「・・・なんだ、これは。」






「見てわかんねーの?」






「・・・チョコレート。」






「わかってんじゃん。」







月光








スコールは顔をしかめた。

その無愛想な彼の目の前には、ズボンのポケットに手を突っ込んで突っ立っている・イオザムの姿が。

スコールは額に手を当てると同時に溜息をついた。

かつて伝説のSeeDとまで謳われたスコール・レオンハートの美顔は、今やしかめっ面となっている。

これでは美しさの意味も全くないというもの。

けれどはそんなことに構いもせず、視線を夜空へと泳がせた。

月の光がやけに眩しい。は月を見つめて思った。そして再びスコールを見やる。

スコールの右手の上には可愛くラッピングされた袋が。そしてその中には、星型のチョコレートがたくさん詰まっていた。

「・・・・なんなんだ、これは。」

「だから、チョコレート。」

しれっと答えるに、スコールは再び溜息をついた。

『今夜11時、訓練所の奥にある秘密の場所があるだろ?そこに来い。』と呼び出され、

何事かと不信に思いながらもやって来たらこのザマだ。

急ににラッピングされた袋を渡され、「やる」と言われても納得出来るはずもない。

仮にも無愛想で恋愛などに無頓着なこのスコールが。

「・・・質問を変えよう。これにどういう意味を込めて俺に渡した?」

わざわざ具体的に説明しなければ理解してくれない相手にスコールは目を細めた。

はそれに言い返すように言う。

「お前、カレンダー見ねぇの?」

「・・・バレンタインか。」

「わかってんじゃん。」

最初と同じセリフを口にするに、スコールは心底疲れ果てていた。

何故、バレンタインチョコを俺に渡す?

そういった疑問が浮かんでくる。

という人物は自分が男みたいなものなので、必要がない限り自分から男に贈り物をすることなどまずないのだ。

それなのに何故?

「・・・何かあったのか?」

はぷっと噴き出すと、思い切り腹を抱えて笑い出した。

スコールの目は点になる。

は一頻り笑うと、息を整えてスコールに向き直る。

「ふふっ・・・。スコール、何か今お前、無茶苦茶驚いてるだろ。」

「当たり前だ。何でお前にチョコレートを渡されなきゃ駄目なんだ。」

「リノアからの方がよかった?」

「・・・別に。」

いつも通りの答え方の彼に、は苦笑した。

スコールは手に持ったチョコレートをを見比べている。

いつもはクールで真面目で、任務に専念する彼なのに、今はそんな彼がとても可愛く感じた。

「実はさ、リノアとの勝負なんだよ。」

「・・・は?」

素っ頓狂な声を上げるスコールを見て、は再び笑い出した。

スコールは呆気に取られている。

「あははは・・・いやだからね?リノアに勝負を吹っ掛けられて、それを俺が安く買ってやったの。」

「・・・意味がわからんな。」

「うん、これだけじゃわからないと思う。」







〜!!』

『ん?あ、リノアじゃん。』

『ねっ、って料理出来ないよね?』

『・・・いきなり現れていきなり何を言い出すんだ、お前は。』

『出来ないよね?』

『・・・なめんじゃねぇ。これでも俺は料理得意だぜ?』

『じゃあ、勝負しようよ!』

『・・・はぁ?』

『もうすぐバレンタインでしょ?だからチョコレートを作るの!で、美味しかった方の勝ちvどぉ?』

『ふっ・・・いい度胸じゃねぇか。俺に料理で勝負を持ち込むなんざ・・・。受けてやろうじゃねぇの。』

『よし!んじゃ、決まりね!チョコレートを作って、それをスコールにあげるの!スコールに判定してもらうのよ!』

『・・・は?ちょっと待て。何でそこでスコールが・・・・』

『私、負けないよ!!』

『いやだからあの、何でスコ』

『それじゃ、も頑張ってね〜v』











『・・・・人の話聞けよっ!!!』











「・・・という訳だ。」

「またくだらないことを・・・。」

スコールは完璧に項垂れた。

そう言えば、今日の昼間リノアにチョコレートを渡されてがどうとか言っていたような気もする。

「とまぁそんな訳だから、食えv

スコールの動きが一瞬停止した。

と無言で見つめ合う。は笑顔だったが。

五秒ほど見つめ合った後、スコールはふっと笑って言った。

「馬鹿言うな・・・。お前の作った得体の知れないチョコレートなんざ」

「食えないとでも?」

スコールの声を遮って笑顔で言った。

スコールの表情が凍り付く。何気に冷や汗も垂らしているようだ。

「美味かった?」

「・・・まだ食べていない。」

「ちげーよ、リノアの。今日もらったんだろ?」


ビクッッ


「・・・悪ィ、聞いた俺が馬鹿だった・・・・。」

リノアのチョコレートの話題を持ち出そうとしたが、あえなく失敗した。

スコールの様子を見て、リノアのチョコレートの味は大体予想出来る。

哀れスコール。今日、気分が悪そうにしていたのはそれが理由だったのか(違

「まぁ、リノアのチョコの味はともかく。食ってくれなきゃ勝負の勝敗がわからねぇじゃん。」

「・・・言いたい事はよ〜くわかる。だが、な。今の状態の俺にチョコレートを食べさそうなんて、お前は鬼だぞ。」

「それは俺のチョコレートを食ってから言え。俺のチョコが不味かった暁には、最高級のチョコを食べさせてやるよ。」

スコールはしばしチョコレートを睨み合う。

さて、どうしたものか。

は無言でスコールを見つめている。

悩む。これでもかというほど悩む。

がここまで言うということは、それなりに上出来な味だとは思う。だが。

リノアのチョコレートを食べた所為でチョコレートにトラウマを持ってしまったスコール(違

この場を切り抜けられるのか?

「・・・わかった、部屋で食べるから・・・。」

「ここで食わなきゃ意味がねーんだよ。」

ああ、哀しきかな。普段は敏腕、伝説SeeDとまで謳われるスコール・レオンハートも、

一人の女SeeDには手も足も出ず・・・・・。

スコールはごくりと息を飲んだ。

「・・・食えって言うのか?」

「だからさっきからそう言ってるだろ。」

スコールは本気で悩み始めた。

本当は泣きたくなるほど嫌なのだが、ここまで言われては食べるしかない。

だが。

手が震えてくる。というか、ここまでチョコレートを恐れる理由は何を隠そうリノアにあるのだ(爆

あの天使の笑みで悪魔のチョコレートを渡してきたリノア。

スコールはしゃがみ込み、右手で顔を覆った。

「・・・おーい、スコール?大丈夫かー?」

「・・・・大丈夫じゃないかもしれない・・・。」

「・・・マジで大丈夫かよ、おい・・・・。」

スコールは溜息をつき、チョコレートの包みを開けた。

やわらかいチョコレートの甘い匂いがスコールの鼻を突つく。

「お?」

スコールはチョコレートのひとつをつまみ、それを口へと放り込んだ。

「おぉおお!!!」

が声を上げる。チョコレートは舌の上でとろけ、甘い味が口の中で広がった。

「どぉ?」

「・・・・美味い。」

「だろ?」

はニッと笑った。スコールはチョコレートをもうひとつ口へと運ぶ。

どうやらチョコレート勝負は、文句なしでの勝ちのようだ。

ふと時計を見ると、もう11時30分だった。思ったより時間はたっていたらしい。

は伸びをする。なんだか眠くなって来た。

今日はもう時間がないし、風呂じゃなくてシャワーで済ませてしまおう。

そんなことを考える。

「ふわぁあ・・・。そんじゃ、俺は寝るぞ。明日の任務ってなんだっけ?」

「無人島のモンスター調査だ。早朝6時半にガーデン入り口前。遅れるなよ。」

「ゲー・・・。マジ?あと5時間くらいしか寝れねーじゃんかよー。」

「お前に呼び出された俺も同じなんだがな。」

は苦笑した。

「それじゃ、また明日な。」

「ああ。」

は歩き出す。だが、はたと立ち止まって振り返った。

「もしも欲しかったら、来年もやるぜ?」

ニッといつもの笑みを浮かべ、はその場を後にした。

残されたスコールは、視線をチョコレートへと落とす。

そして小さく溜息をついた。

「来年もやる・・・か。なら、口移しでもしてもらいたいものだな。」

スコールは呟き、その場を後にした。





翌日。

睡眠不足で起きれなくなり、スコールとが10分ほど遅刻したということは言うまでもない。





<完>


=コメント=
うわぁ・・・。キャラ崩れしてるよ、スコール(汗)
えと・・・FF[の連載が始まったわけですが・・・。
・・・こんなカンジのヒロインです(笑
恥ずかしやーーーー!!!(汗
いーのか?これで(笑
反応が怖いなぁ・・・(汗汗 [PR]動画