明るい朝日。日本の朝日もとても美しかったが、この星の朝日も負けてはいない。

どこの世界でも、太陽は昇り、そして沈むのだと思う。

「・・・はどうするんだ?」

クラウドが尋ねてきた。はクラウドをちらりと見やり、そのまま朝日を見つめる。

しばらく考えるように沈黙していただったが、やがて言った。

「さて、どうしようかしらね。・・・神羅に入るのも悪くないかも、ね。」

「えぇっ?」

エアリスが驚いたように振り向いた。は苦笑を浮かべる。

「ウソウソ。冗談だよ。」

がそう言うと、エアリスだけでなく全員が安心したように溜息をついた。

はそんな様子を見てやはり苦笑する。

そして、言った。

「残念だけど、私が皆と一緒に行くのはここまでかな。

確かにこれから始まる旅は、私にとってとても大きなものだと思う。

けれど、ヒントをもらって答えを導き出しても私には意味がないわ。」

「でも・・・それじゃ、どうするの?」

「一人でのんびりと探すわ。元の世界へ戻る方法や、私が古代種だって証明するものを、ね。」

肩を竦めて言う

だが、一人で、というのは随分と大変なことである。

何せはこの世界について何も知らないのだ。

そんなが一人で頑張ったところで、結果は見えている。

「一緒に行こうよ、。セフィロスのことだって気になってるんでしょう?」

エアリスが言った。

確かにそうだ。をこの世界に呼んだのはセフィロスなのだから。

セフィロスが何者なのか、セフィロスが自分に何を求めているのか。

「でも、私は戦闘にも慣れてないし、かといって何か知識を持ってるわけでもないわ。

私が旅についてくと、多分皆の足手纏いになる。」

「そんなことないわ。私、も一緒がいい!クラウドもそう思うでしょ?」

ティファがクラウドに言った。クラウドは腕を組んだままを見つめていたが、

顔を背けると呟いた。「興味ないね」と。

「またそんなこと言う!!神羅ビルでそれなりに仲良くなったのかなって思ったら、

全然じゃない!クラウドももっと素直にならないと駄目よ!」

ティファは腰に手を当てて言った。

クラウドは少しムッとした顔でティファを見つめたが、それだけだった。

「別に・・・。俺はついてくるなとは言っていない。そいつが決めることだろう。」

「ホンットに素直じゃないんだから・・・。ね、。一緒に行こう?」

ティファに言われ、は迷った。

本当に、クラウド達について行っても良いのだろうか?

足手纏いにはならないだろうか?

「・・・古代種やセフィロスについて知りたいのなら、俺達と来た方が早いだろう。」

はクラウドを見た。

もう、その一言で充分だった。

は目を細めて微笑み、小さく頷く。

「それじゃ、お邪魔させてもらおうかしら。・・・改めてよろしく、皆。」

が言うと、仲間達が笑ってくれた。約一名、顔を背けていた者もいるけど。







「ここから先 団体行動にはリーダーが必要だ。リーダーといえばオレしかいねえ。」

ミッドガルの出口でバレットが言った。

その言葉にティファとエアリス、は顔を見合わせ、首を傾げる。

「そうかしら・・・」

「どう考えてもクラウド、よね。」

「まぁ、バレットがリーダーになるよりはマシかな。」

女性陣3人の声を聞き、バレットが言葉に詰まった。

クラウドとレッド13は笑いを堪えている。

「チッ・・・・わかったよ。ここから北東にカームって町があるんだ。

何かあったらそこを集合場所にしよう。」

バレットが言い、全員が頷いた。

「それにしたって野っ原を5人でゾロゾロ歩くなんて危なくてしょうがねえ。

クラウド、パーティーを2組に分けてみろ。」

確かに一理ある。クラウドはエアリスとティファを指名しようとした。

が。

はクラウドと一緒ね!」

「え?」

「そうそう、こういう機会に交流を深めなさい!」

「は?」

エアリスとティファに背中を押されてクラウドの隣に立たされる

クラウドはしばらくを見つめていたが、やがて小さく溜息をついた。

エアリスとティファに何を言っても無駄だと思ったのだろう。

「・・・仕方ないな・・・。なら、俺と、それからレッド13で行こう。」

仕方なしに決めたクラウドを見て、エアリスとティファがニッコリと微笑む。

してやったり、というところだろうか。

「じゃあ、カームでな!」

バレット達が先にカームに向かって行った。

しばらくその場にいたクラウド達だったが、やがて小さな溜息とともに歩き出した。









<続く>


=コメント=
長い。無駄に長いよこの話(真顔)
前回クラウドと少し進展したので、ラブラブを予想してた人、残念でした(笑
まだそこまで仲良くないんです。二人は(笑
その代わりレノが出張ってますね。オリジナル色が濃いです。ハイ。

次回はカームでの例のイベントですが・・・多分省略します。
『あの時より〜』の話では主人公がクラウドと行動をともにしてたので文に出来たのですが、
今回は全く無関係の状態なので文に出来ないんです。
いや、出来るんですけど、ゲームと同じクラウドの独り語りになってしまう。
だから端折ります。簡単な過去の説明だけをして、次へと進みます。
恐らくチョコボファーム辺りになるかと思われ。

次回をお楽しみに!