きっと これからも時は止まらず流れて行くけど








それでも私は “今”を大事に生きて生きたい









帰る場所









なんだか、全てがまるで嘘みたいだ。

セフィロスと戦い、セフィロスを打ち倒し、星を救ったのがまだ数時間前のことだなんて。

この戦いは、いわば星の命運を賭けた戦い。

そんな重要な戦いを、もう既に終えた後だなんて。

まだどこか手に違和感が残っていて、夢と現実、空想の間で揺れ動いている自分がいる。

軽い眩暈を感じるけど、それは心地の良いものだった。

強いて言うのなら、ライフストリームの中に落ちた時のような感覚。

あのエメラルドグリーンの光に包まれた時と、同じ感覚だと思った。




星の命運を賭けた戦いは、たくさんの人の死と、一人の犠牲を出して終結したんだ。

本当に終わった。そう思うと、少し寂しくなった。

とんでもない旅だったけど、その旅が嫌だと思ったことは一度もなかったから。

いろんな人との出会いがあって、いろんな人との別れがあって。

たくさんの仲間達に出会って。

それだけで、この旅の意味はあったと思う。








ー!もこっちに来て一緒に話そうよー!」

「あ、うん。今行く。」

後ろからユフィに言われて、は振り返った。




現在、旅を終えた仲間達でささやかな祝宴を挙げている。

旅の終わりを祝う宴。無事に戻って来れて仲間が再び集まったことを示す宴。

きっといろんな意味があるのだと思う。

「コスモキャニオンから見る星って、こんなに綺麗だったのね・・・。」

ティファが夜空を見上げながら言った。

コスモキャニオンでの宴は、本当に小さなものだ。

しかしこれ以上の大きい宴は望まない。望んでも、虚しいだけだ。

「ホーント、良かったよねっ。も無事戻ってきたことだしv」

笑顔を浮かべるユフィ。は、そのユフィの言葉に苦笑した。

セフィロスとともに消えかけた時はどうしようかと思ったが、現在自分はここにいる。

自分を連れ戻してくれた彼のおかげだと、は思っていた。

そんな彼にチラリを視線を移すと、彼はの視線に気付いて微笑んだ。

その微笑みにつられてもにっこりと微笑む。

「クラウド、すごかったんだよ。オイラびっくりしちゃった。

がいないって気付いた瞬間、顔面蒼白になって、を助けに向かっちゃうんだもの。」

レッド13が言う。

きっと、すごく心配してくれたのだろう。

心配させてしまってごめんね、と言いたい気分だった。

「んで、ヴィンセントはんの出番はなかったんやな。」

さりげなくケット・シーがボソリと禁句を口にした。

その一言で全員がハッと身構えたが、ヴィンセントの反応は予想外のものだった。

「私がを想う気持ちより、クラウドがを想う気持ちの方が強かった・・・それだけのことだ。」

随分とあっさりしている。ユフィは首を傾げ、ヴィンセントに詰め寄った。

「おろ〜?ねぇ、ヴィンセント熱でもあんの?なんで言い返さないのさ。」

「今言った通りだ。どうやら私が思ったより、クラウドの想いは強かったらしい。」

「それじゃ、吹っ切れたの?」

「まさか。」

しれっとヴィンセントは答える。全員は顔を見合わせ、ヴィンセントを見つめた。

「クラウドの想いは認めたが、を諦めたとは言っていないだろう?」

「なっ・・・ちょっと待て!!」

まるで「長期戦なら望むところだ」とでも言っているようなヴィンセントに、クラウドはストップをかけた。

せっかくとのこれからをあれこれ考えていたというのに。

ヴィンセントがいたのでは、そんな幸せな未来も素直に楽しめないというものだ。

を助けたのは俺だぞ!ヴィンセントの出る幕はないっ。」

「おや。何度もに助けられていたくせに何を言う?お前なんぞ、を何回も泣かせているだろう。」

言われてクラウドはぐっと言葉に詰まった。

ヴィンセントの言っていることは事実である。だからこそ言い返せないのだ。

クラウドは何度もに助けられているというのに、何度もを泣かせている。

そしてその度にを慰めていたのが、悔しいことにヴィンセントなのだ。

「ヴィ・・・ヴィンセントにはルクレツィアがいるだろっ!」

「ルクレツィアはもう関係ない。過去の話だ。」

どうやら吹っ切れたのはの方ではなく、ルクレツィアの方だったらしい。

「俺はもうを泣かせたりしないっ!ヴィンセントは諦めろ!!」

をお前なんかに任せておいたらどうなるかわかったもんじゃない。

別にと一緒に暮らすな、とは言っていない。私に構わず二人で暮らすがいい。

だがクラウド。お前が少しでも変な動きをすれば、その翌日にはが私の元にいると思え。」

クラウドは呆気に取られた。

つまりは、「クラウドがに変なことをしたら、すぐにでもを奪い取るぞ」ということだ。

ヴィンセントはフッフッフと含み笑いを浮かべた。

「せいぜい仮の幸せを楽しむがいい。」

「おいっ!!ヴィンセントっ!!」

ぎゃあぎゃあとクラウドとヴィンセントが言い合いを始めた。

そんな様子を見て、「相変わらずだ」という表情を浮かべながら仲間達は苦笑を浮かべた。

も例外ではない。二人の姿を見て、困ったような笑みを浮かべている。

だが、ふとは立ち上がった。

「ん?どうしたの?」

「ごめん、二人の言い合い・・・なんだか長く続きそうだし、ちょっと散歩してくるね。」

ティファはヴィンセントとクラウドの様子を見て、苦笑を浮かべて頷いた。

「行ってらっしゃい。気をつけてね。」

「うん。」

言うと、は一人その場から離れた。








コスモキャニオンの外れ。

月の光もなかなか届かないような、そんな場所にはやって来ていた。

辺りにはなんの気配もない。だが、にはわかっていた。

「・・・エアリスでしょ?」

微笑んでそう呟くと、小さな小粒の光が終結して、人型を作り上げた。

ライフストリームと同じ、エメラルドグリーンの光。

人型はやがて一人の女性の姿となり、微笑んでを見つめた。

『気付いてくれたのね。ずっと呼びかけてたの。』

「ごめんね。気付いてたんだけど、なかなか抜けられなくて。」

苦笑を浮かべては言う。そんなを見つめて、やはりエアリスは笑った。

「エアリス。私がセフィロスと一緒に消えてしまいそうになったとき、「本当にそれでいいの?」って

選択させてくれたのは・・・エアリスだったんだよね。」

『あは、やっぱりわかっちゃう?』

あの頃と同じ声のトーンで、エアリスは言った。

高くて、優しい声。

「うん。・・・後から考えて、声がエアリスの声と同じだったなって思って。

・・・ありがとう。本当に、感謝してる。」

『いいの。私は、が自分の思うままに進むことを望んでいたから。

には、私みたいになって欲しくなかったからね。』

「・・・ごめん・・・。・・・私、エアリスのこと守ってあげられなかった・・・。」

『何言ってるの。そんなこと、気にしてないよ。私は、私のしたいようにしただけ。

が気に病む必要なんて、これっぽっちもないんだから。ね?』

エアリスはいつも優しかった。今も、こうして優しく自分に語り掛けている。

あの頃と変わらない澄んだ笑顔で。

「・・・ねぇ、エアリス。これから先・・・一体どうなるのかな。」

エアリスならきっと未来のことを知っていると思った。

だから、聞いてみた。

エアリスは少し目を伏せると、顔を上げて真っ直ぐにを見据えた。

『・・・すごく、苦しいことが待ってる。予想出来ない、大きな動きがあるよ。

もしかしたら、クラウドと引き裂かれちゃうことも・・・あるかもしれない。

新たな災い・・・。新たな敵・・・。きっと、すごく苦しいよ。』

エアリスが言ったのは、絶望的な答えだった。

は目を細め、エアリスの言葉を聞いている。

エアリスは真剣な表情を崩さず、を見つめて。

けれど、エアリスはすぐにフッと微笑んだ。

『けど、忘れないで。は独りじゃないってことを。

周りに、必ず仲間がいるっていうことを。もちろん、私もいる。

クラウドやヴィンセント・・・ティファ、ユフィ、レッド13、バレット、シド。

あ、それにケット・シーもいたね。』

クスっと笑う。

『決して忘れないで。それさえ忘れなければ、苦しい未来なんて突き進めるよ。

大丈夫。は、セフィロスを倒すっていう苦しい旅をやり遂げたじゃない。

この旅のことを忘れないで、仲間のことを忘れないで、そうすれば絶対、平気。』

は、微笑んだ。これ以上ないというほどの優しい笑顔で。

エアリスの微笑と、同じ笑み。

はエアリスに近寄ると、光の集合体を優しく抱き締めた。

エアリスは少し驚き、静かに目を閉じるとの体を抱きとめた。

「エアリス・・・きっとまた、会えるよね?」

『うん、必ず。』

必ずもう一度会える。

エアリスの精神体は、まだ死んではいない。

『そろそろお迎えが来ちゃうから、私・・・行くね。』

「お迎えって・・・エアリス、行っちゃうの?」

が哀しそうな表情になると、エアリスはクスリと笑った。

エアリスは面白そうに笑う。

『違う違う。お迎えっていうのは私のお迎えじゃなくて・・・』






















エアリスはの後ろを指差した。


























の、お迎えだよ。』
























































は後ろを向いた。

そこには、クラウドの姿があった。

「クラウド・・・。」

。こんなところにいたのか。」

笑顔で歩み寄ってくる彼。

は慌てて振り返る。

そこにはもうエアリスの姿はなく、ただの虚空が広がっていた。




行ってしまった。

最後に、あの笑顔を残して。ただ一言、「エアリス、大好きだったよ」と言わせてもくれずに。

呆然と佇むを見て、クラウドは首を傾げた。

?・・・どうかしたのか?」

「あっ・・・ううん、なんでもない。」

夢、だったのだろうか。

エアリスと出会って話をしたのは、全て夢だったのだろうか。

は自分の手を見つめた。

ライフストリームの小粒が、手のひらの中で消えた。

夢じゃない。

自分は、確かにここでエアリスと話をしたんだ。

それは、ライフストリームの小粒が、おしえてくれた。



「・・・ヴィンセントとの言い合いは終わったの?」

ふと気になって聞いてみる。クラウドは少々口を尖らせると、幾分怒った調子で言った。

「無理矢理終わらせた。ヴィンセント、俺をからかってただけみたいだしな。」

「そんな挑発に乗るクラウドもクラウドだよ。」

必死になっていたクラウドを思い出して、は吹き出した。

子供みたいに必死になって、ヴィンセントと言い合っていたクラウド。

そんなクラウドが本当に可愛らしくって、なんだか笑えてしまった。

「・・・はこれからどうする?」

聞かれてはクラウドを見上げる。

少し彼の横顔が赤く染まっているように見えたのは気のせいだろうか。




は微笑んだ。

そして、クラウドの腕に自分の腕を絡ませる。

「おっ・・・おい・・・。」

照れるクラウドの腕の更に引き寄せて。

最高の笑顔でクラウドを見上げて。

今の幸せを精一杯噛み締めて。




「私はクラウドについて行くよ。この先どんなことがあろうとね。

私の“帰る場所”は、どんなことになってもクラウドだけだから。」





クラウドは更に顔を赤らめた。







もう迷わない。もう立ち止まらない。

エアリスが言っていた『新たな災い』という単語が少し引っ掛かるけれど。

けど、今は今。未来のことは、これから考えて行けば良い。

そして悩んだり、考えたり、泣いたり、怒ったり、笑ったり。

そんなときには、隣にクラウドがいてくれるから。

“帰る場所”は、ただひとつ。

クラウドの元。





どんな災いがあろうとも、決して諦めたりはしない。

大好きなクラウドとともに、一緒に歩いて行く。

思い出に、負けたりしない。











「クラウド。」


「ん?」






「子供の数、何人が良い?」














<完>

=コメント=
はい、以上栃樹稀嵩サマのリクエストでしたぁ(爆
・・・って、待ちやがれこのやろーーーーーっ!!!(爆
全然逆ハーじゃねぇっちゅうねんvエヘv(ぇ
ほぼこりゃクラウド夢だ・・・(涙)
エアリス登場は実現出来たけどセフィロス登場が実現出来なかったぁ!!
ぐぅぁぁぁああー・・・(涙
最後のさんのセリフも気にしないでください!!
子供の数なんて知らんっ!!ピーがピーでピーだなんて言わない!!(ぇ
しかも何気にAC予告っぽくなっちゃってるし(笑
本当にすみません・・・
栃樹サマ、こんなもので良ければどうぞお持ち帰りください・・・。 [PR]動画