「・・・・なぁ、この任務ってマジなわけ?」




が、呆れ半分怒り半分といった顔で言った。




「・・・・俺が知るか。」




そんなこと、俺に聞かれたって困る。




俺だって、と同じ事を考えていたのだから。





面影








バラムガーデンの優等生。バラムガーデン自慢のSeeD。バラムガーデンの最強コンビ。

バラムガーデンの etc...

とにかく、バラムガーデンで伝説とさえ謳われているSeeDの二人組。

・イオザムとスコール・レオンハート。

その二人が、現在SeeD退職を考えている(ぇ

問題は今回の任務にあった。


有り得ない。

文字通り、有り得ないのだ。まさかこんな任務を本気で自分達に押し付けたのか?

帰ったらボコってやる。あの馬鹿シド校長め・・・。



「ねぇねぇ、お兄ちゃん達〜。遊ぼうよ、早く遊ぼうよ!!皆待ってるよ?」

「あー、ハイハイ。今行くから、ちょっと待っててねー。で、ちなみに言うと俺はお姉ちゃんだぞー?」

「あはは!!嘘ついちゃダメだよ、お兄ちゃん!嘘つきは泥棒の始まりなんだよ!」

「・・・・嘘じゃねぇっつの・・・(怒 」

目の前には愛くるしい子供達。全部で30人ほど。

その愛くるしい子供の一人が、話しかけて来たのだ。それに返事をしたのはだった。

スコールは顔を手で覆い、黙っている。

「・・・なぁ、スコール・・・。俺達の任務って・・・なんだったっけ?」

「・・・・俺は重要任務としか聞いてない。」

「・・・俺も重要任務って聞いたんだけど・・・。」

「・・・・じゃあ、これはどういうことだ?」

「・・・最初に質問したのは俺なんだけど。ってか、任務ミス?」

「・・・・有り得るな・・・。」

スコールとは、完璧に固まっていた。


シドから聞かされた任務。それは、『重要任務』というだけで内容までは知らされてなかった。

ただシドは、「これは大変危険な任務です。だからこそあなた達に頼んだのですよ。しっかり、頼みます。」

と言ったのだ。だからこそスコールとも真面目に

「「了解。」」

と答えたのだ。なのに、こんな任務なんて有りだろうか?

任務の場所に着くなり、数人の子供達に取り囲まれた。

が「ごめんよ、俺達仕事があるから。」と言って通り抜けようとしたが、子供の一言で固まった。

「お兄ちゃん達、バラムガーデンから来た『しーど』なんでしょ!?すっげーよなぁ〜!」

スコールもも、硬直した。

今、何と?

「・・・なぁ、キミ。なんでその事知ってるんだ?」

が子供に目線を合わせるように屈み込み、頬を引き攣らせながら聞いた。

すると子供は、ケロリと

「だってシドさんが言ってたもん。」

「シドさん、言ってたよ。ボクらのところに、『しーど』のお兄ちゃん二人組が来るからよろしくって。」

と。


有り得ない。


何故?




そして、今に至る。

「なぁ、俺達、保父さんを頼まれたのか?」

「・・・お前は保母さんだろ。」

「突っ込む場所が違うだろ、スコール。」

こんな漫才をしている場合ではない。今すぐバラムガーデンに帰って、シドをボコってやらないと気がすまない。

は鋭い目を更に鋭くさせ、踵を返した。

「帰ろうぜ。校長に話を聞かないと気がすまねぇよ。」

「子供達はどうする。」

「んなこと言われたって困るのは俺達だぜ?任務の意味がわからねぇよ。」



その時だった。



「わぁぁぁあぁぁ!!!」

空気を切り裂くような悲鳴。とスコールは振り返った。

今まで自由に遊んでいた子供達が、それぞれ悲鳴を上げている。

理由はすぐにわかった。

「モンスター!!??」

見た事もない大きなモンスターが、子供二人を両手に暴れている。

巨人と言ってもいいほどの大きさだ。このままじゃ子供達が危ない。

スコールとはガンブレードを抜き取り、駆け出した。

「おおおぉぉぉぉおお!!!」

が声を上げながらモンスターに斬り掛かった。だが、すぐに目を見開いて離れる。

「どうした!!」

「硬い!!」

モンスターの体は、信じられないほど硬かったのだ。

ガンブレードを力一杯振り下ろしたにも関わらず、モンスターには傷ひとつ付いていない。

「魔法で行くぞ!」

「了解!!」

スコールとはガンブレードを地面に突き刺し、自由になった両手を前に突き出して構えた。

そして目を閉じ、集中する。

「ホーリー!!!」

「アルテマ!!!」

最上級呪文のホーリーとアルテマ。

呪文は光となり、真っ直ぐにモンスターへと向かって行く。

そして衝突した。だが。

「嘘・・・だろ・・・。」

モンスターは不死身なのか。そんな馬鹿げた思いさえ浮かんできてしまう。

最上級呪文二つをぶちかましたと言うのに、モンスターを倒すどころか瀕死状態にさえ出来なかった。

は言葉を失う。

仮にも、この二人は未来の魔女アルティミシアを打ち倒した伝説のSeeDなのだ。

その二人の魔法でも倒れなかったモンスター。

やっと、シドの言った『重要任務』の意味がわかった気がした。

「スコール・・・一体どうすりゃいいんだ!?」

「落ち着け!まだGFをためしてないだろう!!」

言われて気付く。

そうだ。まだ自分には相棒のリヴァイアサンがいる。そしてスコールにも相棒のケツァクウァトルがいる。

二人は構えた。子供を救うために。

「おい!!お前らは危ないから下がってろ!!」

が後ろの子供達に向かって叫んだ。子供達は今の状況を理解しているのか、しっかりと頷いて

それぞれが岩陰に隠れた。はそれを見届けて軽く微笑む。


自分の力なんて信じられるわけがない。

自分はまだ最強のSeeDの兄に追いついたわけじゃないのだから。

最強への道は、まだまだ遠くて儚い。けれど、行き止まったわけじゃない。

自分の力は信じられない。けれど、相棒の力ならば信じられる。きっと。

リヴァイアサン。行ってくれ。

俺はまだまだ弱いだろう。けれど、お前は俺の相棒だ。

お前は俺のことを相棒だと言ってくれるだろうか?

俺は相棒を信じたい。お前も、俺を信じてくれ。


!いいか!?」

「準備OKだぜ!!いつでも行けよ!!」



「行くぞ!!」


「了解!!!」



「ケツァクウァトル!!」

「リヴァイアサン!!」




二人の声が重なった。

黄金の閃光と青い閃光が交わり、ケツァクウァトルとリヴァイアサンが同時に姿を現した。

ものすごい風が舞い上がっている。二人は自分の体を支えるのに必死だった。

同時召喚をしたのは、アルティミシアとの戦い以来だ。

こんなただのモンスターに同時召喚をするとは思わなかったが、仕方ない。むしろ、今は子供達を守るのが最優先だ。

「リヴァイアサン!!行ってくれ!!」

「ケツァクウァトル!!ぶちかまして来い!!!」

互いの想いを互いの相棒に乗せ、二人は叫んだ。相棒はそれに応え、モンスターへと向かって行く。

全てを切り裂くような、モンスターの雄叫びが聞こえた。

「よし!!」

「まだだ!!」

が歓喜の声を上げ、スコールが叫んだ。

モンスターの手が子供を解放した。だが、その手はそのままの体を掴み上げた。

!!」

モンスターはを掴む手に力を込める。の顔が苦痛に歪んだ。

「クソッ・・・油断、したッ・・・。」

「馬鹿!!魔法でもなんでも唱えて、さっさと逃げろ!!」

「しゃべれ、ないんだよ・・・・。こいつ・・・しゃべらせないために、力を入れて・・・やがるッ・・・。」

思ったより状況は悪い。スコールは即座にアルテマの呪文を唱えた。

だがアルテマはモンスターをふらつかせただけだ。スコールは舌打ちをした。

を掴むモンスターの手が思い切り振り上げられた。そして、そのまま地面へ向かってを投げ付ける。

!!」

スコールはの下へと滑り込み、の体を受け止める。だが反動で倒れて転がった。

「スコール!」

スコールは余程の衝撃を受けたのか、立ち上がれずにいた。

「クソッ・・・。旗色悪いぜ!!」

は舌打ちをし、まだ痛む体を鞭打ち駆け出した。そしてモンスターへと向かって行く。

は、小さく呟いた。

「似過ぎなんだよ・・・。父さんと母さんを殺ったモンスターに、お前が似過ぎてるんだよ・・・。」

唇を噛み締めながら、そう呟いた。

今でも夢に見る、両親を殺された時の光景。

怖くて、何も出来ずに震えていた弱かった自分。そんな自分を庇って死んでいった両親。

鮮やかに舞った鮮血。倒れて行く死体。その向こう側に見えた、モンスターの姿。

「おおおおおおぉぉぉおお!!!」

は叫びながらモンスターに向かって行った。


―――兄貴なら・・・こんなモンスター、くらい、一撃なのか?


は渾身の力を振るってモンスターを斬り倒した。

モンスターはその攻撃に呆気なく倒れ、そして消滅した。

は肩で荒く息をしているが、外傷は見られない。どうやら大怪我はしていないようだ。


。」

スコールが声をかける。はいつもの笑みを見せて、「あー、大した事ない」と言った。

そのの声を聞いて、おずおずと岩陰から子供達が姿を現す。ひとり、またひとりとの傍に寄って行く。

「お兄ちゃん・・・ケガ、ない?」

「ん?お兄ちゃん頑丈だから大丈夫だよ。それよりお前らも大丈夫か?」

は子供達に視線を合わせ、子供達の頭を撫でた。子供達はパッと表情を明るくし、しっかりと頷く。

そして、皆口々にしゃべり出した。

「お兄ちゃん、すげーやっ!!あんなにデッカい巨人倒しちゃったんだぜ!?」

「バラムガーデンの『しーど』ってカッコイイ!!オレ、きっとバラムガーデンに入るよ!!」

「そっちの無口なお兄ちゃんもかっこよかったよ!!お兄ちゃんが落ちそうになった時、下でしっかり受け止めてたもんな!!」

は噴き出した。スコールは『無口なお兄ちゃん』という命名に目を点にしている。

子供達は口々に「かっこいい」とか「SeeDになりたい」とか言っている。

は優しく微笑んだ。

「おう。いつかバラムガーデンに来いよ。待ってるぜ。」

「「「うん!!」」」



はスコールに向き直った。

「さて。今回の任務はこれにて終了・・・でいいのか?」

「多分な。帰ってシド校長に報告だ。」

「了解。」

二人は子供達に別れを告げ、その場を去って行った。


その帰り道、ふとが口を開いた。

「・・・俺さ、今日思った事があるんだ。」

スコールは黙っている。は気にせずに続けた。

「・・・あのガキども・・・昔の俺にそっくりだった。弱くて、脅えてて、でも戦闘に参加しているつもりでいて・・・。

もしかしたら、昔の俺よりもずっとしっかりしてるかもしれねぇな。」

スコールはを見やった。は寂しげな表情を浮かべている。

「・・・でな、もうひとつ・・・思ったんだ。」

「・・・?」

はスコールを見つめた。

「お前さ、俺の兄貴に似てる。」

「・・・・は?」

「おいおい、そんな頓狂な声出すなよ。・・・本当だぜ。似てるんだ・・・。

顔や姿とかじゃなくて・・・・・・面影が、な。」

昔両親が殺されて、自分が殺されそうになった時、ガンブレードを構えて自分を助けてくれた兄の姿。

その姿に、何故かスコールの後姿が重なった。

たくましくて強そうな肩。顔にある一本傷。そして、戦いの合間に見せる真剣な表情。

「・・・俺はなんかじゃない。」

「はは、そうだな。・・・でも、今回はお前に助けられたよ。ちぃっと悔しいけどな。」

「・・・そうか。」

スコールは素っ気無くそう言うと、の腕を掴んだ。

は驚いたように振り向き、スコールの顔を見つめる。

スコールは黙ったままの腕をぐいっと引っ張ると、倒れ込む彼女の体を優しく抱き締めた。

は恥ずかしがったり、抵抗したりせずにスコールに抱かれるがままになっていた。

スコールは囁くように言った。

「・・・無茶、するなよ。お前が俺よりも先に死んだら後味が悪いからな。」

「・・・死なねぇよ。お前よりも先に死んだら、誰がお前のパートナーを勤めるんだ?」

スコールは内心微笑んだ。そして、こんな彼女が愛しくてたまらない。

素直になれない自分が少し歯痒いけれど、今はこれ止まりでも、まぁいいか。

二人は少し立ち止まり、互いに微笑みながらまた歩き出す。

将来、バラムガーデンに入学してくる子供達のことを考えながら。






<完>




=コメント=
ん〜・・・・(汗汗
どうなんだろう、この展開!!(汗
一番自分でウケたのが、
スコールの出番ナッシング!!!(爆笑/笑い事じゃない
最後に「甘く!」と言われたことを思い出し、
慌ててスコールとのラヴシーンを追加(笑
スコールラヴ!!\(*T▽T*)/
スコール、クラウドよ、永遠に!!(意味ナシ
緋月ユウキさまのリクエストでしたv [PR]動画