「マイペースで、いいんじゃないかな。」







クラウドは、そう言った。







季節が巡るように







今年もまた、暖かい春がやって来た。

花々が芽吹き、鮮やかな色を散らばせている。

太陽の日差しは暖かく、ニブルヘイムに降り注いでいた。

「ふぅ・・・。」

窓辺で本を読んでいたは、本を閉じて外を見つめた。

いつもの給水搭の風車が、クルクルと回転している。

不意に昔の自分とクラウドの影が幻影となって現れ、給水搭の周りを駆け回った。

可愛らしい笑い声が聞こえてきそうだ。

はクスリと笑い、立ち上がった。

「あれ?クラウド、どこか行くの?」

ふと、出掛ける準備をしているクラウドの姿が目に入り、は言った。

クラウドは肩を竦め、

「近所のガキどもと一緒に遊ぶ約束をしてるんだ。」

「どうせまたやられ役でしょう。」

クラウドは困ったような笑いを浮かべて小さく頷く。

そんな彼が、何故かとても子供っぽくても微笑んだ。

「いいけど、気を付けてよ?ギックリ腰になっても知らないわよ。」

「っておい。俺がギックリ腰!?」

「有り得ない話じゃないでしょ?相手が子供とはいえ、体重はそれなりにあるんだから。」

「子供の二、三人が俺にしがみ付いたところで、ビクともしないよ。」

「なら、いいけどね。」

は苦笑した。「行ってきます」と出て行くクラウドを見送り、は小さく息をつく。

外から子供達の声が聞こえてくる。それに混じってクラウドの声も聞こえてきた。

どうやら随分とからかわれているようだ。





ふと、は遠くを見つめた。

平和な毎日。幸せな毎日。

望むものは、もう何もない。クラウドさえいれば、それで良い。

もう、何もいらない。

クラウドと一緒にいられるだけで、こんなに幸せなことはないから。



目を瞑れば、今でも思い出す。



過去の苦渋の数々。苦難の旅路。悲痛な想い。

たくさんの仲間達。出会いと別れ。

そして、今と変わらぬ彼の笑顔。



挫けそうにもなった。泣いてしまいそうにもなった。

どうしたら良いかわからず、投げ出してしまいたくもなった。

楽しいことばかりじゃなかった。苦しいことだらけだったかもしれない。

けれど諦めなかった。

手にしたものは、幸せという名の生活。

スリルが足りない、とは確かに思う。

だが、平和以上に・・・幸せ以上に、望むものなどない。

クラウドさえ、いてくれれば。

いつもと変わらず、隣で笑っていてくれれば。

それで、もう何も望まない。



けれど、たまに思うのだ。

自分は、今何をすれば良いのだろう、と。

自分は、今何をすべきなのだろう、と。









「アハハハッ!!クラウド、間抜けぇー!」

「うるさいっ!相手してやってるんだ、ありがたく思え!!」

外から子供達のはしゃぐ声と、クラウドの罵声が聞こえてくる。

窓から外を眺めると、木剣を持った子供達が、クラウドを突付いている。

「随分といじめられてるなぁ・・・。」

クスクスと笑いを漏らしながら、はそんな様子を眺めていた。

「手伝ってあげようかな・・・。」

は手に持っていた本をテーブルの上に置くと、一回伸びをして家を出た。




「お主達、我を誰と心得る・・・我は世界の覇者、世界の独裁者、大魔王であるぞ・・・。」

「だからー!クラウド、もっと演技しなくちゃ駄目だよぅっ!!ちーっとも面白くないよっ!」

子供達に叱られ、クラウドは顔を手で覆った。

そして、パタパタと手を振って溜息をつく。

「僕らは勇者で、クラウドは魔王なんだからねっ!」

「ああ・・・。」

こんな歳にもなって魔王役をやることになるとは、クラウドも思わなかっただろう。

一人で子供達の相手は、かなり疲れる。

やはり、こんな約束をすべきではなかったか?

「おお、勇者様。魔王に攫われてしまった私をお助けください。」

後ろから声がして、クラウドと子供達は一斉に振り返った。

が笑顔でこちらに歩み寄ってくる。

はクラウドの隣に立つと、両手を胸の前で合わせ、祈るような口調で言った。

「勇者様、どうかお助けください。私はとある王国の姫なのでございます。」

そんなのセリフに、子供達は目を輝かせた。

子供達は一斉に木剣を構え、一斉に言った。

「「「姫!今お助けに参ります!!」」」

言うなり、子供達はクラウドに飛び掛かって行く。

だがクラウドとて、かつてはあのセフィロスを倒した腕の持ち主なのだ。

軽く子供達の攻撃をかわし、に小声で聞く。

「おい・・・どういうことだ?」

「こっちの方が動きやすいでしょ?魔王様♪」

はにっこりと微笑み、言った。

クラウドは一瞬呆気にとられたような表情をしたが、

やがて苦笑するとを脇に抱えて飛び上がった。

「ハハハッ!!間抜けな勇者どもよ!!姫を取り返したくば我に勝つが良い!!」

「キャー!!勇者様ーーー!!」

「「「負けないぞーーーー!!」」」

子供達が、必死に飛び掛かって来る様子が可愛らしくてたまらなかった。

クラウドもも、たまにはこうして遊ぶのも良いものだと思った。






「ててて・・・。」

クラウドとが家に戻ったのは、日が沈んでからだった。

あの後たっぷりと遊び、日が沈んだころやっとお開きになったのだ。

「お疲れ様、魔王様。」

木剣で叩かれてあちこちが痣になっているクラウドを見て、が苦笑を漏らす。

クラウドも同じように苦笑を浮かべ、リビングのイスに座り込んだ。

「今日は熱い風呂に入ってゆっくりと温まりたい気分だな。」

「あ、同感。」

言い、二人で笑いを漏らす。

はコーヒーをクラウドと自分の前に置き、イスに座り込んだ。

そして、ふと呟く。

「私ね、ときどきわからなくなるの。」

クラウドは不思議そうにを見やる。

「今日あの子達と一緒に遊んで、すごく楽しかった。

・・・でも、私は本当に今何をすべきなのかなって。いろいろ考えて、

それでもわからなくって・・・つい、焦って考えちゃったりするんだ。」

クラウドは黙っての言葉を聞いている。

は一度目を閉じ、そしてまた語り出す。

「焦って考えれば考えるほど、どんどん混乱してわからなくなっちゃうの。

けど、考えずにはいられない。どうしたら良いのか、答えが見つからないから。」

クラウドは少し考え込むように俯き、そしてを見つめる。

はクラウドを見つめ、小さく苦笑を浮かべた。

「・・・ゆっくり考えれば、いいんじゃないのか?」

クラウドが言う。

「マイペースで、いいんじゃないかな。」

「マイペース・・・。」

クラウドは頷き、笑顔で言った。

「焦って考えると、余計にわからなくなるもんさ。

だから、ゆっくり考えればいいんだ。・・・俺達に、時間だけはたっぷりとあるからな。」

「ゆっくり?」

「ああ。・・・季節は、絶対に狂わないだろ?春の次は夏が来て・・・

夏の次は秋が来て、秋の次は冬が来て・・・そしてやがて、春が再び巡ってくる。

そんな季節の中に身を置いて、ゆっくり、少しずついろんなことを考えてみるのも、

悪くないんじゃないかなって思うんだ。」

隣にはもいるしな、と照れ臭そうに言うクラウド。

はかすかに頬を赤く染め、そして頷いた。



ゆっくり、考えればいい。

巡り来る季節の中に身を置いて、いろんなことを少しずつ。

ゆっくり、少しずつ考えていけばいい。

季節と同じように。季節が巡るように。





。明日、二人でどこかに出掛けようか。」

「うん!」






季節と同じように。





季節が巡るように。









<完>



=コメント=
バリつまらねぇよ(怒
なんだー・・・その、突発的に書くのはやっぱり良くないな、うん。
意味わからないYO!!(ヒィッ
これでいいのかYO!!(ヒィッ
題名と文章が一致しておりませぬ(ぁ
・・・ごめんなさい、言い訳はしません、失敗しました(爆 [PR]動画