新たな脅威。









それが一体どんなものか、まだ私には想像も出来なかった・・・。









呼ぶ声









ふと、は目を覚ました。 明るい光が洞窟内を照らしている。

隣を見ると、まだヴィンセントは夢の中だった。子供のような寝顔を見せ、眠っている。

いつもは冷静でクールでかっこいいのに、こんなときは子供みたいだ、とは思う。

は少し微笑んで、それから視線を外へと向けた。

朝日が昇る。また、新しい一日が始まった。

「・・・今日で、一年目・・・か。」

俯いて呟いた。忘れもしない一年前。

セフィロスを打ち倒し、メテオの暴走を食い止めたあの一年前。

そんな悪夢の日から、今日で一年たったのだ。

「いろいろなことがあったなぁ・・・。」

クスリと笑いを漏らす。

この一年間、はヴィンセントとともに旅をしていた。

命を投げ打って自分を助けに来てくれたヴィンセントの優しさに、涙がこぼれた。

帰ろう、と言ってくれた彼の優しさは、の心に溶け込んだ。

今では本当に幸せに暮らしている。



は立ち上がり、洞窟の入り口を出て切り立った崖の上に立った。

眩しい朝日が山を越えて輝いている。

そのあまりの眩しさの所為だろうか。は少しよろめいた。

「っ!きゃ・・・!」

崖から滑り落ちそうになったとき、後ろから抱きかかえられた。

肩越しに、黒い髪が見えた。

暖かい彼の吐息が耳に触れ、は咄嗟に顔を紅潮させる。

「・・・まったく・・・。危なっかしくて見ていられないな・・・。」

呆れた彼の声。は苦笑を浮かべてペロリと舌を出した。

「ハハ・・・ごめん。」

「笑って済ませられたから良かったものの、ここから落ちていたら間違いなく命はないぞ。

ジェノバ細胞を体内に埋め込まれているとは言え、私達だって人間なのだから。」

ハァ、と溜息をつきながらヴィンセントは言う。

なんだかんだ言っても、彼はちゃんとこうして助けてくれるのだ。

だから、も甘えてしまうのかもしれない。

「そうだね・・・。こんな私でも、まだ人間なんだよね。」

少し寂しげには言う。

ヴィンセントはを抱きかかえたまま、目を伏せた。

ジェノバ細胞を埋め込まれた人間は、年をとらない。

ヴィンセントも、も。今はどこで何をしているかわからない、クラウドだってそうだ。

本当ならヴィンセントは57歳のはず。しかしジェノバ細胞のせいで30年前から年をとっていない。

27歳の姿のまま、今を生きている。

とて同じこと。1年前から年をとっていない。

それがどんなに不安なことか、普通の人間にはわからないだろう。

自分の周りにはちゃんとした時間が流れている。しかし自分の時は止まったままなのだから。

「・・・今日中にはこの山を越えるぞ。体調は平気か?」

「うん、体調は万全。今、朝ご飯作るね。」

はヴィンセントから離れると、洞窟内へと戻った。

ヴィンセントは薄く笑みを浮かべ、太陽を見つめた。

何度この姿のまま朝日を見たことだろう。

最初は、朝日が昇るのが嫌で嫌でたまらなかった。

自分は時の流れに身を置くことは出来ないのに、太陽は皮肉にも昇り、そして沈む。

そうして、時は流れ続けている。それが、どんなに辛かったか。

けれど今は、何故かとても安心している。

それは、きっと傍にがいるからだろう。

自分と同じ体になってしまった女性。

そんな彼女を守ってやりたいと思う。そして、とても愛しく思う。

ヴィンセントは踵を返し、洞窟内へ戻ろうとした。

だが、ふと気付いて足を止める。



―――――――――・・お・・・! たす・・て・・・!



「・・・・?」

何かが聞こえた気がする。

それはも同じようで、不思議そうな顔をして洞窟から出てきた。

「ねぇ、今・・・。」

「ああ・・・何かが聞こえた・・・。」

ヴィンセントは遠くを見つめたまま視線を外さない。

その横顔は険しく、鋭く、いつになく真剣である。

「・・・呼ばれた・・・?」

ヴィンセントは数歩前に出て、目を細めて遠くを見つめた。

何かを見つけようとしているかのように。

「・・・何かが起こる。・・・もうすぐそこまで来ている。」

「それは・・・平和を崩すものなの・・・?」

「恐らくは。」

何か巨大な、災厄が。

今までの悪夢を越える、更なる悪夢が。





―――――――――・・おね・・・い! 助けて・・・!!





「呼んでる・・・!!」

も身を乗り出す。

今度はかなりはっきりと聞こえた。

明らかに、助けを求めている。呼ばれている。

「一体何が起ころうとしている・・・!?」



自分達を呼ぶ声。


声の正体はわからないけれど、確実に何かが起ころうとしている。


体が震え出すほどの、恐ろしい何かが。




「ヴィンセント・・・クラウドに会おう。」

「ああ。・・・クラウドなら、恐らくミッドガルかニブルヘイムかにいるだろう。」

会って確かめなければ。

「行こう、ヴィンセント。」

「・・・ああ。」

踵を返し、二人は歩み出す。

避けては通れぬ茨の道へと。





。」

「ん?」








「例え何が起ころうとも・・・は、私が命をかけて守り抜く。」






ヴィンセントの決心は、鋭い眼光となって現れていた・・・。














―――――――――・・・お願いっ!! 助けて・・・!!












=コメント=
ヴィンセント編のアドチル予告です(笑
あんまりラブラブしてませんね。
すみません・・・(笑
ヴィンセント編のアドチルでは、恐らくクラウドはムッチャ脇役になると思われ・・・
ぐあ。許しておくれクラウド・・・!
この苦しさも愛ゆえに・・・!!(何
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