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確かにスリルは求めていた。

何か、天地が引っ繰り返るような、そんな大きな事件に遭いたいって。

今まで感じたことのないような、大き過ぎるスリルが欲しいと。

けど、さすがにこれは反則じゃないの?

だって私は、ごくごく普通の女子大生。

たくさんの友達がいて、成績も良くて、大学を卒業したらきっとお見合いをして結婚して。

そして、ふと気付くと何十年も過ぎていて・・・そして人生を終えるんだと、そう思ってた。

そう信じて疑わなかった。

だって、まさかこんなことになるだなんて。

きっと神様だって、予想出来なかったに違いない。








I love my life.








ふとが目を覚ましたとき、真っ先に視界に飛び込んできたのは一人の女性の顔だった。

「・・・・?」

はふと目を細める。すると、女性はの反応に気付いたのか少し身を乗り出した。

露出度の高い紫色のドレスに、長く黒い髪がよく似合っている。

目鼻立ちも整っていて、相当な美人だと素直に思った。

「大丈夫?」

女性が言った。

は自分の状況が把握出来ずに混乱しており、ゆっくりと上半身を起こすと辺りを見回した。

どこかの地下室のようだ。薄暗く湿気っていて、少し肌寒い。

は視線を動かし、女性を見つめた。

女性はが目を覚ましたことに安心したのか、少し微笑んでいる。

「あなた、ここで倒れて気を失っていたの。外傷は無いようだったから大事じゃないとは思ってたけど。」

女性は言った。どうやら、女性が来る前から自分はここに倒れていたようだ。

だが少し考えて明らかに矛盾していることに気付く。

一番新しい記憶は、近所の商店街にいた記憶だ。

確か横断歩道の向こうに冬也が見えて、冬也が何かを叫んで、そしてものすごい衝撃が体を襲った。

それが交通事故だと思い当たるまで、そう時間はかからなかった。

は交通事故に遭ったのだ。

そして・・・そう、確かセフィロスとか言う人物に呼ばれていた。

そこで記憶は途切れている。

「ここは・・・?」

は女性に尋ねた。女性は少し驚いたようだったが、に言った。

「もしかして・・・ここがどこか、知らないの?」

「気が付いたらあなたが覗き込んでいたから・・・。」

嘘ではない。

こんな場所に覚えは無いし、自分は本当なら交通事故で大怪我を負っているはず。

なのに体のどこも痛くないし、ちなみに夢かと思って頬をつねってみたら夢ではなかった。

女性はが本当に何も知らないということを知ると、ゆっくりと話し出した。

「ここは・・・コルネオという男の屋敷よ。コルネオは有名な独身貴族。

卑しい男で、毎晩嫁探しをしているわ。私てっきり、あなたがコルネオの嫁候補だと思ってたけど・・・。」

は首を横に振った。

コルネオだなんて名前、聞き覚えも無い。

「あなたのその格好は・・・それじゃ、コルネオの手下が着替えさせたのかもしれないわね。」

はハッとして自分の体を見た。

露出度の高い、黒の色っぽいドレス。

「えぇぇーーーっ!?」

は仰天した。自分は、デニムのロングスカートに茶色いセーターを着ていたはずなのだから。

いつの間にこんな服に着替えさせられたのか、さっぱりわからない。

「もう一度確認するけど・・・、あなたは、自分からこの屋敷に来たわけじゃないのね?」

「こんな場所、自分から来るはずなんてないよ。何がなんだかさっぱり・・・。」

がそう答えると、女性はクスリと笑った。

そして、言う。

「なら、一緒に逃げましょう。私だってコルネオの嫁になるつもりなんてこれっぽっちも無いから。

私、コルネオに聞き出さなくちゃならないことがあってここまで来たのよ。

用事が済んだらさっさと逃げるから、その時は一緒に逃げましょ。」

は顔を上げる。

「私ティファ。ティファ、でいいわ。あなたは?」

「・・・・・・。」

、さんね。よろしく。」

ティファはの手を取ると、立ち上がらせた。

そしてにっこりと微笑む。

「・・・こちらこそよろしく、ティファ。私のことは好きに呼んで。」

も、やっと微笑むことが出来た。

右も左もわからないこの場所で、勇気が出て来た。

それは間違いなくティファのおかげ。

は、ティファの手を握り締めたまま、やわらかく微笑んでいた。









「・・・・・・ティファ、さん?」

後ろから声がした。

とティファは一緒に振り向き、目の前の人物を確認した。

ティファやと同じく、露出度の高い赤いドレスに身を包んだ女性。

大人っぽく、それでいて上品に見える女性は、おずおずとティファに向かって言った。

「初めまして。私、エアリス。」

女性はエアリスと名乗り、一歩ティファに近寄った。

「あなたのこと、クラウドから聞いてるわ。」

は首を傾げる。クラウドという人物の名前は知らない。

いや、知らなくて当たり前だ。

「・・・あなたは?あっ、公園にいた人?クラウドと一緒に・・・。」

「そ、クラウドと一緒に。」

「そう・・・。」

心なしか、少しティファの声のトーンが沈んだ気がする。

はティファの一歩後ろに下がり、会話に耳を傾けた。

「安心して。少し前に知り合ったばかりよ。なんでもないの。」

エアリスが言う。ティファは少し目を細め、それから首を傾げた。

「安心って・・・何を安心するの?・・・ああ、勘違いしないで。

私とクラウドは単なる幼馴染よ。なんでもないの。」

「二人して『なんでもない!』な〜んて言ってるとクラウド、ちょっと可哀相。」

エアリスは口元に手を持っていき、クスクスと笑った。

そんな仕草のひとつひとつが、やはりどことなく大人っぽい。

「ね、クラウド?」

エアリスはくるりと振り返ると、後方にいる一人の女性を呼んだ。

金髪のおさげ髪、紫色のドレス。女性は少し顔を赤くしながらティファに歩み寄った。

ティファは首を傾げる。

そんなティファの様子を見て、女性は顔を背けた。

「クラウド? ・・・????」

ティファは女性の顔を覗き込み、そして再び首を傾げる。

沈黙。

「クラウド!?」

ティファは飛び跳ねた。女性の肩を両手で掴み、大声を張り上げる。

「その格好はどうしたの!?ここでなにしてるの!?

あ、それより あれからどうしたの!?身体は大丈夫!?」

まさに質問の嵐である。

クラウドと呼ばれた女性(正しくは男性である)は軽く首を横に振り、小さく溜息をついた。

そして、チラリとを一瞥してからティファに話し出す。

何故か視線を合わせられてしまったは首を傾げ、けれども何も言わなかった。

「そんなにいっぺんに質問するな。この格好は・・・・・・ここに入るためには仕方なかった。

身体は大丈夫だ。エアリスに助けてもらった。」

現在の容姿からは想像もつかない透き通るようなテノールボイス。

この化粧とカツラを取り、服を着替えたらさぞかし美男子だろうな、とは思う。

「ティファ、説明してくれ。こんなところで何をしているんだ?」

「え、ええ・・・。」

クラウドの問いに、ティファは戸惑ったように答えた。

二人の会話を聞いて、エアリスは気を利かせて耳を塞ぐ。

もエアリスに倣い、両手で耳を塞いだ。

視線だけでクラウドとティファの様子を窺う。

再会の挨拶から始まり、いろいろと今までの経緯を話しているようだった。

五番魔晄炉がどうだとか、怪しい男がどうだとか、この屋敷のコルネオの名前も聞こえた。

だが、詳しい話はわからない。

恐らく、まともに聞いても何の話だかわからないだろう。

と、エアリスが耳を塞いでいた手を離して気まずそうにクラウドとティファに歩み寄る。

も、手の力を緩めてティファ達を見つめた。

「あの・・・聞こえちゃったんだけど・・・。

3人の女の子が 全員あなたの仲間だったら問題ナシ、じゃないかな?」

は眉をひそめて首を傾げた。

やはり、少しでも聞き耳を立てておくべきだっただろうか。

話がさっぱりわからない。

「それはそうだけど・・・・」

「ここに2人いるわよ。」

「ダメだ、エアリス!あんたを巻きこむわけにはいかない。」

「あら? ティファさんなら危険な目に遭ってもいいの?」

「いや、ティファは・・・」

「いいの?」

「わたし、スラム育ちだから危険なこと、慣れてるの。あなたこそ、私信じてくれる?」

「ありがとう、エアリスさん。」

「エアリス、でいいわよ。」

ぶっちゃけ何にもわからない。

どんどん話は進み、よくわからないうちに美しい友情が誕生したようにも思える。

は少し居心地の悪さを感じて、手を握り締めた。

「お〜い!!」

階段の上から声が降ってきた。

4人は階段の上を見上げる。そこには、男が立っていた。

「お姉ちゃん達、時間だよ。コルネオ様のお待ちかねだ!

ウロウロするなって言ったのに・・・これだから、近頃のおネエちゃん達は・・・。早くしてくれよ!」

仕事にお疲れらしい男は、愚痴をこぼしながらその場を去ろうとしてふと立ち止まる。

そして振り返り、言った。

「あ、そうそう。黒いドレスのおネエちゃんはさ、俺達んとこに来るかコルネオ様に会うか

どっちか決めてくれよ。この屋敷の前で倒れてたのを拾ったのは俺なんだから、どっちかというと

前者の方希望でよろしく〜。」

それだけを言うと、男は行ってしまった。

は眉を寄せ、心底嫌そうに溜息をついた。

屋敷の前で倒れていた。ということは、交通事故の直後に自分が来た場所というのは、

どうやらこの屋敷の前らしいということがわかった。

は、既に確信していた。

ここは自分のいた世界ではない。

地球という星にある、東京という場所ではない。

ティファは心配そうにを見つめて口を開いた。

、どうするの?」

「どうしよう・・・。」

クラウドが小さい声でティファに「知り合いか?」と聞いたのが聞こえた。

はもう一度溜息をつき、額に手を当てる。

ここから逃げ出すには、自分一人の力では不可能だと思う。

ティファと一緒に逃げようと決めた。ティファの力なしでは、恐らく自分は逃げられないだろう。

だが、あまりティファ達に迷惑をかけたくない。

クラウドとエアリスという新たな人物の登場で、は少し混乱していた。

「コルネオに会うべきだろう。」

ふとクラウドが言った。

は顔を上げる。

「お前が誰かは知らない。別にお前のことなんて興味ない。

けど、もしここから逃げるつもりでいるのなら、コルネオに会った方が俺達としても動きやすい。」

「・・・どういうこと?」

「俺達はコルネオに用事がある。だから俺達はコルネオに会う事になる。

その時にお前も俺達と一緒に行動していれば、逃げるのも楽だろう。」

つまり。

逃げるときは、一緒に逃げてくれると、そういう意味なのだろうか?

はクラウドを見つめた。

クラウドは少し顔を背け、「後は自分で考えろ」と言った。

どこか嫌味っぽい言い方にも聞こえるが、それが彼の本心ではないとは感じた。

本当は、もっと優しいと感じた。

だから、クラウドの言葉をありがたく頂戴することにした。

「・・・そうする。ありがとう、えっと・・・クラウド、さん。」

「クラウドでいい。」

「私はエアリス。エアリスでいいわ。あなたは?」

エアリスに聞かれ、は微笑んだ。

。・・・よろしく、クラウド、エアリス。」

さっきまでの居心地の悪さは、いつの間にか薄れていた。



元の世界に帰る方法なんて、まだ見当も付かないけれど。

何故か、今まで求めていたスリルが手に入ったような気がした。

もしかしたらもう帰れないかもしれないのに、不思議と後悔や不安という感情は湧き上がらなかった。






寒々しい地下室から出て、コルネオの部屋というのはすぐにわかった。

手下の男がひとつの大きな扉の前に立っていたからだ。

クラウドが先頭を行き、扉を開けて中に入った。

屋敷の中を見ても悪趣味なデザインだと思ったが、部屋の中のデザインも最高級に悪趣味だった。

赤や黄色の目が痛くなるような色の組み合わせで施された部屋だ。

部屋の真ん中には真っ赤な机があり、その机の前にいかにもスケベという顔の男が腰掛けていた。

恐らくは、その男がドン・コルネオ。

は息を呑み、コルネオを見つめた。

「よ〜し娘ども!ドン・コルネオの前に整列するのだぁ!」

手下の男が言った。

クラウド達はそれに倣い、大人しくコルネオの前に整列する。

それと同時に、コルネオががばっと身を乗り出した。

「ほひ〜! いいの〜、いいの〜!どのおなごにしようかな? ほひ〜ほひ〜!」

一瞬、ずっこけそうになった。

変な笑い方に妙に高い声。そんなコルネオの全てが気色悪いと思った。

「このコにしようかな〜? それともこのコかな〜?」

コルネオは目の前をうろうろしながら品定めをするようにじろじろ達を見つめている。

はそんな視線に不快感を感じながら、じっと耐えていた。

と、コルネオが立ち止まる。

「ほひ〜!! 決めた決〜めた! 今夜の相手は・・・・・・」

どこからともなくドラムロールが聞こえてくる。

そして・・・。


「この双黒の瞳のおなごだ!」


ぎょっとしては一歩後ずさった。

双黒の瞳。慌てて隣のエアリスやクラウド、ティファを見てみたが、全員瞳の色は黒ではなかった。

クラウドは青。エアリスは緑。ティファは黒に似ているが、残念ながら茶色である。

それに比べての瞳はどこからどう見ても漆黒の黒。

よく友達には、「吸い込まれそうになる黒だよね」と言われたっけ。

だが今はそれどころではない。

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!!」

慌ててストップをかけるが、コルネオは一向に退こうとしない。

「ほひ〜!お前は俺の屋敷の前に倒れていたと聞いたぞ?

ムフフフ・・・このコルネオの嫁になりたいがための作戦だったのだろ〜?

ヨイヨイ、可愛いヤツのぉ!  後はオマエ達にやる!」

コルネオはクラウド達3人を指差し、手下達に言った。

手下達は嬉しそうに卑しい笑いを浮かべている。

「待っ・・・!クラウドッ・・・!」

声にならない声でクラウドに助けを求める。

クラウドは小さく舌打ちをし、声を出さずに口だけを動かした。

〔 必ず助ける  待ってろ 〕

ハッとしては口を閉ざす。

一瞬、今見えたクラウドの言葉は自分の見間違いだと思った。

絶対に見捨てるだろうと思っていたから。

予想外のクラウドの言葉に、は覚悟を決めた。



大丈夫。クラウド達は必ず助けに来てくれる。

それまで、なんとか頑張って耐えていよう。



「さ〜て、行こうかの〜!」

そんなコルネオの声を聞いても、クラウドのあの言葉を思えば、怖くもなんともなかった。

大丈夫。絶対に、こんな男に屈したりしない。










「ほひ〜、やっと2人きり・・・・・・」

前言撤回。

覚悟を決めた。不安も吹き飛ばしたはずだった。

けれど。

「さあコネコちゃん・・・俺の胸へカモ〜ン!」

気色悪いことこの上ない。

だんだんこの男が怖くなってきた。いろんな意味で。

コルネオの寝室へ連れて行かれたは、無理矢理ベッドの上に座らされた。

悪趣味な香水の匂いが染み付いたベッドのシーツは、ライトアップで紫色に光っている。

は極力コルネオと目を合わせないように顔を背けていた。

が、それが逆にコルネオを喜ばせているようだ。

「ほひ〜!テレなくても大丈夫。2人きりだよ・・・。」

顔を背けている理由が、照れているからだと勘違いをしているらしい。

変に思われて下手に何かをされるより、勘違いをされた方が幾分マシではあるが。

「ほひ〜、何度見てもカワイイの〜。お・・・・お前も、俺のこと好きか?」

可愛いと言われても嬉しくない。好きかと聞かれても頷くはずもない。

気色悪い。気持ち悪い。虫唾が走る。

はベッドの上で握り締めた手を、静かに震わせていた。

何もしゃべらないを不信に思ったのだろう。コルネオが言った。

「ほひ、俺がキライなの?まさか、ほ、他にスキな男でも?」

好きな男なんていない。

ただ、あの金色の光を信じてみたくなっただけ。

あの、コバルトブルーの瞳を・・・待ってみたくなっただけ。

「・・・好きな人、なんて・・・いないわ。」

「ほひ、なら、なんでそんな顔をしてるの?」

そんな顔。

きっと、酷くつまらなそうな、不機嫌そうな顔をしているのだろう。

は言った。

「・・・この匂い。・・・気持ちが悪い・・・。」

は膝を抱え、その上に額を押し付けた。

コルネオが動揺しているのが、見なくてもわかった。

「匂い?この香水の匂い?き、キライなの?」

「・・・嫌い・・・。」

「ほひ、なら、この香水の匂いを消したら、俺のこと見てくれる?」

この言葉に、は唇を噛んだ。

顔を上げ、鋭い瞳でコルネオを睨みつける。

コルネオが一歩後ずさった。

「・・・私は最初からこんな屋敷に来るつもりなんてなかった・・・。

この悪趣味なデザインの屋敷も、このキツイ香水の匂いも、あんたみたいな肥満親父も、皆嫌いよ!!」

ベッドのシーツを握り締める。

こんな親父、相手にするもんか。

は変わらずコルネオを睨み付け、コルネオの反応を窺った。

瞬時にコルネオの表情が変化する。

今までの間の抜けた顔ではなく、何かを企んでいるマフィアの顔。

「クッ・・・、気の強いお嬢ちゃんだな・・・。」

喉で笑い、コルネオは卑しい笑みを浮かべた。

は負けじとコルネオを睨み返す。

コルネオはすばやい動きでの腕を捕らえると、そのままベッドの上に押し倒した。

は小さく悲鳴を上げ、それでもコルネオから目を離さない。

「俺にそこまで啖呵を切ったのはお嬢ちゃんが始めてだぜ。

そこまで言ったからには、覚悟は出来てるんだろうな?」

「ふざけないで。覚悟って、何を覚悟しろって言うの?私は絶対に、あなたには屈しないわ。」

コルネオはを睨み付ける。

「どっちが優勢だかわかってないようだな。こういうお嬢ちゃんには、お仕置きが必要だ。」

「残念だけどあなたのお仕置きに付き合ってる暇なんてないの。」

強気で言い放ったが、内心は怯えていた。

もしかしたらこのまま殺されるかもしれない。間抜けな男だと思って油断していた。

こんな間抜け男でも裏では汚いことをしているに決まっている。

ここで自分を殺す事など、容易いことだろう。

は身動ぎした。コルネオの手はの腕を掴んで放さない。

「放してっ。」

「お嬢ちゃん・・・。強気なのは良いが、ちょいとおしゃべりが過ぎたようだな。」

明らかに怒っている様子。

は体が震えてくるのを止められなかった。

「黙ってベッドに入ってしまえば良かったものを・・・。」

「あんたなんかに、この体を預けられるはずないでしょうっ!」

助けて。

誰か。

早く。












ッ!!!」















寝室のドアが勢い良く開く。

コルネオとは同時にドアの方を見やる。




は、一瞬息が止まったかと思った。

ドアのところには、息を切らせて、元の姿に戻ったクラウドが立っていた。

クラウドは瞬時にコルネオに飛び掛り、コルネオを突き飛ばす。

は解放され、コルネオを少し距離を取ってクラウドとコルネオを交互に見つめた。

クラウドはコルネオから離れると、を見つめる。

はクラウドから、目が離せなくなっていた。


予想以上に耽美な顔。

ドレスを着ていた時にはわからなかった、筋肉のついたがっしりとした肉体。

すらりとした長身が、彼の容姿を引き立たせている。

「クラ・・・ウド・・・。」

「大丈夫か?」

は体が震えてくるのを止められなかった。

怖かった。

クラウドの言葉を間違いなく信じていた。けれど、それでもやっぱり怖かった。

は震える唇で言った。

「・・・もう・・・駄目、かと・・・思った・・・・。」

みるみるうちに視界が歪んだ。

クラウドが来てくれて、安心したのだろうか。

堰を切ったように溢れ出す、止めようと思っても止められない涙。

「あ、あれ・・・?ご、ごめん・・・・。泣くつもりなんて、な、ないのに・・・。」

は必死に涙を拭い、泣き止もうとした。

しかし涙は止まらない。体の震えも止まらない。

なんだか情けなくて、更に涙が溢れ出す。

声を必死に押し殺して、ただひたすらに涙を腕で拭う。

そんなを見兼ねたのか、クラウドの溜息が聞こえた。

せっかく助けに来てくれたのに、情けない。

と、上から降ってきたのは暖かい言葉だった。

「我慢するな。・・・下手に我慢されると、こっちの調子が狂う。」

また、そんな憎まれ口。

けれど、本心はそんなんじゃない。

心配、してくれてるんだ。

はクラウドを一度見上げ、それから顔をくしゃくしゃに歪める。

クラウドは小さく溜息をつき、の頭を右手で持って自分の胸に押し付けた。

そうなってしまえば、もう止めようとする気持ちも吹き飛んでしまう。

はクラウドの胸にすがり付いて、声を上げて泣き出した。

ッ!」

その直後にティファとエアリスが駆け込んできた。

2人ともドレスからは着替えており、ティファは白いTシャツに黒のミニスカート、

エアリスはピンクのワンピースだった。

「ほひ〜!オトコっ!?誰か、誰か!!」

コルネオは手下を呼んだが、誰も来る気配はない。

ティファが腰に手を当ててコルネオを見下ろしながら言った。

「お生憎さま。あなたの子分は誰も来られないみたいよ。」

コルネオは突然現れた3人に動揺しているようで、キョロキョロと視線を泳がせている。

「な、何がどーなってるの?」

「悪いけど、質問するのは私達の方よ。」

ティファは堂々とした態度を崩さないままだ。

クラウドはを抱き締めたままコルネオを睨み付ける。

「手下に何を探らせてたの?言いなさい! 言わないと・・・・」

「・・・・切り落とすぞ。」

ティファが問い、クラウドが脅した。

を抱き締めたままであるが、ドスを効かせた低い声で充分怖く感じる。

ちなみに、何を切り落とすかは伏せておこう。

「や、やめてくれ!ちゃんと話す! 何でも話す!」

コルネオが急に弱気になると、ティファはにっこりと微笑んだ。

「さ、どうぞ」

「・・・・片腕が銃の男のねぐらを探させたんだ。そういう依頼があったんだ。」

「誰から?」

「ほひ〜! しゃべったら殺される!」

「言いなさい! 言わないと・・・。」

「・・・・ねじり切っちゃうわよ。」

今度はエアリスがコルネオを脅しにかかった。

ベッドに片足のかけ、コルネオを斜め45度下から睨み付ける。

コルネオは再び竦み上がり、口を開く。

「ほひ〜! 神羅のハイデッカーだ!治安維持部門総括ハイデッカーだ!」

「治安維持部門総括!?」

クラウドが叫んだ。

には“シンラ”というものも、“治安維持部門総括”というものも、一体何なのかわからなかった。

だが、それがクラウドの言い方からクラウド達の“敵”だということは、なんとなく理解出来た。

ティファが吠えた。

「神羅ですって!?神羅の目的は!? 言いなさい!言わないと・・・・、・・・・すりつぶすわよ。」

ティファがベッドに足をかけてコルネオを睨み付ける。

てっきり、またコルネオは弱気になるものだと思っていたが、彼の反応は違うものだった。

先ほどが見たマフィアの表情だ。

「ほひ・・・姉ちゃん・・・・本気だな。・・・偉い偉い。・・・俺もふざけてる場合じゃねえな。」

鋭い瞳。いかにも悪人という表情。

コルネオは言った。

「神羅はアバランチとかいうちっこいウラ組織をつぶすつもりだ。アジトもろともな。

文字通り、つぶしちまうんだ。プレートを支える柱を壊してよ。」

アバランチ。プレート。柱。知らない単語に、は首を傾げる。

「柱を壊す!?」

「どうなるかわかるだろ?プレートがヒューッ、ドガガガ!!だ。

アバランチのアジトは7番街スラムだってな。この6番街スラムじゃなくて俺はホッとしてるぜ。」

不敵な笑いを浮かべるコルネオ。

「7番街スラムがなくなる!?」

ティファは顔を青くして叫んだ。

それから、くるりとクラウドを見つめて言う。

「クラウド、7番街へ一緒に行ってくれる?」

「もちろんだ。ティファ。」

クラウドは頷く。

よくわからない状況だが、どうやら一刻を争う状況のようだ。

クラウドはを一度見つめ、「もう大丈夫だな?」と尋ねる。

は涙を拭き、小さく頷いた。

そんなを見て、クラウドは同じく頷き返す。

それからティファに視線を移し、「行こう」と言った。

「ちょっと待った!」

出て行こうとするクラウド達を、コルネオが呼び止める。

「黙れ!」

クラウドはコルネオを睨み付けて叫ぶ。

だがコルネオは口を閉ざそうとしない。

「すぐ終わるから聞いてくれ。俺達みたいな悪党が、こうやってべらべらと本当の事をしゃべるのはどんな時だと思う?」

「そんなこと知るか!何がなんだかわからない時だろう!」

クラウドが叫ぶ。

だが、コルネオはニヤリと笑うと言った。

「ほひ〜!おっし〜! 正解は、勝利を確信しているとき〜!」

コルネオが言い、近くのボタンを押した瞬間、体が宙に浮く。

いや、正しくは、足元の床がなくなったのだ。

足の下は暗い闇。

達4人は、暗い闇の穴へと引き込まれて行った。












<続く>




=コメント=
お約束通り、クラウド達が出ました(笑
やっぱり初対面というだけあって、クラウドも少し素っ気無いです(笑
次回もやっぱりあんまり仲はよくなくて、
ん〜・・・10話あたりからだんだんと・・・ってカンジかな(笑
次回はやっとさんがこの世界のことを理解します。
それで・・・プレート破壊まで行けるかしら?(笑
出来れば古代種の話なんかも書きたいんだけど・・・。
今回、ヒロインと古代種がかなり深い繋がりになっております(笑

あ、今はクラウドとあんまり仲良くないですけど、
最終的にはラブラブになりますんでご安心を!(笑