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エアリスが連れ去られた。

どうして?一体、何のために。何を守るために?

答えは、私とマリンを守るため。

・・・どうして、エアリスが連れ去られなくちゃいけないんだろう。

エアリスよりも、私が連れ去られれば良かったのに。


「エアリスが連れ去られるのを、黙って指を咥えて見てたのか!?」


そうだよ。私は何も出来なかった。

エアリスを助けようと思った。けど、無理だった。

わかってる。どうせ私は何も出来ない。

そうだよ。どうせ私は・・・・・。








I love my life.









は、エアリスの家の前に座り込んでいた。

エアリスが連れ去られたという現実。そして、自分は何も出来なかったという現実。

大丈夫だから、と言い、笑顔を見せながら連れ去られたエアリス。

悔しくて、地面を思い切り手で掴んだ。

地面に指の跡が付き、砂が手の中で山になる。

足音が近寄ってきても、顔を上げる気にはならなかった。

「・・・・・・?」

名前を呼ばれ、やっとは顔を上げた。

泣いてはいなかった。けれど、きっと酷い顔をしていたのだと思う。

顔を上げた先にいたのは、クラウドとティファ、そして片腕が銃の男性だった。

ティファはを見つめ、悲痛そうな表情で目を細めた。

「クラウド・・・ティファ・・・。」

・・・、何があったか、知ってるから・・・。」

は唇を噛み締め、俯いて小さく頷いた。

ティファはを立たせ、心配そうにの顔を覗き込む。

クラウドはそんなティファとを一瞥し、男性とともに一足先に家の中へ入った。

ティファともその後を追う。

家の中では、エアリスの母親・・・エルミナが、俯いて立っていた。

そして、静かに口を開いた。

「クラウド・・・・だったね。エアリスのこと、だろ?」

諦め切ったエルミナの声に、クラウドは俯く。

「・・・すまない。神羅に攫われた。」

「知ってるよ。ここから連れて行かれたからね。」

「ここで?」

エルミナは頷く。

「エアリスが望んだことだよ・・・・」

クラウドは少し驚き、そして尋ねた。

「どうしてエアリスは 神羅に狙われるんだ?」

「エアリスは古代種。古代種の生き残りなんだとさ。」

「・・・なんだとさ、って・・・。あなた、母親なんでしょう?」

が問う。エルミナは少し辛そうな表情を浮かべ、口を開いた。

「・・・・本当の母親じゃないんだよ。あれは・・・そう、15年前・・・。

・・・・戦争中でね。私の夫は戦地に行ってた。ウータイという遠い国さ。

ある日、休暇で帰ってくるって手紙をもらったから私は駅まで迎えに行ったのさ。」

しかし・・・エルミナの夫は、帰っては来なかった。

駅のホームで、夫の姿を探しても、どこにも見当たらなかった。

夫の身に何かあったのだろうか。いや、休暇が取り消しになっただけかもしれない。

いろいろと考え、エルミナはそれから毎日駅に通うようになった。

そんなある日、ホームで一人の女性が倒れているのを見つけた。

女性の傍らには、幼い女の子。その女の子こそが、エアリスだった。

「戦争中はよくある風景だったね。エアリスを安全なところへ。そう言い残して彼女は死んだ。

私の夫は帰らず、子供もいない。私も寂しかったんだろうね。

エアリスを家に連れて帰ることにしたんだ。」

エアリスはすぐにエルミナに懐き、いろいろと話してくれたという。

どこかの研究所みたいなところから母親と逃げ出したこと。

お母さんは星に帰っただけだから、寂しくなんかない、と。

星とは、夜空の星ではなく、今自分達がいるこの星だということも。

「まあ、いろんな意味で不思議な子供だったね」




『お母さん。泣かないでね』


「エアリスが突然言い出した。何かあったのかって聞いたら・・・・」


『お母さんの大切な人が 死んじゃったよ。心だけになってお母さんに会いに来た。

けど・・・でも、星に帰ってしまったの。』


エルミナは信じなかった。

しかし、それから何日かして、夫が戦死したという知らせが、届いた。

たった一枚の手紙に、戦死という文字が書かれていた。


「・・・・とまあ、こんな具合でね。いろいろあったけど私達は幸せだった。ところがある日・・・」


エアリスを連れ去った男。ツォンが、やって来たのだ。


『エアリスを返して欲しいのです。随分探しました。』

『いやっ! 絶対いやっ!』

首を必死に横に振るエアリスを、諭すようにツォンは言う。

『エアリス、君は大切な子供なんだ。君は特別な血をひいている。

君の本当のお母さんの血。『古代種』の血だ。』


「もちろん聞いたよ。『古代種』って何だってね。」


『古代種は至上の幸福が約束された土地へ我々を導いてくれるのです。

エアリスはこの貧しいスラムの人々に幸福を与えることが出来るのです。

ですから我々神羅カンパニーは是非ともエアリスの協力を・・・・』

『違うもん!エアリス、古代種なんかじゃないもん!』

『でもエアリス、君はときどき誰もいないのに声が聞こえることがあるだろ?』

『そんなことないもん!』


エアリスはそう言い張っていたが、エルミナにはわかっていた。

エアリスの不思議な能力。星と会話が出来る、古代種の力。

「一生懸命、隠そうとしたていたから私は気がつかないふりをしていたけどね。」




「・・・よく何年も神羅から逃げ続けることが出来たな。」

クラウドがぽつりと呟いた。エルミナは肩を竦める。

「神羅はエアリスの協力が必要だったから手荒なマネは出来なかったんだろうね。」

「じゃあ、今回はどうして・・・・」

ティファの呟きに、エルミナは俯く。

エルミナはをチラリと一瞥し、口を開いた。

「小さな女の子と、そこのお嬢さん・・・さんを連れてここに帰って来たんだ。

その途中でツォンの奴に見つかってしまったらしくてね。逃げ切れなかったんだろ、きっと。

女の子と、さんの無事と引き替えに自分が神羅に行くことになったんだ。」

「マリンとのために・・・?」

クラウドは呟く。そして、を鋭い目で睨み付けた。

はその瞳に一瞬たじろいだが、すぐにクラウドの瞳を見つめ返す。

「お前・・・エアリスが攫われた時、何もしようとしなかったのか。」

「クラウドッ!」

ティファが慌てて声をかける。しかし、クラウドの声は止まらない。

「エアリスが連れ去られるのを、黙って指を咥えて見てたのか!?」

はぐっと言葉につまる。

先ほどの光景が頭の中でよみがえり、エアリスの笑顔が映し出された。

『大丈夫、心配しないで』

エアリスは笑って言った。けれど果たして、本当に大丈夫だと言い切れるのだろうか?

クラウドの言う通りだ。自分は、何も出来なかった。

「何とか言ったらどうだ。古代種・・・同じ古代種なら、お前が連れ去られればよかったじゃないか!」

その言葉には顔を上げる。

キッとクラウドを睨み付けると、そのままツカツカとクラウドに歩み寄り、

その端整な顔に平手打ちを食らわした。

パンッと小気味のいい音が響き、クラウドの頬が赤く染まる。

クラウドは驚いたようにを見やり、赤くなった己の頬に手を添えた。

「・・・私が何も思わずに、エアリスが連れ去られるのを見てたとでも思うの?」

低いの声。

悔しかった。

私も古代種だ。だから私を連れて行け。

そう叫びたかった。

けれど、エアリスのあの笑顔を見てしまっては、そんなことも言えなかった。

第一、本当に自分は古代種なのかもわかったもんじゃない。

以前聞こえてきたあの声が、星のものかどうかなんてわからないのだから。

「綺麗な顔だから平手打ちで我慢してあげたわ。」

ピシャリとそう言い、はクラウドの横をすり抜けて家のドアを開ける。

ッ!どこへ行くの!?」

ティファが叫ぶ。

は振り返り、クラウドを一度睨み付けてから言った。

「ティファのことは大好き。けど、私こんな人と一緒にいたくない。

私は一人でエアリスを助けに行くわ。」

「一人でなんとかなると思っているのか。」

クラウドはを睨みつけながら言う。

そんなクラウドをは睨み返した。

「私自慢じゃないけど、頭良いの。学校のテストでは毎回首席だったもの。

それに私は古代種よ。・・・古代種の能力を、侮らないで欲しいわ。」

は冷たくそう言い放った。

本当に自分は古代種なのか。いや、もしかしたらただの人間なのかもしれない。

だって、今までは普通の女子大生として暮らしてきたのだから。

けれど、エアリスが言った。「古代種かもしれない」と。

エアリスは冗談などでこんな嘘をいう人間ではない。

しかし自分が古代種だと決定付けるものはまだ何もない。

ならば、一体自分が何者なのか、それを見極めてみたい。



はクラウドを一瞥し、振り返らずに家を出て行った。

その後姿を呆然と見つめるティファ。閉まった家のドアを睨み付けるクラウド。

状況が把握出来ずに呆然としているバレット。

そして、驚愕しているエルミナ。

「古代種・・・?古代種、だって・・・?」

エルミナの呟きに、クラウドが答える。

「・・・あいつは、異世界から来た・・・古代種、らしい。」

いつも通りの抑揚のない声で。

否、いつもよりも少し、ゆっくりと。








待って!!」

エアリスの家を出てしばらく歩いていると、後ろから声がした。

は振り返る。走ってくるティファの姿が見えた。

その後ろには、クラウドと男性の姿もある。

は一度立ち止まり、ティファが駆け寄ってくるのを待った。

ティファはの前で立ち止まると、荒い息を押さえるために少々言葉を切った。

呼吸を整えてからティファは言う。

「お願い、一緒に行きましょう。」

「・・・どうして?別に私がいなくてもあなた達なら大丈夫でしょ?」

きょとんとして答える。

ティファは荒い息を押さえながらを見つめ、それから振り返ってクラウドに叫んだ。

「ほらっ!クラウド、さっさと謝りなさいッ!!」

ティファは怒鳴るように後ろのクラウドに叫んだ。

後ろから歩いてくるクラウドは、拗ねた顔でを見つめている。

「どうして俺が・・・。」

「つべこべ言わないっ。さっきの口論、悪いのは間違いなくあなたよ、クラウド。」

確かにそうだろう。

がエアリスを助けられなかったのは事実だ。

けれど、それはクラウド達とて同じこと。

エアリスを守れなかったのは、お互い様なのだ。

は真っ直ぐにクラウドを見つめる。クラウドはを一度睨み、小さく息をついた。

「・・・すまなかったな。」

呟くように言った彼を見て、は少し苦笑した。

それから微笑んでクラウドに言う。

「ううん。・・・気にしてない。私こそ、いきなり叩いちゃってごめんね。」

今考えると、冷静さを失って大胆な行動に出たと思う。

このクラウドの端整な顔を平手で叩いた、なんて。

実のところ少し可哀相なことをしてしまったかな、なんて思っていたのだ。

「お二人さんの仲直りが済んだところで、オレも自己紹介させてもらえねぇか?」

男性が言った。

ティファは頷き、を見る。

「この人はバレット。私達アバランチのリーダーよ。」

「おう、よろしくな、!」

は微笑んで軽く会釈した。

色黒で、片腕が銃で、一見怖そうにも見えるけれども、性格は明るそうだ。

バレットはニカッと笑い、の頭に手を乗せた。

は苦笑し、ティファに言う。

「ティファ、これからどうするの?」

「とりあえずウォールマーケットに行こうと思ってるわ。あそこなら良い手が見つかりそう。」

ウォールマーケット?

は首を傾げる。ティファは少し笑って付け加えた。

「コルネオの屋敷があったところ、よ。」









その後達4人はウォールマーケットに行き、上のプレートに行く手段を探した。

かなり時間がかかると思われていたのに、意外なことにあっさりと手段は見つかった。

上のプレートから垂れ下がったワイヤーを登って上に行くことが可能だったのだ。

最初クラウドは「何百メートルあると思ってるんだ?」と反対していた。

だがバレットは言った。

「無理じゃねえ!見ろ! これは何に見える?」

「何の変哲もないワイヤーだ。」

一体何を言っている?とでも言いたげなクラウド。だがバレットは退かない。

「そうかよ? オレには金色に輝く希望の糸に見えるぜ。」

そう。エアリスを助ける手段は、これしかないのだ。

楽に助けられる方法なんて、ありはしないのだから。

バレットの説得によって、クラウドは苦笑しながら頷いたのだった。



そして、それから1時間後には、神羅ビルの前に辿り着いていた。

「おい、このビルには詳しいんだろ?」

バレットがクラウドに尋ねた。クラウドは首を横に振る。

「・・・・知らない。そういえば本社に来るのは初めてだ。」

「クラウドは神羅で働いていたことがあるの?」

今度はが尋ねた。

クラウドはを一瞥し、小さく答える。

「・・・昔な。」

あまり触れて欲しくない話題なのだろう。クラウドはそれきり、顔を背けてしまった。

何か、きっと嫌なことがあったんだ、とは悟る。

誰にだって聞かれたくない思い出はある。そう、きっとクラウドにも。

も、それきりその話題には触れない事にした。

「前に聞いたことあるぜ。このビルの60階から上は特別ブロックとかで

社員でも簡単には入れないってな。エアリスが連れて行かれたのもそこに違いねえ。

今なら警備にスキがある。おおし、行くぜっ!!」

ずらずら説明した挙句、一人ででも突っ込みそうになるバレットをティファが慌てて止める。

「ちょっと待ってよ!まさか正面から乗り込むつもり?」

「決まってるだろ!神羅の奴らを蹴散らして・・・」

「そんなのムチャよ!もっと見つかりにくい方法を・・・・」

「そんなコトやってられねえ!グズグズしてたら エアリスだって」

「それはわかるけど!ここで私達まで捕まったら・・・!」

バレットとティファの言い合いは続く。

はそんな様子を見て小さく溜息をつき、横目でクラウドを見て言った。

「突っ込む?コッソリ行く?」

クラウドはしばし考え込む。

だが、すぐに顔を上げて言った。

「コッソリ行こう。」

ティファが嬉しそうに笑った。

「でしょ?こんな時こそ慎重に他のルートを探しましょ!」

確かに。

全くもってご尤もな意見である。






Q:さて、コッソリ行く事にしたのは良いが、一体クラウド達はどこからビルに入り込んだのか?

A:神羅ビルの非常階段から




「おい・・・・本気でこれ、上まで登るつもりか・・・?」

バレットが掠れた声で言った。ティファは胸を張ったままバレットに言う。

「しょうがないでしょ。エアリスを無事に助けるためよ。」

「しかし、いくら見つかりにくいったってこいつは・・・・」

バレットが尻込みするのも無理はない。

非常階段は、永遠に続くような勢いで上に伸びていたからだ。

どこまで階段が続いているのか、わかったものではない。

だが、弱気なバレットに対してティファは至って強気のままだ。

「もう、ゴチャゴチャいわない! 行くわよ!」

「お、おいティファ! 1人で行くな!」

一人で駆け出してしまうティファを、バレットは慌てて追いかけた。

その後を、クラウドとが付いて走った。


 


「なんで・・・わざわざ・・・こんな・・・・・苦労を・・・・」

バレットが呟く。クラウドは階段を駆け上がりながら答えた。

「・・・・エアリスを助け出すまで騒ぎは起こしたくないんだ。でも、無理だろうな・・・・」

そのクラウドの言葉に、は一瞬胸を打たれた感覚に囚われる。

優しいクラウドの言葉。その言葉が、やけに苦しくて。

私には素っ気無いのに、エアリスやティファには優しく出来るんだね。

それほどまでに、私のことが嫌いなんだね。

それほどまでに、私が・・・・

「・・・・へへへ」

バレットが笑う。

「なんだよ、気持ち悪いな。」

「あんたでも他人のために戦うことがあるんだな。見直したぜ。」

「あんたに見直されても、嬉しくない。」

クラウドは相変わらず素っ気無い態度のまま、答える。

バレットは一度頭をかき、それからバツが悪そうにクラウドに言った。

「いや、なんていうか・・・いろいろ悪かったな。」

クラウドは何も言わない。だが、顔を見ると少し赤面しているようだ。

「フフフ・・・・」

「なんだよ。ティファまで・・・・」

3人が和やかな雰囲気になったというのに、は素直に笑うことが出来なかった。

 




「・・・・しかしこの階段、どこまで続くんだ?」

疲れ切った声で言って、バレットは階段の手すりに掴まり立ち止まった。

ティファはバレットを追い越して走りながら答える。

「さあ・・・階段に聞いて。」

「このままずっと続くなんてことはないよなあ?」

「まさか!!」

ティファは一度バレットを振り返って言う。

「だよな・・・・そんなはずないよな・・・・。」

・・・・・多分。


 


「まだ着かないのか?」

これで何度目かになるセリフを吐いたのはバレットだ。

ティファも長い階段にうんざりしているようだが、それでも答える。

「まだみたいね。」

「・・・・まだか?」

まだ数段しか登っていないというのにバレットが尋ねる。

「まだよ。」

「なあ・・・」

「まだだってば! まだまだまだまだまだまだまだーっ!!」

しつこいバレットにキレたティファは、ものすごい勢いで階段を登りつつ叫んでいたという。

 




「もう嫌だ! オレは戻るぞ!」

とうとうそんなことまで言い出したバレット。

は一度立ち止まり、バレットに言った。

「今まで登ったのと同じだけ階段降りるの?」

そう言われては何も言えまい。

バレットは俯いて沈黙した。

「ホラ、バレットしっかりしなさい!に負けてるわよ!」

「ん、んなコト言ったってオレは、み、右腕以外は普通の体なんだぜ・・・・

元ソルジャーみたいな、と、特別製と・・・・一緒にしないでくれ・・・・」

そんなことを言われても。

もティファも普通の人間である。

「私とだって普通でしょ!先に行っちゃうわよ!」

ティファがバレットを追い越して階段を駆け上がる。

が、すぐにハッと振り返ってスカートの裾を押さえた。

「キャッ!! ヤダ、バレット!やっぱり先に行って!」

「バ、バカ! オレはそんなつもりじゃ・・・・」

「いいから!クラウドも! 先に行って!!」

クラウドはやれやれと肩を竦め、一番先頭を走り出した。






「なあ・・・・今、何階だ?」

ぽつりと、バレットが呟いた。

「・・・・もう数える気にもならない。」

「私も・・・34階まで数えてたけど・・・もうわからなくなっちゃったわ・・・」

ティファもやはりぽつりと答え、は息切れした掠れ声で呟いた。

明らかに疲労のピークが近付いている様子だ。

「こ・・・・こんなバカ高いビル作りやがって・・・!

やっぱり、し、神羅なんてロクなやつじゃねえぜ・・・!」

「ビル如きで悪口を言われるなんて、神羅も大したことないのね。」

のキツイ突っ込みは、沈黙によってスルーされた。

 




「ああ・・・・オレはもうダメだ・・・・マリン、父ちゃんはもう一度お前に会いたかった・・・・」

こんなことまで言い出してしまったバレット。

ここまで来てしまえば、もう既に末期の状態である。

「ちょっと!縁起でもないこと言わないの!もう少し! もう少しだから!」

ティファの言葉の最後に、小さく自信なさげに「多分」と付け加えられていたのは

恐らく聞き間違いではないだろう。

ふと、が呟いた。

「・・・マリンちゃんって、バレットの娘さんだったのね。」

「あ、そうか、には話してなかったっけ。似てない親子よね。」

ティファが笑いながら言う。

そんなティファを見て、も少し笑った。



 


「や・・・・やっと・・・・着い・・・た・・・・!」

全員が息切れで今にも倒れそうである。

ただ一人、クラウドを除いては。

クラウドも多少の息切れと、汗はかいているが、そんなに疲れた様子はない。

むしろ、ジョギングでもして良い汗をかいた、とでも言いたそうな顔だ。

そんなクラウドを恨めしそうに見上げ、は呟いた。

「か・・・階段なんて・・・・もう見るのも嫌・・・・。」

無理もない。

けれど、へばってはいられない。

「皆、行くぞ。」

クラウドの声を聞いて、全員が汗を拭い背筋を伸ばした。






「侵入者を排除しろ!」

非常階段からビルの中に入った途端、いきなり強化戦闘員が襲ってきた。

4人は即座に戦闘態勢に入り、武器を構える。

まずクラウドが剣で戦闘員の一人に切り掛かり、よろめかせる。

そこをバレットが銃で攻撃し、ティファはその間に他の戦闘員を攻撃している。

は目を瞑り、集中した。





―――――冷風よ・・・―――――






「ブリザドッ!!!」

通常のブリザドよりも激しいブリザドが戦闘員を襲う。

よろめく戦闘員。そこを、クラウドが思い切り突いた。

豪快な金属音の後、戦闘は終了した。




「これは・・・・・」

ふとクラウドが床を見つめる。

そこには、戦闘員が落としたカードキーが落ちていた。

クラウドはそれを拾い上げ、カードに書かれた文字を読む。

「カードキー60・・・って書いてあるな。」

「きっと60階までその鍵で入れるってことなのよ。」

クラウドは頷く。

ここまでは、驚くほど順調だ。

それこそ、後が怖くなるほど。

4人はエレベーターに乗り込み、60階のボタンを押した。

バレットが呟く。

「ここからが本番だ。油断するな。」

厳しい視線。やはり、少々緊張しているのだろう。

「エアリス、無事だといいね。」

ティファが呟き、その呟きは沈黙によって流された。

 




そう、ここまではただのウォーミングアップに過ぎない。

本番はこれから。

エアリスを助けるまで、舞台からは降りられない。

















<続く>



=コメント=
はい、レノ出せませんでした(いきなりそれかよ(笑
頑張ったんだけどね・・・。
このまま伸ばすとキリが悪くなりそうだし(笑
だから今回はとりあえずここまでで。
次回は間違いなくレノが出ます。
『あの時より一歩強くなれた?』(てか長い。誰か略した題名考えて(笑))では
レノとあんまりラブラブしてなかったんで、
『I love my life.』ではレノとの仲を良くさせたいです。ウン。
いや、自分的に『あの時より一歩強くなれた?』のストーリーも好きなんだけどね。
今回は『あの時より一歩強くなれた?』で実現できなかったことを少し混ぜようかと(笑
クラウドとの恋愛もそろそろちょびちょび書いていかないとねー。
そろそろクラウドとの関係も変わってきますよ(笑
今はまだ友達以下だもんね(爆笑
そろそろ友達に昇格しないと・・・。
あとあと大変だし(笑