それはある日突然起こった至上最低の大事件(?)。







買い物に出かけただけなのに、まさかこんなことになろうとは。







追走劇






先ほどから、クラウドはそわそわしていた。

周りにいる仲間達は、その様子を呆れた眼差しで見つめている。

クラウドは腕組みをしたまま、右へ、左へ、右へ、左へ。

それにつられて、全員の視線も、右へ、左へ、右へ、左へ。

「・・・クラウド、さっきから何をそわそわしてるわけ?」

痺れを切らしたユフィが、これ以上はないというほどの呆れた声で聞いた。

クラウドは足を止める。

「・・・が帰って来ないんだ。」

クラウドのそわそわ原因はにあった。



事は数十分前に遡る。

クラウドはいつものように、宿屋のロビーで読書をしていた。

その時、がサイフを片手にロビーへとやって来たと言うのだ。

どこに行くのかと聞けば、は「買い物に」と笑って答えた。

クラウドはこんなチャンスを逃してたまるかと「付き合うよ」と言ったが、大した用じゃないから、と断られたらしい。

クラウドは少々落ち込んだが、まぁたまにはそういう事もあるかと思い直して再び読書に没頭した。

・・・のだが。

が出て行ってから早30分。

まだが帰って来ないと言うのだ。



「・・・ってかさ、女の子の買い物って普通に1時間以上になるもんだと思うけど?」

ユフィが言った。だがクラウドは頭を振る。

はいつも大概15分程度で戻って来るんだ。なのに今日はまだ戻って来てない。いつもの倍の時間だぞ?」

そう言われれば、確かにそうだった。

が買い物に行くとすればマテリアショップか、武器屋か防具屋、もしくは道具屋だろう。

アクセサリーショップなどではない限り、5分〜10分程度で終わる買い物なのだ。

今日に限って何故?

「・・・そわそわする男は、にもてないぞ。」

「お前にだけは言われたかないね、ヴィンセント。」

しっかりとお決まりの口喧嘩も展開させながら、クラウドとヴィンセントは睨み合った。

それを見て、仲間達は更に呆れている。

「・・・ってかさ、もうひとつ言わせてもらうけど。」

ユフィが言った。

「そんなに気になるんだったら、探しに行けばいいだけの事じゃん?」

「・・・・あ゛。」

クラウドはピタリと動きを止め、そしてすぐに宿屋を飛び出して行った。

仲間達は溜息をついた。

勢い良く閉められた扉についている鈴が、チリンチリンと音を立てている。

「・・・クラウドっていつもはリーダーらしいのにさ、なんでの事になると情けなくなるんだろうね。」

「さぁ?惚れた弱みってヤツじゃないの?」

ユフィが言い、ティファが答えた。






クラウドはを探して街中をさまよっていた。

マテリアショップ、武器屋、防具屋、道具屋。全てを探してみたが、を見つける事は出来なかった。

・・・一体どこに・・・。」

クラウドは立ち止まって呟く。

と、目の前に青い色が見えた。の青い髪だ。

後姿なので表情まではわからないが、服装も同じのため、に間違いはなかった。

クラウドは安堵の溜息をつき、ゆっくりとに歩み寄ろうとした。

だが、次の瞬間クラウドは信じられないものを目の当たりにする。

「・・・レノ!?」

に話しかけている赤い髪の男。

間違いなく、レノだった。はレノの話を聞いて、肩を竦めたり首を横に振ったりしている。

この距離では何を話しているのかは聞こえない。だが、次の瞬間クラウドは更に信じられないものを目の当たりにした。

「・・・・はぁっ!?」

急にレノがを抱き上げたのだ。は抵抗しているが、レノは気にいていない様子である。

レノはを抱き上げると、そのまま猛スピードで駆け出した。

だが、こんなシーンを見て見逃せるほどクラウドの心は広くない。

ーーーーーーーーー!!!」

そう叫びつつ、クラウドもレノを追って駆け出した。





クラウドの雄叫び(?)を耳にして、レノが走りながらチラリと振り返った。

「げっ!?な、何でアイツが追い駆けて来るんだ、っと!!」

「あんたが私を攫おうとするからでしょ〜〜〜!?」

「違うぞ、。攫おうとするんじゃなくて、既に攫っているんだ、っと。」

「説明してる場合かっ。いいから私を放してよ!!」

レノはクラウドの追って来る姿を見て、更にスピードを上げた。

だが、それに比例してクラウドのスピードもぐんと上がる。

「だぁぁぁ!!アイツ速いぞ、っと!!」

「クラウドーーーーー!!助けてーーーーーー!!」

ーーーーーーーーーーーッ!!待ちやがれ、レノーーーーーーーーー!!」

いつものクラウドからは考えられないような大声と口調。

レノの表情はだんだんと余裕を失って行く。

「も、もしかしてクラウドのヤツ・・・今、ものすごく激怒してるか?っと。」

「あんなに怒ってるクラウドを見たのは、私も初めてだわ。」

「マジかーーーーーーー!?っと!!!」

愛の力は強し(違

クラウドはあっという間にレノに追い付いてしまった。

レノはそのものすごいクラウドの速さに驚愕した表情を浮かべ、この先の展開を予想して冷や汗をかいている。

(そのものすごい速さで走っているクラウドと並んで走るレノの足もどうかと思うが・・・)

「貴様、に何してるんだ!!」

「うわっとぉ!す、ストップ!は、話せばわかる!っと!!」

「レノにタークスに来ないかって勧誘されて、断ったらこのありさまよ、全く・・・。」

は既に諦めたらしく、レノに抱かれたまま腕組みをして溜息までついている。

を勧誘するなんて一億年早いっ!!出直して来いッ!!!」

クラウドの必殺、愛のパンチがレノの左頬に炸裂した(違

レノは痛さのあまりか立ち止まり、を降ろして左頬を手で押さえた。

「いきなり何をするんだ、っと!!暴力反対だ、っと!!(泣)」

「暴力で仕事をこなすタークスがエラそうに何をほざいてるんだ!!(怒)」

「で、でも本当に痛かったぞ、っと!(焦)」

「当たり前だ!痛くないと言われたらもう一発殴るつもりでいたぞ!!(激怒)」

レノの左頬は真っ赤になっていた。はその痕を見て「うわぁ、痛そう・・・」と呟いている。

「はぁ・・・。初めて仕事に失敗してしまったぞ、っと。」

「何の仕事?」

が聞き返した。レノは溜息をつきながら言う。

をタークスに入れる仕事だ、っと。ツォンさんにもルーファウス社長にも頼まれてる最重要任務だ、っと。」

「・・・・それが最重要任務なんだ・・・。神羅も駄目ね・・・。」

「・・・本当に最重要任務なんだぞ?っと。」

「はいはい。わかったから、早く神羅カンパニーに戻った方がいいんじゃない?

あと、ツォンとルーファウスに伝えておいてよ。『ぶわぁか、私を勧誘するなんて一億年早いんだよ』って。」

聞いて、レノは苦笑した。

「ハハ・・・確かに伝えておく、っと。それじゃ、またな、っと。」

レノは言い、赤くなった頬をさすりながら帰って行った。



残されたクラウドとは、二人で一緒に溜息をついた。

「・・・疲れたな・・・。」

「お疲れサマ。助けてくれてありがとね。」

クラウドは苦笑した。

「そう言えば、どうしてクラウドがここに?宿屋で読書をしてるもんだと思ってたわ。」

「ああ・・・の帰りが遅いから迎えに行こうと思ったんだ。来て正解だったな。」

はクスリと笑うと、立ち上がった。

確かに、クラウドが来てくれなかったら今頃自分は・・・

もしかしたら、本当に神羅に連れ戻されていたかもしれない。

それに、の帰りが遅いから・・・とは言っているが、きっと心配してくれていたのだろう。

そう思うと、はとても嬉しく思った。

「ごめんね。すぐに帰ろうと思ったんだけど、途中でサイフを落としちゃって。

街中探し回ってたらレノとばったり。急に攫われて、後から王子さまが助けに来てくれたってわけ。」

残念ながら白馬には乗ってなくて自分で走ってたけどね、と冗談めかしては言った。

クラウドは赤面した。

王子さま。確かに今はクラウドのことを「王子さま」と言った。

クラウドは思う。

自分が、の王子になってしまってもいいのだろうか? と。

「それじゃ、そろそろ帰ろう。本当に来てくれてありがとう。助かったよ。」

にっこりと笑いながらが言う。

は宿屋に向かって既に歩き出していたが、まだクラウドには納得出来ていないことがあった。

・・・・いいだろうか。実行に移しても、は怒らないだろうか。

今ならチャンスだ。幸運なことに、今現在二人がいるのは街外れで、人通りの極端に少ない場所。




・・・・よし。





「・・・っ!?ク、クラウドッ!?」

の悲鳴にも似た声がした。クラウドは構わずに思いを実行に移す。

の肩を右腕で抱き、の膝の裏に左腕を当て、そのまま思い切り抱き上げる。

持ち上げた反動では落ちそうになり、反射的にクラウドの首に腕を回す。

「ク・・・クラウド・・・?」

の顔は真っ赤だ。

クラウドは満足そうに、けれど意地悪そうな笑みを浮かべた。


現に言うお姫サマ抱っこ。

がレノにお姫サマ抱っこをされたことが、クラウドには無性に悔しかった。

レノが良いなら、自分だって良いに決まってる。

自分勝手な言い方だとはわかっているが、現在の状況がクラウドには大変満足だった。

「な、何?急にどうしたの??」

は慌てながら、けれどレノの時のように抵抗をしたりはしない。

クラウドは口元に笑みを浮かべ、

「ご褒美」

と答えた。は首を傾げる。

を助けに行ってやっただろ?だから、そのご褒美をもらっただけさ。」

「えぇ?」

は更に首を傾げた。

「だったらこうしよう。俺はを助けた。それなら、宿屋に着くまで・・・最後まで責任を果たさなくちゃな。

無事に宿屋まで送り届けましょう、プリンセス。」




クラウドはを抱いたまま歩き出した。

の顔は赤かったが、どこか嬉しそうだった。


宿屋が見えて来た時、がぽつりと呟いた。

「・・・宿屋までじゃなくて、ずっとずっと・・・セフィロスを倒してからも、ずっとずっと・・・守り続けてね。」

小さな呟き。その呟きがクラウドの耳に入ったかどうかは定かではないが、

がそう呟いた直後にクラウドが顔を赤く染めたところを見ると、答えはすぐにわかる。




神様。

たまには、こういう追走劇も面白いかな、なんて思ってしまいました。

願わくば、この先もずっとずっと、クラウドと一緒にいられますように。






<完>




=コメント=
うわぁぁぁぁぁぁぁん!!(何唐突
見事素敵に玉砕だぁぁぁぁ!!(爆死
ありきたりだぁ・・・。なんだ、この展開は(涙
すみません・・・土下座します。
謝ります。小説を突き返されても謝ります(何
お望みなら命でも捧げm(強制終了
・・・とまぁ冗談はここまでにして(冗談だったのか
こんなものでよろしいでしょうか・・・、刹那サマ(涙
よろしかったらもらってやってください(涙
返品でもなんでも受け付けますよ!!°。(ToT)°。
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