って、どんな人だろうって思ってた。





あのクラウド先輩に近付ける人って・・・どんな人なんだろうって。








あこがれ









私は、幻想学院に通う一年生だ。

友達もいて、勉強もそこそこ出来て、多分ごくごく普通の女子高生だと思う。

ただ、私はとても人との交流が苦手。

今の友達だって、私から話し掛けて出来た友達じゃない。

相手から私を誘ってくれて、いつの間にか友達になっていたという相手ばかり。

どうして人との交流が苦手か、というと、それはやっぱり・・・怖いから。

求めて、拒否されるのが怖いから。

けど・・・こんな気持ち、誰でも持ってるものじゃないのかな?







私は、幻想学院入学式の日・・・3年生のある先輩に、一目惚れをした。

人目を引く鮮やかな金髪に、静かで深いブルーの瞳。

クラウド、ストライフ。

新一年生の入場の時、一度目が合って・・・そして、私はクラウド先輩に一目惚れをしてしまった。

クラウド先輩は私と目が合って、しばらくしたらすぐに目をそらしてしまったけど。

でも、私はその時、本当にクラウド先輩のことが好きになっていた。

入学式の日の後も、やっぱり目でクラウド先輩を探してしまって。

友達や先輩からクラウド先輩の話を聞くうちに、どんどん私はクラウド先輩が好きになっていた。

なのに。

好きなのに、私はクラウド先輩に何も出来ない。

朝「おはようございます」と声をかけることも出来ないし、

先輩の誕生日にプレゼントをすることも出来ない。

私は、今までこんなに人と交流を持てないことに対して悔しいと思ったことはない。

クラウド先輩と、よくすれ違うのに。

クラウド先輩を、登下校のときよく見かけるのに。

私は、何も出来ない。

だって、クラウド先輩はやっぱり学校の中でもすごく人気があるから。

私なんかが、話し掛けていい人じゃないって思った。






そんなある日。

クラウド先輩に近付いてる女がいる、って話を先輩から聞いた。

2年生の青い髪の女だって、先輩は言ってた。

その女は、汚い手を使ってクラウド先輩に近付いたって。

私は悔しくなって、腹が立って、泣きたくなった。

どうして誰も話し掛けられないようなクラウド先輩に、簡単に近付けるの?

皆我慢してるのに。

だって、クラウド先輩は孤高の人じゃない。

いつも独りでいる。だからかっこいいのに。

そんな女が近付いてるなんて、私には許せないことだった。

きっとチャラチャラしてる女で、男遊びばっかりしてて、下品な女なんだろうって思った。

そして・・・クラウド先輩に近付くその女を、殴り飛ばしてやりたくなった・・・。






私はその話を聞いた日からずっとクラウド先輩と、その青い髪の女のことが頭から離れずにいた。

いつでもその2人のことしか考えられなくて、勉強も手につかない。

腹が立って、悔しくて。

でも、このままじゃいけないって思って・・・

私は、息抜きに屋上へと足を運んだ。





階段を上り、屋上の扉に手をかける。

けど、そこで私は動きを止めた。

誰かいる。

扉の窓ガラスから屋上が見えて、そこに誰かが立っていることに気付いた。

金色の髪。

あの後姿は・・・まさか・・・。

私は息を飲んだ。

クラウド先輩。

憧れのあの人が、今、自分の目の前にいる。

いつもはスコール先輩も一緒なのに、今は何故か一人でいる。

もしかしたら、今がチャンスなのかもしれない。

思い切って話し掛けて・・・せめて、自分のクラスと名前だけでも知ってもらいたい。

そう思って扉にかけた手に力を込めたけど、そこまでだった。

勇気が、どうしても出ない。

もし、嫌われたら?

もし、煙たがられたら?

そう思うと、私は本当に動く事が出来なかった。





「あ〜、やっぱり、屋上にいたんだね。」

後ろから声がして、私は振り返った。

そして、息を飲んだ。

私のすぐ後ろに、青い髪の女が立っていたから。



―――クラウド先輩に近付いてる女がいる―――



この女だ。間違いない。

私は、ムカムカと襲ってくる胸の不快感を隠しきれなかった。

「クラウド、よくここの屋上に来るんだよ。あなたも、クラウドに用があって来たの?」

私は一瞬キョトンとした顔で彼女を見つめた。

彼女は優しい微笑みを浮かべて、私を見ている。

予想していたような言葉とは、全く正反対の言葉が彼女の口から出て来たから。

私はなんて言ったらいいのかわからずに、彼女を見て呆然としていた。

「あ、それとも息抜きのために屋上に来たの?私も最初屋上に来たときは、息抜きのためだったんだよね〜。」

やわらかい微笑みと、全てを包み込むような優しい声。

私は、小さく頷いた。

「そっか。息抜きか。それじゃ一緒に屋上に出ようよ。屋上から見る景色ってね、すごく綺麗なんだよ。」

私は呆然としたまま、彼女を見つめて・・・そして、思った。

チャラチャラしてる人じゃない。

男遊びなんてしてる人じゃない。

・・・下品・・・なんかじゃ、ない・・・。

大袈裟かもしれないけど、私は女神様を見てるのかと思った。

本当に、そういう雰囲気を持った人で。

彼女は、私の手を取って屋上へと出た。




扉が開く音で、クラウド先輩が振り向いて、彼女と私を見つめた。

そして口を開く。

か・・・。・・・知り合いか?」

クラウド先輩は、彼女にそう尋ねた。

彼女・・・先輩は、私を一度見つめてから笑顔でクラウド先輩に言う。

「今、友達になったの。」

美しい笑顔で。

今会ったばっかりなのに、私のことを友達と言ってくれた。

私はこの人に対して怒りを抱いていたはずなのに。

私はこの人に対して憎しみを抱いていたはずなのに。

いつの間にかそんな感情はどこかへと消え去ってしまっていた。

「そういえば、名前まだ聞いてないね。私、。あなたは?」

「あ、いえ・・・私は・・・。」

なんだか恥ずかしくなって、私は答えられなくなってしまった。

私には、クラウド先輩と先輩に名乗る資格なんてない。

「あの・・・すみません、失礼します。お邪魔しました・・・。」

私はそう言って、踵を返した。

後ろから、声がした。

「今度会ったときは、名前おしえてね!」

「帰るなら、気をつけて帰れよ。」

一瞬、立ち止まりそうになった。

まさか、クラウド先輩に声をかけてもらえるなんて。

私は、本当に今まで何を考えていたんだろうって思った。







その帰り道。

私は道を歩きながら、クラウド先輩と先輩のことを考えていた。

あの後、結局私はすぐに帰る気にはなれず、教室でぼんやりと過ごしていた。


先輩に対して、憎しみという感情を抱いたことが、どうしようもなく恥ずかしかった。

あんな美しい人なら、クラウド先輩が心を開いたって当たり前だ。

何か下心があってクラウド先輩と一緒にいるわけじゃない。

きっと、孤独だったクラウド先輩のことを想って、一緒にいるんだろう。

優しい人。

本当に、優しい人なんだ・・・。





「お前・・・。」

私はふと顔を上げた。

そこには、クラウド先輩が立っていた。

私は顔が赤くなるのを感じて、クラウド先輩を見つめた。

「なんだ・・・まだ学校に残ってたのか?」

「あ・・・はい。」

が心配してた。急に出て行ってしまったから、何か傷つけることでも言ったのかなって。」

私は首を横に振る。

「いえっ。そんなんじゃないんです・・・。本当に、用事があっただけで。」

「そうか・・・ならも安心するだろうな。」

クラウド先輩は、笑みを浮かべた。

クラウド先輩の笑顔は、“孤高の人”なんかじゃなくて・・・普通の、高校生の顔だった。

「どうせだし・・・一緒に帰るか。・・・途中まで。」

クラウド先輩が言った。

「・・・はい。是非、ご一緒させてください・・・。」

もう、充分。

私、なんて勘違いをしてたんだろう。

私はクラウド先輩の横を歩きながら思う。




どう足掻いても、先輩には敵わない・・・って・・・。







大好きなクラウド先輩。

私のあこがれの人。









先輩なら、クラウド先輩のこと・・・全て、受け止められるんだろうな・・・。












私も、先輩みたいな人になりたい。

これは、あこがれ。









<完>




=コメント=
クラウドに恋心を抱く後輩の視点からお送りしました(笑
純粋にクラウドのことを想ってる子だっているだろう!
と思い、勢いだけで書き上げてしまった作品。
の、わりには長い(爆
本当ならゴミ箱行きの作品・・・(爆笑 [PR]動画