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楽しい音楽が街に満ち溢れる。






さて、あなたのサンタは一体誰?










シークレット










寒い朝。手足の先が冷たく冷えてしまう。

だが、それもそのはず。外は真っ白い雪が降り注いでいるのだから。

気温が低いのも当たり前である。

外から聞こえる子供達のはしゃぎ声。雪と戯れているのだろう。

はしっかりとセーターを着込み、一階のキッチンへと向かった。

まだ夫のクラウドも、娘のフィアも夢の中である。

今朝はいつもよりも寒いから、熱いコーヒーを用意しておこう。

フィアには、ホットミルク。いつもの定番メニューなのだ。

『意外と甘党なんじゃない?』

以前クラウドにそう聞いたことがある。だが、彼はそれを否定したのだ。

コーヒーを飲むとき、彼は決まってブラックで飲む。

最初は痩せ我慢をして飲んでいるのかと思っていたが、最近ではそうじゃないのかも、とも思う。

結局どちらなのかはクラウドにしかわからないのであるが。

「う〜・・・寒い。」

寒いとついつい猫背になってしまう。

は猫背になりながら、ガス台にポットを乗せて火をかけた。

それから、深い溜息をつく。




今日はクリスマス。

子供達の一大イベントの日だ。

もちろん、娘のフィアとて例外ではない。

フィアはまだ6歳。サンタクロースを信じている年頃だ。

フィアの靴下にも、たくさんのプレゼントが詰め込まれていることだろう。

金髪で、青い目で、少し目付きの悪い若いサンタクロースの手によって。

子供は一目サンタを見ようと思い、イヴの日は夜更かしをするのが普通だ。

だから昨日クラウドも相当苦労した。

フィアはサンタを見ると言って寝ようとしないし、クラウドはクラウドでおどおどしているし。

可愛い娘の手前、弱くなってしまうのが父親というものなのだろうか。

結局、の「サンタさんは寝ないと来てくれないよ?」という一言でフィアを寝かせたのだ。

それが夜中の12時半。6歳の少女が、よくそこまで起きていられたものだと思う。



ぼんやりと昨日の夜のことを考えていて、ポットが沸騰しているのにも気付かなかった。

は慌てて火を止める。それから、やはり小さな溜息をついた。

「・・・おはよう。」

眠そうな声がして、クラウドが起きてきた。

まだ半分夢の中の様子。は苦笑を浮かべた。

「おはよう、クラウド。まだ眠そうだけど、大丈夫?」

「平気。フィアより遅く起きるわけにはいかないからな。」

は目を細めて微笑んだ。

そんなを優しげに見つめて、クラウドも微笑む。

フィアの喜ぶ顔が今から目に浮かぶようだ。

きっと嬉しそうにキャッキャと笑って、プレゼントを大事そうに胸に抱え込むのだろう。

そんな娘の姿が見たいから、毎年とクラウドは頑張ってしまうのだ。サンタとして。

可愛い娘のためなら、一肌でも二肌でも脱ごうではないか。

結局は、“親バカ”ということなのだけれど。

「何か手伝う事あるか?」

「それじゃ、コーヒー淹れてもらっていい?私朝ご飯作るから。」

「駄目。それなら俺が朝飯作るから、がコーヒー淹れてくれ。」

コーヒーはが淹れるのに限るからな、と彼は言う。

は苦笑して、それじゃお願い、と彼に朝ご飯を頼んだ。

別にコーヒーを淹れるのに特別なことをしているわけではない。

けれど、彼はのコーヒーを特別好むのだ。

何故だか知らないが、とても静かな香りがするのだという。

強い香りのコーヒーも確かに魅力的ではあるけれど、上品で静かな香りの方が、やはり良い。

「おはよーっ!サンタさんはっ!?サンタさんのプレゼントはっ!?」

ドタドタと音がして、娘のフィアが起きてきた。

今にも転びそうな音を立てながら、こちらに走り寄ってくる。

そんな様子を見て、クラウドとは顔を見合わせて笑った。

「ツリーのところにある靴下を見てみなさい。サンタさん、来てくれてるかもしれないわ。」

「見てくるっ!」

フィアはすぐに方向転換をすると、ツリーの飾ってあるリビングへと駆けて行った。

その様子を見送って、とクラウドはクスリと笑う。

それからふとクラウドが手を止めて、に歩み寄った。

は首を傾げる。

「・・・なぁに?クラウド。」

「サンタクロースが、にもプレゼントを持ってきてることを忘れてたんだ。」

そう言い、クラウドはポケットから小さな箱を取り出した。

そして、それを開けてに差し出す。

は一瞬それをキョトンと見つめ、クラウドとそれを交互に見比べた。

それからふとふき出して、クスクスと笑う。

クラウドは眉をひそめた。

「・・・どうした?」

「随分とシャレたサンタクロースね、と思っただけ。ありがとう、とっても嬉しい。」

は微笑み、クラウドからそれを受け取った。

シルバーのイヤリング。

クラウドとおそろいのそれは、サンタクロースがくれたにしてはシャレ過ぎている代物。

「ありがと、私のサンタさん。」

にっこりと笑いながらクラウドにそう言うと、彼は頬を赤く染めたのがわかった。

あ、照れてる。

そんな彼の反応を楽しんでいると、フィアが先ほどと同じようにドタドタと走ってきた。

そして、心底嬉しそうな声で言う。

「見てみてっ!!サンタさんね、フィアがずっと欲しかったドレスとテディベアをくれたのっ!

すごく可愛いクマさんだよっ。ほら、ママ!パパ!」

「良かったわね、フィア。どうせだから、そのドレスを着てヴィンセントに会いに行ったら?

喜ぶわよ、ヴィンセント。フィアの可愛い姿を見れて。」

神羅屋敷にいるヴィンセントの話題を出してみる。

するとフィアは嬉しそうに笑い、ドレスとテディベアを持って自分の部屋へと行ってしまった。

きっとすぐにドレスを着て、テディベアを持ち、ヴィンセントの元へ走っていくのだろう。

そんな光景が微笑ましい。

「・・・どうせなら、俺にもサンタが来てくれると嬉しいんだけど。」

ボソリと彼から呟かれた言葉。

はキョトンとしてクラウドを見つめ、首を傾げた。

「クラウドは何が欲しいの?」

「大好きな女の、口付け・・・ってとこかな。」

クスリと笑い、クラウドは自分の唇を指差す。

は少し怒ったような表情を見せ、「またからかって」と呟いた。

毎日のようにしてるだろうに、そんなこと。は思う。

だがすぐに照れたような笑みを見せ、ゆっくりとクラウドの唇に自分の唇を重ねた。

いつもとは違う、少しドキドキする、そんなキス。

とろけてしまいそうなそんな感覚に包まれたとき、不意に現実に引き戻された。

「・・・パパとママがちゅーしてる。」

そんなフィアの言葉によって。

クラウドとは慌てて離れ、真っ赤な顔で顔をそらした。

フィアは首を傾げている。

「なんでちゅーしてたの?」

「な、なんでもないのよ?」

「フィ、フィアは気にしなくていいんだ。」

慌てて答える二人。フィアはますます難しそうな顔をして、

「・・・変なの。ヴィンセントに聞いてみたらわかるかな。ちゅーしてる理由。」

爆弾発言をしてくれた。





「いってきまーすっ。」

「あっ!ちょ、フィアっ!?」

「待てっ!ヴィンセントには関係ないだろっ!?」






後日、ヴィンセントが憎しみのオーラを纏ってクラウドの元に訪れたのは、また別の話。










<完>


=コメント=
はい、クリスマスドリームでした。
普通靴下ってベッドの近くとか、枕元とかに吊るすって言うんですけど、我が家では違うんです。
リビングにツリーを飾って、そのツリーの下かツリーの傍に靴下を吊るします。
だから、目が覚めた瞬間はプレゼントがあるかないかわからないんですね(笑
いやー、今年私のとこにもサンタさん来ましたよ!
プレゼントはいただきストリートでした(笑)現在攻略中です(笑

この話ではクラウドとがサンタクロースのように書かれていますが、
サンタは実際にいます。これではこういう書き方をした、とういうだけなので。
サンタクロースは実在しますから(笑
変に誤解しないでねー!間違ってもサンタのことをお父さんやお母さんに聞いてはなりません!
お父さんもお母さんも困っちゃうよ、そんなこと言われたら(笑

それと題名と内容が一致してない、と思われるかもなので一応。
シークレット。秘密って意味ですね。
これは、クラウドとがキスしてた意味とか、サンタの正体とか、そこらへんを全部まとめて
シークレット、という意味だとお考え下さい。
もちろん、その意味の内容は皆さまのご想像にお任せします(笑