「・・・は一体何をしてるんだ?」






「・・・俺に聞くなよ・・・・。」






手書きの文字








その場には今甘い匂いが満ちていた。

この時期になると、外出をしてもあちこちの店から甘い匂いが漂う。

聖バレンタインデー。

アツアツなカップルなら、この日ほどドキドキする日はないだろう。



クラウド達一行は、現在カームを訪れている。旅の休息を兼ねて、クラウドが出した案だった。

だが、宿屋に着いた途端、が「あっ!」と声を上げ、宿屋の主人に台所が使えるかを聞き、

全員が頭にハテナマークを浮かべる中、台所にこもってしまったのだ。

そんな不信なの行動に特に反応したのは当然だがクラウドとヴィンセントだった。

台所の入り口に二人でピッタリと貼り付き、の行動を見ている。

何故なら今日はバレンタイン。

もしかしたら・・・いや、絶対に・・・多分・・・からチョコはもらえるはずなのだ。

ティファとユフィは溜息をつき、やれやれと頭を振っている。

「やめとけばいいのに」とユフィは呟いているが、その言葉がクラウド達の耳に届いているかは定かではない。




「・・・、俺のためにチョコを・・・」

台所の入り口に貼り付いているクラウドがボソリと呟く。

ヴィンセントは鼻で笑い、腕を組んだ。

「お前は馬鹿か。何故がチョコボ頭のお前にチョコレートをやらねばならん。」

「・・・そういうヴィンセントだって、まさかからチョコがもらえるって思ってるんじゃないのか?

はん、なに寝惚けたこと言ってるんだ。お前みたいなネクラ野郎にがチョコをあげる訳ないだろ?」

二人とも無言で睨み合う。

クリスマスの日に決着がつかなかったため、今度こそ、と思っているのだ。(No.64 つないだ手 参照)

二人の睨み合いは続く。バチバチと音が鳴りそうな勢いだ(違

のチョコは渡さない。」

「それはこちらのセリフだ。」

沈黙。

なんとまぁ低レベルな戦いなのだろう。

台所の入り口でそんな戦いが繰り広げられているとは露知らず、はチョコを作り続けている。



も大変だよねー。」

クラウドとヴィンセントを遠目に見ながら、ユフィは呟いた。

ユフィの前に座っているティファは苦笑を浮かべる。

「本当よね。バレンタインなんて忘れちゃえばいいのに・・・。」

「でもさ、忘れられないっていうのがなんだよね!」

「うん。ここでもしがバレンタインを忘れてたら、ちょっと駄目よね。」

ユフィとティファはフフフと笑う。

「やっぱりは、私達の期待を絶対に裏切らないもの。」

ティファが、笑いながら言った。





と、その時台所からが飛び出して来た。

台所の入り口に貼り付いているクラウドとヴィンセントには目もくれずに、真っ直ぐにティファ達の元へとやって来る。

ティファとユフィは顔を見合わせ、互いに首を傾げた。


エプロン姿のは可愛過ぎる。なんと眩しい姿なのだろう。

クラウドとヴィンセントの口元が緩んでいるが、ティファとユフィはその二人を睨み付けた。

『何デレ〜っとしてんの、間抜け面・・・。』

とでも言っているように。


「ね、ティファ、ユフィ。」

「どしたの?。」

ニコ、と笑うを前にして、ティファとユフィは再び首を傾げた。

「コレ、今日バレンタインだから!」

は笑顔でティファとユフィにチョコを手渡した。

ティファとユフィは歓喜の声を上げ、チョコを受け取った。

「ありがとう、。」

「でも、いいの?男どもがすごい表情でこっちを見てるけど。」

ユフィが台所の入り口にチラリと視線をやる。

も不思議そうに視線を走らせ、一点に目を止めた。クラウドとヴィンセントの姿が目に入る。

ティファ達に先にチョコを渡したという事が余程ショックだったらしい。

クラウドとヴィンセントの周りの空気だけが重い。いや、空気が黒い。

は苦笑した。そして、ティファとユフィに向き直って人差し指を立てて見せる。

「大丈夫。あの二人にもちゃんと用意してあるから。」

これはバレット達に渡しておいて、と言われ、ティファはから小さなチョコを受け取る。

全部で四つ。バレット、シド、ケット・シー、レッド13の分だ。

「ん、わかった。ちゃんと渡しておくね。」

はヨロシク、と言い、再び台所へと駆け込んで行った。

ユフィとティファはニヤリと笑い、クラウド達を見やった。

クラウド達は今にも泣きそうな表情で突っ立っている。

どうやら、本気でもらえないものだと勘違いをしたようだ。・・・ほんの少し、可哀相に思えてきた。

「やーい、クラウドとヴィンセント、チョコレートもらえないでやーんの!」

ユフィが面白がってからかってみた。だが、笑顔で言ったユフィの表情が一瞬にして凍り付いた。

「・・・・ユフィ・・・・。」

「・・・・自慢のつもりか・・・?」

クラウドとヴィンセントが恐ろしい表情でユフィを睨み付けていた。

怖い。怖過ぎる。

もしかしたらセフィロスよりも怖いかもしれない。

少なくとも、ユフィはそう思った。

「ううううううう、嘘だよっ!嘘に決まってるじゃん!」

慌ててユフィはフォローした。だが、クラウド達のどす黒いオーラは収まらない。

だが、何故だかクラウドとヴィンセントはユフィから視線を外し、互いに睨み合った。

ユフィは首を傾げる。

「ヴィンセント・・・こうなったら勝負だ。」

「お前に言われるまでもない。必ず勝つ。」




「「どちらが先にのチョコをもらえるか、勝負だ。」」




「あの・・・クラウド、ヴィンセント・・・目・・・目が・・・光ってるよ・・・。」

ユフィとティファは冷や汗を垂らした。クラウドとヴィンセントの睨み合いは続く。

ティファが呆れ返って言った。

「クラウド、ヴィンセント。そんな馬鹿らしいことしてると、から本当にチョコもらえないかもよ?

、クラウドとヴィンセントがケンカするのって嫌って言ってたし。」


ピタ


二人の動きが止まる。

「ヴィンセント・・・過去のことは水に流そう・・・。」

「そうだな・・・。私達は大人気なかったようだ・・・。」

キラキラという効果音が聞こえてきそうなワンシーン。

ティファとユフィはやれやれと頭を振っている。

本当にこの男どもの頭は大丈夫なのだろうか?そんな疑問が浮かんでは消えた。






「あれ?クラウドとヴィンセントは?」

しばらくして、台所からが出て来た。手には大きな二つのチョコを持っている。

「なんか知らないけど、二人ともバラバラにどっかに行っちゃったわよ。」

「あれー・・・。どこに行っちゃったんだろう?せっかくチョコあげようと思ったのに・・・。」

残念そうに溜息をつくを見て、ユフィが言った。

「クラウドは宿屋の裏で剣の振り抜きの練習とかしてるんじゃない?ヴィンセントはどうか知らないけど。」

「そうだね・・・。クラウドは宿屋の裏にいるかもだけど、ヴィンセントはどこに行っちゃったんだろう・・・。」

「もしかすると、マテリアショップとか、武器屋とか、防具屋とか・・・。そこらへんにいるんじゃないかしら。」

ティファがそう呟いた時、宿屋のドアが開いた。

視線を向けると、クラウドとヴィンセントだった。二人一緒に帰って来たようだ。

なんだかんだ言っても仲が良いんじゃないか、とは思ってしまう。

「クラウド、ヴィンセント。」

声をかけると、二人が振り返った。

はパタパタと二人に駆け寄り、ニコ、と笑った。

クラウドとヴィンセントは首を傾げる。はチョコレートを二人の目の前に出すと、ペロっと舌を出した。

「二人の分だけ遅くなっちゃってごめんね。ハッピーバレンタイン!」

満面の笑みで言う。クラウドとヴィンセントはそれぞれチョコを受け取ると、軽く微笑んだ。

「「ありがとう、。」」

クラウドとヴィンセントは視線を交わし、互いに微笑んだ。

今回も勝負はおあずけになってしまったけれど、たまにはこういうのもいいか。

――でも、来年は絶対に負けない。


そう、密かに思っていた。



チョコレートには手書きの文字で「クラウドへ」そして、「ヴィンセントへ」と書かれていた。

それはつまり、の手作りだと示す証拠だ。

手書きの文字がここまで嬉しく思うとは、二人とも思っていなかった。

二人とも顔ではクールに示していても、心の中は小躍り状態だったことは、一生の秘密である。






<完>


=コメント=
短いッスね・・・。
しかもあんまり甘くないし・・・。
あっ、それから謝罪!!
今日バレンタインです。で・・・えぇとですね。
FF[とFF\のバレンタイン夢・・・間に合いませんでした・・・。
すみません!!2月中には必ずUPしますんで!!
許してくださいぃぃ!!(汗 [PR]動画