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「何でも屋のクラウドとに求む・・・・。」




「報酬は・・・・、・・・10万ギル!?」




ただひとりの君を 前編





「・・・なーに、これ。」

リビングのイスに座り、一通のメールに目を通すクラウド。

その後ろからモニターを覗きつつ、は呟いた。

クラウドは肩をすくめる。

「さぁな。しかし報酬が10万ギルとは・・・。」

「なーんか、胡散臭い。でも10万ギルは捨て難い。・・・っていうか、

なんでこの人私達が何でも屋をやってるって事知ってるのかしら。

・・・それにクラウドのメルアドも知ってるし・・・。」

クラウドは再び、さぁな、と言う。確かにおかしな話だった。

メールの内容はただ単に家宝を守って欲しい、というものだった。

だが、問題はものすごく高い金額の報酬。



『何でも屋のクラウドとに求む。

私の家では毎年仮面舞踏会を行っている。

しかし、その仮面舞踏会の当日に

我が家の家宝を盗みに何者かがやって来ると言うのだ。

家宝は絶対に手放したくない。私は悩んでいた。

そんな時、何でも屋の君達の噂を耳にしたのだ。

君達のメールアドレスを探し当てるのには本当に苦労した。

だが、それも君達の実力の上のことだと考えている。

報酬は十二分に払おう。10万ギルでどうだろうか。

もしも引き受けてくれるのなら、返信してくれ。

作戦や、もっと詳しい事を説明しよう。

いい返事を期待している。



                バリス・カラガイン   』



たったこれだけのことなのに、10万ギルとは勿体無い。

だがクラウド達にとっては悪い話じゃない。

「バリス・カラガイン・・・って、確か・・・

東の方の離れ孤島に住んでる大富豪よね。どうする?クラウド。」

クラウドはしばらく顎に手を当て考えていたが、

やはり10万ギルという単語に惑わされてしまう。

「もしもーし、優柔不断なクラウドくん。」

「・・・誰が優柔不断だ。」

クラウドは呆れたようにため息をついたが、やがて言った。

「・・・仕方ない。大富豪とは言え、簡単に10万ギルも出すとは思えない。

・・・と、いう事は、だ。よっぽど切羽詰っているんだろう。

引き受けるだけ引き受けてみるのもいいかもしれないな。

何せ10万ギルだ。やはり10万ギルはありがたい。」

はクスッと笑いを漏らした。

「そう言うと思った。それじゃ、返信しといてね。私はコーヒーでもいれて来るから。」

はそう言うとモニターから離れ、キッチンへと入って行った。

クラウドはそれを見送り、再びモニターと向き合う。

マウスを動かして『返信』のボタンをクリックし、文を書き入れ送信した。



『お引き受けします。詳しい情報をお願いします。


              何でも屋  クラウド    』



クラウドはモニターに映るウィンドウを全て終了し、パソコンの電源を切った。








後日。

バリスからメールが届いた。

クラウドとはモニターに見入り、内容を素早く理解した。




『お引き受け頂いて誠に感謝する。

作戦についてだが、当日、家宝は私が常に持っているようにする。

君達は私を守りつつ家宝の事にも気を配ってくれ。

だからもちろん正装をしてこちらに出向いて欲しいし、

不信に思われぬようダンスも踊って欲しい。

何でも屋の君達の事だ。

ダンスなど朝飯前だろう?

それじゃあ、当日。期待しているよ。



                    バリス・カラガイン     』



「・・・ねぇ、やっぱり断ろうか。」

「・・・そういう訳にもいかないだろ・・・。」

クラウドとは脱力した。

まさかダンスを踊る事になろうとは。

仮面舞踏会なのである程度は予想していたが、

まさか自分達がダンスを踊る事になろうとは考えもしなかった。

「どうしよう〜。ダンスパーティ用のドレスなんて持ってないよ?」

「俺だってタキシードなんて持ってないぞ・・・。」

「タキシードじゃなきゃ駄目なのかな?燕尾服とか・・・」

「余計に大変だろ・・・。」

クラウドとは急に心配になって来た。

二人とも元神羅カンパニー社員だったので、社内パーティなどでダンスは心得ている。

だが肝心の服がない。まさかこんなところで着る事になるとは思いもしなかっただろう。

「・・・向こうで借りれないかな?」

「無理だろうな。このメールを見る限り、そういうような事は読み取れない。

むしろ『自分の事は自分でやれ』とまで言われている気がするのは俺だけか?」

「ううん。私もそう思ってたから安心していいよ。」

ダンスパーティまで5日しかない。二人はため息をついた。

服がないのなら買えばいい。

これは一番妥当な考え方に思えるが、買うとものすごい金額になるのをクラウド達は知っている。

出来る事なら避けたい選択肢だ。

「・・・・よし。」

不意にが呟いた。

「・・・なんだ?」

「クラウド、黒の布と青のサテンの布を買って来て。あと出来るなら青いスパンコールも。」

嫌な予感がした。

「・・・・まさかとは思うが、・・・・。」

「そう、作るのよ。買えないんだもの。作るしかないでしょ?」

クラウドの予感は命中した。






ダダダダダダダ、とやかましい音が部屋の中に響く。部屋の時計は夜の11時を回ったところだ。

はひたすらミシンと布、その二つと格闘していた。

青い布がドレスの形へと変わっていく。既には3日徹夜していた。

クラウドはその様子を心配そうに見やりながらも、どうする事も出来なかった。

「ふー・・・・。」

がため息をつく。クラウドは読んでいた本から顔を上げ、言った。

「大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫。クラウド、悪いけどちょっとサイズ測らせてくれる?」

クラウドは頷いて立ち上がった。

はメジャーでクラウドの肩幅や胴回りの長さを測り、再びミシンに向かい始めた。

彼女の真面目な顔は見惚れてしまうほど凛としたものなのだが、

現在は目の下に大きなクマが出来てしまっているため、やつれた表情だった。

「クラウド〜・・・これを作り終えたら私一日寝るからね〜。」

「・・・って、作り終えるまで寝ないつもりか?」

「だってさっさと終わらせたいじゃない〜?」

先に寝てていいよ〜、と言いつつミシンから手を離さない

クラウドは眉をひそめたが、の視界にその顔が映る事はなかった。

納得の出来ないクラウドは、一旦は持ち上げた腰を再びイスに下ろした。

は手を止めて不思議そうにクラウドを見やる。

「・・・寝ないの?」

が寝不足なのに俺だけ寝てる訳にもいかないだろう。」

「気にしなくていいよー。」

「俺がしたくてしてる事だ。こそ気にするな。」

は一瞬キョトンとしたが、ふっと微笑むと「ありがとう」と言った。






小鳥のさえずりが聞こえてくる。クラウドはそっと目を開けた。

「・・・寝てしまったのか。」

あのミシンの騒音の中で寝てしまったという事に驚いたが、

隣を見るとも寝てしまっていた。

そのの傍らには既に出来上がっているタキシードとドレス。

ご丁寧にタキシードには蝶ネクタイまで付いている。

クラウドは苦笑いにも似た微笑みを浮かべた。

を起こさないように立ち上がり、の寝室の扉を開ける。

一枚の毛布を手に取り、ふとベット脇の時計を見ると午前7時30分になるところだった。

寝室を出て再びリビングへと向かう。

そして静かに寝息を立てているの肩に毛布を被せた。

はほんの少し身動ぎしたが、それだけで再び静かに寝息を立て始めた。

そんな姿を見て、寝室まで運んでやろうかとも考えたが、

運んでいる最中に目を覚ましてしまっては気の毒だと思い、そのままにしておくことにした。



それにしてもする事がない。

いつもならと会話をしているうちに日が沈んでしまうのだが、

現在は夢の中だ。

一日寝る、と言っていたように、しばらくが起きる様子はない。

「・・・マテリアでも見に行くか・・・。」

それくらいしか思い付かなかった。クラウドは静かにリビングを出ると、

ポケットに財布が入っている事を確かめて家を出た。


マテリアショップでマテリアを購入し、クラウドが家に帰って来た時には

は目を覚ましていた。

今さっき目を覚ましたらしく、まだ少しボーっとしている。

「あ、おかえりぃ。」

「ただいま。眠気は覚めたか?」

「ううん。まだ眠い。でもなんか寝たいってカンジじゃないなー。」

は口を手で押さえて大きな欠伸をした。クラウドはその様子にふっと微笑む。

「明日だぞ。大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫。寝不足で倒れたらカッコ悪いじゃない?」

はクスクスと笑って立ち上がった。出来上がったドレスを手に寝室へと足を向ける。

「あ、クラウドもこれ着てみてね。ないと思うけど、万が一サイズが違ったら大変だから。」

クラウドは頷き、タキシードを手に自分の寝室へと入って行った。






試着をしてみてから3時間と少したった時。

日は真上から少し傾いた位置にあった。

クラウドとはリビングでコーヒーを飲みながら今回のミッションの作戦を練っていた。

「つまり、私達はバリスさんを守りつつ、犯人の気配を探しておけばいいのね。」

「ああ。怪しい人物がいればさりげなく声をかけてみるのもいいんじゃないか?」

はコーヒーの入ったマグカップを口へと運ぶ。

「でも、その家宝って何だろうね。私それが一番気になるわ。」

「そうだな・・・。何せ大富豪の持っているものだ。相当値打ちのあるものじゃないか?」

は「なるほど」と呟く。

「バリスさんの屋敷にはチョコボで行くのよね?」

「それしかないだろうな。出来るならシドの飛空挺で行きたいところだが、連絡が取れない上に忙しいようだし、

無理を言う事も出来ないしな。今日の10時くらいに出発すれば充分間に合うだろう。それまでは

チョコボをゆっくりと休めておく必要があるな。」

飛空挺で行けば3時間ほどで着くだろう。だが、今は少々事情がある。

まぁ、二人には飛空挺などなくても長い旅路をともにした立派な海チョコボがいる。頼りになる相棒だ。

は立ち上がり、側にある棚へと近寄った。

「それじゃ、私はラグナロクの手入れをしとこうかな。クラウドのアルテマウェポンの手入れもしてあげようか?」

棚の中を覗き込みながらは言う。お目当てのラグナロクを取り出し、手に持って眺めた。

「いや、自分でやるさ。マテリアを付けるのも忘れないようにしないとな。」

は棚の中からアルテマウェポンを取り出し、クラウドに渡した。

「そう言えば最近マテリア使ってないよね。シヴァ、私のこと覚えてくれてるかな?」

かつて一緒に闘った仲間の召喚獣を思い出す。氷を使い、果てしなく強い敵と一緒に闘ってくれた仲間。

一度セフィロスの攻撃により、シヴァが怪我をしたことがあった。

もしかしたらもうシヴァと一緒に闘わない方がいいのかもしれない。そう思い、何度マテリアを剣からはずそうとしたことか。

けれどシヴァは言った。

―――――我々召喚獣は、主人に仕えてこそ意味があるのです。私は闘いたい。、あなたと一緒に。

―――――あなたと一緒に闘えるのなら、このような命、惜しくなどありません。

―――――、あなたは勘違いをしている。私は自分の存命が望みではない。

―――――心の強き者。私に笑いかけてくれた、あなたとともにいることが・・・私の最高の望みなのです。


「絶対に大丈夫さ。シヴァはのことを忘れたりなんかしない。」

「・・・・そだね。」

「それより問題は俺のバハムートだ。一緒に闘うどころか、言う事を聞いてくれもしなかったからな・・・。」

はアハハと笑った。

「そう言えば、せっかくクラウドがバハムートを召喚しても、バハムートは好き勝手に攻撃してたっけ。」

「ああ。闘ってくれるのはいいんだが、たまにやり過ぎることがあったからな。」

クラウドは小さくため息をついた。

「大丈夫だよ。きっと主人のクラウドに可愛がられるのが恥ずかしいんじゃないかな?」

「・・・あのバハムートが?」

「うん。本当に嫌いな主人だったら、元からバハムートは力なんて貸してくれないよ。

ほら、バハムートってすごく気難しい性格でしょ?前ヴィンセントが召喚しようとしても

現れてくれなかったときがあったじゃない。その他の皆が召喚しようとしてもバハムートは力を貸してくれなかった。

唯一クラウドにだけ、力を貸してくれたんだよ。」

残念ながら私にも力を貸してくれなかったしね〜。

はため息をつきながら言い、そしてニッコリと笑ってクラウドを見た。

「クラウドが思ってるほど、バハムートとクラウドの絆は脆いものじゃないと思うよ?私は。」

クラウドはしばらく驚いたようにを見ていたが、やがてふっと微笑んだ。

「・・・そうだな。」

は棚の引出しから赤、青、緑、黄色のマテリアをいくつか取り出した。

そしてクラウドに赤、緑、青、黄色のマテリアを渡す。

「この赤いのがバハムートのマテリアね。この緑のが電撃系の呪文ので、青が全体化。黄色のは盗むのマテリアだから。」

クラウドは全部受け取り、ひとつずつアルテマウェポンに付けていった。

も赤、青、緑のマテリアをラグナロクに装着する。

「えっと・・・これがシヴァで、これが全体化で・・・緑のが回復系で・・・、これでOKかな?」

がマテリアを付けている時、クラウドはそっとピンク色のマテリアをアルテマウェポンに装着した。

先ほどマテリアショップで買って来た独立マテリア。

きっと今回のミッションで役立ってくれるはずだ。

「あれ?何?その独立マテリア。」

「カウンターのマテリアだよ。」

は「そっか」と言い、ラグナロクの点検に入った。

クラウドは心の中で謝る。に対してウソをついてしまったから。

「よし、武器の点検はこれでOKかな〜。」

がラグナロクをテーブルの上に置いて、一回伸びをした。

そして思い出したようにクラウドの方を向いて口を開く。

「ねぇ、確かメールには仮面舞踏会って書いてあったよね?仮面あったっけ?」

それを聞いてクラウドもハッとする。

「・・・・ない。」

「うわ、買いに行かなきゃ!!」

はガタンッと立ち上がった。慌ててサイフを手に玄関まで走って行った。

と思ったら急にリビングまで戻って来て、言った。

「ごめん、夕食の材料適当に買って来てくれない?冷蔵庫の中カラッポなの!!」

「えっ!?」

今度はクラウドが慌てて立ち上がった。冷蔵庫の中を確認しにキッチンへ向かい、

冷蔵庫の中を見るとの言った通り、ほとんど何も入っていなかった。

クラウドは脱力する。

玄関の方から「出来るなら夕食作っといて」というような言葉が聞こえて来た気もするが、

クラウドの耳にその言葉が届いたかどうかは定かではない。





無事仮面を購入し、クラウドのお手製の夕食を食べ終わった時には、時計は9時を指していた。

そろそろ仕度を始めたらいいという時間だ。

とクラウドは食べ終わった食器を手に立ち上がり、キッチンへと向かう。

流しに食器を浸け、キッチンから出る。

「それじゃ、そろそろ準備を開始しましょ。」

「ああ。10時になったら出発だ。」

OKと返事を返し、は自分の寝室へと入る。

扉を閉め、部屋の電気をつけた。

クローゼットを開け、旅用の洋服を取り出す。

「久し振りだなー、この洋服着るの。」

かつて星を救うために旅をしていた頃着ていた服。これが一番丈夫で着慣れしているため、

旅用の服を買い換えようとは思わない。

は服を着替え、腰のベルトにラグナロクを装着した。マテリアが付いている事も確認する。

「よし。」

は大きめのバッグにドレスと仮面、ハイポーションを10個ほど詰めた。

食べ物は必要ない。クラウドもも旅慣れをしているので、一日くらいは何も食べなくて大丈夫なのだ。

バッグの口をきつく縛る。

バッグを持ち、深緑色のマントを羽織り、は部屋の電気を消した。





<後編へ続く>

=コメント=
なんかよくわからないなぁ。
コレ、自分で読んでて赤面するよ(笑)
だってクラウドと同棲だよ!?同棲!!
憧れのクラウド君と一緒に住んじゃうなんて、
我ながら大胆なコトをしたもんだワ(笑
えーと、設定的にはエンディング後の話ですね。
多分場所は・・・ニブルヘイムかな?(笑)
とりあえず婚約は終えていて、ニブルヘイムで同棲中ってことで!(何赤面爆笑)
後編へ続きます。