まだまだ私には知らない事だらけだ。





いつも何かに、驚かされてる。






心の鎖






「ねぇ!!あんた、でしょ?」

夕刻の教室。は帰り支度を済ませ、いつものように屋上へ行こうとしていた。

クラウドとスコールに出会ってからは、しょっちゅう屋上へ行くことにしている。

もっと彼らのことを知りたかったし、どちらにしろ本を読むには最適の場所だからだ。

今日も同じく、屋上へ行こうと鞄を持った瞬間だった。

ふと話し掛けられ、は振り向く。

そこには、自分よりひとつか二つ年下だろうか。

短い黒髪の少女と、クセのある跳ね返った髪の少女が立っていた。

「はい?」

「アタシ、ユフィ。こっちがセルフィ。アタシ達、1年B組なんだ。」

「よっろしっくねぇ〜!」

明るい二人組だ。どうやらひとつ年下らしい。

だが、先輩も後輩もないような物言いに、は少々苦笑した。

「よろしく。ユフィ。セルフィ。」

はとりあえず笑顔で返した。

「でもさ、本当だったよね。クラウド達が『あの転校生は面白い』とか言ってたから

本当かなって思って来てみたらさ、すっごく面白いじゃん?」

「ね〜!だって、スコール達が他人に興味を示すっていうこと自体珍しかったしねぇ〜。」

は首を傾げた。

「あなた達、クラウド達を知ってるの?」

尋ねると、ユフィとセルフィは不思議そうな顔で首を傾げた。

そして顔を見合わせ、に言う。

「・・・あのね、アタシら、あの二人組の妹だよ?」





沈黙





「えぇええええええぇえっ!?」

は目を見開いて驚いた。ユフィもセルフィもきょとんとしている。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!クラウド達の、妹!?」

「そうだよ〜。私はスコールの妹で、ユフィはクラウドの妹なの〜。」

唖然。

確かにユフィもセルフィも整った顔をしている。雰囲気は確かに似ているかもしれない。

けれど。全然顔はあの二人に似ていないではないか!!

「し、知らなかった・・・あの二人に、まさか妹がいたなんて・・・。」

「あはは。でもあんた、ホントに面白いね!!これから仲良くしよ!」

手を差し出すユフィ。セルフィはその隣でにこにこと笑っている。

は差し出された手とユフィの顔を見比べ、けれどふっと微笑んでその手を握った。

「うん、よろしくね。」


ユフィとセルフィがクラウド達の妹だなんて驚いたけれど、けれど面白いから、まぁいいか。






ユフィ達はゲーセンに行くとかでその後すぐに教室を出て行った。

そしてまた、教室にはが残される。

夕日がもうすぐ山に沈みそうだ。今日は屋上に行くのは諦めよう。

そんなことをぼんやりと考えていた時、バタバタと足音が聞こえて教室に誰かが入って来た。

「あ・・・まだ残ってたんだ?」

ふんわりとした声。は振り向く。

目の色が左右で違う、一人の少女。緑と青の目をした、綺麗な少女。

「あ・・・・えっと・・・。」

よく教室で見かけてはいたが、名前を聞いたことがない。

そのことに気付いたのか、少女はにっこりと笑った。

「ユウナ。私、ユウナです。」

「あ・・・よろしく、ユウナ。どうしたの?こんな時間に教室に戻ってくるなんて・・・。」

ユウナは恥ずかしそうに笑い、言う。

「あはは・・・数学の宿題、机の中に置き忘れちゃって・・・。」

「そうだったんだ・・・。」

ユウナは自分の席に駆け寄り、机の中に手を入れて数枚のプリントを取り出した。

そして、安堵したように小さく溜息をつく。

何せ数学の先生はセフィロスなのだ。転校初日、恐怖感を感じなかっただが、

彼の授業を受けてからは、考えを改めざるを得なくなった。

ズバリ、彼は怒ると怖い

例えば、一人の生徒が宿題を忘れたとする。すると、表面上では怒っていない素振りを見せるが、

内心ではものすごく怒っているのだ。何故なら、そういう日は宿題がいつもの倍になるのだから。

機嫌が悪いときは倍以上になることだってある。

「セフィロス先生、宿題とか忘れると怖いもんね。」

「ね〜・・・。焦っちゃうよ。」

とユウナは二人で苦笑した。

ルックスは最高。きっと女子生徒からはものすごい人気を誇っているのだろう。

そんなセフィロスだが、やはり先生としてはしっかり仕事をしている。

「ユウナ〜・・・?」

教室の外から声が聞こえ、二人は振り返った。

長い黒髪の少女が教室の入り口に立っている。

「あっ、ガーネット・・・。ごめんね、待たせちゃったよね。」

ユウナは慌てて少女の傍に駆け寄ると、に向き直った。

「こっちはガーネット。私の一番のお友達。」

にっこりと笑いながら言うユウナ。ガーネットも同じく笑顔でに会釈をした。

「ガーネットです。本当はもっと早くおしゃべりしたかったんだけど・・・、

ホラ、他の生徒に質問攻めだったから、話し掛けたら迷惑かなって思ってたの。」

は思い出して苦笑する。そうなのだ。

転校生が必ず受けるという質問攻め。休み時間には必ずたくさんの生徒に囲まれ、

「どこに住んでるの?」だの「彼氏いる?」だの「誕生日いつ?」だの。

しつこいくらいに何度も聞かれた。

「ううん。迷惑なんかじゃないよ。」

「本当?良かった・・・。」

ガーネットは微笑みながら安堵した。

「それじゃ、また明日ね、!」

「さようなら。」

ユウナとガーネットは手を振りながら教室から出て行った。

も手を振り返し、二人の姿が見えなくなると窓の外を見た。

日が山に沈み、まだほんのり夕日色に空が輝いているが、もう大分暗くなっている。

そろそろ帰らないと、また親にしつこく「どこに行っていた」とか聞かれる羽目になる。

は開いていた窓を閉め、カーテンを閉め、鞄を持って教室を出た。

鍵は警備員の人が閉めるだろう。





。」

階段を降りている途中、上から声が飛んできた。は立ち止まり、振り返る。

クラウドとスコールだった。二人とも今から帰るところらしい。

「あっ!!そうだ。クラウド、スコール!今日、あなた達の妹さんが私の所へ来たんです。」

「・・・敬語。」

呼び捨てには慣れたが、まだタメ口には慣れていない。つい敬語が出てしまう。

はハッとして口を押さえ、そしてまたしゃべり出す。

「二人に妹がいるなんて私知らなかった。びっくりしたよ。」

「ユフィ達・・・やっぱりに会いに行ったのか。」

コクンと頷く

急にやって来たユフィとセルフィ。急に呼び捨てで呼ばれたりして、少々驚いた。

けど、敬語嫌いなこの二人の妹だったら、確かにわかるかもしれない。

「・・・にしても、またお前帰る方向間違えてるぞ。」

「え・・・?」

は頬を引き攣らせた。

「こっちの階段を降りたら、校庭に出るぞ。帰れないこともないが、校門まで遠回りになる。」

「うそぉ〜・・・。」

やっぱりは方向音痴なのだ。

がっくりと項垂れるにクラウドとスコールは苦笑した。

「ほら、何してる。」

はハッと顔を上げる。クラウドとスコールが階段の上に立っていた。

「・・・帰るんだろ?途中まで・・・一緒に行こう。」

待っていてくれている。はふわりと微笑み、頷いて彼らに駆け寄った。

そして三人で、学校を後にした。






「え?クラウドとスコール?」

次の日、学校に行ったは早速ユウナとガーネットに昨日のことを話した。

「うん。あの二人、優しいよね。」

てっきりユウナもガーネットも頷くと思っていたが、二人とも気まずそうに顔を見合わせている。

は首を傾げた。

「・・・どうしたの?」

「あの、ね?・・・あの二人って・・・避けられてる・・・と思ったんだけど・・・。」

は眉をしかめた。

「避けられてる・・・?あの二人が?」

ユウナとガーネットは頷く。

二人の話に寄ると、クラウドもスコールも冷たい雰囲気を放っているため、

あまり人を寄せつけないそうだ。確かにそうだろう。

とて最初からあの二人に打ち解けていたわけではないのだから。

けれどルックスは良いから、影で根強い人気を誇っているらしい。

だが、そんなファンの者達でも話し掛けたりするというのは滅多にないそうだ。

いや、話し掛けられないのだろう。

「怖い・・・よね。」

「うん・・・。」

ユウナが言い、ガーネットが頷く。

「そんなことないよ・・・あの二人、すっごく優しいよ?」

「・・・そうなのかもしれないけど・・・話し掛け辛い、よね・・・。」

ユウナとガーネットはそれきり黙り込んでしまった。

気まずい空気がその場に流れる。はどうしたらいいのかわからず、戸惑っていた。


「何の話ッスかー!」

「オレ達も混ぜろよ!!」

「っ!?」

急に後ろからがばちょっと抱き締められた。しかも二人に。

しゃべり方と声ですぐにわかる。ティーダとジタンだ。

「あの・・・ティーダ、ジタン・・・なんで抱きついてくるの?」

はとりあえず聞いてみる。

「「や、なんとなく。」」

反応までぴったりだ。は脱力した。



「で、なんの話してたんだよ?」

改めてジタンが聞く。途端にユウナとガーネットが気まずそうな表情になり、俯いた。

「・・・あのね、3年生のクラウドとスコールの話をしてたの。」

が言う。するとジタンとティーダは顔を見合わせ、ニッと笑った。

「なーに?あの二人、やっぱり怖いって話?」

「ち、違うよ!クラウドもスコールも・・・すっごく優しいの。」

は俯く。あの二人は、皆に拒絶されているのだろうか?

そう考えてしまうと、何故だか胸が痛くなる。

だが、降って来たのは優しい言葉だった。

「だろ?あの二人って誤解されやすいんだよなー、全く。」

「ご、誤解なんかじゃないよ・・・。怖いもの。」

ジタンが言うと、それにユウナが反論した。

「だーから、それはユウナ達の思い込みッス!」

デコピンをしながらいうティーダ。ユウナは少々口を尖がらせた。

ジタンもそんな様子を見ながら笑っている。

は呆気に取られていた。これが望んでいた言葉だったとはいえ、なんだか間抜けしてしまう。

は間違ってないよ。あの二人、『怖い』って誤解されやすいけど人一倍優しいヤツらだから。」

ジタンが「安心しろ」というように言う。

はなんだか嬉しくなった。あの二人を、理解出来たような気がしたから。

そして、ジタンとティーダのことももっとわかった気がしたから。

「・・・うん、ありがとう。」

小さな呟きのような言葉は、ジタンとティーダの耳にしっかりと届いていた。



「どういたしまして。」


「ってか、本当のことだしな。」



この二人には、やっぱり救われる。

まだまだには、知らない事だらけだ。


けれど、それはこれから知っていけばいい。






<続く>


=コメント=
ぐあああ!!(何
ヴィンセント先生が出せなかった!!(汗
くぅぅぅ〜!悔しい!絶対に次回は出す!
センセーーーー!!!(笑 [PR]動画