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私達は神羅ビルに潜入した。

どこまで続くのかわからないっていう階段を見事登り切った私達は、かなり疲れた状態だった。

けど、休んでる暇なんてない。

早く、エアリスを助け出さなくちゃいけない。

このままエアリスを神羅の元に置いておけば、全て神羅の思い通りになってしまう。

それくらい、何もわからない私にだって理解出来た。

神羅の思い通りにはさせない。

この星を、神羅に渡すわけにはいかない。

バレットだってティファだってクラウドだって、皆星のために戦っている。

私も頑張らなくちゃ。

だからエアリス。もう少し待っていて。

お願い。私達が行くまで、どうか無事でいて。








I love my life.









現在、クラウド達は神羅ビル61階のリフレッシュルームにいた。

長い階段を登り切った4人。体力は限界に近かったが休んでいる暇などない。

今は何よりも、エアリスの無事が最優先なのだ。

何が何でも、エアリスを助け出さねばならない。

・・・とは言うものの。

「・・・ね、どうするの?」

ティファがボソリと呟いた。

その問いには、クラウドもバレットも、そしても答えることが出来ない。

八方塞とは、まさにこのことか。


神羅ビルは60階より上は特別なカードキーがないと入れない仕組みになっている。

そして、そのカードキーはこれまた特別な社員しか手に入れる事が出来ない。

なんとか運で61階まで辿り着きはしたものの、62階へ行く手段が見つからず、

全くのお手上げ状態だったのだ。

61階の扉は壊れているらしく開いているが、62階に行ってみると62階の扉が開かなかった。

やはり、カードキーを手に入れる他はないようである。

だが、言うのは簡単。実行するのが難しい。

カードキーを手に入れる方法なんて、そう簡単に思いつくはずもないのだ。

は必死に頭をひねる。

IQ180の頭で、必死に考える。

「・・・こうしている間にも、エアリスが危険な目に遭ってるかもしれないのに・・・」

ティファが悔しそうに呟く。

クラウドは腕を組んだ格好のままティファをちらりと見やり、そして唇を噛んで俯いた。

エアリスだけではない。このままここにいれば、神羅兵に見つかってしまう可能性だってあるのだ。

どちらにしろ、早く場所を移さないと自分達まで捕まってしまうだろう。


と、はふと顔を上げてフロアを見渡した。

フロアにいるのは仕事に疲れたサラリーマンやOLばかりである。

だが、61階にいるということはそれなりのクラスなのだろう。

ならば。

「あの〜、すみませ〜ん。」

はいつもなら出さないような猫なで声で、近くにいた一人のサラリーマンに声をかけた。

クラウドもティファもバレットも、きょとんとしてを見つめている。

「あの、私達神羅カンパニー修理課の者なんですけど。61階の扉が壊れているんで、

修理に来たんです。で、他の階も見て回ろうと思うんですけど、カードキーがなくて。

もしよろしければ、カードキーをお借りしてもいいですか?」

クラウド達はぎょっと目を見張った。

神羅カンパニー修理課!?

そんな課が神羅にあるだなんて話、一度だって聞いたことがない。

絶対にバレバレだ。バレバレの嘘だ。

このサラリーマンだって、無茶苦茶疑っているに違いない。

ああ、きっとすぐに神羅兵がやって来てしまうだろう!!

・・・と思っていたのだが。

「ああ、君達が今噂の? いや〜、このビルもそろそろあちこちにガタが来ててね。

この階のドア開きっ放しで困ってたんだよ。早く直してくれよな。じゃ、他の階もよろしく頼むよ。」

驚いた事に、サラリーマンはあっさりとの話を信じ、62と書かれたカードキーを手渡した。

はニッコリと笑顔を浮かべ、

「お勤め、ご苦労様です!」

八方塞と思われていたのに、随分とあっさり解決してしまった。

内心はしてやったり、である。









嘘も方便。

そんなことわざもよくあったものだと思う。

無事62階のカードキーを入手したクラウド達は、早速62階へと入り込んだ。

今度手に入れないといけないのは63階のカードキーである。

今回も、案外簡単に手に入りそうだ。

62階にいたのは、魔晄炉都市ミッドガルの市長、ドミノだった。

だが市長と言っても名ばかり。実のところ、ミッドガルの全ては神羅のものらしい。

現在のドミノの仕事と言えば、神羅カンパニーの資料管理のみ。

ドミノは、いい加減頭に来ているそうだ。

「キミら、上へ行きたいんだろ?いいとも、私のカードキーをやろう。合言葉を言えたらな。」

ドミノは交換条件を出してきた。

合言葉が言えたら、カードキーをくれる、と。

おまけに一回で当てたらナイスなおみやげも付いてくるぞ、だなんて抜かしやがった。

こうなったら、一回で当てるしかない。

合言葉とは一体何なのか。まずはそこからだ。

「この階には4つの資料室がある。そこを手分けして調べてみよう。」

クラウドが言った。

きっと何かヒントがあるに違いない。

も一度クラウド達と離れ、資料室を調べる事にした。











は“治安維持部門”と書かれた部屋に踏み込んだ。

たくさんの本棚が並んでいて、そこには所狭しとファイルが詰め込まれている。

このファイル全てが神羅の、しかも“治安維持部門”だけの資料だというのなら、大したものだ。

やっぱり、どんなに極悪な会社でも世界を牛耳る大カンパニーなのだと思う。

はひとつの本棚で足を止め、少しファイルを取り出してみた。

“ミッドガル7番魔晄炉”

“故障部分修理予算について”

“1番街の現状”

「・・・全然わからない・・・さっぱりだわ。」

は呟き、小さく溜息をついた。

この世界の単語がわかるようになれば、それなりに理解の出来る資料なのだろう。

だがしかしはこの世界の単語さえ理解出来てない。

そのに、資料の解読が出来るわけがないのだ。

はもう一度溜息をつき、ファイルを他にもいくつか取り出した。

そしてそのファイルをひとつずつめくって見つめる。

こんなファイルのどこかにヒントがあるのかと聞かれれば、かなり疑わしいのではないか。

しかし今は調べる他にないのだ。



はふと顔を上げ、そして硬直した。 

目の前にいる、ある一人の男の存在に気が付いてしまったのだ。

鋭い目。ひしひしと伝わってくる殺気。威圧感。危険な香り。

赤い髪。着崩した黒いスーツ。

そして、スーツの下に着たブラウスからは白い包帯が透けて見えている。

怪我でもしているのだろうか。

そんな考えが頭をよぎったが、には相手の怪我を気にしていられるほどの余裕はなかった。

「・・・侵入者・・・。」

男は呟く。

はハッとして立ち上がり、手に持っていたファイルを床にぶちまけた。

壁際に逃げ、壁に寄り掛かりながら男を見つめる。

「・・・クラウド達の仲間か、と。」

ビクリとした。

男はの反応を見逃してはくれなかった。

ニヤリと笑うと、怯えたには目もくれずに部屋を出て行こうとする。

まずい。

は瞬時に悟った。

この男は、怯えたに手を出すよりも、神羅兵を呼ぼうとしている。

ここで見つかって捕まってしまえば、今までの苦労も水の泡だ。

は飛び出し、男の腰に抱き付いた。

それしか男を止める方法が思い付かなかった。

もし捕まるなら全員で捕まるよりも、一人の犠牲で済んだ方がいい。

男はの行動に驚いたように動きを止めている。

「駄目ッ・・・行かせないッ・・・!」

震える体。この男を止めたいと思う気持ちとは裏腹に、怯える心。

男は黙ってを見つめ、スーツのポケットに手を突っ込んだ。

「・・・度胸だけは認めてやる。」

そんな言葉を聞かされ、自然との手は緩む。


「だが」


男はポケットから白い布を取り出すと、それでの鼻と口を押さえた。

ツンとした薬の匂いがを襲う。

だんだんと、意識が遠のき始めた。

「修羅場の抜け方を知らないな、と。」

ぼやけた視界の向こうで、男の声がやけに響いて聞こえた。

の意識は、そこで暗転した。








「・・・だから・・・・・・は、・・・だろ?」

「いや・・・・・・そうとも・・・」

話し声が聞こえる。

頭がまだグラグラしているが、何とか手に力を入れる事は出来た。

はうっすらと目を開け、目の前の光景を見つめた。

先ほどの赤髪の男と、知らないグラサンの男が何やら話をしている。

全く知らない部屋。休憩部屋のような場所だ。

は体を起こそうと試みて、失敗した。

「・・・ぅ・・・」

失敗したついでに呻き声まで出してしまった。

男達は案の定というか、やっぱり聞き逃してはくれなかった。

は内心舌を打つ。

赤髪の男は少し笑みを浮かべてに近寄ると、顔を近付けて言った。

「お目覚めか?お嬢ちゃん。」

「・・・残念だけど、お嬢ちゃんなんて歳じゃないわ。」

仏頂面でそう返した。

男は少し苦笑すると、の背中に手を当て体を起こしてくれた。

起こされた衝撃で頭が少しグラグラする。

だが、しばらくするとそれも大分落ち着いた。

男はの隣に腰掛け、大きな溜息をつく。

「俺はレノ。あんたは?」

「・・・。」

やはり仏頂面でそう返す。

レノと名乗った赤髪の男は面白そうに笑い、グラサンの男に言う。

「な?ルード。タークスに良い人材だとは思わないか、と。」

「・・・ああ。そうだな・・・。」

あまりしゃべるのが得意ではないのだろうか。

ルードと呼ばれた男はそう答えたきり、黙り込んでしまった。

は眉をひそめてルードを見やってから、小さく溜息をつく。

それから、少し不思議な雰囲気に首を傾げた。

先ほど資料室で見たレノは、こんな雰囲気ではなかったのだ。

危険な香りを漂わせた、いかにも汚い仕事をしているというような雰囲気だった。

けれど今は・・・

、あんたタークスに入らないか?」

レノが言った。

「なーに、タークスって。」

はこの世界の単語についてあまりわからないのだ。

タークスという言葉を知らなくても当たり前である。

レノは驚いたようにを見つめ、言った。

「神羅のタークスを知らないのか?世間知らずも良いトコだぜ、と。

タークスってのは神羅の組織で、ソルジャーの人材を見つけスカウトするのが役目。

まぁ、裏ではもっと汚い事をやってるがな、と。」

汚い事。恐らくそれは、殺人とかスパイという部類のものだろう。

ソルジャーは確か、英語で兵隊という意味だったはずだ。

は少し考える素振りを見せてから、「考えとく」とだけ言った。

殺人やスパイなんて仕事はしたくないけれど、この男と一緒なら、と少し思っただけ。

「それにしても、お前この神羅ビルに丸腰で乗り込んできたのか?

とてもじゃないが、魔法だけで突っ走れるほど甘くはないぞ、と。」

「仕方ないでしょ。私だってマテリアだけで乗り込みたくはなかったわよ。」

レノはを見つめておどけたように肩を竦めた。

「古代種だから、魔法でなんとかなる。そんな風に考えてたんだろ、と。」

はぎょっとした。

は、自分が古代種だなんて一言もしゃべっていない。

なのに、何故この男はわかってしまったのだろう。

レノはそんなの思いを見透かしたかのように苦笑を浮かべる。

「お前の目の色。普段は茶色だけど、俺を止めようとした瞬間緑色に変わったからな、と。

そんな色になるのは、古代種しかいない。緑色は古代種の証みたいなもんだし。」

自分の目の色が緑色に?

は眉をひそめた。

自分の目の色が変わったというのはとてもじゃないが信じられない。

は純粋な日本人なのだ。瞳の色は黒に決まっている。

今まで瞳の色が変化したなんてことはなかった。

あったら、それこそ大事件かもしれない。

古代種。古代種だから、瞳の色が変わるのだろうか?

エアリスの瞳は薄い緑色。それは、古代種という繋がりなのだろうか?

「お願い。私が古代種だってことは、誰にも言わないで欲しいの。」

とりあえず口止めだけはしておきたい。無駄だとは思うが、無闇にばらされるのは癪に障る。

レノはを見つめて、ふと微笑んだ。

「心配しなくても、誰にも言ったりしない。安心しろ、と。」

「・・・ありがとう。」

敵だとはわかっているが、どうも敵に思えない相手。

は、自然と微笑を浮かべていた。



レノは立ち上がると、部屋の棚のところへ行き、棚から2つの剣を取り出した。

30センチくらいの短剣に、それよりも長い剣。

レノはその剣をに手渡し、言った。

「せめてこれくらいは持って行け。しっかり手入れはしてあるから、切れ味は抜群だぞ、と。」

「え?でも私剣使えないし、それに・・・」

敵のはずなのに。

の言葉を遮り、レノは言った。

「持つのと持たないのじゃ全然違う。いいから持って行け。

・・・どうしてもあんたを敵に回したくなくてな。逃がしてやるよ。・・・仕方ないからな、と。」

敵のはずなのに。

は受け取り、目を細めて剣を見つめた。

ごくごく普通の剣。けれど、にとってその剣は特別なものだった。

はレノを見つめる。

「・・・ありがとう。」

「だからさっき乱暴な真似をしたのはチャラにしてくれよ、と。」

ウィンクをしながらレノは言う。

乱暴な真似、とは、恐らく資料室でのことを言っているのだろう。

は苦笑を浮かべ、頷いた。




と、その時部屋の扉が開いた。

とレノ、そしてルードは驚いたように扉を見つめ、そして硬直する。

「・・・これはどういうことだ?レノ。」

低く冷徹な声。

扉の先に立っていたのは、なんとエアリスを連れ去った張本人、ツォンだったのだ。

ツォンの傍には、2人の神羅兵もいる。

ツォンは冷たい目でを見下ろしてから、レノを睨み付ける。

レノにとっても予想外の展開だったのか、身構えたまま動かない。

「その女はクラウド達の仲間だ。そのことを知っていてここに連れてきたのか?」

「・・・まさか。それよりツォンさん。ツォンさんは今任務中では?」

「思ったより随分と早く終わってな。私が来てはまずかったか?」

「いいえ。滅相もない。聞いてみただけですよ、と。」

レノは少し苦い表情でに近寄り、その耳元で囁いた。「すまない」と。

は小さく頭を振り、「仕方ないよ」と囁き返す。

「この女を連れて行け。」

「はっ。」

ツォンが命じ、神羅兵が返す。

レノは反射的になのか、を庇うように前に立った。

だががレノを制すと、レノはしぶしぶ後ろへと下がる。

「女。名前はなんと言った?」

「生憎だけど、あんたに名乗る名前なんてないから。」

ツォンに聞かれたが、名乗るつもりなんてさらさらない。

ツォンは面白くなさそうに鼻を鳴らし、神羅兵に顎で示す。

神羅兵は軽く頭を下げ、の手を掴んで歩き出した。

レノは一瞬に手を伸ばしかける。だがしかし、その手は届く事がない。

はレノを振り返り、小さく笑って部屋から出て行った。








「さぁ、早く入るんだ!!」

乱暴に手を引っ張られては苛立っていた。

牢屋の前までやって来たのはいいものの、神羅兵に嫌というほど手を引っ張られたのだ。

何回か「グキッ」という骨の音も聞いている。

「痛っ!ちょっと放してよ!怪我でもしたら責任取ってくれるわけ!?慰謝料払ってくれるの!?」

「何をわけのわからんことを言ってるんだ!良いから早く入れ!!」

「うるさい中年!中年にもなってまだ下っ端兵士なんだ?はー、それはそれは良いご身分で!!」

「黙らんか小娘!!生意気なヤツだ!!」

「その小娘に馬鹿にされて、恥ずかしいとは思わないの!?」

「ぐっ・・・!こ、この小娘がぁっ!!!」

だんだん言い合いもつまらなくなってきた。

この男も、相当心に傷を負ったはずだ。

ざまぁみろ。

は心の中でそう呟き、黙って牢屋に入ろうとした。

が。

急に後ろから背中を思い切り蹴り飛ばされた。

その衝撃では牢屋の中に転がり込む。

「ふんっ。私に逆らうからだっ。」

兵士はそう吐き捨てると、牢屋を閉めて行ってしまった。

「くっ・・・逆らったんじゃなくて、皮肉を言っただけだっての・・・この中年下っ端兵士がぁっ!!」

畜生。もう少しいじめてやればよかった。

そう思ったのは、だけの秘密である。

「・・・・・?」

強かに打ち付けた背中にあまり負担をかけないように起き上がろうとした

が、名前を呼ばれてふと顔を上げた。

そこには、心配そうに自分の顔を覗き込むティファとクラウドの姿があった。

は目を見開く。

「ティファ!?クラウド!?」

!!良かった、無事だったのね!!」

ティファは即座にの腕を縛っている縄をほどいた。

腕が自由になったは、ティファとクラウドを交互に見つめて微笑んだ。

「クラウドやティファだって。無事で良かったわ。」

「資料室から急に消えただろ?心配してたんだぞ・・・。」

クラウドが少し俯き加減になって言う。

は驚き、まじまじとクラウドを見つめた。

心配、してくれたんだ。

そう思うと、何故かとても嬉しくなる。

はクラウドに微笑みかけ、小さく「ありがとう」と呟いた。

、そこにいるの?」

壁の向こうから聞こえた声。

その声はずっと聞きたかったあの優しい声で、は驚いて壁を見つめた。

「エアリス!?」

「やっぱりだ。無事だったんだね・・・今すごく安心したよ。」

やわらかいエアリスの声は、間違いなく本人のものだった。

はエアリスが無事だった事に対して、心から安心を感じた。

声の様子からして、酷い事をされた風でもないし、とにかく無事だということはわかる。

「あのね、エアリス。質問があるんだけど」

ティファが言った。

「な〜に?」

「約束の地って本当にあるの?」

はハッとしてティファを見つめた。

約束の地。夢で、セフィロスが言っていた言葉のひとつだ。

「・・・・わからない。私、知ってるのは・・・・『セトラの民、星より生まれ星と語り、星を開く』・・・

えっと・・・・・それから・・・・・・」

「・・・『セトラの民、約束の地へ帰る。至上の幸福、星が与えし定めの地』・・・」

エアリスの言葉を遮って言ったのは、なんとだった。

エアリスもクラウドもティファも目を見開いて驚き、を見つめた。

だが、何よりも驚いていたのは本人だろう。

「・・・私、このセトラの詩・・・どうしてだろう・・・知ってるの・・・。」

が呟く。

ティファがエアリスとに尋ねた。

「・・・・どういう意味?」

「言葉以上の意味、知らないの。」

「私も、詩の深い意味とか・・・全然わからないわ。」

クラウドが考え込むように腕を組み、呟く。

「・・・・星と語り?」

「星が何か言うの?」

「人が大勢いて、ざわざわしてる感じ。だから何を言ってるのかよくわからないの。」

「今も聞こえるのか?」

エアリスはしばらく黙り込み、それからゆっくりと話した。

「私、聞こえたのはスラムの教会だけ。

ミッドガルはもうダメだって母さん・・・本当の母さんが言ってた。

いつかミッドガルから逃げなさい。星と話して、エアリスの約束の地見つけなさい。

・・・・母さんが言ってた。大人になったら聞こえなくなるんだと思ってたけど・・・。

私はスラムの教会でしか駄目だったけど、は・・・?」

エアリスに問われ、は静かに目を閉じた。

ぽつり、ぽつりと聞こえる誰かの声。

神秘的でいて、どこか不思議な星の声。

は目を開け、呟くように言った。

「・・・聞こえる。でも、声がたくさん過ぎて・・・何を伝えたいのかわからない。

ただ、どこか悲痛な感じには聞こえる・・・けど。」

沈黙が降りた。

星の声。悲痛なその叫びが、自分に一体何を伝えようとしているのかはわからない。

けれど、きっと何か苦しんでいるのだ。

星が苦しんでいる。そして、きっとその苦しめている相手は自分達人間なのだろう。

「ねぇ。」

ティファが言った。

「エアリスとは古代種で古代種の本当の呼び名はセトラ。

それで古代種は約束の地って場所を知っていて、神羅はその約束の地が欲しいんだよね?

でも、約束の地は言い伝えに出てくるだけで本当にあるのかどうかはわからない。

これでいいの?」

「うん、間違ってないと思う。」

エアリスは答える。

今のティファの説明を聞いて、も約束の地が一体どういうものなのかわかったような気がした。

「約束の地には豊富な魔晄エネルギーがあると神羅は考えてる。

ってことは、神羅はそこに行ったらまた魔晄エネルギーを吸い上げてしまうのよね。

・・・・そこも土地が枯れるのね。星が・・・病んでいく・・・。」

ティファの呟き。

しかしそれはとても残酷な呟きだった。

それを食い止めない限り、星に平和は訪れない。



「そういえば、・・・資料室から消えたけど、どこにいたの?」

「レノってタークスに捕まってたのよ。でも何故か逃がしてくれたわ。

しかも『丸腰で神羅ビルに乗り込んでくるなんて甘過ぎる』とかなんとか言って、

この剣までくれたのよ。」

は腰に差した剣をティファに見せた。

ティファとクラウドは驚いたように顔を見合わせる。

は首を傾げた。

「どうかした?」

、レノに会ったの?」

「うん。・・・レノを知ってるの?」

クラウド達がレノと顔見知りだったとは知らなかった。

だがしかしよく考えてみれば、レノは「クラウド達の仲間か」と聞いてきたのだ。

認識があったと考えても間違いはないだろう。

「しかし・・・あの男が、そう簡単に獲物を逃がすとはな。」

「私も絶対に逃げられないと思ってた。資料室で見つかったときはすごく怖い顔してたから。

でも・・・その後、全然雰囲気が変わって、穏やかになってたの。」

「レノの雰囲気が?」

クラウドは眉根を寄せた。

クラウドが知っているレノとは、牙の鋭い神羅の犬なのだ。

ふざけた言動をしているが、腕は間違いなく一流。危険な男である。

そんなレノが穏やかな雰囲気をかもし出すなんて、想像もつかないのだ。

「タークスにならないかって誘われちゃった。」

「やめておけ。タークスなんて殺しやスパイ、暗殺。ろくな仕事はしてない。」

保護者のようにクラウドは言う。

「ふぅん。でも優しくないツンツン頭のヤツと一緒にいるよりもマシだと思うけど。」

は嫌味のつもりでそう呟いた。

クラウドはじろりとを睨み、小さく「勝手にしろ」と呟いた。

 



「少し寝ておこう。」

クラウドが言った。

いずれにしろ、ここから逃げ出すのはまだ無理だと判断したのだ。

ならば、少しでも体力を回復しておいた方がいい。

ティファもも疲れていたので、素直に頷いた。

、ベッド私が使っちゃっていいの?私床で寝るからいいよ?」

「ううん、私は大丈夫だから。レノのところで熟睡してきたし。」

苦笑を浮かべては言う。

同じくティファも苦笑を浮かべ、「ならお言葉に甘えて」とベッドに横になった。

はそんなティファに微笑みかけ、床に座り込む。

壁に背中を預けて溜息をつき、両膝を立ててその上に頭を乗せた。

そして静かに目を閉じた。






声が、聞こえる。












――――― ・・・我が名はセフィロス・・・。この星の正統なる後継者・・・


低い声。

片翼の天使は、静かにに語りかけた。


――――― 異世界の魂を探していた・・・古代種の魂を持つ、何も知らない裏切り者のお前のことを。


裏切り者。その言葉が、やけにの胸に響く。

ズキリと胸の奥が痛み、は自分の体を両手で包み込んだ。

怖い。

無意識のうちに体が震え出し、どうしようもなく怖くなった。

どうしてこんなに怖いのかわからない。混乱しそうになる。

けれど片翼の天使の声は響くばかりだ。


――――― 裏切り者よ。聞くが良い。


は目を閉じて俯いた。

恐怖に負けないように、唇を噛み締める。


――――― 私を追え。そして、北の大地、リユニオンの終着点へ辿り着け。


北の大地、リユニオンの終着点へ。


――――― そして、古代種の魂を持ち授けられた生を呪うがいい。


古代種。

つまらない日常が嫌で逃げ出したかった自分。

つまらない人生に意味なんてないと考えていた自分。

けれど、今は?

まだこの星に来て日も浅いけれど、今の日常は?












はハッとして顔を上げた。

少し上がっている息。汗をかいて、前髪が額に貼り付いていた。


今の夢は一体?

は額を手で押さえて深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。

なんて怖い夢。

まだ震えている体。じっとりと嫌な汗をかいた体は、小刻みに震えている。

たかが夢。だが、その夢がどうしても夢だと思えない。

「どうした?」

は横を向いた。

隣には、クラウドが座っていた。

目を細めて、を見つめている。

「気分でも悪いのか?」

「ううん・・・大、丈夫・・・何でもない・・・。」

これ以上しゃべれなかった。

しゃべると、一気に恐怖が押し寄せてきそうで怖かった。

クラウドは眉をひそめ、再び目を閉じる。


は言った。

「あの・・・あのね、」

クラウドは目を開け、を見つめる。

「・・・手、握っててくれない、かな・・・?怖い夢、見そうで・・・。」

クラウドは何の冗談かと思った。

手を握ってて欲しいなんて、誰に向かって言っているんだと。

しかし、の体が小刻みに震えているのを見て、呆れたように溜息をつく。

そして、乱暴にの手を握った。

「これで満足か。」

「・・・ありがとう・・・。」

暖かい手。震えているの手を、しっかりと包み込む大きな手。

が手に少し力を込めると、クラウドは握り返してくれた。

握られた手から、安心感が流れ込んできた。



もう怖くない。

は再び目を閉じた。

今度は、嫌な声も嫌な夢も見なかった。










<続く>



=コメント=
・・・一度消去されて、書き直した作品です・・・。
なんかのエラーでフロッピーからデータが消えたんですよ!
泣き泣き書き直しました。
かなり苦労しました・・・。
ポンコツのパソコンはやーね!
ああヤだヤだ。

今回の章でさん古代種説が明らかになったかと思われ。
そしてクラウドとの進展も少し見られたと思われ。
次回恐らく神羅ビル脱出です。