うん、俺はアイツのことが好きなんだと思う。




この気持ちに気付いたのはつい最近だけど、




気付いたら気持ちは止まらなくなった。




女なんてたくさんいる。オレがフッて来た女だってたくさんいる。




何人もの女を泣かせて来てるのに、アイツだけは泣かせたくないんだ。






宝物






「ジターン!!」

いつものように、少女はジタンの元へ駆けて来た。

サラサラの髪を風になびかせ、明るい笑顔を振り撒きながら。

大きな木の下に寝転がっていたジタンは、少女の声を聞いて体を起こした。

「よう、。」

「やっぱりここにいたんだねー。」

はジタンの隣に座り込むと、大きな木を見上げた。

同じように、ジタンも木を見上げる。

木漏れ日がさらさらと上から降って来て、小さな日溜りを作っている。

風は爽やかで、寒くもなく、暑くもない。


しばらく沈黙が続いていた。

ジタンは、そんな沈黙の中考える。

やはり、は自分のことを“友達”としてしか見ていないのだろうか。

“仲間”としか見ていないのだろうか。

が自分のことをどう思っているのか、気になって仕方ない。

はガーネットと仲が良い。もしかしたら、ガーネットに色々自分の気持ちを話しているかもしれない。

ガーネットに聞けば、の気持ちは十中八九わかるだろう。

けれど、そんなことをしてまでの気持ちが知りたいとは思わなかった。

いや、知って嫌われるのが怖いのかもしれない。


――――オレらしくないな・・・。


いつもなら尻尾をパタパタさせながらさらっと聞いてしまうだろうに。

のこととなると、思い切って踏み出せない自分がいる。

ジタンが小さな溜息をつくと、が不思議そうな視線を投げ掛けてきた。

「どうかした?」

「ん?なんでもないよ?」

いつものように笑顔で返す。作り笑顔は得意だった。

けど、はすぐにその笑顔が作り物だと見抜いてしまうのだ。

「嘘。」

ほら。絶対に気付かれないはずなのに、には気付かれてしまう。

「嘘じゃないって。」

苦笑を浮かべながらも口からは嘘が出て来てしまう。



言えるわけがない。

告白出来るはずがない。

でも、そう想うのは何故?

そう決めつけてしまうのは何故?

わからなかった。

こんなにものことを想っているのに、

何故あと一歩が踏み出せない?

自分はこんなに弱くなんてないはずなのに。

女の子らしくて、ちょっと天然。

そんなが、大好きなのに。




「ジタン!!!!」

声がして、ジタンとは顔を上げた。

ガーネットが息を切らせて走ってくる。

慌てている。何かあったのだろうか。

「どうしたんだ、ダガー。」

ジタンは立ち上がるとガーネットに言った。

ガーネットは二人の前で立ち止まると、焦った様子で口を開いた。

「大変なの!!アレクサンドリアの入り口に、大きなモンスターがやって来て・・・!

恐らくモンスターは野生。今は城の兵士が抑えてくれてるけど、全然敵わないの!

ジタン、。二人の力が必要なの!来てくれる・・・?」

ジタンとは顔を見合わせた。

そして、互いに頷いた。

「もちろんよ、ダガー。」

は笑顔で立ち上がり、ガーネットに言った。ガーネットは安心したように頷いた。

ジタンとはアレクサンドリアの入り口に向かって駆け出す。

モンスターを食い止めないと、アレクサンドリアの街は滅茶苦茶になってしまう。

そんなのは、絶対にごめんだ。




二人がアレクサンドリアの入り口に着いたときには、城の兵士達はボロボロだった。

兵士達にまぎれてフライヤやサラマンダーが戦っているが、その二人もボロボロだ。

ジタンは腰のオリハルコンを抜き、モンスターに飛び掛かった。

「「ジタン!!」」

フライヤとサラマンダーの歓喜の声が上がる。

「フライヤ、サラマンダー!ありがとな!後は任せろ!!」

「頼むぞ、ジタン!!侮ってはならぬ!そやつは強敵じゃ!!」

ジタンはオリハルコンを構え直すと、目を細めてモンスターを見据えた。

見たことのあるモンスターだ。

確か、狩猟祭の時にフライヤと一緒に倒したモンスター。

そう、ザグナルだ。見た目はザグナルとほぼ同じ。

違うのは、体の色。ザグナルとは違い、全身真っ黒だった。

気のせいだろうか。体の大きさも、ザグナルより一回りほど大きい気がする。

「これ・・・ザグナルの変種?」

ジタンの隣に並びながらが言った。

確かに、それしか考えられない。

何故変種が現れたのかはわからないが、ザグナルの変種に間違いなかった。

「ジタン、とりあえず倒した方がいいよね?」

「あぁ。このままじゃコイツ、アレクサンドリア城内にまで乗り込んで来るぜ。」

ジタンのオリハルコンが光を反射してキラリと光る。

も腰のダガーを抜き、構えた。


ザグナルが飛び掛かってくる。

ジタンはそれをギリギリのところで回避し、体を回転させて一撃を入れる。

はザグナルの前から飛び退き、横からダガーを突き立てた。

断末魔の悲鳴が響き、けれど二人は攻撃をやめない。

「スロウ!!」

がザグナルにスロウをかけた。ザグナルの動きが鈍くなり、その隙を突いて一撃。

だが。

「がはっ!!」

!!」

ザグナルが前足での体を跳ね飛ばした。

の体が宙を舞い、すぐに地面に叩き付けられる。

!!」

ジタンはもう一度の名を呼び、に駆け寄った。

重傷だ。この状態では、魔法を唱える事も動く事も出来ないだろう。

「だ、大丈夫・・・。ちょっと頭と背中を打っただけ・・・。」

はそう言ったが、決して大丈夫などと言ってはいられない状態だった。

ジタンは焦る。

「ジタン!!後ろ!!!」

フライヤの声が空気を切り裂く。ジタンは振り返り、けれど回避しなかった。

防御したままザグナルの攻撃を受ける。

「ぐっ・・・・。」

ジタンの服が破れ、血が滲んだ。

「何故避けぬのだ!!攻撃を受けてまともに立っていられる相手ではないぞ!!」

「ぅるせぇ!!オレが避けたらが死んじまうだろうが!!」

フライヤはハッとした。

を抱えて避けるだけの時間はなかった。

ジタン一人なら避けられただろうが、ジタンが避ければその後ろにいるに攻撃が入ることになる。

ジタンはそれを庇ったのだ。

は目を見開いた。ジタンは、自分を庇ってザグナルの攻撃を受けた。

何故、そこまでして自分を助けてくれる?

「もう許さねぇぞザグナル!!覚悟しやがれ!!!」

ジタンは叫び、赤い光りをまといながら立ち上がった。

トランスの力。

ジタンはオリハルコンを構え、ザグナルに飛び掛かった。

「ソリューション9!!!」

ジタンの叫び声とザグナルの悲鳴が重なった。

ジタンが地面に着地すると同時に、ザグナルの巨体が崩れ落ちる。

ジタンのまとっていた赤い光りはおさまり、いつものジタンがそこに立っていた。

オリハルコンを仕舞い、ジタンはに歩み寄って来る。

「大丈夫か?」

尋ねるジタンに、は頷いた。

「ありがとう・・・。庇ってくれたんだよね・・・。」

「だってオレが避けたら、死んじまうじゃねぇか。」

ジタンはを抱きかかえた。は顔を赤くして驚いたが、ジタンは気にしていない。

「早いトコ、ダガーかエーコに回復してもらわなきゃな。」

「だ、大丈夫だよ。歩けるから・・・。」

「何言ってんだよ、自分じゃ立ち上がれないくせに。」

落ちるからオレの首に腕まわしとけよ、とジタンは言う。

は戸惑いながらも、ジタンの首に腕をまわした。

ジタンの横顔がとても近くにあって、はやはり顔を赤くした。

ジタンだって大怪我をしているのに。きっと、立っているのだって辛いはずなのに。

ジタンの優しさを感じて、は俯いた。

「・・・?」

俯いたを見て、ジタンが首を傾げた。

はふるふると首を横に振る。

「・・・でも、ホントが生きてて良かったよ・・・。」

溜息とともに、ジタンの口から出た言葉。

は目を見開いた。

嬉しくて。ジタンの暖かさが嬉しくて。

は、ジタンの首にまわした腕に力を込めた。

「おわっ!」

更に近くなる二人の顔。ジタンも顔を赤くせずにはいられなかった。

「ごめんね・・・ありがとう・・・。ジタン、大好きだよ・・・。」

ジタンは目を丸くした。そして、ニヤリと笑う。

「いーの?そんなこと言っちゃって。」

「だって本当のことだもの!好き・・・ジタン・・・。」

ジタンの胸に顔をうずめ、は言った。

ジタンは微笑み、の額にキスを落とした。

「オレも好きだよ・・・・・・。」

あーあ。泣かせたくなかったのにな。

ジタンのそんな気持ちとは裏腹に、は嬉しくて涙を流した。




互いに、相手のことが宝物になった日。






<完>


=コメント=
うわぁ、久々に書いたジタン夢だぁー!(汗
こんなもんでいいのかな・・・(汗
リクエスト内容は
【戦ってる最中に主人公がピンチ!
ジタンが助けて、主人公が自分の気持ちに気付く・・・。桃くらいの甘さでv】
ってことだったんですが・・・(汗
あ、ちなみに、名前は一緒ですがヒロインは連載主人公とは別人です。
甘いのかなー?これは・・・(汗

鈴音ルナさまからのリクエストでしたv [PR]動画