こんにちわ、です。






突然ですが、私は今人生最大の危機に見舞われています。







っていうか、音楽室はどこですか?






心の鎖






本当なら今は七時間目の授業中だ。

七時間目は音楽。移動授業なので、5号館に向かわなくてはならない。

なのに、は今自分がどこを歩いているかさえわからないのだ。

チャイムはとっくの昔に鳴ってしまっている。恐らく欠席扱いになっているだろう。

「ああぁ〜・・・。」

は情けない声を出して、改めて周りを見回した。

なんだか、とても自分はいる場所を間違っている気がする。

何故だ。

自分の周りにいる生徒達は、何故子供ばかりなのだ。

「ここ・・・初等部の校舎・・・?」

キャッキャと笑いながら廊下を走り回っている生徒は、どう見ても中学生や高校生に見えない。

どうやら、どんな経由を辿ったかはわからないが初等部の校舎に来てしまったようだ。

は思い切り脱力し、廊下に立ち尽くした。

「ちょっと!!邪魔なのだけれどっ!?」

「ぅあっ、はいっ!!」

後ろから注意され、は飛び上がった。

後ろを振り向くと、そこには自分よりも少し濃い目の青い髪の幼女がいた。

髪につけた大きなリボンがよく似合っている。

「っていうか、なんでここに高等部の人がいるの?ここ初等部の校舎なのよっ。」

「あ、はいごめんなさい!!今すぐ出て行きますっ!!」

もうどうにでもなれ。

は半泣き状態でその場を離れようとした。が。

「ちょーっと待ちなさいよっ!」

「はいぃっ!!」

呼び止められた

「あんた・・・もしかして、迷子?」

ギクッ

「あー、なるほど、だからここにいたのね?」

ギクッ

「もしかして、極度の方向音痴ィ?」

ギクッ

なんて毒舌な小学生だろう。

というか、小学生の口から「極度」などという言葉が出るとは思わなかった。

最近の小学生は難しい言葉を知っているのだな、うんうん。なんて頷いてみちゃったりする。

「仕方ないわねー、このエーコさまが高等部の校舎まで連れて行ってあげるわよっ。」

「へ?」

「だって帰れなくて困ってるんでしょ?」

毒舌だが、意外に良いヤツかもしれない。

「今度クレープ奢ってねv」

前言撤回。








エーコに連れられ高等部の校舎に戻ってきた時には、

もう七時間目の終わりを告げるチャイムは鳴っていた。

結局音楽の授業を受けそびれてしまった。

皆から大人気のエアリス先生の音楽の授業、とっても受けたかったのに・・・。

がホロリと涙を流していると、呼び出しがかかった。


『2年A組、。今すぐ職員室まで来なさい。

2年A組、。今すぐ職員室まで来なさい。』


「げ・・・・呼び出し・・・?」

せっかく4号館まで戻ってきたというのに、また1号館へと向かわなくてはならないなんて。

どうしよう。もう放課後だし、誰かを捕まえて連れて行ってもらった方がいいだろうか?

と、目の前に見慣れた顔が見えた。

「クラウドー!!スコール!!」

あの二人に連れて行ってもらおう。でないとまた迷子になって大変な事になる。

大声で呼ぶと、二人はに気付いて手を振り返してくれた。

は二人に駆け寄ると、言った。

「お願い!!1号館の職員室まで連れて行って!!」

懇願。クラウドとスコールは顔を見合わせる。

に呼び止められ、どうしたのかと思いきや急に「1号館の職員室まで以下省略。」。

別に断わる理由もないが、彼女の方向音痴には苦笑してしまう。

「さっき呼び出されてたもんな。」

「せっかく4号館まで戻ってきたのに、また1号館へ行かないといけないなんてショック・・・。」

本当にショックを受けているように言うを見て、やはりクラウドとスコールは苦笑した。

「いいよ。どうせ俺達もこの後屋上へ行くつもりだったから。こっちの方が面白そうだしな。」

「あ、酷い。」

「・・・本当のことだろ?・・・お前を見てると、飽きない。」

スコールがを小突きながら言う。は頬を膨らませ、口を尖がらせた。






エーコに連れられて4号館まで戻ったかと思えば、今度はクラウド達に連れられて1号館へ。

なんだか今日は移動の多い日だ。自分の体がいつも以上に疲れているのが良くわかる。

ああ、方向音痴とは辛いものだ・・・。

「おい。」

「あっ、え?」

物思いにふけっている時に急に話しかけられ、はハッと顔を上げた。

「着いたぞ。」

言われ、やっと今自分が職員室の前にいることに気がつく。

「あっ、ありがとうっ!ごめん、考え事してたから気がつかなかった。」

「・・・お前らしいな。」

「・・・スコール、それどういう意味?」

「別に・・・。」

からかっているつもりなのだろうか。

スコールは無表情だが、どう見ても楽しそうな顔に見える。

からかっている。絶対にからかって遊んでいるんだ。

「・・・呼び出されてたんじゃないのか?」

二人のやり取りを見て、呆れたクラウドが言った。

は慌てて「待ってて」と言って職員室へと入って行った。





「失礼しまーす・・・。」

職員室に入ると、先生達が忙しなく動いていた。

そういえば、職員室には呼び出されたが誰の呼び出しかはわからなかった。

。こっちだ。」

声を掛けられその方を振り向く。そこには、黒いスーツに赤いネクタイの男がいた。

漆黒の髪は長く、ほったらかしにしているのではないかという疑問も浮かぶが不思議と違和感はない。

「あ・・・はい・・・。」

名前も知らぬ先生に呼ばれ、は首を傾げた。

てっきりセフィロスに呼ばれたものと思っていたのだが、どうやら違うようだ。

「あの・・・セフィロス先生は・・・?」

「セフィロスなら今日は休みだ。」

「え・・・?風邪・・・ですか?」

「あいつは風邪はひかん。今日は他校との合同授業があって、それに出掛けている。」

まあ、セフィロスが風邪で寝込むなんて想像もつかないが。

「だからセフィロスの代わりに私がお前を呼び出した。わかっていると思うが、無断欠席のことだ。」

「え?・・・七時間目の授業の、ですか?」

「当たり前だろう。何故サボりなどをした?転校して来てからまだ日は浅いのに、

サボるなどとは良い度胸だな。・・・聞いて呆れる。」

怒っている。この先生が誰かは知らないが、とにかく自分は今とても誤解をされている。

サボったつもりなんてこれっぽっちもない。有り得ない。サボりたくてサボったわけじゃない。

「あの・・・先生?すみません、無断欠席をしてしまったことは謝ります。

けど、サボりたくてサボったわけじゃないんです・・・。」

「ほう、それはどういうことだ?」

「私、行こうと思ったんです。音楽の授業は今日が初めてだったし、音楽は大好きなので

授業、受けたかったんです。けど・・・あの、私・・・極度の方向音痴で・・・。」

先生をチラと見てみると、呆気に取られている。それはそうだろう。

無断欠席をした理由が方向音痴だから、などと通じるはずがない。

「5号館に行こうと思ったんですけど、間違えて2号館の・・・

その、初等部の校舎に行ってしまって・・・。気がついた時には七時間目の授業は終わってました・・・。」

こんなの、見苦しい言い訳にしか聞こえないだろう。

きっと「嘘をつくのはやめろ」とか言われて、たくさん説教されるんだ。

内心沈むの耳に届いたのは、呆れ返った溜息だった。

「・・・嘘か本当かは知らんが、私には君が嘘をつくような人物には思えないな。」

はハッと顔を上げた。先生は小さく溜息をつく。

「・・・仕方ない。今回は黙って目を瞑るとしよう。」

は驚いた。許してくれるとは思わなかったから。

まさか、「方向音痴で迷子になっていたので授業に出れませんでした」というふざけた理由を

信じてくれるとは思わなかったから。

「あの・・・先生、信じてくれるんですか?」

「・・・信じるもなにも、事実なのだろう?」

頷く。嘘でこんな馬鹿馬鹿しい理由を言うわけがない。

はほっと胸を撫で下ろした。もっと怖いことになるかもしれないと思っていたが、

どうやらお仕置きはナシのようだ。

「あの・・・先生、ひとつお聞きしてもいいですか?」

「なんだ。」

ずっと疑問に思っていたことを口にする。

「あの、先生・・・誰ですか?」

口にしてから気付く。いかん。駄目だろう、いきなり聞いては。

ほら見ろ、先生はさっきよりも呆気に取られた顔をしているではないか!

は慌てて口を押さえるが、時は既に遅し。

あはは、私マイペースなんだよねv

というより、いい加減マイペースに生きるのをやめろ、私!!

焦りつつも内心一人ボケツッコミをやっていたりする。

先生はポカンと口を開けてを見ていたが、やがて頭をかきながら言った。

「・・・言っていなかったな。3年B組担任・・・ヴィンセント・ヴァレンタインだ。

歴史を教えている。・・・明日は歴史の授業がある。教科書を忘れぬように。」

いや、そこはごくごく普通に自己紹介をする場面じゃないでしょ!!

自己紹介に加えて物忘れをしないように注意までしてるし!!

とはさすがに言えなかった。


3年B組ということは、クラウド達のクラスではないか。

この人が、クラウド達の担任。そう考えると、何だか不思議な気分になる。

クラウド達とヴィンセントの雰囲気が似ているからだろうか?

「それはともかく。・・・4号館まで帰れるのか?」

方向音痴を心配して言っているのだろう。

「あ、大丈夫です。クラウド達が待ってくれてるので、一緒に4号館まで帰ります。」

ヴィンセントは目を見開いた。

「・・・クラウド?・・・クラウドとスコールのことを言っているのか?」

「はい。」

驚いた。あの二人と仲良く出来る者がティーダとジタン以外にいたとは。

あの二人は優等生のくせに問題児で、人とは馴れ合ったりしないと思っていたのに。

これはもしかすると、何かの始まりなのかもしれない。

「・・・もういい。早く教室に戻れ。」

「はい。失礼します!」

笑顔でペコリと会釈をし、は走って職員室から出ようとした。

「職員室では走らない!!」

「ぅあっ、はいっ!!」

注意され、は顔を赤くしながら歩いて職員室を出た。

ヴィンセントはその様子を見送り、ふぅ、と溜息をつく。

「面白い子ですね。」

後ろから声がした。ヴィンセントは振り向く。

白衣が見えて、ヴィンセントはまた溜息をつきたくなった。

「・・・シーモア・・・。」

「おや、驚かせてしまいましたか?」

悪びれた様子もなくシーモアは言う。

ヴィンセントは少々シーモアを睨み付け、机の上の書類に視線を落とした。

「何故保健室の先公がここにいる。持ち場を離れて平気なのか?」

「仕方ないでしょう。どうせ生徒達は保健室に遊びに来るだけですし、

職員室には毎日のように怪我をする間抜けでお馬鹿な先生がいるんですから。」

ヴィンセントは目線だけを動かしてある人物を見つめた。

その人物はゲラゲラ笑いながら、擦り剥いて血が出ている膝をバシバシと叩いている。

そんな様子を見て、ヴィンセントは頭を抱えたくなった。

「あーあー・・・怪我している部分をあんなに叩いて。いつものことですが、面倒な人ですね・・・。」

「なんとかならないのか。見ているこっちが恥ずかしい。」

「私に言わないでください。私は彼の世話役じゃないんですから。」

「似たようなものだろう。」

言われ、シーモアは苦笑する。確かにそうかもしれない。

毎度のことながら、教師の怪我の手当てをするなんてつまらないことこの上ない。


「・・・それはそうと、先ほどの面白い子・・・名をなんと言いましたかな?」

のことか?」

「ええ。」

シーモアは白衣のポケットに手を入れる。そして、窓の外の風景を見やった。

「・・・彼女、何かを変えるかもしれませんね。」

「・・・お前も感じていたか。」

シーモアは口を閉ざした。無言は肯定と取る。

ヴィンセントの書類をめくる音がやけに耳にうるさく聞こえる気がした。

「彼女、どうやらしょっちゅう屋上でクラウド達と過ごしているらしいですよ。」

「・・・本当か?」

「私は嘘は言いません。」

ヴィンセントは手を止め、シーモアを見やる。

シーモアは貼りつけたような笑みを浮かべたまま、ヴィンセントの視線を受け止めた。

「確かにクラウド達は人が近寄りにくい雰囲気を持っていますけどね。

私は彼らは良い子だと思いますよ。ただ誤解されやすいだけだと思いますが?」

「・・・私もそう思っている。だが、あいつらはたまに人を近寄らせない雰囲気を醸し出す時がある。

近寄りにくいのではなく、近寄らせないんだ。・・・それが少々、疑問だな。」

ヴィンセントは視線を落とした。

教師として、彼らのことはもっと知って行きたいとは思っている。

だが、彼ら自身が人の輪の中に入らなければ、そうすることさえ出来ないのだ。

「だから、彼女が何かを変えるかもしれないと言っているんですよ。

何かが変わらなければ、動き出さないことだってあります。

・・・今が、そういう時なのではないでしょうか。」

ヴィンセントは黙っている。

いずれ、動き出す時が来るのだろうか?

確信はない。けれど、確信に近い予感なら広がっている。

「賭けてみませんか?」

「・・・何?」

ヴィンセントはシーモアを見た。

シーモアは意地悪そうな笑みを浮かべてヴィンセントを見つめている。

「私は彼女が何かを変える、という方に賭けます。

あなたは彼女は何も変えられない、という方に賭けてください。」

ヴィンセントは鼻で笑い、くだらないとでも言うように視線をそらす。

「・・・私もは何かを変えるという方に賭けるぞ。」

「それじゃ賭けにならないでしょう。」

「ならお前が何も変えられないという方に賭ければいいだけのことだ。」

「嫌ですよ。」





確実に全ては廻り出している。



ゆっくりだが、確実に。



何かが、変わろうとしていた。






<続く>


=コメント=
やっとヴィンセント先生が出せたよ〜!!
ついでに保健室のシーモア先生も(笑
次回はフライヤ先生とか出したいな・・・v
なんかEDに近付いてるかのようなカンジですが、
全然EDなんてまだまだです(笑
予定では30話くらいでEDが理想なので(笑
まだまだ〜vららら〜(ぇ
ってか、今回さんほとんどしゃべってません!(汗
じ、次回はたくさんしゃべらそう・・・(汗
あ、ちなみに、途中でシーモアが言ってる
お馬鹿な先生というのはクジャのことです(笑
毎日怪我してそうだもんな、あの人・・・ [PR]動画